関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ-線の魔術 (感想前編)【Bunkamura ザ・ミュージアム】

今日は写真多めです。先週の日曜日に渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ-線の魔術」を観てきました。この展示は一部で撮影可能となっていましたので、前編・後編に分けてじっくりご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ-線の魔術

【公式サイト】
 https://www.ntv.co.jp/mucha2019/
 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/19_mucha/

【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅

【会期】2019/7/13(土)~9/29(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
チケットはすんなり買えたものの、中はかなり混んでいてあちこちで列や人だかりができるような感じでした。さらにミュージアムショップはかなり並んでいたかな。これから行こうとされている方はなるべく時間を多めにスケジュールしておいたほうがよろしいかと思います。

さて、この展示はアール・ヌーヴォーの代表的なポスターデザインなどで有名なアルフォンス・ミュシャに関する展示です。ミュシャの展示は頻繁に開催されていて、最近だと2017年の国立新美術館での大型展示(ブログ休止中)が開催されるなど人気の高い画家と言えます。その為、今回の展示もまた似たような内容かと予想したら、前半はオーソドックスなものの 後半はミュシャに影響されたフォロワーを漫画や映画・音楽の世界にまで広げて観るという一風変わった企画となっていました。5章構成で1~3がミュシャ、4~5章はミュシャと共に影響の様子を観る感じです。今日はそのうち、3章の途中までご紹介していこうと思います。なお、解説はそれほど多くなかったので、過去の記事などをご参照ください。

 参考記事:
  アルフォンス・ミュシャ展 感想前編(小田急新宿店)
  アルフォンス・ミュシャ展 感想後編(小田急新宿店)
  アルフォンス・ミュシャ展 (三鷹市美術ギャラリー)
  ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展 パリの夢 モラヴィアの祈り 感想前編(森アーツセンターギャラリー)
  ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展 パリの夢 モラヴィアの祈り 感想後編(森アーツセンターギャラリー)
  
  
<1章 ミュシャ様式へのインスピレーション>
まずはミュシャが影響を受けた芸術の数々についてのコーナーで、チェコのモラヴィアの少年時代からポスターデザインとして名声を築く1890年代までの足取りと共に紹介されています。ミュシャの初期作品など共に、様式の成立に寄与した様々な作品が並んでいました。

1 アルフォンス・ミュシャ 「磔刑像」 ★こちらで観られます
こちらはミュシャが8歳の時に描いたキリストの磔刑像です。全体的にバランスが細いように観えますが、これが8歳の作品とは思えないほどの完成度です。水彩で十字架の木の質感や、キリストの血が滴り脇腹を刺されている様子などもリアルに描いています。解説によると、ミュシャは音楽が好きだったそうで、教会が好きで音楽が好きになったのか、音楽が好きで教会が好きになったのか どっちか本人でも分からないという言葉を残しているようです。幼くして非凡な才能があったことが伺えました。

この辺には香炉や ガラス画による宗教画など、教会関係の品などがありました。また、他にはモラヴィアの民芸品の花瓶があり、これはアール・ヌーヴォー的な要素を感じました。ミュシャは民芸や民族衣装のモチーフを取り入れているので、こうした品は間違いなく影響を与えていそうです。

その先には日本や中国の品がありました。七宝の花瓶、真鍮製の箱、刺繍、浮世絵などが並び、当時のジャポニスムも盛り上がりと共に紹介されています。この辺はアール・ヌーヴォーの成立に深く関わるので、当然ミュシャも研究してたのではないかと思います。アール・ヌーヴォーの仕掛け人とも言えるジークフリート・ビングによる『芸術の日本』などもありました。

8 ハンス・マカルト 「マカルト・アルバム」
こちらはウィーンで活躍したハンス・マカルトのアルバムです。ミュシャは1879年から2年間ほど舞台美術の工房で見習いとして働いていたようで、こうした作品を参考にしていたようです。ここでは広くて宮殿のようなアトリエの内部の様子が描かれて、細密で華麗な印象を受けます。ちなみにハンス・マカルトに大きな影響を受けた画家にグスタフ・クリムトがいます。クリムトとミュシャの優美な女性像などに共通するものを感じるのはハンス・マカルトを源流の1つにしているからかもしれませんね。
 参考記事:クリムト展 ウィーンと日本 1900 感想前編(東京都美術館)

17 オーウェン・ジョーンズ 「仏語版 装飾の文法」
こちらは建築家オーウェン・ジョーンズが世界の装飾様式を集めたデザインの百科事典のような本です。アジア風の文様のページを展示していましたが、カラフルで異国情緒を感じます。この本はアーツ・アンド・クラフツ運動やアール・ヌーヴォーにも影響を与えているようなので、美術史上で意義の大きい本だと言えそうです。


<2章 ミュシャの手法とコミュニケーションの美学>
続いてはミュシャの挿絵や素描に関するコーナーです。ミュシャはパトロンを得てパリのアカデミー・コラロッシに在籍していたのですが、パトロンからの学費援助が突然打ち切られたことで経済的独立を余儀なくされ、得意の素描で身を立てていくことにしました。1889年から本格的に挿絵画家として働き始め、挿絵を美術作品とみなしてコンセプトからスケッチ、習作というアカデミックな手段と方法で挿絵を制作していきました。そして1890年代までに出版社や編集者にはよく知られた存在となり、高い評価を得ていたようです。ここにはそうした頃からの作品が並んでいました。

19 アルフォンス・ミュシャ 「ミュシャ自画像、ミュンヘンのアトリエにて」
こちらは油彩で、テーブルで何かを描いている自画像です。椅子に腰掛けていて、傍らにその絵を除き混む赤い服の女性の姿も描かれています。落ち着いた色調で写実的な画風で、ポスター作品とはだいぶイメージが異なって静かな雰囲気です。油彩とポスターでは作風も違うのかな。中々貴重な作品です。

23 アルフォンス・ミュシャ 「風刺雑誌のためのページレイアウト、コマ割りマンガ風」 ★こちらで観られます
こちらは故郷の友人の風刺雑誌の為に描いたカリカチュア(戯画)的な作品です。コマ割りもあって確かに漫画っぽさがあるかな。やたら誇張されて面白おかしい雰囲気となっていました。これも後の作品とはだいぶ印象が違います。

32 アルフォンス・ミュシャ 「幻影:『ファウスト』の挿絵の習作」
こちらはアカデミー・ジュリアンにいた頃に描いた挿絵で、上半身裸のファウストと、その頭上から降りてくる悪魔(メフィスト?)が描かれています。ファウストは驚いていて、誇張した遠近感や強い明暗などと共にドラマチックな雰囲気です。緻密でアカデミックな作風で、むしろ晩年の画風に近いようにも思えました。

この近くにはミュシャの挿絵の本や、素描などが並んでいました。人物素描が多いかな。

42-b アルフォンス・ミュシャ 「サロメ:『レスタンプ・モデルヌ(現代版画)』誌 1897年6月号No.2」
こちらは既にアール・ヌーヴォー風の画風になった後の作品で、版画家たちの作品集のような冊子です。のけぞって丸い物を持って踊るサロメ(その褒美で聖ヨハネの首を所望する悪女)が描かれていて、薄く透けた布や睥睨するような目つきが妖艶さを漂わせていました。

この辺からアール・ヌーヴォー的な作品が並んでいました。

50 アルフォンス・ミュシャ 「『ハースト・インターナショナル』誌・表紙(1922年1月号)」
こちらはアメリカの雑誌の表紙で、雪の女王と花を持った裸の男の子が描かれています。隣には同じポーズの写真が展示されていて、升目状にグリッドが引かれていて、素描に生かしたことが見て取れました。写真と完成した絵を比べると、ますますミュシャのデザインセンスに驚かされます。この頃になるとだいぶ画風も変わっているのも感じられました。


<3章 ミュシャ様式の「言語」>
続いてはミュシャの代表的な様式に関するコーナーです。この章の一部だけ撮影可能となっていました。ミュシャは大女優のサラ・ベルナールのポスターを手掛けて大評判になったことで有名になりました。ポスターを芸術に押し上げるだけでなく、その後6年間サラ・ベルナールの専属デザイナーとして舞台や衣装のデザインも担当しています。また、観賞用の装飾パネルを企画制作して大成功を収め、当時最先端だったアール・ヌーヴォーの典型として人気を博しました。その後、祖国に帰ってからも進化し、やがて大作の「スラブ叙事詩」に応用されています。ここにはそうしたミュシャの魅力がよく分かる作品が並んでいました。

まずは素描のコーナーで、人物だけでなくや手足・トルソといった体の一部を描いたもの、ドレープなど細部を描いたものなどがありました。ここにも同じ構図の写真が並んでいて、素描に写真を活用していたことが伺えました。

52 アルフォンス・ミュシャ 「ジスモンダ」
こちらがミュシャの出世作で、女優のサラ・ベルナールの立ち姿が大きく描かれています。クリスマス休暇だったポスター画家の代わりに仕事を引き受けてこれを手掛け、サラ・ベルナールに非常に気に入られて世間でも大評判となっていきました。上半身と下半身を分けて制作しているようで、下半身は急いで完成させたのでミュシャは不安だったとのことです。確かに全体的なバランスとしては妙な感じもしますが、圧倒的に可憐な印象を受けるのでマイナスに感じることはないかな。運命的な作品ですね。

この辺はサラ・ベルナールの舞台のポスターが多めでした。そしてその後に撮影可能コーナーがあります。撮影は2列目からのみ可能なので、ズームがないと結構つらいかもw

アルフォンス・ミュシャ 「冬の景色の中にいる少女」
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こちらはアール・ヌーヴォーっぽさはないパステル画。どこか寂しげで寓意的な感じもします。何かの作品のための素描かな?

アルフォンス・ミュシャ 「黄道十二宮」
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こちらは装飾パネルで、カレンダー用に考案された作品です。円形の中に12星座が描かれていて、優美な印象を受けます。ミュシャの代表作の1つで、真っ先にイメージするのはこの画風ではないかと思います。

アルフォンス・ミュシャ 「リュイナール・シャンパン」
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こちらは広告の為のデザイン。シャンパンを持ってたつ女性像で、髪の広がりなどにミュシャの個性を感じます。

この近くにはタバコの「ジョブ」のポスターもありました。これも代表的な傑作の1つです。

アルフォンス・ミュシャ 「トラピスチティーヌ」
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こちらもミュシャの典型的な画風の作品。背景に円形を重ねた幾何学模様があるのが特徴じゃないかな。花やドレープなども優美さを引き立ててますね。

アルフォンス・ミュシャ 「サロン・デ・サン ミュシャ展」
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こちらはミュシャの大回顧展のポスター。着ているのはモラヴィアの民族衣装で、祖国の受難と未来への希望を表すイバラの花がパネルにかかれています。ミュシャは後にスラブ叙事詩を手掛けるなど祖国に強い愛があり、祖国の為にお札のデザインなども手掛けているほどです。ここでもそれが垣間見られますね。

アルフォンス・ミュシャ 「絵画 連作[四芸術より]」
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こちらは四芸術の中の絵画を擬人化した女性像。背景の円と人物がQの字を描く「Q型方式」がこの連作では顕著にあらわれています。この形式は後のアーティストたちに多く取り入れられていくことになります(次の章で紹介されています)

アルフォンス・ミュシャ 「スラヴィア:プラハ、スラヴィア保険相互銀行のためのポスター」
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こちらもQ字方式で、祖国に帰って祖国の為に描いた作品。若干、作風が変わっているように感じるかな。膝においた剣は平和主義と専守防衛の精神を表しているとのことでした。

アルフォンス・ミュシャ 「カサン・フィス印刷所」
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こちらは大型のポスター。丸い舵のようなのは印刷所のプレスのレバーかな? 各業態の特徴を踏まえつつミュシャ風にしているように思えました。

アルフォンス・ミュシャ 「ルビー 連作[四つの宝石]より」
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こちらはルビーの擬人像。全体的に赤が多くてルビーの印象によく合います。単純化された花も非常に優美。

他の3つの宝石も並んでいました。どれも見応えがあります。

アルフォンス・ミュシャ 「浜辺のアザミ」
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こちらはノルマンディー風の女性像で、ブルターニュ風の女性を描いた「崖に咲くヒース」と2点1組になっています。ミュシャは民俗衣装をよく作品に取り入れているけど、この服は他では観ないかも。可憐な雰囲気です。


ということで、3章の途中ですが次回も写真を使おうと思うので今日はここまでにしておこうと思います。前半はミュシャの流麗な作品の数々が並び、しかも撮影可能な作品もあるのでミュシャ好きには満足度の高い内容ではないかと思います。後半は趣向が変わって驚きの多い内容となっていましたので、次回はそちらをご紹介の予定です。

 → 後編はこちら

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