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府中市美術館コレクション名作選 【府中市美術館】

前回ご紹介した府中市美術館の「へそまがり日本美術」を観た後、常設展も観てきました。今回の常設は「府中市美術館コレクション名作選」とタイトルが付いていて選りすぐりの作品が集まっていました。

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【展覧名】
 府中市美術館コレクション名作選

【公式サイト】
 https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/jyosetu/ichiran/h30.html

【会場】府中市美術館
【最寄】京王府中駅

【会期】2019年3月16日(土)~5月5日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
特別展は凄い混みようだったのに、こちらは空いていて快適に観ることができました。特別展のチケットで観ることが出来るのに観ない人が多いのかな? 何とも勿体ない…。

さて、今回の常設は名作選ということで、府中市美術館が誇るコレクションの中から時代ごとに傑作を紹介するという内容となっていました。府中市美術館は改修明けなのでどう変わったのか?と思ったらルートが逆周りになったのと牛島憲之室の一部が変わったくらいで 思ったほど大きな変化は無いように思えます。(気がついてないだけかもしれませんが) いくつかのコーナーに分かれていましたので、各コーナーごとに気に入った作品と共に振り返ってみようと思います。


<府中市美術館コレクション名作選>
まずは常設の名作選のコーナーです。ここは時代ごとに節に分かれていました

椿貞雄 「泰山木花」
こちらは壺に入った大輪の白い花(泰山木)を描いた作品です。厚塗りで白の中にも黄色や赤も混じっていて濃密な色合いとなっています。葉っぱも黒みがかっているなど重厚さが出ていて、どっしりとした雰囲気です。師であり仲間である岸田劉生との共通性も感じられる作品でした。

宮本十久一 「夕凪」
こちらは掛け軸で、大正の頃の町並みと水路を背景に白い馬車馬が静かに佇んでいる様子が描かれています。背景の建物は水平・垂直を多用した構成で規則正しく並んでいて、護岸の石垣と共に整然とした美しさがあります。また、淡い色合いが夕暮の情感と静寂を感じさせ、白い馬が浮かびあがるように見えました。

[明治洋画の黎明]
川村清雄 「ベネチア風景」
こちらは小さめの画面に黒いゴンドラとその船頭、背景には白い壁の建物や行き交う人々などベネチアの水辺の情景が描かれています。写生的ながらも情感溢れていて、観ているだけで旅情を誘われました。川村清雄の高い技量も感じさせる作品です。
 参考記事:維新の洋画家 川村清雄 感想前編(江戸東京博物館)

ラファエル・コラン 「フロレアル」
こちらは水辺の草むらで横たわる裸婦を描いた作品です。右手を顔に当ててこちらを観ていて、滑らかな色合いと共に幻想的で清らかな雰囲気の女性です。ややぼんやりした筆致なのもそう感じさせるのかも。裸体の白さも印象的な作品です。東京藝術大学の所蔵品とよく似てるけどバリエーションなのかな?

近くにはコランの弟子で日本近代絵画の父とも言える黒田清輝の作品もありました。

[風景を描く]
アルフレッド・イースト 「富士山」
こちらは海の対岸に富士山が見えている構図で、手前の海面すれすれを無数の鶴が舞い飛んでいます。富士山の左には雲がかかり、右側は明るく光っていて、頂上付近はピンクがかっているなど神々しく雄大な雰囲気です。色は淡めでやや幻想的ですらあり、日本の美しさを凝縮したような作品となっていました。

青木繁 「少女群像」
こちらは3人の女性が輪になって踊っている様子を描いた作品です。3人とも左から右へと髪や衣が流れるようで動きを感じます。表情は分かりませんが古代風の衣装ということもあって、神話の世界のような象徴的で不思議な光景となっていました。

[昭和戦前期の絵画]
有島生馬 「三姉妹」
こちらは海が遠くに見える海岸で遊ぶ3人の少女を描いた作品です。1人はY字の木の幹に座り、1人は地べたで足を横にして座り、もう1人は立って目の前の犬の方に手を差し出すようなポーズをしています。3人とも顔は描かれておらずお互いに無関心なのがちょっとシュールに思えます。明るい色彩なのに夢の中の光景のように思えました。

長谷川利行 「カフェの入口」
こちらは長い線状の筆致を使ってカフェの入口を描いた作品です。観葉植物やドアっぽいものがあるようですが、かなり粗いタッチで判別するのは中々に困難です。激しくもあり即興的でもあり、長谷川利行の作風そのものといった感じの作品でした。
 参考記事:長谷川利行展 七色の東京 (府中市美術館)

[戦後のリアリズム絵画]
瑛九 「真昼」
こちらは抽象画で、青・赤・オレンジ・黄色などの斑点が放射状に並んでいるように見える作品です。タイトルの意味は分かりませんが、ほとばしるエネルギーのようなものを感じるので、昼をイメージしているのかな? 色の取り合わせが面白くクレーなどを彷彿とさせました。
 参考記事:生誕100年記念 瑛九展-夢に託して (うらわ美術館)

岡本太郎 「コンポジション」
こちらは黒く太い輪郭線で5つくらいの目玉と顔のようなものを描いた半具象・半抽象の作品です。赤・黄色・オレンジなどの色がぶつかり合って不協和音のエネルギーが生まれ、強烈な色彩感覚となっています。全体的に暗めで不穏な雰囲気もありました。
 参考記事:生誕100年 岡本太郎展 (東京国立近代美術館)

[多摩の風景]
児島善三郎 「水温む」
こちらはやや高いところから多摩の畑を見渡すような風景画です。土の部分多く、遠くには森や作業小屋らしきものがあり、手前に小川も流れています。描写も風景も素朴で長閑な光景に見えるかな。茶色が多いので温かみが感じられました。

[1960年代 前衛の挑戦]
ここは2点のみでした

磯辺行久 「モニュメント7」
キャンバスに大理石の粉を盛り上げて作ったその名の通りモニュメント的な作品で、緑色に塗られた門のように見えます。重厚で立体感があり、もはや絵画の枠を飛び出たような斬新な表現となっていました。

[昭和の人 幻想 小山田二郎と相笠昌義]
ここも2点のみでした。

相笠昌義 「橘果を持つ女」
こちらは飾り皿のかかる室内を背景に、真横を向いた現代女性が枝付きの緑の果実(橘果?)を差し出す様子が描かれた作品です。構図としてはルネサンス期のプロフィールのような真横からの顔ですが、表情は微笑みを浮かべていてアルカイックスマイルのような取り合わせなのが面白いです。写実的なのに神秘的な雰囲気もあって、不思議な静けさを感じました。

[開館後の美術活動と共に 平成の絵画]
こちらは府中市美術館の公開制作などで作られた作品が並んでいました。

曽谷朝絵 「Door」
こちらは浴室のドアを描いた作品で、全体的に虹色がかった画面となっています。淡く柔らかい色彩で、ドアの向こうからの優しい光を感じるかな。穏やかだけど楽しげで心弾むような画風となっていました。


<やわらかな牛島憲之の世界>
こちらは改修前と同じく牛島憲之に関する品が並ぶコーナーです。しかし牛島憲之のアトリエが無くなっていて、大部屋は牛島憲之以外の作品が並ぶ(次の章)など、ちょっと牛島憲之のコーナーが減ったように思えます。今季だけなのか、次からもそうなのかは今の所わかりません。


<海と空の風景>
こちらは元々は牛島憲之の作品が並んでいた大部屋。勿論ここにも牛島憲之の作品もありますが、今回はそれ以外の画家の作品も並んでいました。

和田英作 「三保の松原」
こちらは曇天の下の松林を描いた作品です。普通、このタイトルなら三保の松原から観た富士山でも描くところですが、砂地の松を描いた寒々しい絵となっていますw ガランとして寂しげな光景で、ある意味リアルな海岸の光景になっているように思えました

正宗得三郎 「白波の波」
こちらは手前に崖に生える松、奥に白波が押し寄せる砂浜が描かれています。紺碧の海と赤茶色の浜や山々の色の対比が強く感じられるかな。真っ白な波が幾重にも並んでいて、海が荒れているように思えました。


ということで、有名画家の典型的な作風の作品がいくつもあって、予想以上に満足できる内容でした。この美術館の美味しいところを集めた展示ですので、「へそまがり日本美術」を観に行く際には是非こちらも観ることをオススメします。
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