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世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて (感想前編)【目黒区美術館】

今日は写真多めです。GW中に目黒の目黒区美術館で「京都国立近代美術館所蔵 世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて」を観てきました。盛りだくさんで撮影可能となっていましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 京都国立近代美術館所蔵
 世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて 

【公式サイト】
 http://mmat.jp/exhibition/archive/2019/20190413-63.html

【会場】目黒区美術館
【最寄】目黒駅

【会期】2019年4月13日(土)~2019年6月9日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんは多かったですが、概ね快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はタイトルの通り世紀末ウィーンのグラフィックを紹介する内容で、2015年に京都国立近代美術館にまとまって収蔵された平明暘 氏が蒐集したコレクションが並んでいます。同時期に上野の東京都美術館ではクリムト展、六本木の国立新美術館ではウィーン美術展を開催しているので、それと合わせて観ると、一気にウィーン分離派について詳しくなれるかもしれません。展示はテーマごとに4章構成となっていましあので、いくつか写真を挙げながらご紹介していこうと思います。

 参考記事:同時期に開催の展示
  クリムト展 ウィーンと日本 1900 感想前編(東京都美術館)
  クリムト展 ウィーンと日本 1900 感想後編(東京都美術館)
  ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道 感想前編(国立新美術館)
  ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道 感想後編(国立新美術館)
  世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて 感想前編(目黒区美術館)
  世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて 感想後編(目黒区美術館)

 参考記事:過去の展示
  ウィーン・ミュージアム所蔵 クリムト、シーレ ウィーン世紀末展 (日本橋タカシマヤ)
  クリムト 黄金の騎士をめぐる物語 感想前編(宇都宮美術館)
  クリムト 黄金の騎士をめぐる物語 感想後編(宇都宮美術館)


<1 ウィーン分離派とクリムト>
まずはウィーン分離派とクリムトについてのコーナーです。グスタフ・クリムトらは1897年に「時代にはその芸術を、芸術にはその自由を」というモットーを掲げてウィーン分離派(オーストリア造形芸術家協会)を結成しました。そして旧態然とした芸術・デザインや環境を刷新し、世界に通用するオーストリア芸術を目指した彼らが重視したのは国内外の先進的な芸術・デザインの動向を紹介する展覧会の開催と、機関誌『ヴェル・サクルム』(聖なる春)の刊行でした。展覧会では毎回異なる展示デザインやポスター、カタログが制作されて人々の関心を集め、『ヴェル・サクルム』では造形美術だけでなく文芸作品も紹介されてイラストや縁飾りなどもデザインされたようです。ここでは分離派が目指した総合芸術を体現したとも言える『ヴェル・サクルム』や、分離派と関わりを持った芸術家などが紹介されていました。

[1.ウィーン分離派-展覧会と機関誌『ヴェル・サクルム』]
まず1階に分離派の展覧会と機関誌に関する品が並んでいました。

オーストリア造形芸術家協会(編)『ヴェル・サクルム:オーストリア造形芸術家協会機関誌』
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こちらが『ヴェル・サクルム』 ずらりと並んでいて多種多様なグラフィックとなっています。猫の表紙とかもあるしw 装飾的で華やかな印象を受けるグラフィックが多いように思えました。

こちらも『ヴェル・サクルム』の1901年の3月?の表紙
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天狗がお辞儀しているような表紙ですw 分離派はジャポニスムの展覧会も開いたし、日本美術との関わりを感じさせます。

ヘルマン・バール(著)/ヨーゼフ・マリア・オルプリヒ(表紙デザイン・挿画) 『分離派』
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こちらは分離派会館が表紙になった著書。下にあるセセッションというのは分離派のことです。この建物自体もヨーゼフ・マリア・オルプリヒの設計によるもの。いつか訪れてみたいですね…。

グスタフ・クリムト 「ウィーン分離派の蔵書票」
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こちらはクリムトによる蔵書票。描いてあるのは分離派の象徴とも言えるパラス・アテナだと思います。胸の顔はメドゥーサかな。ちょっと可愛いw

「菊川英山(挿画) ポスター[分離派オーストリア造形芸術家協会 第6回美術展]」
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こちらは前回ご紹介した国立新美術館の展示にもあった分離派展のポスター。ウィーンでもジャポニスムが受容され、クリムトも浮世絵を集めて自分の作品にフィードバックしていました。

コロマン・モーザー 「バラのある少女の頭部」
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こちらも分離派のメンバーによるもの。ちょっと憂いを帯びた表情をしているのが妙にリアルに思えました。

マルクス・ベーマー 「ファウストとヴァーグナー 『ヴェル・サクルム』(第6年次、1903年、36頁のための挿画)」
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ヴァーグナーはワグナーのことかな。(ワグナーはファウスト序曲を作曲しています) 『ファウスト』はゲーテの戯曲で、悪魔メフィストと契約した人物ですが、ここでは悪魔っぽいのがファウストではないかと思います。ちょっと漫画チックで面白い絵柄でした。

カール・モル 「雪に埋もれたデプリンクの別荘(ホーエ・ヴァルテ) 『ヴェル・サクルム』(第6年次、1903年、275頁のためのオリジナル版画)」
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こちらは版画で、少ない色数で雪の町並みを情感豊かに表しているように思います。直線の多い構図もリズムが合って好み。

フェルディナント・アンドリ 「グスタフ・クリムト像」
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古代風の服を着たクリムトの肖像。これだけ観るとギリシャかローマの賢人みたいですw 

エゴン・シーレ 「アルトゥール・レスラーの肖像」
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こちらはシーレによる肖像画。決して線の数は多くないのに、シーレ独特のポーズや くすんだ感じなどの個性が出ていました。

リヒャルト・ルクシュ 「女性ヌード」
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これは2章の内容ですが、階段を上がった所にこの像があります。頭が蛇のようで、クリムトのゴルゴンを思い浮かべました。

[2.クリムト、シーレそしてココシュカ]
続いてはクリムト、シーレ、ココシュカの3人の素描や画集が並ぶコーナーです。

オスカー・ココシュカ 「かがみ込んだ裸婦」
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こちらは素描。ココシュカは色々な作風があるように思いますが、根底に高いデッサン力があったのが伺えました。

「エゴン・シーレの素描」
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今回特に気に入ったのがこの素描集(印刷された本の一部です) 理想化も美化もしていないのが却って生身の人間を感じさせました。

これは写真ですが、グスタフ・クリムトの「ウィーン大学大広間天井画<哲学>」(左)、「ウィーン大学大広間天井画<医学>」(右)
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この作品は大学の天井画に相応しくないと物議を醸しましたw 医学の方にはドクロとかいるしネガティブな印象を受けたのかも。現代人から見れば幻想的で面白い絵です。

こちらもクリムトの「ウィーン大学大広間天井画<法学>」
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ファム・ファタール的な女たちがいて、何故これが法学なのか?ってのは気になる所ですw

グスタフ・クリムト 「右向きの浮遊する男性裸像 [ウィーン大学大広間天井画<哲学>のための習作]」
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こちらは先程の作品の為の素描習作。大作だけに綿密な準備をしていたのが伺えます。この他にも天井画の為の素描はいくつかありました。

ヘルマン・バール、ペーター・アルテンベルク(序) 『グスタフ・クリムト作品集』
この作品集にはクリムトの代表作(の印刷)が沢山ありましたので一挙にご紹介。

「接吻」
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誰もが知っているであろう名作です。流石に金箔の質感は印刷では表現できていませんが、構図などは楽しめます。

「ダナエ」
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こちらも有名作。ゼウスにみそめられペルセウスを生んだ王女です。官能的で神秘的な雰囲気が見事。

「エミーリエ・フレーゲの肖像」
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こちらは前回ご紹介した国立新美術館の展示で実物を観たばかりでした。本物と比べるとだいぶ色彩が薄く感じられます。やはり本物は格別なんだな…というのが実感できましたw

「水蛇1」
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こちらも装飾がリズミカルで面白い作品。豪華で優美な黄金様式の魅力が詰まっています。

「人生は戦いなり(黄金の騎士)」
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こちらは日本の愛知県美術館が誇るコレクションです。デューラーの銅版画「騎士と死と悪魔」を下敷きに、黄金様式で描かれた傑作です。

「パラス・アテナ」
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こちらも前回ご紹介した国立新美術館の展示で実物を観たばかりでした。印刷だと背景のヘラクレスが若干見やすくなってるかも。


ということで、今日はここまでにしておこうと思います。思った以上に点数が多く300点くらい展示されているようで、分離派が如何にグラフィックに力を入れていたのかが伝わってきます。後半にも個性的な作品が多く並んでいましたので、次回はそれについてご紹介の予定です。

 → 後編はこちら

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