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ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道 (感想後編)【国立新美術館】

今日は前回に引き続き六本木の国立新美術館の「日本・オーストリア外交樹立150周年記念 ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」についてです。前半はウィーンの近代化の流れを観てきましたが、後編は見どころとなっている世紀末美術についてご紹介して参ります。まずは概要のおさらいです。

 → 前編はこちら

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【展覧名】
 日本・オーストリア外交樹立150周年記念
 ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道

【公式サイト】
 https://artexhibition.jp/wienmodern2019/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2019/wienmodern2019/

【会場】国立新美術館
【最寄】乃木坂駅・六本木駅

【会期】2019年4月24日(水)~8月5日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
後半は展示室が広めだったこともあって前半よりは混雑感が少なかったように思います。後半も各コーナーごとに簡単にご紹介していこうと思います。

 参考記事:同時期に開催の展示
  クリムト展 ウィーンと日本 1900 感想前編(東京都美術館)
  クリムト展 ウィーンと日本 1900 感想後編(東京都美術館)
  ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道 感想前編(国立新美術館)
  ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道 感想後編(国立新美術館)
  世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて 感想前編(目黒区美術館)
  世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて 感想後編(目黒区美術館)

 参考記事:過去の展示
  ウィーン・ミュージアム所蔵 クリムト、シーレ ウィーン世紀末展 (日本橋タカシマヤ)
  クリムト 黄金の騎士をめぐる物語 感想前編(宇都宮美術館)
  クリムト 黄金の騎士をめぐる物語 感想後編(宇都宮美術館)


<3 リンク通りとウィーン-新たな芸術パトロンの登場>
3章はウィーンの環状道路「リンクシュトラーセ」についてのコーナーです。1857年に皇帝フランツ・ヨーゼフ1世がウィーン旧市街を囲む市壁の取り壊しを命じ、その上に「リンクシュトラーセ」という道路が作られました。沿道には古典主義様式の国会議事堂、ゴシック様式の市庁舎、ルネサンス様式のウィーン大学など過去の様式の建物が立ち並び、帝国の要となり発展していきました。さらに1879年には皇帝夫妻の銀婚式のパレードも行われ19世紀のウィーンのシンボルと言える通りとなっていったようです。ここにはそれにまつわる品々が並んでいました。

[3-1 リンク通りとウィーン]
ここにはエルヴィーン・ペンドルによる「リンク通りのあるウィーン中心部の眺望 左:宮廷博物館群、右:美術アカデミー」という1904年頃のウィーンの街の様子が描いた作品や、1869年頃の写真などがありました。かなり広い通りで、様々な様式の建物が並ぶ様子は壮観です。
他にはフランツ・ルス(父)による皇帝フランツ・ヨーゼフ1世と皇后エリーザベトの肖像もありました。(★こちらで観られます) 結構若い姿で気品ある姿で描かれていますが、皇后はテロリストに暗殺され、皇帝は晩年に第一次世界大戦の引き金となったサラエボ事件が起きて、実質的に最後の皇帝となってしまうことを考えると複雑ですね…。

他に目を引いたのはグスタフ・クリムトの「旧ブルク劇場の観客席」で、この絵で皇帝賞を受けているようです。4~5階建ての楕円状の桟敷席のある劇場内を描いたもので、100人以上の紳士や貴婦人が精密に描かれています。ちょっと誇張したような遠近感のようにも思えましたが、劇場の華やかな雰囲気がよく表れていました。
近くには盟友のマッチュの作品なんかもありました。この辺に関係性については上野の東京都美術館で行われているクリムト展を観るとよく理解できると思います(次節のハンス・マカルトもそちらの展示で紹介しています)

[3-2 「画家のプリンス」ハンス・マカルト]
続いてはこの時代に最も評価された画家ハンス・マカルトのコーナーです。ミュンヘンのアカデミーで学び、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の招きでウィーンに来ると瞬く間に歴史主義時代の寵児となり、上流階級の女性や女優などの華やかな肖像画を残したそうです。また、1879年の皇帝皇后の銀婚式の祝賀パレードの総演出を担うなど名誉ある仕事を成し遂げ、名声を確固たるものにしました。その影響力は若き日のクリムトにも及び、初期の作品はマカルトに倣った画風となっています。

ここには1879年の祝賀パレードのためのデザイン画が2点ありました。織物製造組合と菓子製造組合の為のもので、全35点のデザイン画があるようです。ルネサンスやバロックの衣装を着て、山車を引っ張って歩く様子が描かれているのですが、織物製造組合は布とか紡績に使うような機械、機織りなどを山車に取り入れています。結構タッチは粗めですが、組合の特色を表現しつつ気品と歴史を感じさせる作品でした。

もう1つ目を引いたのが「メッサリナの役に扮する女優シャーロット・ヴォルター」という肖像で、古代ローマを思わせる衣装を着た女性(メッサリナはローマ皇帝クラウディウスの皇妃)がソファに寄りかかって夜の町並みを観ている様子が描かれています。周りは結構粗めのタッチですが顔は丹念に描かれていて、優美な雰囲気です。画面自体も大きいこともあって見栄えがしました。この画家は特に人物画が魅力と言えそうです。

[3-3 ウィーン万国博覧会(1873年)]
続いては1873年に行われたウィーン万国博覧会のコーナーです。この万博は日本にも深い関係があり、日本が国家として初めて参加した万博でした。それ以前に開催された万博の規模を上回ることが目指され、全長約950mの巨大な産業宮や200におよぶパヴィリオンが軒を連ねたそうです。

ここでは日本館の写真などが目を引きました。鳥居とか幟が立っていて神社みたいなw また、万博会場の鳥瞰図もあり、とんでもなく広い会場であったのが伺えました。パリ万博の5倍もあったのだとか。

[3-4 「ワルツの王」ヨハン・シュトラウス]
ここは「美しく青きドナウ」などで有名な作曲家ヨハン・シュトラウスを紹介するコーナーです。500曲ものワルツやポルカを生み出し、皇帝や市が開催する舞踏会でヨハン・シュトラウスの曲も使われていたようです。
展示品は2点のみで、ヨハン・シュトラウスの肖像と当時の舞踏会の様子を描いた絵がありました。肖像は見覚えがあるのでイメージ通りかな。舞踏会は華やかな印象を受けました。


<4 1900年-世紀末のウィーン-近代都市ウィーンの誕生>
続いては19世紀末のウィーン美術に関するコーナーです。この時代、路面電車や鉄道網が発展し、建築家オットー・ヴァーグナーがそれまでの時代の建築物とは異なる「近代建築」を生み出しました。また、「時代にはその芸術を、芸術には自由を」の理念のもとに、グスタフ・クリムトを中心にウィーン分離派が結成され、新しい美術を生み出していきます。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。

[4-1 1900 年-世紀末のウィーン]
こちらは4点のみで1897~1910年に都市機能を充実させたウィーン市長のカール・ルエーガーにまつわる品などがありました。特にオットー・ヴァーグナーによる「カール・ルエーガー市長の椅子」(★こちらで観られます)は螺鈿細工のように装飾を施していて、モザイク状に模様が付けられています。背中の部分にカール・ルエーガーの名前が書いてあるのはちょっとダサい気もしますが…w 何処と無く日本趣味やアールヌーヴォー的なものもあるように思えました。

[4-2 オットー・ヴァーグナー-近代建築の先駆者]
続いては分離派にも参加したことがあるオットー・ヴァーグナーのコーナーです。ベルリンの王立建築アカデミーやウィーンの美術アカデミーで建築を学んだ為か、初期は歴史主義的な作品だったようですが、やがてモダニズム建築の先駆者となり、先進的なデザインの建物を設計し ヨーゼフ・ホフマンなどの後進も育てました。

ここには美術アカデミー記念ホールの外観や立面図と共に 大きな模型が展示されていました。(★こちらで観られます) 全体的に金ピカに輝く建物で、側面には4つのアーチ状の凱旋門、上部にはドームがあって王冠のような装飾も施されています。それまでの様式を取り入れながらも近代的な雰囲気もあるデザインで、装飾は神話世界のような絢爛な印象を受けました。しかしこちらは実現しなかったのだとか。

さらに近くには鉄道関係のデザインがありました。現在でも大部分が残されていて地下鉄などで稼働しているようです。皇帝専用の駅のデザインもあったのですが、実際には2回しか使われなかったというのはちょっと残念なエピソードです。それでもモダンで美しい駅に思えました。

他にも「聖レオポルト教会(シュタインホーフ)」という建物の模型もあり、これも丸いドームがついていました。タージ・マハルとかモスクを彷彿とするデザインに思えるかな。オットー・ヴァーグナーはドーム好きなのかも?と思いながら観ていました。

[4-3-1 グスタフ・クリムトの初期作品-寓意画]
続いてはクリムトの初期の作品のコーナーです。ここには「アレゴリーとエンブレム」という寓意画制作のための図案集の作品がいくつか並んでいました。特に目を引いたのは「寓話(『アレゴリーとエンブレム』のための原画 No. 75a)」で、これには裸婦と共に寝ているライオン、狐、2羽の鳥(鷺?)などが描かれています。緻密で写実的な画風となっていて、特に裸婦の白い肌が透き通るような表現が見事でした。

また「愛(『アレゴリー:新連作』のための原画No. 46)」(★こちらで観られます)は見覚えがあって、若い男女が見つめ合う様子が描かれ背景には幼女・女性・老婆の顔が浮かんで見えています。全体的に淡くぼんやりしているので幻想的な雰囲気ですが、クリムト展で観た「女の三世代」のように生命の円環を表しているのかな。また、絵の両側は金地にバラの花が描かれているのですが、それが日本の屏風のように見えて 中央の絵も掛け軸のように見えてくるのが面白い構成です。日本美術からの影響を伺わせる作品でした。
この作品も含め、この辺りから2009年の高島屋で開催された展示で観た作品が結構ありました。

[4-3-2 ウィーン分離派の創設]
続いてはウィーン分離派の誕生についてです。クリムトたちは元々はウィーン造形芸術家組合に属していましたが、保守的な体制への不満から他の進歩的な芸術家と協会を脱退し、1897年にウィーン分離派を立ち上げました。その際、名誉会長にはルドルフ・フォン・アルト(前編でご紹介した風景画家)、初代会長にはクリムトが選出されています。

ここには分離派の展覧会の出品作やポスターが展示されていました。まずクリムトによる「第1回ウィーン分離派展ポスター」は検閲前と検閲後の2パターンが並んでいます。詳しくは上記の宇都宮美術館の時の展示の前編に書いていますが、検閲前後を見比べると、ミノタウロスを倒すテセウスの局部がけしからんということで修正されています。修正後は手前に黒い木立が追加されて、上手い具合に隠れるという感じです。旧態然とした美術をミノタウロス、それを倒す英雄テセウスを分離派に見立てた訳ですが、早速検閲されているので、当時は割と厳しかったのかもしれませんね。

そしてここでの見どころはクリムトの「パラス・アテナ」(★こちらで観られます)です。こちらは金色の兜をかぶって槍を持つアテナ(パラス)が描かれていて、手には「裸の真実(ヌーダ・ヴェリタス)」の化身を持ち、胸にはメドゥーサを象った首飾りを付けています。アテナは分離派の守護神として描かれていて、メドゥーサはアカンベェをしているような顔で分離派を批判する人たちをあざ笑うかのようです。また、背景にはヘラクレスがトリトンと戦っている様子があり、古い芸術への挑戦を表しているようでした。

その他には分離派会館の素描や写真(★こちらで観られます)、当時のメンバーの写真なんかもありました。

[4-3-3 素描家グスタフ・クリムト]
続いてはクリムトの素描のコーナーです。ウィーン・ミュージアムは400点ものクリムトの素描を所蔵しているようで、そのうち40点近くも展示されています。中には上野のクリムト展にある「ベートーヴェン・フリーズ」のゴルゴンの素描もあって、ニヤッと笑う不気味な姿は素描でも健在です。他にも女性器をさらけ出すような赤裸々な素描なんかもあって、クリムトの創造の源が垣間見えた気がしました。

[4-3-4 ウィーン分離派の画家たち]
続いては分離派に属した画家たちのコーナーです。同じ分離派と言っても画風は全く異なるので個性派揃いとなっています。
ここで目を引いたのはヴィルヘルム・ベルナツィクの「炎」という作品で、全体的に青みがかった岩の谷間で焚き火をする女性達が描かれています。炎の周りで踊るように囲む姿は何かの儀式のように見え、炎も装飾的に描かれていて不思議な光景です。立ち上る煙も神秘的で象徴主義的なものを感じました。

[4-3-5 ウィーン分離派のグラフィック]
続いては分離派が出した機関誌『ヴェル・サクルム』(聖なる春)やポスターなどのコーナーです。ここに関しては同時期に目黒区美術館で開催の展示と似た内容に思えました。(後日詳しくご紹介予定なので、今日はごく簡単にw)
ここにはシンプルで装飾的なデザインが並び、タイポグラフィも洗練されています。各分離派展のポスターの中には日本の浮世絵を題材にした作品などもありました。

[4-4 エミーリエ・フレーゲとグスタフ・クリムト]
続いてはクリムトが最も信頼した女性エミーリエ・フレーゲとの関係についてのコーナーです。詳しくは先日の上野のクリムト展の前編で紹介しましたのでここでは省略しますが、クリムトの弟のエルンストの奥さんの妹ということでクリムトとは親戚でもあります。姉妹でファッション・サロンを開いていたそうで、ここではサロンで使われたランプ、椅子、テーブルなどが並んでいました。全てヨーゼフ・ホフマン(先述のオットー・ヴァーグナーの弟子)によるデザインで、シンプルな幾何学紋の組み合わせで優美な雰囲気です。他にもドレスや櫛も並んでいて、中には日本の簪のような品もありました。

ここにあるクリムトの「エミーリエ・フレーゲの肖像」は撮影可能となっていました。
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クリムトの最も人気のある様式で描かれていて、ドレスの装飾性が見事です。これはかなりの傑作なので、写真まで撮れて感激でした。(しかしエミーリエはこの絵が気に入らなかったのだとかw)

[4-5-1 ウィーン工房の応用芸術]
続いては英国のアーツ・アンド・クラフツ運動を参考にしたウィーン工房についてのコーナーです。1903年にヨーゼフ・ホフマンとコロマン・モーザーによって設立され、毎日の生活を美しく彩る日用品が作られました。
ここにはドレス、銀の花瓶やパンかご、ティーセット、キャビネット、椅子、ブローチ、ネックレス、ハンドバッグなど様々な品が並んでいました。直線と曲線を上手く組み合わせたデザインが秀逸で、ヨーゼフ・ホフマンの「ゲーム盤とこま」という作品では○△□をゲームの駒にしたようなシンプルな形が面白かったです。

[4-5-2 ウィーン工房のグラフィック]
続いてもウィーン工房についてで、ここは版画やポスター、本などのグラフィックが並んでいました。パターン化された型紙のデザインなんかもあり、本家のアーツ・アンド・クラフツに通じるものを感じるかな。素朴さと斬新さを感じるポスターや、各画家の個性を感じるポストカードなどもあり特にシーレのポストカードは実際に欲しくなりましたw

[4-6-1 エゴン・シーレ-ユーゲントシュティールの先へ]
続いては見どころの1つであるエゴン・シーレのコーナーです。シーレはクリムトより約30歳年下で、彼らの時代とは全く異なる新しい時代の画家でした。しかしお互いに素描を交換したりしてクリムトはシーレの才能を認め、シーレもクリムトを偉大な師として仰いでいたようです。(クリムトが亡くなった時にはその亡骸をスケッチしています) シーレの芸術は生きる苦悩を感じさせるように思いますが、未成年誘拐罪やあからさまな性的描写への批判などと相まって当時の風当たりも強かったようです。それでも内面を吐露するような作品に多くの美術批評家が支援を申し出たのだとか。

ここでの注目は「自画像」(★こちらで観られます)で、胸に手を当てた姿で描かれています。指が長くくすんだ感じの肌がちょっと異様な感じ。頭の辺りには一体化するように黒い人の横顔のようなポットがあり、2つの顔を持つヤヌスのように内なる精神状態の2面性を表しているようです。シーレの作品のイメージそのものなので、これは久々に観られて嬉しい。

また、「ひまわり」(★こちらで観られます)も見どころで、本来は生命の象徴のイメージがあるヒマワリが、ここではどす黒くてひょろ長く描かれていて死を感じさせます。人の形のようにも見えて恐ろしくも心引かれる1枚です。

油彩は5点、水彩と素描は10点以上あるのでこのコーナーだけでも観に行った甲斐がありました。主に人物画で、体が青白かったり、赤みがかったり、痛々しい印象を受けたり、ポーズが独特で面白いです。余談ですがシーレを観てジョジョみたい…と言ってた人がいました。ジョジョの奇妙な冒険の荒木飛呂彦 氏はシーレからの影響を言及しているので、的を射ているなあと、ちょっと感心しましたw

[4-6-2 表現主義-新世代のスタイル]
続いては内なるビジョンを表現した表現主義のコーナーです。ドイツの表現主義が有名ですが、オーストリアの表現主義は、抽象とは無縁のまま、描かれる人物の苦悩や葛藤、不安など心の奥底を描いたそうで、フロイトなどが着想源になったようです。

ここでまず目を引いたのはオスカー・ココシュカの「「クンストシャウ、サマーシアター」の演目、『殺人者、女たちの希望 』のポスター」で、23歳の頃の自作の戯曲のポスターです。ここには骸骨のような顔の女性が真っ赤な体の男を抱いている様子が描かれています。男は体が捻じ曲がって死んでいて女にナイフで刺されて殺されたのですが、それでも男を愛していたようです。観ているだけで不安を覚えるポスターで、当時もセンセーションを巻き起こしたのだとか。

また、近くには同じくココシュカの『夢見る少年たち』というリトグラフの作品群がありました。こちらは思春期の苦悩や性愛の衝動を描いたもので、見た目は中世の木版のようなほのぼのとした絵柄に思えました。(これも割とよく観るかな)

[4-6-3 芸術批評と革新]
最後は美術以外の分野の芸術家のコーナーです。音楽家や建築家などが紹介されていてアドルフ・ロースなどは建築だけでなく、講義や著作を通してウィーン分離派やウィーン工房の芸術を批評したそうです。

ここにはまずリヒャルト・ゲルストルによる「作曲家アルノルト・シェーンベルクの肖像」(★こちらで観られます)があり、タバコを持って椅子に腰掛けこちらを観ている姿となっています。シェーンベルクは無調音楽を作り現代音楽の扉を開けた人物で、自身で絵も描いていたようです。この肖像を描いたリヒャルト・ゲルストルが絵を教えたそうで、隣にはシェーンベルクが自分の弟子を描いた作品も並んでいます。(そちらは粗めのタッチだけど個性的で中々上手い肖像です。)2人は家族ぐるみの付き合いをしていたようですが、ゲルストルがシェーンベルクの奥さんに恋に落ちたことで、ゲルストルは自殺する事態となったのだとか。そのエピソードを聞くとちょっといたたまれない気持ちになる肖像でした。

最後はアドルフ・ロースに関する資料が並び、「ゴールドマン&ザラチュのオフィスビル(ミヒャエラープラッツ3 番地、1909‐11年建設)の1/50の模型がありました。装飾性を排した直線の多い建物で、1階は紳士服店、上階は集合住宅となっています。1階には円柱が縦並び、すっきりとした中に優美さを感じるのですが、当時は装飾が無さ過ぎると批判され建設中止命令が出るほどだったそうです。そこで花を窓辺に飾ることで解決したとのことで、当時の革新性が伝わるエピソードでした。


ということで、後半も多岐に渡る内容でした。クリムトやシーレは2009年の展示の拡張版といった感じにも思えたかな。全体的にかなり幅広いので美術初心者の方やオーストリアの近代史に興味が無い方は消化不良になりそうな気もします。しかし、じっくりと見て回ればウィーンの歴史や美術の豊かさを網羅的に知ることが出来ると思いますので、なるべく鑑賞時間を長めに取ることをオススメします。同時期に上野で開催しているクリムト展とセットで観たい展示です。


おまけ:
休憩室にあったエミーリエ・フレーゲの肖像の衣装の再現。
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いづれも紋様が美しく、現代でも通じるようなモダンさを感じます。
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