関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

田沼武能写真展 東京わが残像 1948-1964 (感想前編)【世田谷美術館】

前回ご紹介した世田谷美術館の常設を観る前に、特別展の「田沼武能写真展 東京わが残像 1948-1964」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

DSC03540.jpg

【展覧名】
 田沼武能写真展 東京わが残像 1948-1964

【公式サイト】
 https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00192

【会場】世田谷美術館
【最寄】用賀駅

【会期】2019年2月9日(土)~4月14日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんは結構いましたが、概ね自分のペースで観ることができました。

さて、この展示は田沼武能(たぬまたけよし)氏という90歳を越えて現役で活躍している写真家について紹介するもので、中でも子供、下町、町の変貌の3つのテーマを取り上げてそれに沿った作品が並んでいます。田沼武能 氏は1949年東京写真工業専門学校(現・東京工芸大学)を卒業後、名取洋之助が主催するサン・ニュース・フォトス社に入り、木村伊兵衛の助手として写真修行をスタートしました。その会社だけでは食べていくことが出来なかったらしく、新潮社の『藝術新潮』の嘱託写真家として昭和を代表する文化人の肖像写真を連載すると、注目を集めるようになり、アメリカのタイム・ライフ社と契約しフォト・ジャーナリズムの分野でも活躍したそうです。1984年からは黒柳徹子ユニセフ親善大使と共に120カ国を超える国で子供を撮影してきたそうですが、今回の展示は戦後の東京に焦点を当てて1964年のオリンピックまでの時代までのチョイスとなっていました。構成はテーマごとに章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。(なお、今回の展示は大半が白黒写真です)


<第1章 子どもは時代の鏡>
まずは子供を撮った写真のコーナーです。田沼武能 氏は1966年にパリのブローニュの森で遊ぶ子供たちの姿に魅せられたことをきっかけに世界の子供をテーマに写真を撮ることをライフワークとする決意をしたそうで、『素晴らしい子供たち』や『地球星の子どもたち』といった多くの写真集を出しているようです。しかしそれ以前にも沢山の子供の姿を撮っていたようで、ここにはそうした作品が並んでいました。

4 田沼武能 「子守をする少女」 1950年 浅草
こちらは大通りに向かって立ち、背中に寝ている弟?を背負っている少女の後ろ姿を撮った写真です。弟と比べてもそれほど大きくない体つきですが、しっかりと立っていて子供ながらに姉としての自覚と責任感が感じられます。子供が働き手だった時代を感じると共に、早くから自分の役割を自覚していた立派なお姉さんに思えました。

この辺は戦後の物不足や孤児などを捉えた写真が並んでいました。

5 田沼武能 「上野公園に住む戦災孤児」 1951年 上野
こちらは泥だらけで真っ黒になった戦災孤児を撮った写真です。孤児が大写しになっていて、左目は普通ですが右目は寄り目気味になっていて、ちょっと目つきが尋常ではありません。極度の貧しさや戦後の混乱が感じさせるような驚くほど強烈な写真となっていました。

この辺には「賽銭箱をのぞく子供」など見覚えのある作品もありました。
 参考記事:TOPコレクション たのしむ、まなぶ イントゥ・ザ・ピクチャーズ (東京都写真美術館)

2 田沼武能 「ペコちゃん人形の持つミルキーがほしい戦災孤児」 1950年 銀座 
こちらも戦災孤児を撮った写真で、街角のペコちゃん人形が持っているミルキーの紙袋をじっと見つめる少年の姿が写っています。ペコちゃんの顔は煤けて、目玉が壊れて落ちかけてるのが軽くホラーw こんな人形の紙袋に実物のミルキーが入っているとは思えないのですが、それを欲しがるところに戦災孤児の悲哀が感じられました。銀座でもこういう光景があったんですね…。

17 田沼武能 「空き地でコマ回し、奥ではチンドン屋がひと休み」 1957年 杉並区 
こちらはコマ遊びをしている学生服の子供たちが写っている写真です。紐やコマがブレていて、それが逆に動きを感じさせます。みんな楽しげな表情を浮かべていて生き生きしていていい顔です。背景には一服しているチンドン屋さんたちが談笑していて、のんびりとした雰囲気となっていました。この頃になると貧しさも少しはマシになった感じがします。

22 田沼武能 「紙芝居に夢中の子どもたち」 1955年 佃島 ★こちらで観られます
こちらは紙芝居を観ている子供たちの顔が画面を埋め尽くすような写真です。ぎゅうぎゅうに紙芝居の前に集まって真剣な眼差しで見つめているのが面白いw 女の子はおかっぱ、男の子の中には坊主頭がいたりするのも時代を感じるかな。子供の生きた表情を捉えた1枚でした。

この辺は遊んでいる子供を撮った写真が並んでいました。

30 田沼武能 「神輿をかつぐ少女たち」 1955年 浅草
こちらはお神輿を担いでいる少女たちを撮った写真で、特に手前にいる2人の顔が大きく映されています。後ろにいる子に声をかけるような仕草をしていて、ハツラツとした印象を受けます。お祭りの楽しげな雰囲気が漂い、子供たちの純粋さがよく現れているように思いました。

この辺は神社の行事に参加する子供の写真などが並んでいました。

53 田沼武能 「神宮絵画館とプール[かっぱ天国]」 1960年 新宿
こちらは現在も外苑前にある絵画館の辺りを撮った写真です。しかし現在の様子とは大きく異なっていて、絵画館の池がプールになっていて 狭い池で大勢の子供達が はしゃいでいます。その後ろでは少し高い位置にある絵画館の入口辺りから子供の様子を見守る大人たちの姿もあり、夏の賑わいを感じさせます。この写真の隣にはプールに飛び込む瞬間の写真もあって、あそこがプールとして親しまれていた時代があったことに驚きました。
 参考記事:聖徳記念絵画館/イチョウ祭り/クラシックカーフェスティバルの写真

この辺りの部屋の真ん中には当時の少年誌(少年マガジンなど)やベーゴマ、人形、おままごと用品などの玩具が並んでいました。


<第2章 下町百景>
続いては下町を撮った写真のコーナーです。田沼武能 氏は浅草の写真館に生まれたこともあって、下町は特別な場所だったようです。下町をテーマにした写真集も出しているそうで、自身の故郷の原風景やアイデンティティと深く結びついているようです。また、「昔は物が無かったが人情があった」と回顧しているようで、ここには人情味のある暮らしぶりが感じられる作品が並んでいました。

62 田沼武能 「国際劇場の屋上で憩う踊り子」 1949年 浅草 ★こちらで観られます
こちらは頭に長い白リボンを付けた2人の踊り子が屋上の縁に腰掛けて雑誌を読んでいる様子を上から撮った写真です。2人で1冊を一緒に観ながら会話しているような感じで仲睦まじい雰囲気です。背景にはお墓や簡素な家々が並ぶ町並みとなっていて、戦後の何もない時代を感じさせました。

70 田沼武能 「見るも踊るも共に楽しいお花見」 1954年 上野公園
こちらは上野公園にゴザを敷いて花見をする人々を撮った写真です。中央で踊っている老人とその脇でバイオリンを弾く人、ギターを弾く人の姿があり、みんな桜そっちのけでその様子を観ています。みんな笑顔というわけでもなく物見高い人が集まっているような…w ある種の時代のエネルギーが詰まったような作品でした。

84 田沼武能 「酉の市で記憶術本を売る大学生(?)」 1955年 浅草
こちらは屋台で本を売っている学生帽を被った男性と、その周りに集まった大勢の学生服の学生を撮った写真です。売っている人はちょっとオジサンっぽいので、学生かどうか疑わしい…w 寅さんの話にこんなのあったな…というのがリアルに存在していたことが可笑しく思えました。記憶術ってのもいかがわしいw

97 田沼武能 「深川八幡祭り」 1956年 江東区
こちらは神輿を担ぐ法被を着た大勢の大人を撮った写真です。その群れを押して誘導しているような感じで、よく観ると後ろには路面電車が人に埋もれるに止まっています。お祭りの熱気で路上が大混乱している様子が見て取れて、エネルギーの潮のような写真でした。

この隣には参道が人で埋まっている様子を撮った写真もありました。祭りにかける情熱が今より凄そうw

107 田沼武能 「下町のお惣菜屋」 1956年 本木
こちらは街角にあるお惣菜屋さんを撮った写真で、メニューにはシュウマイ四円、魚フライ十円、コロッケ四円などと書いてあります。もはや物価が違い過ぎて安いのかすら分からないレベルw しかし主婦たちが並んでいるのでお買い得なのかな? 一方、写真の右半分は路地が写っているのですが、舗装されず泥濘んでいて酷い有様です。家も木の板が張り付いてるような感じで、まだまだ貧しい時代だったことが伺えました。

110 田沼武能 「渡し船の船着き場」 1956年 佃島
こちらは平たい渡し船にぎっしりと人が乗っている様子が撮られた写真です。柵も無いのに縁のギリギリまで立っていて落ちないか心配です。狭い甲板に自転車を乗せたりしている様子はちょっと前のアジアやインドみたいな… 船が都営というのもちょっと驚きでした。


ということで、長くなってきたので今日はこの辺までにしておこうと思います。田沼武能 氏の写真を観ていると、戦後の苦しい時代や復興へのエネルギーなど、当時の空気感が伝わってくるようで、濃密な写真ばかりとなっていました。後半は復興の様子や併設で世田谷の著名人の写真などが並んでいましたので、次回はそちらについてご紹介の予定です。

 →後編はこちら


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