関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

特別展「三国志」 (感想前編)【東京国立博物館 平成館】

今日は写真多めです。10日ほど前の日曜日に上野の東京国立博物館 平成館で日中文化交流協定締結40周年記念 特別展「三国志」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 日中文化交流協定締結40周年記念 特別展「三国志」

【公式サイト】
 https://sangokushi2019.exhibit.jp/
 https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1953

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅

【会期】2019年7月9日(火)~9月16日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 3時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
入場まではすんなり行けたのですが、会場内はかなり混んでいて鑑賞するのに予想以上に時間がかかりました。今回は全作品 撮影可能となっているので写真を撮っている人が多いのも混雑の要因になっているかもw

さて、この展示は日本でも人気のある中国の魏、蜀、呉の三国時代について取り上げていて、その時代の品や各国の文化などを紹介する内容となっています。日本で『三国志』が語られる場合、大半は史実についてではなく 中国の明代に書かれた『三国志演義』から派生したものがほとんど(日本だとそれを元にした吉川英治の『三国志』)で、史実をベースにしたフィクションと言えます。この展示では史実の当時の品と 『三国志演義』によって後世に創作された品などが並び、前者の割合が高めとなっていました。展示は7章構成となっていましたので、今日は第1会場のプロローグから三章まで気に入った作品の写真と共にご紹介していこうと思います。なお、三国志および三国志演義については説明すると限がないので、知っているを前提に記事を書いています。知らない方はすみません。


<プロローグ 伝説のなかの三国志>
まずは三国志にまつわる 後の時代に創作された品々を紹介するコーナーです。

横山光輝 「漫画『三国志』」
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こちらは1972年~87年にかけて連載された三国志の漫画の原画。私が一番親しんだ三国志はこれですw 正直、私の中ではこれとアニメ版のイメージが三国志のベースになってます。 小説版も読んだけど、やはり分かりやすいですからね。名作です。

この漫画の原画は各章の冒頭にいくつかありました。各章の趣旨に近いページの原画が展示されています。

「関帝廟壁画」 内モンゴル自治区フフホト市清水河県水門塔伏龍寺伝来 清時代・18世紀
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こちらは蜀の武将で、信義の厚さから後世で神格化された関羽雲長にまつわる壁画。6つほどの場面が描かれていて、主に蜀の活躍ぶりがテーマになっています。

お気に入りはこの「張飛、督郵を鞭打つ」のシーン。
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てっきり木から吊るして鞭打っていたのかと思ってましたw 張飛の真っ直ぐだけど短気な性格が如実に現れているシーンに思いますが、正史では劉備がやったのではないか?という説を聞いたことがあります。

他にも諸葛亮が三顧の礼で出山するシーンを描いた掛け軸などもありました。

「関羽像」 明時代・15~16世紀
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非常に威厳のある関羽の像。16世紀以降は恰幅が良くなり髭も増えるなど誇張されていったそうですが、この像は神格化の表現はしていないようです。リアルで、この展覧会随一の名品だと思います。

張玉亭 「関羽・張飛像」 清時代・19世紀
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こちらは曹操の元で客人となっていた関羽が帰ってきた際、張飛は関羽が寝返ったと勘違いしたものの その後に誤解が解けて謝っているシーン。厳しい感じだけど張飛はえらく小物感があるようなw 関羽も完全にブチ切れてるように観えましたw

「趙雲像」 安徽省亳州市花戯楼伝来 清時代・17~18世紀
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こちらは趙雲が単騎で劉備の子 阿斗を救出したシーンを彫刻にしたもの。懐に阿斗が入っているのが可愛いw とは言え、この子はろくでもない暗君になって蜀を滅ぼすことになると思うと、趙雲の無駄骨ぶりが哀しい。

「三国故事図」 清時代・18~19世紀
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こちらは貂蝉(しょうぜん・ちょうせん)によって董卓と呂布の間に亀裂を生じさせたシーン。貂蝉は架空の人物らしいですが、ハニートラップの典型で、その身を犠牲にして2人を仲違いさせた功労者。呂布=裏切り者のイメージはこの女性も一枚噛んでますね。


<第一章 曹操・劉備・孫権―英傑たちのルーツ>
続いては三国志の各国のルーツについてのコーナーです。父祖伝来の勢力基盤を引き継いだ魏の曹操、漢皇室の血統を自認して漢王朝復興を掲げた蜀の劉備、海洋ネットワークを駆使して勢力を伸ばした呉の孫権。3者3様のルーツを当時の文物から探る章となっていました。

NHK 人形劇三国志 「曹操」
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こちらは1982~84年にNHKで放送された人形劇の人形。抜け目無さそうな顔をしてますね…。曹操の一家は漢王朝創立の功臣の曹参から名家のようで、曹操が生まれた頃も有力な豪族だったようです。 曹操ってCao Caoって読むのかと、妙な所が気になりましたw

勿論、劉備と孫権の人形もありました。他にも後の章で何人か出てきます。

「玉豚」 安徽省亳州市董園村1号墓出土 後漢時代・2世紀 
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こちらは玉で出来た豚で、死後の世界でも豚が食べられるようにとの願いで埋葬されたものだそうです。これが埋まっていた墓は曹操の父(曹嵩)と夫人の墓ではないかとのことです。伏せてる豚みたいで可愛らしい。

「玉装剣」 河北省保定市満城区中山靖王劉勝夫婦墓出土 前漢時代・前2世紀
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こちらは劉備の祖と伝わる中山靖王劉勝の銅剣。昔は美しく飾っていた宝剣だったと考えられるようですが、今は剣と玉器のみ残っているようです。この時代から青銅から鉄製に代わりつつあったらしく、これが青銅製宝剣の最後の時代のものなのだとか。


「貨客船」 広西チワン族自治区貴港市梁君垌14号墓出土 後漢~三国時代(呉)・3世紀
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孫権は孫子を先祖に持ち、父の孫堅が海賊退治と黄巾の乱で勢力を広げ、現在の広東省やベトナム辺りと交易を掌握して富を築きました。これは当時の交易の舟らしく、底がなだらかなので浅い河川でも航行できたようです。呉は海に強いイメージがあるかな。


<第二章 漢王朝の光と影>
続いては三国時代の直前の漢王朝の末期に関するコーナーです。漢は巨大な帝国でしたが、政争で疲弊して行き 黄巾の乱などで混迷を深めていきました。

「獅子」 山東省淄博市臨淄県学署旧蔵 後漢時代・2世紀
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こちらは有力者の墓にあったと考えられる獅子像。漢王朝時代には実際に西域から獅子が献上されたこともあったそうで、実際にライオンを観て作った可能性もあるようです。顔やたてがみにリアリティがあるので、確かに姿を知っていたのではないか?と思わせます。

こちらは獅子像の首筋にある銘文。
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「洛陽で作られた獅子」という意味の銘文のようです。洛陽は当時の都で、遠い国の動物が来るほど栄えていたんでしょうね。

184年に起きた黄巾の乱を抑えようと地方の武将に頼んだ結果、群雄割拠を招いて漢王朝は弱体化していったようです。中でも董卓は洛陽に入った後に洛陽を焼き払い、漢王朝も末期を迎えていくことになります。

「儀仗俑」 甘粛省武威市雷台墓出土 後漢時代・2~3世紀
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こちらは張将軍という有力者の墓の副葬品で、董卓の武将だった可能性もあるそうです。やたら手が長いのがちょっと怖いけど、精巧に出来ていて埋葬された人物の位の高さが伺えました。

「[倉天] 磚」 安徽省亳州市元宝坑1号墓出土 後漢時代・2世紀
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こちらは黄巾の乱のスローガン「蒼天は死に、黄天が立とうとしている」とよく似た碑文。黄巾の乱は太平道という原始道教の教団が中心だったようで、この時代は人口減少や寒冷化など不安の多い中で勢力を伸ばしたようです。中国の歴史って、ちょくちょく宗教で国が傾きますよね。

「[天帝使者] 印」 陝西省宝鶏市陽平郷居家村出土 後漢時代・2世紀
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こちらは「天の最高神の使い」という意味の印章。太平道などの原始道教が役所の印章を真似て使用していたようです。可愛らしいけど、やはり亀がモチーフなのは道教っぽさを感じます。

ちなみに太平道は現在の道教の源流の1つになっているようです。何回も帝国が勃興しては消えていったのに、何だかんだで宗教は強いですね…w

「銅製食器 案、盤、耳杯、碗、箸」 河北省涿州市上念頭磚室墓出土 後漢時代・2世紀
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こちらは墓に納める為に作られた非実用的な食器セット。それでも当時の食事の様子が分かるようです。これだけ観ると現代ともそんなに違わないような…w 何を食べていたのかのほうが気になりました。

「多層灯」 河北省涿州市凌雲闊丹工地1号墓出土 後漢時代・2世紀
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こちらは死後の世界を照らす灯り。かなり凝った作りで、これも埋葬された人の身分が高そうですね。造形の単純化が面白い。

「五層穀倉楼」 河南省焦作市山陽区馬作出土 後漢時代・2世紀
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こちらは漢王朝最後の皇帝の献帝が魏の文帝に譲位した後、余生を送った地から出土した品。こんな立派な楼閣ができるほど豊かな土地なので、献帝は厚遇されていたようです。最後の皇帝というと悲運な感じもしますが、苛烈な終わり方でないだけマシだったのかも。


<第三章 魏・蜀・呉―三国の鼎立>
続いては三国の覇権争いの時代のコーナーです。ここには武具や当時の文物などが並んでいました。

この部屋に入ってすぐにこの光景が広がっていて驚きました。
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弓矢が雨あられと飛んでいく様子を表現しています。赤壁の戦いなどを彷彿とさせました。

「弩」 湖北省荊州市紀南城出土 三国時代(呉)・黄武元年(222)
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呉の元号や作者の名前まで刻まれた弓。一種のボウガンみたいな。当時の武器でも特に重要な武器です。

「戟」 四川省綿陽市松林坡1号墓出土 後漢~三国時代(蜀)・2~3世紀
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こちらは「戟(げき)」という三国志時代のスタンダードな武器。突くだけでなく、横に伸びた部分で相手を引き倒す使い方もしたそうです。かなり実用的な作り。

「鉤鑲」 四川省綿陽市白虎嘴崖墓出土 後漢~三国時代(蜀)・3世紀
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こちらは盾の一種で、突起の部分で攻撃を受けて押し返すことが出来たようです。両手にこれを付けて戦う武将もいたようですが、実用的だったんでしょうか。 このトリッキーさは中二病っぽくて好きですw

「鏃」 湖北省赤壁市赤壁古戦場跡出土 後漢~三国時代(呉)・3世紀
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こちらは赤壁の戦いで使われた「鏃(ぞく)」という矢。先程の「弩」から発射されたもので銅製と鉄製が混じっているようです。意外と小さいですが、1つでも当たったら大怪我じゃ済まないでしょうね。

「軍船模型」
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こちらは2015年に作られた当時の呉の「楼船」の模型。望楼を供えていたと記録されているようで、かなりの大型船です。呉は水上戦に秀でてたでしょうね。造船技術も相当だったと思われます


ということで、この辺までが第一会場となります。史実と演義は違うと分かっていながらも、実際に当時の文物などを観ると 一層に三国志の世界に入り込めるように思えました。 後半も驚くべき品が展示されていましたので、次回は第ニ会場の様子をご紹介の予定です。

  → 後編はこちら
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