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国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅 (感想前編)【東京国立博物館 平成館】

前々回ご紹介した展示を観る前に東京国立博物館の平成館で「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」を観てきました。非常に見応えのある内容でしたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。なお、この展示には細かい会期があって、私が観たのは2019/4/19時点の内容となります。

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【展覧名】
 特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」

【公式サイト】
 https://toji2019.jp/
 https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1938

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅

【会期】2019年3月26日(火) ~ 2019年6月2日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
金曜の午後でしたが結構お客さんがいて、場所によっては人だかりができていました。

さて、この展示は京都にある東寺(教王護国寺)と共に空海がもたらした真言密教について、仏教美術と共に紹介する内容となっています。後半に今回の目玉である仏像が並んでいて、前半はそれ以外の仏教美術や資料的な作品が中心となっています。2011年にこの会場で「空海と密教美術」という展示をやっていましたが、その時と割と中身は似ていて 東寺に関する部分にクローズアップしたような感じでした。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
 参考記事:
  空海と密教美術 感想前編(東京国立博物館 平成館)
  空海と密教美術 感想後編(東京国立博物館 平成館)
  番外編 教王護国寺 (東寺)の写真 【京都】


<第1章 空海と後七日御修法(ごしちにちみしほ)>
まずは空海と東寺の成り立ちについてのコーナーです。東寺は794年の平安京遷都の際に西寺と共に創建された寺で、都の正門である羅城門の東に位置していました。しかし長い歴史の中で大火や戦火を逃れ平安京の頃から残っているのは東寺だけで、西寺も羅城門も失われています。元々は密教寺院ではなかったようで、823年に嵯峨天皇から空海に東寺が託され、空海は講堂や21体の仏像などの整備を進めていき、真言密教の根本道場として人々の信仰の中心地となっていきました。
他に東寺の基本知識として、密教以前の本尊は残っていないものの今も本尊は薬師如来です。また、東寺のシンボルとも言える五重塔は空海の生前には完成していませんでしたが、その後4回の建て替えを経て今は江戸時代に建てられた5代目となっていて、54.8mもあります。東寺は教王護国寺と呼ばれることもありますが、この名前は鎌倉時代以降に使われるようになったのだとか。ここにはそうした東寺の歴史と関わりのある品々が並んでいました。

1 伝・後宇多天皇(賛) 「弘法大師像(談義本尊)」 ★こちらで観られます
こちらは空海の肖像で、台の上に座って左手に念珠、右手に五鈷杵を持った姿で描かれています。肖像の上部には見事な筆による賛があり、これは後宇多天皇による筆であると考えられるようです、台の前に靴を揃えていて、右下には水瓶があるのですが、これは瓶の水を漏らさないように他の瓶に移し替えるように教えを漏らさず伝えるという意味があるようです。空海の肖像は何回か観ているので結構顔で分かるようになったかなw 割と若い頃の姿のように見えました。
なお、簡単に空海の説明をすると、空海は774年に讃岐国で生まれ、23歳で仏教を志し31歳で遣唐使として中国へ留学しました。そして長安で恵果に師事して20年の予定が2年で密教の全てを修めて帰国し、帰国後は東寺や高野山を拠点に密教を布教していきます。835年に亡くなっていますが、死後も信仰の対象となって空海の住房があった場所に御影堂が建てられ、今も食事を備えているようです (空海についての説明は今回の展示は少なめなので前述の参考記事をご参照ください)

この辺には空海が唐から持ち帰った品々を記した空海(撰)・最澄(筆)の「御請来目録」もありました。真言宗と天台宗の開祖同士のコラボ作品な上、空海の密教の考えも乗っているという非常に貴重な品です。(以前の空海展にもありました)

6 空海 「風信帖」 ★こちらで観られます
こちらは最澄に宛てた3通の自筆の書状です。空海は三筆の一人として弘法大師の号で有名ですが、この書状は最も格調高い筆跡とされて今でも学ばれているほどの品のようです。3通それぞれ違った印象を受けるかな。すらすらと流れるようでありながら力強さを感じる書状が目を引きました。2人の交流や仏教史を示す上でも貴重な書状です。

その先には7幅セットの「真言七祖像」もありました。5幅は唐で恵果から賜った像、残り2幅は空海が追加した像となっています。大きくて迫力があるものの、保存状態がボロボロでした。(このボロボロなのも見覚えがありました)

この辺りから東寺で行われる「後七日御修法(ごしちにちみしほ)」という修法を紹介する内容となっていました。後七日御修法は元旦から1月7日まで行われる前七日節会の後に行われるため後七日と呼ばれるようで、国家安泰や天皇の健康を祈る真言宗で最も重要で固く秘された修法となります。ここでは後七日御修法が行われる道場の内部を再現していて、大きな曼荼羅に向かって修法をするようです。この曼荼羅は胎蔵界曼荼羅と金剛界曼荼羅から成る両界曼荼羅で、毎年交互に使われるらしく、2019年は胎蔵界曼荼羅が使われたとのことでした。

17 「十二天像」 ★こちらで観られます
こちらは1124年に描かれた道場守護の為の12柱の神々のうち、毘沙門天・伊舎那天・帝釈天・火天の4柱が展示されていました(展示替えで12柱全て揃うようです) これは8つの方角の神に加え天・地、太陽・月を加えたもので、破損して作り直したのですが、それも火災で燃えてさらに作り直しました。しかし時の権力者であった鳥羽上皇が気に入らなかったようで、さらに描き直したのがこの作品です。私が観た中では特に火天が面白く、渦巻く炎の光背と痩せた4本の腕が異様な存在感となっていました。

16 「五大尊像」
こちらも後七日御修法の為に用いる仏画で、5幅対で五大明王が描かれています。ここでも文様化した炎の光背が目を引き、明王らしい威厳が感じられます。こちらも十二天像と同じように鳥羽上皇の一声で描き直したそうで、装飾的で優美な感じになっているのは当時の流行を反映している為のようでした。とは言え、力強い印象の方が強いようにも思えました。


<第2章 真言密教の至宝>
続いては密教儀式に用いる絵画や工芸品のコーナーです。密教の宇宙観・世界観を表現して伝える品が並んでいて、ここも国宝や重要文化財が目白押しです。

39 「蘇悉地儀軌契印図」 ★こちらで観られます
こちらは印の結び方をイラスト化した作品です。90種類も図解していて、経典には詳しく描いていないものを図にすることで分かりやすく伝えているようです。結構似たものも多くて、素人にはこれでも覚えられる気がしません…w 密教の奥深さと、それを後世に正しく伝えようとする意図が感じられました。

この辺りで金剛界曼荼羅の出来るまでという映像が流れていました。格子状に大きく9つに分割し、中央に大日如来を配してその周りに四如来、さらにその周りを菩薩たちというように広がっていきます。金剛界曼荼羅は金剛頂経が説く悟りへの道を示し、胎蔵界曼荼羅は大日如来の慈悲が周りに伝わっていく様子を表しているそうです。

26 「両界曼荼羅図(甲本)」
こちらは空海が持ち帰った両界曼荼羅の写しをさらに写したものと思われる品で、私が観た時は金剛界曼荼羅が展示されていました。(会期で胎蔵界曼荼羅と入れ替え) かなりボロボロで上部の3ブロック分くらいしか見えませんが、縦5m以上はありそうなのに端っこまで超細密に描かれて驚きです。曼荼羅を観ていると宇宙の物理法則の話が思い浮かんで来る…。密教の教えを絵画化することで分かりやすく伝えているようでした。


ということで、前半の内容は2011年の展示のデジャブみたいな感じもありましたが、ざっと弘法大師や東寺、密教の修法について知ることができました。国宝・重文の貴重な品が多く日本の歴史を目の当たりにできるような内容です。後半は今回の見所である立体曼荼羅の仏像郡が並んでいましたので、次回はそれについてご紹介の予定です。


 → 後編はこちら

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