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両陛下と文化交流―日本美を伝える― 【東京国立博物館 本館】

前回に引き続き東京国立博物館についてです。東京国立博物館の本館で「両陛下と文化交流―日本美を伝える―」という展示を観てきました。こちらは前期・後期に会期が分かれていて、私が観たのは後期の内容となっていました。

DSC05145.jpg

【展覧名】
 特別展 御即位30年記念「両陛下と文化交流―日本美を伝える―」

【公式サイト】
 https://tsumugu-exhibition2019.jp/culturalexchange/index.html
 https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1943

【会場】東京国立博物館 本館
【最寄】上野駅

【会期】2019年3月5日(火)~ 4月29日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
思ったより空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は天皇陛下 御即位30年に合わせて天皇皇后両陛下が担われた文化交流について紹介する内容となっています。本館1階の階段裏にある特別4室とミュージアムショップ裏の特別5室で開催されていて、点数もリスト上で20点に満たない程度ですが別料金で音声ガイドも用意されていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<プロローグ 御即位>
まずは御即位された頃に関するコーナーです。1989年1月8日に平成の御代が始まったわけですが、即位の礼、大嘗祭、大饗の儀などの一連の儀式は昭和天皇の喪が明けた翌年以降に行われました。ここでは大饗の儀(だいきょうのぎ)の為に作られた2点の屏風を会期別に1点ずつ展示していました。

東山魁夷(悠紀)・高山辰雄(主基)「悠紀・主基地方風俗歌屏風」 ★こちらで観られます
こちらは六曲二双の屏風で、私が観た時は高山辰雄(主基)の一双のみ展示されていました。いずれも大饗の儀の際に両陛下の御座の左右に飾られた屏風で、悠紀地方・主基地方というのは大嘗祭で神に供えるための新穀を献上する地域です。明治以降は悠紀地方は京都以東の斎田、主基地方は西の斎田が選ばれるようになったそうで、平成の際の主基地方は大分県が選ばれました。
かなり大きな画面に青い雲がたなびき、右から左へと季節が変わっていくようで右隻は春夏・左隻は秋冬の場面となっています。右隻にはビルや工場が建ち並び、車が行き交う様子など現代的な光景なども混じっているのが面白く、他は大分の景勝地のようです。やや風化したような色彩で落ち着いて雅な雰囲気がありました。
 参考記事:人間・髙山辰雄展――森羅万象への道 (世田谷美術館)

この近くには当時の両陛下の装束の写真や儀式の写真などもありました。


<外国ご訪問と文化交流>
続いては両陛下の外国訪問と文化交流についてのコーナーです。陛下は即位後に28ヶ国(皇太子時代を含むと51ヶ国)に公式訪問されているそうで、ここでは特に平成10年(1998年)のイギリス、平成19年(2007年)のノルウェー、平成21年(2009年)のカナダ訪問の折に紹介された日本美術の優品と、皇后陛下の養蚕をテーマにしたパリでの展覧会(平成26年 2014年)で紹介された品などが並んでいました。

酒井抱一 「花鳥十二ヶ月図」 ★こちらで観られます
こちらはカナダご訪問の際に紹介された12幅対の掛け軸で、1幅に1ヶ月ずつその月に合わせた花鳥や禽獣が描かれています。1幅1幅どれを取っても素晴らしい作品ばかりで、いずれも伸びやかな動きを感じさせる画面構成となっています。写実性もありながら 滲みを使った「たらし込み」が使われるなど風情溢れる表現となっていて、これぞ酒井抱一と言った江戸琳派の典型と言える作品だと思います。特に燕子花や朝顔などが好みで、生き物たちも伸び伸びとした姿となっていました。
正直、この作品を目当てにこの展示を見に行った感じですw

「塩山蒔絵十種香道具」
こちらもカナダご訪問の際に紹介された金の蒔絵箱で、組香(香木を聞き分ける遊び)に使う道具類とセットで展示されていました。古今和歌集の「しほの山 さしでの磯に すむ千鳥 君が御代をば 八千代とぞ鳴く」という歌に取材しているそうで、細密で優美な紋様が見事です。1つ1つの道具にまで雅が感じられる逸品でした。

岩佐又兵衛 「小栗判官絵巻」 ★こちらで観られます
こちらはイギリス・ノルウェーで紹介された作品で、小栗判官と照手姫の波乱万丈の恋愛物語を描いた全15巻もある大作です。照手姫との出会い、照手姫の父による小栗判官の毒殺、小栗判官の復活、照手姫との再会、2人が没して神として祀られる といったシーンがあるようで、全部合わせると320mにも及ぶのだとか。私が観たときは巻15のクライマックスシーンで、天上世界と思われる所で仏や明王に囲まれて往生する小栗判官が描かれていました。(その後に地上で神社を作っている人々も描かれています) 極彩色が鮮やかで緻密な描写となっていて、異様なまでの迫力があります。もちろん大和絵っぽさもあって、非常に見事な絵巻でした。


<皇后陛下とご養蚕>
続いては皇后陛下のご養蚕に関するコーナーです。明治の頃、日本の主要産業だった絹の生産を奨励するために明治天皇の皇后である昭憲皇太后が宮中で養蚕を始めたのが始まりだそうで、昭和後半に急速に養蚕が衰退しても連綿と続けられているようです。中でも皇后陛下は小石丸という純国産の貴重な蚕種を守り育てられたことで、その糸が正倉院古代裂の復元や、鎌倉時代の絵巻修復事業に寄与するなどご養蚕で功績を残されているようです。また、ここでは皇室ゆかりの絹の衣装も紹介されていました。

「黒紅綸子地吉祥文様振袖」
こちらはフランスで展示された(平成の御代の)今上天皇が幼少期に着たお祝い用の振り袖です。鶴が舞い飛び、海の岩場に亀が乗っている様子が刺繍されていて、おめでたい吉祥紋様となっています。黒をベースにしているので鮮やかな色合いにも見えます。これを着たのは3歳の頃らしく結構小さいのが可愛らしい。当時の写真も残っていて、凛々しい雰囲気となっていました。

「イヴニングドレス」 ★こちらで観られます
こちらは平成10年(1998年)にデンマーク、平成12年(2000年)にスウェーデンをご訪問された際にお召になったドレスで、花模様が散らされた気品ある趣となっています。この紋様は佐賀錦によって表されているそうで、経糸に金箔系、緯糸に絹糸を用いてマーガレットと百合を表しています。そのためか花がキラキラと輝くように見えて、落ち着きの中に華やかさがありました。

この近くには香を焚きしめる道具などもあって興味深い品でした。


<第二会場>
最後はボンボニエールと呼ばれる小さな菓子器と、両陛下の文化交流に関する写真のコーナーです。ボンボニエールは折々の記念に作られるもので、ここには3つのケースに系統ごとに分かれて展示されていました。最初のケース(両陛下御記念のボンボニエール)は円形の銀色のボンボニエールが多く、いくつか多角形のもあるかな。いずれも天皇陛下の印の桐や、皇后陛下の印の白樺が表され、小さな菊の御紋が金色に輝いていました。(★こちらで観られます

次のケース(「着袴の儀」のボンボニエール)で面白かったのが昭和8年の皇太子(今上天皇)の誕生記念のボンボニエールで、犬の形をしていて非常に可愛らしいです。他にもこのケースには扇や碁盤などの形もあり、意匠を楽しめました。

3つ目のケースはさらにバラエティ豊かで舟や兎、鳥かごのようなボンボニエールなどもあって ちょっと根付みたいな遊び心がありました。これは食玩で出たら集めたくなりそうw

この部屋の壁には写真があり、東博や三の丸尚蔵館に訪れたときの写真もありました。2008年の大琳派展、2009年の皇室の名宝展、2011年の幻の室内装飾展(三の丸尚蔵館)、2012年の北京故宮博物院展などで、実は私も皇后陛下を2回くらい目撃しています。多分、琳派展の時か名宝展の時だと思いますが閉館間際にSPに囲まれて周りに手を振りながら会場に来る姿を思い出しました。
 参考記事:皇室の名宝―日本美の華 <1期> 感想前編(東京国立博物館 平成館)

ということで、それほど点数は多くなく特別展というほどの規模でもなかったように思いますが、美術品と共に両陛下の歩みなども知ることができました。既に会期末となっていますので気になる方はすぐにでもどうぞ。この展示が終わると間もなく令和の時代に突入です。

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