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宮本隆司 いまだ見えざるところ 【東京都写真美術館】

前回ご紹介した展示を観た後、1つ下の階で「宮本隆司 いまだ見えざるところ」という展示も観てきました。

DSC09180.jpg

【展覧名】
 宮本隆司 いまだ見えざるところ

【公式サイト】
 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3408.html

【会場】東京都写真美術館
【最寄】恵比寿駅

【会期】2019年5月14日(火)~7月15日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
お客さんは多かったですが、快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は現在も活躍されている宮本隆司 氏という写真家の個展となっています。宮本隆司 氏は1989年に第14回木村伊兵衛写真賞を受賞、1996年の第6回ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展では金獅子賞を受賞するなど国内外で活躍されているそうで、近年では両親の故郷の徳之島のアートプロジェクトの企画なども行っているそうです。この展示ではその初期作品から徳之島に関する作品などをいくつかの章に分けて並んでいましたので、各章ごとに簡単に振り返ってみようと思います。


<Lo Manthang(ロー・マンタン) 1996>
こちらはネパールのローマンタンの町を撮った写真が並ぶコーナーです。城壁のある街の様子で、日差しが強くあちこちに石が転がっている光景が多くて廃墟のような感じを受けます。(★こちらで観られます) 人々は民族衣装らしきものを着ていて、1996年とは思えないくらい昔の光景にも思えます。そびえ立つ壁の威圧感や、生活が同居する様子などから異国情緒が感じられました。


<東方の市>
続いてこちらはアジア各国の市場の様子を撮った写真のコーナーです。

29 宮本隆司 「Ho Chi Minh」
こちらはホーチミンの街角で笠を被った人たちが車の前に立っている様子が撮られた写真です。やけに長い車の屋根には沢山のカゴが載せられ、そこには作物らしきものがぎっしり入っています。行商にでも行くのかな? 雑多で、アジア独特の逞しいエネルギー等も感じられました。

この近くには九龍城のような建物を撮った写真もありました。「九龍城砦」という作品で高い評価を受けたらしいので、関心の高いモチーフだったのかもしれませんね。

37 宮本隆司 「Naha」
こちらは那覇の服屋さんの店先を撮った写真で、路地の中にある昭和の頃のような古い服屋さんです。山積みにされた服や、蛍光灯に照らされている様子は裏ぶれた雰囲気があり、東南アジアの市場の写真と比べて観ると共通するものがあるように思えました。1990年代半ばでもこんな光景があったんだなあと妙に感心しましたw


<都市を巡って 建築の黙示録>
こちらは6点のみで、廃墟などを撮った写真が並んでいました。

39 宮本隆司 「サッポロビール恵比寿工場」 ★こちらで観られます
こちらは壁が壊されたビール工場の内部で、炉のようなものが中央に写されていて可動していた頃の様子が伺えます。大きな穴があったり柱も崩れかかっているなど 完全に廃墟ですが、何処と無く残る名残が寂しくもあり ワクワクする感じもありました。廃墟は妙に心惹かれますw


<塔と柱 Tower&Pole>
この章は縦長のカラー写真が並んでいました。いずれも色味は青っぽくなっていて青空・スカイツリー・電柱のセットとなっています。(★こちらで観られます) 建設中のスカイツリーと電柱を重ねるように並べた構図が多く、スカイツリーの完成具合は結構まちまちです。手前の電柱はやたらゴチャついた電線が強調されているように感じられ、九龍城などとの類似点があるように思えました。


<シマというところ>
最後は徳之島のコーナーです。ここで言う「シマ」とは小さな共同体のことらしく、徳之島に住む人たちのポートレートなどが並んでいました。

77 宮本隆司 「井之川」
こちらは太鼓を叩いている老人たちを中心に手を叩いている子供や大人が撮られた写真です。観た感じ、お祭りじゃないかな。近くにも同様の写真がありましたが、日焼けした人が多く南国感があります。小さな共同体の絆の深さも感じられる作品でした。

この辺は立ち姿の住人のポートレートなどがありました。微笑んでいたり厳しい表情をしていたり、人となりも伝わってくるように思えます。また、南国の植物をアップにした作品もいくつかありました。

92 宮本隆司 「面縄」
こちらは洞窟の中に沢山の頭蓋骨が転がっている様子が撮られた写真で、恐らく風葬墓(洞窟に放置して葬るお墓)ではないかと思います。周りには草や蔦が生い茂っていて、生と死が同居しているような画面となっていました。本州とは違った独特な文化を感じます。

103 宮本隆司 「面縄ピンホール」
こちらは十字型の大型の写真で、下に人が寝転がっているシルエットがあり、上には砂浜が上下逆さに写っています。これはわざわざ大型のピンホールカメラを作って撮ったものらしく、それで逆さになっているようです(人影はそこに長時間いたのかな?) 全体的にややぼやけた感じもありますが、しっかりと写っていて昔の技術でこれだけのものが撮れるのかという驚きがありました。

こちらは会場の外にあったピンホールカメラ
DSC09173.jpg
結構な大きさで、これを浜辺に置いて撮影をしたようです。

メイキング映像もありました。
DSC09174_20190620004321f0e.jpg
写真の原点をこうして再現するところに面白味を感じました。


ということで、廃墟やゴチャついた都市風景、異国情緒・異文化などが感じられる写真を観ることができました。やはり写真家は観ている世界が違うなと思わせる作品が多かったように思います。まだまだ活躍される方だと思いますので、気になる方は是非どうぞ。


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