ロシアの夢 1917-1937 革命から生活へ-ロシア・アヴァンギャルドのデザイン 【埼玉県立近代美術館】
先日、埼玉県立近代美術館で「ロシアの夢 1917-1937 革命から生活へ-ロシア・アヴァンギャルドのデザイン」を観てきました。
以前このブログでも紹介した、「青春のロシア・アヴァンギャルド展」(文化村やこの美術館で開催していました)や、「無声時代ソビエト映画ポスター展」(東京国立近代美術館フィルムセンター)で観たロシア王朝末期~ソ連時代の独特の雰囲気を久々に観ようと思っていってきました。


【展覧名】
ロシアの夢 1917-1937 革命から生活へ-ロシア・アヴァンギャルドのデザイン
【公式サイト】
http://www.momas.jp/3.htm
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2009年10月10日(土)~2009年12月6日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日12時頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_②_3_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
この日はたまたま500円で入れる日でラッキーでした。しかし、内容が難解な上、解説機が無かったのが辛かったです。作品と社会・政治が密接に関わっているだけに、説明を何度も読み返しても当時のソ連の世相を知らないので、よく分からないで終わった作品も多かったです。完全に西側諸国の流れとは違い、ちょっと無機質な怖さも感じるのは相変らずでした。
いつもどおり、章ごとに気になった作品をご紹介します。
<1章 ぼく自身の革命だ 芸術の革命から政治の革命へ 1913~1917>
1章は未来派による芸術の革命ということで、「スプレマティズム」を確立したカジミール・マレーヴィチのオペラの衣装デザインなどが展示されていました。マレーヴィチに関しては、キュビスムをさらに突き進めたような抽象画を何度か観ているので、いくらか予備知識はありました。
カジミール・マレーヴィチ 「オペラ『太陽の征服』」
1913年に上演されたオペラ『太陽の征服』の衣装です。これはその台本の表紙で、抽象的な(スプレマティズムかな?)絵が描かれていました。何が描いてあるのかさっぱりわからずw しょっぱなから難解です。
カジミール・マレーヴィチ 「オペラ『太陽の征服』衣装デザイン(先住民、新住民、未来の強者、太っちょ)」
三角や四角が多いデザインの衣装のデザインです。隣ではこの衣装を着て実際に上演している再現映像(日本語で再現)を観ることができました。とりあえず、全然オペラって感じじゃないw たまに歌いだして、歌もミュージカルっぽいかな。衣装デザイン通りの太っちょの男などが出ているのは分かりましたが、内容の意味はまったく分からなかったw これが始めて上演された時、会場では驚きと怒号が飛び交ったそうです。そりゃそうだろうなあ…。
<2章 広場はぼくらのパレット 芸術とプロパガンダ 1917~1921>
この章はロシア革命によって誕生した新政府の国策宣伝に使われた芸術を紹介していました。国民の70%が文盲だったらしく絵を使うのが有効だったそうです。
ナターリヤ・ダニコ 「チェス駒 <赤と白>」 ★こちらで観られます
チェスの駒で、赤い駒が赤軍(革命政府)、白い駒が白軍(ロマノフ朝)を表しています。赤駒は労働者や農民の理想像といった雰囲気で、白駒は王の奴隷として表現されていて、ポーンは鎖に縛られ、王の顔は骸骨でした。非常に分かりやすいプロパガンダで面白いです。
ウラジーミル・レーベジェフ 「働きたまえ、恐れることはない、君のライフルはすぐ近くにある」
直線と円で幾何学的に単純化された人が、のこぎりのような物を持ち、下にあるライフルらしきものを加工しようと前かがみになっています。労働をテーマにしつつも先進的な表現で、まだこの辺は芸術的な側面を感じる時代です。
ウラジーミル・タトリン 「第三インターナショナル記念塔」(映像製作 長倉威彦)
CGで記念塔のデザインを映像にしたものです。実際に作られたらこうだったというのを当時の街の映像と混ぜたもので、本当にこういうものがあったのかと思うくらいリアルなCGでした。この鉄塔は高さ400mでらせん状のレールがまきついたピラミッドのような形で、立方体のブロックが年に1回転、ピラミッド部分が月に1回点、円塔部分が1日1回転、半球部分が1時間に1回転 という計画だったようです。まあ、無理だろ!という計画ですねw CGどおりに出来ていたら、ちょっと異様な未来風建築になったように思います。
<3章 生活建設の旗印のもとに ネップ(新経済政策)の時代 1921~1928>
ロシア革命後、しばらくすると内戦と飢饉から立て直すために1921年に「ネップ」という市場経済が一部導入されました。革命の理想から遠ざかり、左翼芸術家は芸術で大衆を扇動しようと「生活の芸術建設」を呼びかけたそうです。ここではそういった生活の品々が展示されていました。
ミハイル・アダモヴィチ 「皿 <働かざる者食うべからず>」
初期ソ連のスローガンで、日本でもよく知られてるんじゃないかと。皿に食糧配給のチケットやレーニンの横顔、赤い★などが描かれています。カラフルな感じですが、全体主義的な雰囲気で怖い…。隣にはキュビスムの絵に出てきそうな奇妙な形のカップなども展示されていて、そっちは面白かったかな。
アレクサンドル・ロトチェンコ 「映画 <戦艦ポチョムキン>」
2枚セットのポスター。右は戦艦の砲台で何かの作業をしている人。左は反乱を起こした船員が生みに上官を突き落としているシーンです。隣で実際の映画が上映されていて、上官を突き落とすシーンや牧師に暴行をしているシーンが流れていました。どういう映画で何故そういうシーンなのか分からなかった…。説明がもっとほしいところでした。
ウラジーミル・マヤコフスキー、ヴァルヴァーラ・ステパーノヴァ 「『アカトウガラシ』の購読者だけが心から笑えるのです」 ★こちらで観られます
今回のポスターになっている作品です。幾何学的な人の形の頭の部分に読者の笑顔が描かれています。この『アカトウガラシ』は滑稽本らしいです。この幾何学的なところはロシアアヴァンギャルドっぽい気がします。
アレクサンドル・ロトチェンコ 「労働者クラブのチェステーブル&チェアとチェス盤」
赤い椅子、赤と黒のチェス盤、黒い椅子の3つが一体化しているテーブルで、当時のデザイン画を実際につくってみたものらしいです。直線と三角の組み合わさったシンプルだけれども未来的なデザインでした。
アレクサンドル・ロトチェンコ(デザイン) 「労働者クラブの読書テーブル&チェア」
半円と直線を組み合わせたデザインの椅子で、実際に坐れました。肘掛が肩の高さまできてキツイかな。これじゃ実用的じゃないなと思ったら、実際に使われていた写真も展示されていました。
エリザヴェータ・ヤクーニナ 「『オクタヴィアン』衣装」
舞台の衣装です。紫の上着に円形に広がるスカートです。傘の骨組みたいなスカートで一部にしか布がないのが斬新でした。他にもこのあたりには奇抜な舞台衣装が多くありました。
アルトゥール・リャンツベルグ 「『医者』衣装デザイン」
色々と狂った感じがする衣装デザインw 青い頭に円い眼鏡をかけ、耳に注射器を挟む医者が描かれていて、右手には点滴を持ち白と黒と謎のデザインで埋め尽くされた服を着ていました。医者に何か嫌な目にあったのかな?毒々しい雰囲気でした。他にも左右に似た雰囲気の謎のデザイン画がありました。
ヨシフ・ラングバルト 「レニングラードのフィンランド駅のレーニン像プロジェクト」
天に握手を求めるように手を差し伸べるレーニンの像を描いた絵です。レーニンだけ薄い赤で描かれていて目立ちます。周りにはキュビスム風の黒い家が描かれ、絵の右上にはソ連のマークである鎌と槌が描かれていました。そこに光り輝くような斜線が放出されてて強調されていました。非常に政治的な意味合いが強まって、段々と芸術って感じじゃなくなってきた気がしました。
イヴァン・レオニドフ(設計) Y.ヴォルチョク(研究) 「モスクワ・レーニン丘(ヴァラビョーヴィ丘)のレーニン図書館学研究所」
球体とビルと橋が組み合わさったような研究所のデザインを、実際に置かれる予定だった場所にCGで合成したものです。、近未来的でこういう科学博物館とかありそう。こういう幾何学的なのはソ連時代でも面白いです。
<4章 社会主義リアリズムに向けて 五ヵ年計画の時代 1928~1937>
先ほどの「ネップ」と社会主義の矛盾が広がった中、1929年にスターリンは「五ヵ年計画」の導入を決めて実施しました。コルホーズによる農業の集団化や重工業国への転換を図り、そこでまたプロパガンダとして芸術を使ったそうです。しかし、1932年に全ての芸術団体の解散を命令し、代わりに作られたソ連作家同盟は「社会主義リアリズム」を唯一の規範として、それまでのアバンギャルドは批判されるようになりました。さらにこの年には粛清(処刑)の嵐が吹き荒れ、それまでの主な芸術家の何名かも粛清されて消えていったそうです・・・。
五カ年計画にコルホーズ、中学校で習った懐かしい単語が並びましたが、実に恐ろしい時代ですね。作品もつまらないものが多かったw
グスタフ・クルツィス 「五ヵ年計画を4年で達成しよう」
写真のコラージュでできた縦長のポスター。赤地に角度の異なるクレーンが3つ画面を分割し、下のほうには群集が点のようになっています。デザイン的には好みかな。この辺の作品は否応無しに政治色が強いです。
ウラジーミル & ゲオルギー・ステンベルグ 「映画『カメラを持った男』」
以前、「無声時代ソビエト映画ポスター展」(東京国立近代美術館フィルムセンター)のポスターだった作品。こういう作品だったら面白いんですが、そんな多くないみたい。
参考:以前撮った、「無声時代ソビエト映画ポスター展」の告知ポスター

タチヤナ・ブルーニ 「女子共産青年同盟員 衣装デザイン」
1章のマレーヴィチの絵みたいな、赤と白の服。すごく我々と共産主義文化との隔たりを感じる服でした。
この辺にはソヴィエト・テキスタイルというスプレマティズムのデザインによる布が展示されていました。絵では意味不明でも服に使うとお洒落な感じ!w
ヤーコフ・チェルニホフ 「建設ファンタジー 101のカラー・コンポジション、101の建設小図」
最後は映画のポスターとか建築のデザインのコーナーでした。斬新で未来的なデザイン画が一面に張られていました。
ということで、1~2章あたりは先進的な感じもしましたが、3~4章は全体主義的な恐ろしさや非人間性も感じるセンスで、よく知っている芸術体系とは完全に別世界の政治色の強い雰囲気でした。たまに観る分には面白いけど、こういう文化になったら味気ないでしょうね。
この後、常設も観ていきました。次回は常設と外の彫刻作品をご紹介します。
以前このブログでも紹介した、「青春のロシア・アヴァンギャルド展」(文化村やこの美術館で開催していました)や、「無声時代ソビエト映画ポスター展」(東京国立近代美術館フィルムセンター)で観たロシア王朝末期~ソ連時代の独特の雰囲気を久々に観ようと思っていってきました。



【展覧名】
ロシアの夢 1917-1937 革命から生活へ-ロシア・アヴァンギャルドのデザイン
【公式サイト】
http://www.momas.jp/3.htm
【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2009年10月10日(土)~2009年12月6日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日12時頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_③_4_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_②_3_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
この日はたまたま500円で入れる日でラッキーでした。しかし、内容が難解な上、解説機が無かったのが辛かったです。作品と社会・政治が密接に関わっているだけに、説明を何度も読み返しても当時のソ連の世相を知らないので、よく分からないで終わった作品も多かったです。完全に西側諸国の流れとは違い、ちょっと無機質な怖さも感じるのは相変らずでした。
いつもどおり、章ごとに気になった作品をご紹介します。
<1章 ぼく自身の革命だ 芸術の革命から政治の革命へ 1913~1917>
1章は未来派による芸術の革命ということで、「スプレマティズム」を確立したカジミール・マレーヴィチのオペラの衣装デザインなどが展示されていました。マレーヴィチに関しては、キュビスムをさらに突き進めたような抽象画を何度か観ているので、いくらか予備知識はありました。
カジミール・マレーヴィチ 「オペラ『太陽の征服』」
1913年に上演されたオペラ『太陽の征服』の衣装です。これはその台本の表紙で、抽象的な(スプレマティズムかな?)絵が描かれていました。何が描いてあるのかさっぱりわからずw しょっぱなから難解です。
カジミール・マレーヴィチ 「オペラ『太陽の征服』衣装デザイン(先住民、新住民、未来の強者、太っちょ)」
三角や四角が多いデザインの衣装のデザインです。隣ではこの衣装を着て実際に上演している再現映像(日本語で再現)を観ることができました。とりあえず、全然オペラって感じじゃないw たまに歌いだして、歌もミュージカルっぽいかな。衣装デザイン通りの太っちょの男などが出ているのは分かりましたが、内容の意味はまったく分からなかったw これが始めて上演された時、会場では驚きと怒号が飛び交ったそうです。そりゃそうだろうなあ…。
<2章 広場はぼくらのパレット 芸術とプロパガンダ 1917~1921>
この章はロシア革命によって誕生した新政府の国策宣伝に使われた芸術を紹介していました。国民の70%が文盲だったらしく絵を使うのが有効だったそうです。
ナターリヤ・ダニコ 「チェス駒 <赤と白>」 ★こちらで観られます
チェスの駒で、赤い駒が赤軍(革命政府)、白い駒が白軍(ロマノフ朝)を表しています。赤駒は労働者や農民の理想像といった雰囲気で、白駒は王の奴隷として表現されていて、ポーンは鎖に縛られ、王の顔は骸骨でした。非常に分かりやすいプロパガンダで面白いです。
ウラジーミル・レーベジェフ 「働きたまえ、恐れることはない、君のライフルはすぐ近くにある」
直線と円で幾何学的に単純化された人が、のこぎりのような物を持ち、下にあるライフルらしきものを加工しようと前かがみになっています。労働をテーマにしつつも先進的な表現で、まだこの辺は芸術的な側面を感じる時代です。
ウラジーミル・タトリン 「第三インターナショナル記念塔」(映像製作 長倉威彦)
CGで記念塔のデザインを映像にしたものです。実際に作られたらこうだったというのを当時の街の映像と混ぜたもので、本当にこういうものがあったのかと思うくらいリアルなCGでした。この鉄塔は高さ400mでらせん状のレールがまきついたピラミッドのような形で、立方体のブロックが年に1回転、ピラミッド部分が月に1回点、円塔部分が1日1回転、半球部分が1時間に1回転 という計画だったようです。まあ、無理だろ!という計画ですねw CGどおりに出来ていたら、ちょっと異様な未来風建築になったように思います。
<3章 生活建設の旗印のもとに ネップ(新経済政策)の時代 1921~1928>
ロシア革命後、しばらくすると内戦と飢饉から立て直すために1921年に「ネップ」という市場経済が一部導入されました。革命の理想から遠ざかり、左翼芸術家は芸術で大衆を扇動しようと「生活の芸術建設」を呼びかけたそうです。ここではそういった生活の品々が展示されていました。
ミハイル・アダモヴィチ 「皿 <働かざる者食うべからず>」
初期ソ連のスローガンで、日本でもよく知られてるんじゃないかと。皿に食糧配給のチケットやレーニンの横顔、赤い★などが描かれています。カラフルな感じですが、全体主義的な雰囲気で怖い…。隣にはキュビスムの絵に出てきそうな奇妙な形のカップなども展示されていて、そっちは面白かったかな。
アレクサンドル・ロトチェンコ 「映画 <戦艦ポチョムキン>」
2枚セットのポスター。右は戦艦の砲台で何かの作業をしている人。左は反乱を起こした船員が生みに上官を突き落としているシーンです。隣で実際の映画が上映されていて、上官を突き落とすシーンや牧師に暴行をしているシーンが流れていました。どういう映画で何故そういうシーンなのか分からなかった…。説明がもっとほしいところでした。
ウラジーミル・マヤコフスキー、ヴァルヴァーラ・ステパーノヴァ 「『アカトウガラシ』の購読者だけが心から笑えるのです」 ★こちらで観られます
今回のポスターになっている作品です。幾何学的な人の形の頭の部分に読者の笑顔が描かれています。この『アカトウガラシ』は滑稽本らしいです。この幾何学的なところはロシアアヴァンギャルドっぽい気がします。
アレクサンドル・ロトチェンコ 「労働者クラブのチェステーブル&チェアとチェス盤」
赤い椅子、赤と黒のチェス盤、黒い椅子の3つが一体化しているテーブルで、当時のデザイン画を実際につくってみたものらしいです。直線と三角の組み合わさったシンプルだけれども未来的なデザインでした。
アレクサンドル・ロトチェンコ(デザイン) 「労働者クラブの読書テーブル&チェア」
半円と直線を組み合わせたデザインの椅子で、実際に坐れました。肘掛が肩の高さまできてキツイかな。これじゃ実用的じゃないなと思ったら、実際に使われていた写真も展示されていました。
エリザヴェータ・ヤクーニナ 「『オクタヴィアン』衣装」
舞台の衣装です。紫の上着に円形に広がるスカートです。傘の骨組みたいなスカートで一部にしか布がないのが斬新でした。他にもこのあたりには奇抜な舞台衣装が多くありました。
アルトゥール・リャンツベルグ 「『医者』衣装デザイン」
色々と狂った感じがする衣装デザインw 青い頭に円い眼鏡をかけ、耳に注射器を挟む医者が描かれていて、右手には点滴を持ち白と黒と謎のデザインで埋め尽くされた服を着ていました。医者に何か嫌な目にあったのかな?毒々しい雰囲気でした。他にも左右に似た雰囲気の謎のデザイン画がありました。
ヨシフ・ラングバルト 「レニングラードのフィンランド駅のレーニン像プロジェクト」
天に握手を求めるように手を差し伸べるレーニンの像を描いた絵です。レーニンだけ薄い赤で描かれていて目立ちます。周りにはキュビスム風の黒い家が描かれ、絵の右上にはソ連のマークである鎌と槌が描かれていました。そこに光り輝くような斜線が放出されてて強調されていました。非常に政治的な意味合いが強まって、段々と芸術って感じじゃなくなってきた気がしました。
イヴァン・レオニドフ(設計) Y.ヴォルチョク(研究) 「モスクワ・レーニン丘(ヴァラビョーヴィ丘)のレーニン図書館学研究所」
球体とビルと橋が組み合わさったような研究所のデザインを、実際に置かれる予定だった場所にCGで合成したものです。、近未来的でこういう科学博物館とかありそう。こういう幾何学的なのはソ連時代でも面白いです。
<4章 社会主義リアリズムに向けて 五ヵ年計画の時代 1928~1937>
先ほどの「ネップ」と社会主義の矛盾が広がった中、1929年にスターリンは「五ヵ年計画」の導入を決めて実施しました。コルホーズによる農業の集団化や重工業国への転換を図り、そこでまたプロパガンダとして芸術を使ったそうです。しかし、1932年に全ての芸術団体の解散を命令し、代わりに作られたソ連作家同盟は「社会主義リアリズム」を唯一の規範として、それまでのアバンギャルドは批判されるようになりました。さらにこの年には粛清(処刑)の嵐が吹き荒れ、それまでの主な芸術家の何名かも粛清されて消えていったそうです・・・。
五カ年計画にコルホーズ、中学校で習った懐かしい単語が並びましたが、実に恐ろしい時代ですね。
グスタフ・クルツィス 「五ヵ年計画を4年で達成しよう」
写真のコラージュでできた縦長のポスター。赤地に角度の異なるクレーンが3つ画面を分割し、下のほうには群集が点のようになっています。デザイン的には好みかな。この辺の作品は否応無しに政治色が強いです。
ウラジーミル & ゲオルギー・ステンベルグ 「映画『カメラを持った男』」
以前、「無声時代ソビエト映画ポスター展」(東京国立近代美術館フィルムセンター)のポスターだった作品。こういう作品だったら面白いんですが、そんな多くないみたい。
参考:以前撮った、「無声時代ソビエト映画ポスター展」の告知ポスター

タチヤナ・ブルーニ 「女子共産青年同盟員 衣装デザイン」
1章のマレーヴィチの絵みたいな、赤と白の服。すごく我々と共産主義文化との隔たりを感じる服でした。
この辺にはソヴィエト・テキスタイルというスプレマティズムのデザインによる布が展示されていました。絵では意味不明でも服に使うとお洒落な感じ!w
ヤーコフ・チェルニホフ 「建設ファンタジー 101のカラー・コンポジション、101の建設小図」
最後は映画のポスターとか建築のデザインのコーナーでした。斬新で未来的なデザイン画が一面に張られていました。
ということで、1~2章あたりは先進的な感じもしましたが、3~4章は全体主義的な恐ろしさや非人間性も感じるセンスで、よく知っている芸術体系とは完全に別世界の政治色の強い雰囲気でした。たまに観る分には面白いけど、こういう文化になったら味気ないでしょうね。
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Author:21世紀のxxx者
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。
関東の方には休日のガイドやデートスポット探し、関東以外の方には東京観光のサイトとしてご覧頂ければと思います。
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展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2022年01月号】 (01/01)
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2021年の振り返り (12/31)
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ヘラルボニー/ゼロからはじまる 【BAG-Brillia Art Gallery】 (12/29)
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映画「キングスマン:ファースト・エージェント」(ややネタバレあり) (12/27)
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横溝美由紀「Landscape やわらかな地平のその先に」 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】 (12/26)
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第15回 shiseido art egg 【資生堂ギャラリー】 (12/23)
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映画「マトリックス レザレクションズ」(ややネタバレあり) (12/21)
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ブダペスト国立工芸美術館名品展 ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ 【パナソニック汐留美術館】 (12/19)
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- 21世紀のxxx者:奇蹟の芸術都市バルセロナ (感想前編)【東京ステーションギャラリー】 (01/03)
- うさぴょん:キヨノサチコ絵本原画の世界 みんな大好き!ノンタン展 【松屋銀座】 (03/21)
- 21世紀のxxx者:川豊 【成田界隈のお店】 (03/04)
- 21世紀のxxx者:劇団四季 「MAMMA MIA!(マンマ・ミーア!)」 (03/04)
- 萌音:川豊 【成田界隈のお店】 (03/03)
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