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「マンモス展」-その『生命』は蘇るのか- 【日本科学未来館】

今日は写真多めです。先週の日曜日にお台場の日本科学未来館で、企画展「マンモス展」-その『生命』は蘇るのか- を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 企画展「マンモス展」-その『生命』は蘇るのか-

【公式サイト】
 https://www.mammothten.jp/
 https://www.miraikan.jst.go.jp/spexhibition/mammothten/

【会場】日本科学未来館
【最寄】テレコムセンター駅/東京国際クルーズターミナル駅(旧:船の博物館駅)/りんかい線東京テレポート駅

【会期】2019年6月7日(金)~11月4日(月・休)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
チケットを事前に買って行ったのですが、チケット売り場は5分くらいの列が出来ていました。しかし意外にも中はそれほど混んでおらず、概ね自分のペースで観ることが出来ました。会期が長いので今後はどうなるか分かりませんが、夏休みや会期末は混みそうな気がします。

さて、この展示は約4000年前に絶滅したとされるマンモスをテーマにしていて、実際に冷凍標本を観ることが出来るという驚きの内容となっています。近年の地球温暖化でロシア極東のサハ共和国の永久凍土から次々と見つかっているそうで、そこからの発掘の様子や調査、「マンモス復活プロジェクト」の為の研究なども含めて紹介されています。2005年にも「愛・地球博」で「ユカギルマンモス」が公開され話題となりましたが、今回はさらに「ケナガマンモスの鼻」や仔馬の冷凍標本もありました。大半の作品は撮影可能(ユカギルマンモスの頭部は撮影不可)となっていましたので、詳しくは写真を使ってご紹介していこうと思います。

入ってすぐにいきなり仔マンモスの完全体の冷凍標本がありました。こちらは1977年に発見された「ディーマ」と呼ばれる4万年前のケナガマンモスで、38年ぶりの来日です。
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ちょっとミイラ化しているようにも見えますが、毛もついているしこれだけ完全な形で残っているのに驚きます。生後6~11ヶ月くらいらしく、泥の池ハマって死んだと考えられるようです。4万年も腐らずに残っているなんて本当に奇跡ですね。

その先にはパネルでマンモスの進化や生体について説明していました。マンモスは4000年前に絶滅したと考えられていて、象とは違う系統の生き物です。500万年前頃に象と分岐して進化し、寒さに適応して体毛に覆われた姿だったようです。発見される冷凍マンモスの80%はサハ共和国らしいですが、かつて日本にも北海道あたりに住んでいたそうです。なお、マンモスの名前の由来はサモエード語で「マー(地中の)」「モス(動物)」とのことで、かつては骨から想像し、巨大なネズミか巨大なモグラではないかと考えられていたそうですw

こちらはマンモスの全身骨格。かなり立派な牙を持っています。30~40歳の雄の骨格で、2~3頭の骨を組み合わせているようです。
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しかし思ったより大きくないような…。昔「マンモス級」とか某アイドルが「マンモスうれピー」とか言っていたので、マンモス=デカイというイメージがありますが、実際にはアフリカゾウより小さいのだとか(体高は285cm) これは意外でしたw

こちらはケナガマンモスの頭骨と下顎骨。
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マンモスの歯は生涯5回生え変わるそうで、歯を観ると年が分かるようです。また、200kg以上の草を毎日食べるそうで寿命は60~70年なのだとか。

ケナガマンモス以外にもステップに住んでいたムカシマンモスという種も紹介されていました。

こちらはケナガマンモスの牙(左切歯)4.5m
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マンモスはこの牙で雄同士の喧嘩や敵への威嚇で使ったとも考えられているようです。また、ここでは説明されていませんでしたが、牙を使って穴を掘ったり木をほじったりしたという話を聞いたことがあります。重さ100kgもあるらしいけど、立派すぎて邪魔じゃないのかなあw

こちらはケナガマンモスの歯(上顎左第3大臼歯) この歯で堅い草をすりつぶして食べていたようです。
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1日16時間以上かけて食事していたそうで、イネ科のスゲなどを食べていたようです。

他にも毛や糞もありましたw 続いてマンモスステップという草原に住んでいた他の絶滅動物が何体か並んでいました。

こちらはステップバイソンという約3万年くらいのバイソンの一種
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現在のアメリカやヨーロッパのバイソンの祖先で1万3000年前に絶滅したそうです。ウシ科最大とのことでかなりの大きさでした。

この隣にはケサイというサイの一種もいました。スマトラサイに似ているそうですが、毛に覆われて寒い所に適応していたようです。

こちらはホラアナライオンの再現模型。近くに頭の骨や 子供の全身骨格も展示されています。
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現在のライオンよりも大きく、かなり広く分布していたようです。氷期に洞穴に住んでいたと考えられるのでこの名前のようです。 寒い所にライオンもいたんですね…

こちらはサハ共和国で見つかった動物の骨を使った道具類
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人類はグループでマンモスを狩っていたそうで、火を使って崖に追い込んで仕留めたりしていたようです。大人のマンモスはステップで最強の生き物でしたが、人間によって狩られまくって絶滅の原因の1つとも考えられるようです。狩られたマンモスは食用だけでなく、牙で武器や道具、骨や皮でテントも作っていたのだとか。
ちなみにマンモスの肉は筋肉質で固くて美味しくなかったと考えられるそうで、ウマやバイソンの方が好まれたのだとか。はじめ人間ギャートルズのマンモス肉はめっちゃ美味そうだったのに…w ちょっと夢が壊れたw

この先には絶滅の原因について書いてありました。乱獲だけでなく気候変動で温暖湿潤になったことや、マンモスが寒冷に適応しすぎた「特殊化」して気候変動に適応できなかったことも考えられるようです。本当の理由はまだ確定していないようですが恐らく複合的なもののようで、多分 気候が一番の原因でしょうね…。

こちらは何と、実物のマンモスの毛を触ることができるコーナーです。2種類の毛を触れます。
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長い方は外敵から身を護るもので、結構硬いです。短めのほうは体を温める為のものでモシャモシャしていました。

続いては冷凍マンモスの発掘に関するコーナーです。まずは映像でサハ共和国のバタガイカ・クレーターという所での調査や、マンモスの墓場と呼ばれるユニュゲンという場所の発掘の様子を紹介していました。マンモスは洞窟の中にそのまま埋まっているようです。

こちらは映像をパネルにしたドキュメントの1つ。こんな綺麗なクレーターがあるとは驚きです。永久凍土が崩落してできたようです。
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半端なく広くて100mくらいの断崖絶壁になっています。永久凍土を調べることで当時の植生や気温なども分かるそうですが、中にはメタンガスも大量に含まれているので溶けると更なる温暖化が懸念されるようです。

こちらが冷凍マンモスのいる洞窟
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マンモスがどんどん出てくるマンモスの墓場だそうです。しかし何故こんなにも腐らず、他の動物に食べられずに残っているんでしょうね… みんなドロ池にハマったとも思えないし、水害かなんかでしょうか。

骨が出てきた様子。
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発掘隊の興奮の様子が伝わってくるようでした。このドキュメンタリーだけでもかなり面白いw

そしていよいよ今回の展示の目玉作品が連発となるコーナーです。マイナス20度の冷凍展示室が必要なのでロシアでは展示できないらしく、本当に貴重な機会です。温度差があっても全く曇らない技術は日本の企業によるもので、制作費は東京でマンションを買えるほどと言うのだから本展示の気合いの入れようが伺えます。

こちらは2018年に見つかったばかりの4万1000年ほど前の仔馬の冷凍標本! 生後2週間~1ヶ月程度の仔馬だそうです。
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寝ているようで可愛い…w 注目は目の周りの毛だそうで、寒冷化に対応していたのが伺えるようです。この仔馬からは液体状態の血液と尿まで採取できたとのことなので、今後の研究も期待できそうです。

ちなみに仔馬の上にあるのはケナガマンモスも皮膚です。

こちらは9300年前のユカギルバイソン。こちらもかつての姿をそのまま残しています。
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注目は顔だそうで、有毒な草を食べたのが死因と考えられるので苦しそうな表情をしているようです。死ぬ時は何が原因でも苦しいでしょうけどね。

他にも子犬や雷鳥の丸ごと氷漬けになった姿が展示されていました。冷凍標本は永久凍土から掘り出すとすぐに溶けるので、真冬に運ばれるそうです。太古からの貴重な贈り物が失われないように細心の注意を払っているんですね。

そしてこれが今回の目玉の1つである32700年前のケナガマンモスの鼻! 
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鼻先が綺麗なハート型をしています。ひだの構造になっているので寒い時は内側に鼻を丸めてしまって体温を下げないようにしていたと考えられるそうです。それにしてもこれだけ綺麗に残っているのは衝撃的です。しばらく食い入るように観てきました。

この後は冷凍マンモスからマンモスを復活させるプロジェクトについてのコーナーです。2019年3月11日に近畿大学が2万8000年前のマンモスの細胞核が再び生命活動の兆候を見せたというニュースを発信し、多くの研究者や人々を驚かせました。本当にマンモスを復活させることが出来そうですが、そこまでの道のりはかなり険しい道のようです。

こちらが近畿大学が発表したマンモスの細胞核
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細胞レベルでは生命活動の再現に成功したようで、これだけでも十分にすごいことです。近縁種のアジアゾウなどを使ってクローン羊「ドリー」の技術での復活を考えたようですが、アジアゾウも絶滅危惧種なのでそうも行かないし、成功した後の影響も考えながら慎重に研究しているようです。

2010年にロシアのサハ共和国で見つかったユカギルマンモスの「YUKA」は非常に状態の良いサンプルで、マンモス復活の研究に光明が差すきっかけとなったようです。
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このYUKAからDNAを調べ、マンモス細胞をゼロから作ることを目指しているようです。

こちらはYUKAからマンモスの特徴を示すDNAを発見した次世代シーケンサーMiniseqシステム
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一見すると電子レンジみたいな…w ゲノム解析によってマンモスとアフリカゾウのDNAの塩基配列の違いは2700万箇所で全体の0.7%程度と判明したそうです。

他にもタンパク質を分析する機器なども並んでいました。869種類ものタンパク質が見つかり、特に筋肉の保存状態が良かったようです。そしてついにマウスの卵子にマンモスの細胞核を注入するという研究も進んでいます。

こちらは受精卵などを研究する機器
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こうした機器の進化が科学の発展を支えていますね。ニコンインステックとか日本の企業が多いのも頼もしいところです。

こちらがマンモス復活までの道のり。
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1つ1つクリアしていっているようですが、倫理的な問題はどうするんでしょうかね? 将来的に動物は絶滅しても復活させれば良いや みたいな流れにならないことを祈りたいところですが、こうした研究で得た副産物が人類への福音になることも考えられます。

これはゲノム編集の技術によって作られたトマト
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受粉しなくても実がなるトマトだそうで、農作業の労力の負担軽減にもなるようです。私はゲノム編集は禁断の領域に思えますがね…。

そして最後にもう1つの目玉であるユカギルマンモスの頭部の冷凍標本がありました。2005年の愛・地球博でも展示されたもので14年ぶりの来日です。しかしこの品は撮影不可となっていました。

代わりにこちらは1/1サイズのレプリカ。
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このユカギルマンモスの頭部もかなり保存状態が良くて、最後まで驚きの連続でした。

こちらは出口付近のグッズショップ
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ぬいぐるみとかあって中々充実していました。食べ物とかは もっと何とかなっただろという気はします。マンモス肉をイメージした肉とかあれば買うのにw

せっかくなのでスノーボールを買いました。
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マンモスにぴったりのグッズですねw


ということで、非常に貴重かつ驚きに満ちた展示となっていました。子供の頃から思い描いていたマンモスのイメージと異なる点もあったりして、満足度の高い内容です。単に見世物としてでなく科学的な研究としての側面も強く押し出しているので、お子さんを連れて行くのに良いと思います。今年の展示の中でも特にオススメの展示です。

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