HOME   »  過去の美術展 (2019年)  »  information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美 【サントリー美術館】

information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美 【サントリー美術館】

今日は写真多めです。ちょっと間が空きましたが、先日ご紹介したデザインハブに行った後、サントリー美術館で「サントリー芸術財団50周年 nendo × Suntory Museum of Art information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美」を観てきました。この展示は撮影可能となっていたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

DSC07040.jpg

【展覧名】
 サントリー芸術財団50周年
 nendo × Suntory Museum of Art
 information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美 

【公式サイト】
 https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2019_2/index.html

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅

【会期】2019年4月27日(土)~6月2日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
思った以上に多くの人で賑わっていました。この記事を書いている時点で会期末なので一層混んでいるかもしれません。

さて、この展示はサントリー美術館が所蔵する名品が並ぶ内容ですが、佐藤オオキ氏率いるデザインオフィスnendoがプロデュースしていて、いつもの展示とは一味違う趣向となっています。展示ルートが「information」と「inspiration」の2つあり、同じ作品を観る角度を変えて鑑賞するという斬新な構成です。「information」は説明・解説が多いルートで、歴史や文化的な背景、製造法などを知って感動を得るコース、一方の「inspiration」は解説の類いは一切なく、通常では観ることが出来ないような展示方法を通じて直感的な感動を味わうコースとなっています。2コースを観るためには会場を2回周回することになるので、私は「information」→「inspiration」の順序で観ることにしました(コース選択は自由にできます) 詳しくは気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<information>
まずは解説多めの左脳的アプローチのコースから観ていきました。過去の展覧会で何度も目にしている作品が多いので、解説も知っていることが多かったですが、今まで紹介されていなかったことなどもあっていつも以上に深い説明となっていました。流石にここに記載するのは大変過ぎるので、ごく簡単にご紹介していきますw

「切子蓋付三段重」
DSC07046.jpg
こちらは江戸時代の切子。ヨーロッパに倣ってガラス器が作られた経緯などと共に紹介されています。何と言ってもこの幾何学的なカットが特徴です。

こちらのコースは文様の種類やその意味なども解説しています。
DSC07049.jpg
一見しただけでは分からないような意図も知ることが出来て、知識欲が刺激されますね。好奇心旺盛な方はこちらのコースから観ると良いかも。
他にもカットの仕方なども解説されていました。

「色絵鶏形香炉」
DSC07085.jpg
こちらは有田の柿右衛門様式の香炉。首の付け根から上が蓋のようになっていて取り外し可能で、嘴から香が出てくるようです。彩色も見事でかなり派手な印象かな。有田はヨーロッパに輸出されていたことなどが紹介されていました。

「薄蝶螺鈿蒔絵香枕」
DSC07098.jpg
こちらは中に香を入れて髪に香を炊き込む枕。正面にジグザグな謎の穴が空いているのに注目です。

こちらは穴の部分の解説
DSC07100_20190531001004a0e.jpg
これは源氏物語の巻名になぞらえた組香となっていて、香5種類×5包=25包を入れて、組み合わせを当てるようです。そのパターン表などもあって、これはかつてない深い情報ですね…。 他にも先程の枕は『夫木抄』の和歌の歌意をくんでいるという解説などもありました。

本阿弥光悦 「赤楽茶碗 銘 熟柿」
DSC07138.jpg
まさに熟した柿のような色形の作品。本阿弥光悦は刀剣の浄拭と鑑定を生業とする家に生まれ、書・漆芸・茶湯などに秀でていたことなどが紹介されていました。これは趣味として作ったそうで、まさに天才ですねw
他にも楽焼とは何ぞやという解説や、黒楽・赤楽の違いなども説明されていました。

本阿弥光悦(書)・俵屋宗達(絵) 「蔦下絵新古今和歌集」
DSC07155.jpg
金泥の蔦を俵屋宗達、書を本阿弥光悦が書いたレジェンド同士のコラボ作品。後に琳派の代表的な手法となる滲みを活用した「たらし込み」を使い、その上に流麗な文字が舞っています。雅やかで気品漂う作品です。
この辺では「たらし込み」の描き方なんかも解説されていました。日本画に大きな影響を与えたので、これは美術鑑賞する上で良い機会かも。

「藍色ちろり」
DSC07168.jpg
色と取っ手のねじりが特に美しいちろり。冷酒用に使われていたと考えられるようで、涼し気な色合いです。この色は着色剤にコバルトが含まれている等、科学的なアプローチの解説などがありました。

「薩摩切子 紅色被皿」
DSC07186.jpg
こちらは力強い色彩の薩摩切子。幻の切子とも言える貴重な品です。文様や被せガラスについて等も解説されていました。

この辺で上階のルートは一旦終了で、下階でまたルート選択をすることになります。

階段下には参加型のインスタレーション作品がありました。
DSC07188_2019053100115985a.jpg
係の人が透明の傘を渡してくれるので、ライトに照らされた路を歩いて鑑賞することになります。

傘の影にはこんな感じで様々な光景が映し出されます。
DSC07199.jpg
これは傘が偏光フィルムになっているようで、映像が傘を通すことで映る仕掛けのようです。四季折々の映像で幻想的な光景となっていました。花火やビルなんかも出てくるので探してみると楽しいです。

本阿弥光悦(書)・俵屋宗達(絵) 「蓮下絵百人一首和歌巻断簡」
DSC07226_201905310012021d1.jpg
再び巨匠たちのコラボ作品。小倉百人一首を25mに渡って書いていたものが、分断されてしまった上に関東大震災で前半の25首と後半の31首が失われたという悲しい歴史があります。何とも伸びやかで軽やかな絵と書が融合していて、この展示でも特に見どころではないかと思います。

こんな感じで断簡になってしまったのを説明しています。
DSC07228.jpg
蓮の一生をストーリーにしているということなど、非常に簡潔で分かりやすい説明ですね。
この辺では小倉百人一首に関する解説などもありました。

尾形乾山 「銹絵染付松樹文茶碗」
DSC07241.jpg
こちらは絵付けされるのが前提になった形となっている茶碗。円筒形は平面性が高いので多彩な絵付けが出来たことや、中国明代の詩を題材にしていることなどが紹介されていました。裏面も鏡で観ることが出来るのが良いですね。

こちらはタイトル失念。
DSC07258.jpg
黒と金のコントラストが美しい蒔絵です。曲線が多く優美な雰囲気の意匠となっていました。

「薩摩切子 藍色被船型鉢」
DSC07276_20190531001208657.jpg
この美術館の人気作品。涼しげで流麗なフォルムが何とも美しい。吉祥文様である蝙蝠の由来やルーツなども紹介していました。


この辺で一旦観終わったので、一度会場を出てから再入場してinspirationのルートで観ていきました。

<inspiration>
こちらのコースは解説はなく、とにかくいつもとは違う変わった見方を提示してくれます。

「朱漆塗瓶子」
DSC07281.jpg
こちらは元々朱色の瓶子を赤いフィルタを通じて観るという斬新な見方となっています。informationコースには無いような発想の展示方法です。

「矢羽根蒔絵香炉」
DSC07299.jpg
こちらは裏側から観ることができました。真横から観ると文様もよく見えて非常に精巧にできているのがよく分かります。

これは先程の「蔦下絵新古今和歌集」を絵の層 と 書の層 に分けたもの
DSC07308_20190531001213bd0.jpg
正面から観ると、重なって見える仕組みになっています。実際にはこんな感じでは観られないですが、2人の担当が分かりやすいですねw

こちらも「銹絵染付松樹文茶碗」をモチーフにした作品。
DSC07321.jpg
いわゆる「鞘絵」(アナモルフォーシス)です。鏡の反射の歪みで元の作品のように見えるのが面白い。

こちらは蒔絵の提重を体験するコーナー
DSC07324.jpg
嵌め込もうとしましたが上手くいきませんでしたw 装飾を無くすと機能性が際立ちますね。

これは薩摩切子だったかな。
DSC07332.jpg
もはや展示方法自体が一種のアート作品となっていましたw 

こちらのルートから観る「薩摩切子 藍色被船型鉢」
DSC07333.jpg
妙な角度になっていて、こんな経験はめったにできるもんじゃないw 最後まで驚きの展示方法でした。


ということで、1つの展示で2度楽しい斬新な構成となっていました。見慣れた作品も情報の追加や見方の違いで印象が変わってくるのを体験できました。美術初心者にも分かりやすいので多くの人が楽しめそうです。この記事を書いている時点で既に会期末となっていますので、気になる方はお早めにどうぞ。
関連記事


記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。

 

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter



Comment
Trackback
Trackback URL
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

21世紀のxxx者

Author:21世紀のxxx者
 
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

関東の方には休日のガイドやデートスポット探し、関東以外の方には東京観光のサイトとしてご覧頂ければと思います。

画像を大きめにしているので、解像度は1280×1024以上が推奨です。

↓ブログランキングです。ぽちっと押して頂けると嬉しいです。





【トラックバック・リンク】
基本的にどちらも大歓迎です。アダルトサイト・商材紹介のみのサイトの方はご遠慮ください。
※TB・コメントは公序良俗を判断した上で断り無く削除することがあります。
※相互リンクに関しては一定以上のお付き合いの上で判断させて頂いております。

【記事・画像について】
当ブログコンテンツからの転載は一切お断り致します。(RSSは問題ありません)

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter

展覧スケジュール
現時点で分かる限り、大きな展示のスケジュールを一覧にしました。

展展会年間スケジュール (1都3県)
検索フォーム
ブログ内検索です。
【○○美術館】 というように館名には【】をつけて検索するとみつかりやすいです。
全記事リスト
カテゴリ
リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
メディア掲載
■2012/1/27
NHK BSプレミアム 熱中スタジアム「博物館ナイト」の収録に参加してきました
  → 詳細

■2011/11/21
海の見える杜美術館の公式紹介サイトに掲載されました
  → 詳細

■2011/9/29
「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
  → 詳細

■2009/10/28
Yahoo!カテゴリーに登録されました
  → 絵画
  → 関東 > 絵画

記事の共有
この記事をツイートする
広告
美術鑑賞のお供
細かい美術品を見るのに非常に重宝しています。
愛機紹介
このブログの写真を撮ってます。上は気合入れてる時のカメラ、下は普段使いのカメラです。
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
57位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
デザイン・アート
8位
アクセスランキングを見る>>
twitter
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

※できるだけコメント欄にお願い致します。(管理人だけに表示機能を活用ください) メールは法人の方で、会社・部署・ドメインなどを確認できる場合のみ返信致します。