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明治に生きた“写真大尽” 鹿島清兵衛 物語 【FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)】

先週の日曜日にFUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)で「写真歴史博物館 企画写真展 日本の近代写真を支えてしまった?! 波乱万丈の男がいた 明治に生きた“写真大尽” 鹿島清兵衛 物語」という展示を観てきました。

DSC00482.jpg

【展覧名】
 写真歴史博物館 企画写真展
 日本の近代写真を支えてしまった?! 波乱万丈の男がいた
 「明治に生きた“写真大尽” 鹿島清兵衛 物語」 

【公式サイト】
 http://fujifilmsquare.jp/detail/19060104.html

【会場】FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)
【最寄】六本木駅/乃木坂駅

【会期】2019年6月1日(土)~8月31日(土)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_②_3_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は明治期に活躍した鹿島清兵衛(かしませいべい)という写真家の小規模な個展で、この写真家の初めての展覧会のようです。鹿島清兵衛は明治中期に日本有数の酒問屋 鹿島屋という裕福な環境に生まれ、先代が持っていた写真機を蔵で偶然見つけたことをきっかけに写真にのめり込んだようです。やがて豪華な写真館「玄鹿館」を開設し、「写真大尽」と呼ばれるほどだったそうで、大型写真機で撮影した巨大写真、X線写真、夜間撮影など当時としては前代未聞の制作を行い、日本の写真界の発展に大きく貢献しました。しかし芸姑と子供を作って鹿島家から離縁された辺りから不幸に次ぐ不幸となり、晩年は波乱に満ちたものとなったようです。この展示ではそうした経緯も踏まえながら知られざる写真界の先駆者の功績を紹介していました。いくつか気になった作品とともにご紹介していこうと思います。


1 鹿島清兵衛 「田子ノ浦より田子ノ浦橋と富士を望む」 ★こちらで観られます
こちらは着色された写真で、富士山を背景に粗末な橋の上を人力車や杖をついた人が行き交う様子が撮られています。手前には帆を張った船もいて、如何にも日本らしい風景に思えます。まるで絵画のようにも思えますが、当時の様子がよく伝わってくる写真でした。人力車以外はまだ江戸時代が続いているような感じw

この隣にも富士山の写真がありました。雲から頭を出す様子が撮られています。

7 鹿島清兵衛 「二月七日 夜 京都御苑内ニ於ケル御列ノ圓 其七 英照皇太后陛下御大葬写真帖より」
こちらは日本初のマグネシウムを閃光させて撮った英照皇太后の大喪の記録写真です。烏帽子を被った格好の人や軍服姿の人などが行列を作っていて、葬儀の儀式をしている訳ですが、かなり広い道で範囲も広いので これをフラッシュ撮影しようとしたらえらいことになりそうです。実際には連続して閃光させながら撮っていたとのことで、日本初の夜間撮影が大変だった様子も伺えました。

8 鹿島清兵衛 「鏡に映る ぽん太」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている写真で、この女性はキリンビールのポスターのモデルに採用された「ぽん太」という芸姑です(その写真を撮ったのも鹿島清兵衛) ぽん太は後に「東に新橋の ぽん太あり」と言われるほどの名姑となったそうで、17歳で鹿島清兵衛の子を身ごもった為に清兵衛に身請けされました。それによって清兵衛は鹿島家から勘当されたようですが、2人の間には何と12人も子供が生まれたそうです。この写真では鏡の横に座りじっと自分の顔を観ている様子となっています。顔は鏡ごしにしか見えない構図が面白いかな。何処と無く絵画的なセンスを感じさせる1枚でした。

22 鹿島清兵衛 「鶴の背中で笛を吹く女性」 ★こちらで観られます
こちらも彩色された写真で、鶴の上に立って空を飛び、笛を吹いている女性が撮られています。横目でチラッとこちらを観てるのが色っぽく思えます。それにしてもこんなファンタジックな場面を写真で撮ったというのが面白い。背景も雲だし、合成でもしたのかな? 明治の頃にこんなSFXみたいな写真があるのに驚きました。

24 鹿島清兵衛 「音無川の紅葉とそれを眺める女性の後ろ姿」 ★こちらで観られます
こちらは東京の王子にある音無親水公園に流れていた石神井川と、その周りの紅葉の様子が撮られています。手前にはそれを観ている着物の女性の姿があり、着色されて秋の風情溢れる風景となっています。かつてはこんな光景だったのかと思うと同時に、まるで理想郷のような美しさが印象的でした。

鹿島清兵衛は鹿島家に離縁され、東京の写真館は閉鎖して京都で再び開業したものの長く続かず、大坂で印刷業を営みました。しかしそれも失敗し、再び写真館を開きましたが、今度はマグネシウムの取扱を誤り爆発事故を起こし、親指を失ってしまい写真館も閉めたようです。その後は笛で再起を図り、名手となったそうで、体に無理を強いて舞台に出た為に亡くなったようです。ぽん太と一緒になってからは波乱万丈ですね…。

32 鹿島清兵衛 「女性像」
こちらは写真を絹地のハンカチに転用した写真応用美術品で、焼付を施しているようです。その売上は写真館の半分を閉めていたらしく、元大店の主人だけあって商才を感じます。着物を着てにこやかに笑っている肖像で、記念に撮ったような写真でした。


ということで、点数は少なかったものの当時としては画期的な写真があり、驚きのある内容となっていました。調子に乗りすぎて後半生は悲惨な感じですが、それでも写真を続けたのは相当に写真が好きだった証なのかもしれません。ここは無料で観ることができますので、六本木に行く機会があったら気軽に寄ってみるのもよろしいかと思います。

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