HOME   »  写真  »  【横浜美術館】の案内 (2019年03月前編)

【横浜美術館】の案内 (2019年03月前編)

今日は写真多めです。前回ご紹介した展示を観た後、横浜美術館の常設も観てきました。今回は特別展に合わせて「リズム、反響、ノイズ」というタイトルで抽象画のコレクションを中心に普段見ない作品も多かったので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

DSC03574.jpg

【展覧名】
 リズム、反響、ノイズ

【公式サイト】
 http://yokohama.art.museum/collection/index.html

【会期】2019年1月4日(金)~3月24日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

 ※常設展はフラッシュ禁止などのルールを守れば撮影可能です。
  掲載等に問題があったらすぐに削除しますのでお知らせください。


こちらも結構お客さんがいましたが、概ね快適に鑑賞することができました。
今回の常設は会期があって、ちょうど会期末に行った為すでに展示は終了しています。しかし、今回の常設は4章構成となっていて、まるで特別展のような見事な内容となっていたので是非記事にしておきたいと思いました。今回も常設は撮影可能でしたので写真を使って参ります。
 参考記事:
  横浜美術館の案内 (2018年07月)
  横浜美術館の案内 (2018年04月)


<1 それは100年前にはじまった-抽象の実験>
まずは100年前頃に同時多発的に始まった抽象の黎明期のコーナーです。構成主義やダダイズムなどの作品が並んでいました。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「グラスとライト」
DSC03579.jpg
具象を組み合わせて抽象的な写真を撮ったもの。ロシア・アヴァンギャルドを写真にしたような簡潔さが面白い。
 参考記事:ロトチェンコ+ステパーノワーロシア構成主義のまなざし (東京都庭園美術館)

この辺には他にもロトチェンコの作品がいくつかあり、幾何学的な妙が楽しめる作品ばかりでした。ロトチェンコの写真集が欲しくなるくらいです。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「非具象彫刻」
DSC03586.jpg
まるで工業製品の部品のような彫刻作品。ややレトロさも感じますが、直線を組み合わせた構成の美しさがあります。

パウル・クレー 「攻撃の物質、精神と象徴」
DSC03611.jpg
何となく人間の姿のように見えますが、はっきりとは分かりません。具象と抽象が半々くらいのように見えました。
 参考記事:パウル・クレー おわらないアトリエ (東京国立近代美術館)

ハンス(ジャン)・アルプ 「瓶と巻き髭」
DSC03617.jpg
こちらは厚紙を使った作品。かなり単純化が進んでいますが、確かに瓶っぽい形をしています。流麗なフォルムと明るい色彩が心地良く感じました。

ヴォルス 「無題」
DSC03620_20190404233835a01.jpg
釘とテーブルだと思いますが、抽象そのものと言った雰囲気になっています。アンフォルメルの先駆者とされる画家でもあります。
 参考記事:ヴォルス――路上から宇宙へ (DIC川村記念美術館)

ジョゼフ・コーネル 「オブジェクト ムッシュ・フォットの孫息子による芝居ホテル、毎週日曜日午後」
DSC03634_201904042338373bd.jpg
連続した場面なので、フィルムかな? 子供の動きがちょっとづつ違っています。ジョゼフ・コーネルは箱の中で世界観を表すアーティストで、ちょうどDIC川村記念美術館で開催されている展示を観に行くのを楽しみにしています。

アンリ・マティス 「ダンス」
DSC03637_20190404233838b91.jpg
こちらはパリ市立近代美術館にある壁画と同じ絵柄のエッチング。軽やかで流れるような構成が非常に見事な傑作です。
 参考記事:番外編 フランス旅行 パリ市立近代美術館

マルセル・デュシャン 「アネミック・シネマ」
DSC03639.jpg
マルセル・デュシャンといえば現代アートの先駆けみたいな存在ですが、こうした光学円盤も手がけていました。これは映像でぐるぐる回って吸い込まれるような感覚を覚えます。
 参考記事:マルセル・デュシャンと日本美術 (東京国立博物館 平成館)

マン・レイ 「マルセル・デュシャン」
DSC03642_20190404233841369.jpg
こちらはマン・レイが撮ったマルセル・デュシャンのポートレート。恐らく作品と思われる謎の器具に挟まれて作品と一体化しているような…w 中央の立方体だけ妙に奥行きがあるように見えるのが不思議でした。

マン・レイ 「不滅のオブジェ」
DSC03648_2019040423400561a.jpg
こちらはシュルレアリスムの要素強めの作品。目とメトロノームの組み合わせが何とも奇妙。マン・レイはとんでもない天才で、これが100年近く前の作品とは思えない斬新さがあります。
 参考記事:マン・レイ展 知られざる創作の秘密 (国立新美術館)

エドワード・スタイケン 「マッチとマッチ箱、ニューヨーク」
DSC03652.jpg
まるで火花が飛び散ったかのように置かれたマッチ。完全に止まった世界なのに、勢いを感じさせます。マッチ箱の四角によって幾何学的な面白さも増しているように思えました。

エドワード・スタイケン 「ゴーハムのスターリングシルバー、ニューヨーク」
DSC03654.jpg
こちらは整然と並んだフォークやスプーン。折り重なるようにジグザグに配されているのがリズムを生んで、奇妙な調和を奏でています。これも素晴らしい発想ですね。


<2 ひびきあうかたちと引っ掻かれたかたち-戦後の前衛>
続いては第2次世界大戦後の抽象や前衛芸術に関するコーナー。ここは日本人の作家が多めに並んでいました。

堀不佐夫 「レコードと針」
DSC03661_20190404234010d17.jpg
日本人も構成の妙によって面白い写真を撮っています。タイトル通りレコードと針なのに、ありえないような配置によって別のものに見えてくるのが不思議。

福田勝治 「紙の造形」
DSC03667_20190404234011827.jpg
こちらは紙を丸めたもので顔を表現した作品。1つ1つのパーツを観ると普通の紙なのに、集まると微笑んでいる顔のようです。これも発想が面白い。

本庄光郎 「ヌード」
DSC03673_2019040423401332f.jpg
めちゃくちゃ躍動感あるヌードのポートレート。ちょっと野性味すら感じられるポーズで、力強い。

瑛九 「瑛九氏フォート・デッサン作品集 眠りの理由 より」
DSC03681_20190404234014486.jpg
フォトデッサンの作品で、マン・レイのレイヨグラフに影響を受けて作ったもの。型紙などを使って表現し、幻想的で夢の中のような光景に思えました。
 参考記事:生誕100年記念 瑛九展-夢に託して (うらわ美術館)

ジャスパー・ジョーンズ 「標的」
DSC03689_201904042340162a5.jpg
こちらはジャスパー・ジョーンズの有名作品のシルクスクリーン版。絵というよりは記号のようなものを好んで「描いた」あたりにポップアートの先駆者らしさを感じます。

オノサト・トシノブ 「無題」
DSC03695_20190404234017cd0.jpg
こちらも幾何学的なパターン模様が面白い作品。色の取り合わせなどを含め、構成が見事です。曼荼羅とか宇宙とかを想起します。

田中敦子 「作品 79X」
DSC03706_201904042340198b7.jpg
田中敦子は具体美術協会のメンバーで、恐らくこれは色電飾をモチーフに描いたもの。強烈な色の取り合わせが特徴的で、これは今回の展示でも特に目を引きました。

白髪一雄 「曲流」
DSC03708.jpg
こちらも具体美術協会のメンバーで、恐らくこれは天井からロープを吊るしたのに捕まって足で描いているのではないかと思います。色数は少なめですが、川の水が砕け散るようなダイナミックな画面となっていました。

ウィリアム・クライン 「ブロードウェイと103丁目」
DSC03718_201904042341456b2.jpg
こちらは具象ですが前衛的な作風です。めちゃくちゃ柄の悪い人物がピストルを向けて脅しているのかな。緊迫感があり、特にこの表情の憎たらしさが凄いw 隣の子供が平然としているのもちょっとシュールでした。
 参考記事:写真都市展 -ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち- (21_21 DESIGN SIGHT)


ということで、抽象が苦手な私でも面白さが伝わってくる作品ばかりで、かなり満足できました。後半にも面白い抽象作品や、それ以外の常設などもありましたので、次回はそちらについてご紹介の予定です。
関連記事


記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。

 

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter



Comment
Trackback
Trackback URL
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

21世紀のxxx者

Author:21世紀のxxx者
 
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

関東の方には休日のガイドやデートスポット探し、関東以外の方には東京観光のサイトとしてご覧頂ければと思います。

画像を大きめにしているので、解像度は1280×1024以上が推奨です。

↓ブログランキングです。ぽちっと押して頂けると嬉しいです。





【トラックバック・リンク】
基本的にどちらも大歓迎です。アダルトサイト・商材紹介のみのサイトの方はご遠慮ください。
※TB・コメントは公序良俗を判断した上で断り無く削除することがあります。
※相互リンクに関しては一定以上のお付き合いの上で判断させて頂いております。

【記事・画像について】
当ブログコンテンツからの転載は一切お断り致します。(RSSは問題ありません)

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter

展覧スケジュール
現時点で分かる限り、大きな展示のスケジュールを一覧にしました。

展展会年間スケジュール (1都3県)
検索フォーム
ブログ内検索です。
【○○美術館】 というように館名には【】をつけて検索するとみつかりやすいです。
全記事リスト
カテゴリ
リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
メディア掲載
■2012/1/27
NHK BSプレミアム 熱中スタジアム「博物館ナイト」の収録に参加してきました
  → 詳細

■2011/11/21
海の見える杜美術館の公式紹介サイトに掲載されました
  → 詳細

■2011/9/29
「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
  → 詳細

■2009/10/28
Yahoo!カテゴリーに登録されました
  → 絵画
  → 関東 > 絵画

記事の共有
この記事をツイートする
広告
美術鑑賞のお供
細かい美術品を見るのに非常に重宝しています。
愛機紹介
このブログの写真を撮ってます。上は気合入れてる時のカメラ、下は普段使いのカメラです。
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
19位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
デザイン・アート
4位
アクセスランキングを見る>>
twitter
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

※できるだけコメント欄にお願い致します。(管理人だけに表示機能を活用ください) メールは法人の方で、会社・部署・ドメインなどを確認できる場合のみ返信致します。