関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

ブラティスラヴァ世界絵本原画展―BIBで出会う絵本のいま 【うらわ美術館】

前回ご紹介したカフェに寄った後、浦和のうらわ美術館で「ブラティスラヴァ世界絵本原画展―BIBで出会う絵本のいま」という展示を観てきました。

DSC02301.jpg

【展覧名】
 ブラティスラヴァ世界絵本原画展―BIBで出会う絵本のいま

【公式サイト】
 https://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/exhibition/whatson/exhibition/p064849.html

【会場】うらわ美術館
【最寄】浦和駅

【会期】2019年7月13日(土)~8月28日(水)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はスロヴァキア共和国の首都ブラティスラヴァで2年ごとに開催されている世界最大規模の絵本原画コンクール「ブラティスラヴァ世界絵本原画展(Bienniel of Illustrations Brastislavaで略称BIB)」に関する展示です。ブラティスラヴァ世界絵本原画展は1967年に第1回が開催された半世紀に及ぶ歴史があり、実験的でユニークな作品が集まる原画展らしく、1作家につき10点程度と絵本2冊まで、1ヶ国あたり15名の応募が可能となっているようです。この展示ではそのBIBの2017年の作品を3つの部に分けて紹介していて、1部:2017年の受賞作、2部:2017年の日本代表作、3部:2017年に特に注目された4ヶ国の作品 という構成となっていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1部 BIB2017受賞作家>
まずは2017年の受賞作に関するコーナーです。第26回となる2017年は373組488冊2657点の原画が出品されたそうで、9名の審査員が4日間かけて審査しグランプリ1件、金のりんご賞5件、金牌5件、出版社賞4件の受賞となったようです。ここにはそうした選りすぐりの作品が並んでいました。

1-16 ペテル・ウフナール 「ボイニツェに暮らすブーベルたち」 子ども審査員賞
こちらはスロヴァキアの8~14歳の子供審査員7名によって選ばれた作品で、小さな架空の生き物と人間の交流を描くファンタジーです。淡く幻想的な色彩で、シュールさと懐かしさを感じる絵柄となっていました。特に色の使い方が美しい作風です。

この展示では実際の絵本も置かれていて、手にとって読むことも出来ます。外国語で読めなくても絵が素晴らしい作品が多いので、これは嬉しい。この辺に並んでいた受賞作は西洋妖怪のようなものが出てくる絵本が多かったように思いますw

1-11 ロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴ 「うるさく、しずかに、ひそひそと」 金牌
こちらは赤・青・黄色といった限られた色でビルや道路、人々などを単純化して幾何学的に描いた絵柄となっています。様々な音の大きさをデシベルで説明をしているようで、核爆発は220db、ツングースカの隕石は315dbとか 最強クラスの音まで載っています。また、沢山の文字が雨のように降ってきている場面があり、「時には静けさで過ごすのも必要」と書いてあり、傘で降ってくるような街の音をブロックしているようなシーンとなっていました。この示唆に富んだ場面とモダンな絵柄はかなり秀逸でした。

ロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴ 「イヴァン・フランコーのすべて」
こちらは先程と同じ作家の別の絵本で、様々な技法を使った絵柄となっています。ロシア・アヴァンギャルドやアウトサイダー・アートみたいな表現もあって、多彩な表現を楽しめます。この作家は今回の展示でも特に面白く気に入りました。

1-7 ハンネ・バルトリン 「すべてについての話」 金牌
こちらは今回の展示のポスターにもなっている作品。会場の外で1つのページを拡大したコピーを撮影できました。
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真っ赤なヌリカベみたいなw しかしこの作品は実は深くて、『あなたについての話』という箇所では「思考があなたなら、何も考えていない時のあなたは一体誰?」といった哲学的な問いをしてくる内容となっています。淡い水彩の具象だったり、抽象だったりと絵柄も様々で流石は受賞作といった感じでした。

1-9 ミロコマチコ 「けもののにおいがしてきたぞ」 金牌 ★こちらで観られます(pdf)
こちらはかなり勢いを感じるプリミティブな絵柄の作品。強烈な色彩と素早い筆致で、草むらに潜む虎などの獣を描いています。割と怖いので子供が怖がらないのかな?w 一見すると子供の絵のような感じにも観えますが、アートとしても非常に見応えがあると思います。

この近くにはミロコマチコ氏が受賞した金牌と賞状、アイディア帳なども展示されていました。

1-3~5 荒井真紀 「たんぽぽ」 金のりんご賞 ★こちらで観られます(pdf)
こちらは道端のたんぽぽの一生を水彩で丁寧に描いた作品です。地下深くまで根が伸びている様子の断面や、花が綿毛に変わっていき枯れて行く様子など 普段観られないような生態までしっかりと表現しています。繊細で瑞々しい絵柄で、透明感がありました。
荒井真紀 氏は朝顔とヒマワリに関して同様の作品があるようで、これが3作目のようです。近くにはラフ画やトロフィー、賞状などもありました。金のりんご賞のトロフィーは本当にりんごの形をしていますw

1-12 ガング・デザイン/パニ・ユレック 「いたずら雑種犬をつくろう」 出版社賞 ★こちらで観られます(pdf)
こちらは多様性の大切さを子供に伝えるプロジェクトから生まれた参加型の絵本で、40種類の純血種の犬のカードの体の部分を組み合わせ、雑種犬を作るというコラージュ遊びの仕掛けとなっています。入れ物も犬の形になっていて、耳と舌が箱からはみ出しているのが可愛いw 面白いだけでなく現代的な主題で興味深い作品です。

1-1 ルトウィヒ・フルベーダ 「鳥たち」 グランプリ
こちらはグランプリ作品で、街に立つ2つの彫像の物語となっています。2人は愛し合っているのですが、触れ合うことはできず 2人の間を結ぶのは行き交う鳥たち…という話です。線の細い写実性のある素描と、細い点線が並ぶ抽象的で色とりどりな渦のような背景が特徴で、幻想的な印象を受けます。空の色も郷愁を誘い、ちょっと内容も読んでみたくなる画風でした。(置いてあるのは外国語なので中身は分かりませんでしたが…w)


<第2部 BIB2017日本代表作家-絵本づくりとそのひみつ>
続いては日本代表のコーナーです。2017年は15組16タイトルが選ばれたそうですが、日本では年間1000冊も新刊絵本が出るので狭き門となっているようです。

2-1 あずみ虫 「わたしのこねこ」
こちらは女の子が飼っている子猫の気持ちが分かるようになるまでの話です。切り絵の優しい絵柄と色彩で、小さい黒猫と一緒に寝たりしている微笑ましい場面となっています。解説によるとラフを描いてからハサミで形を作ってアクリルで色付けしているそうで、あずみ虫 氏は実際に黒猫を一時期飼っていたことがあるそうです。心温まる作風でした。

この近くにはアイヌの文化を描いた絵本などもありました。

2-10 町田尚子 「ネコヅメのよる」 ★こちらで観られます(pdf)
こちらも猫を描いた絵本ですが、ちょっと怖い猫ですw 瞳が細くなった猫の顔を画面いっぱいに描いたり、暗闇の中にいる猫の集団を描いたり、大量の猫が夜の住宅街を行進しているような絵があったり… 化け猫みたいw 中身も気になるので読みたかったのですが、子供たちが読んでいたので諦めました…。気になる…。

この近くには原爆ドームを擬人化したスズキコージ「ドームがたり」や点字を使った村山純子「さわるめいろ」などもありました。「さわるめいろ」の原画は点々で描かれていますが、本ではツブツブの突起があって、指で追いながら迷路を楽しむことができました。

2-13 ヨシタケシンスケ 「このあとどうしちゃおう」
こちらはほのぼのした漫画のような絵柄で、死ぬ前にお爺さんが考えてノートに残した死後の世界を描いています。天国はこんな所という絵では、温泉があるとか、有名人に結構会えるとか、お刺身が美味しいとか、発想が素朴で可愛いw しかし、お爺さんは本当はすごく悲しくて、このノートを残したのでは?というシーンが何とも言えない寂しさを出しています。満員の喫茶店で1人ぽつんと座っている様子で、リアルな孤独感と共に考えさせられるものがありました。


<第3部 いま気になる絵本の国-中国・イラン・イスラエル・韓国>
最後は注目の4つの国の絵本についてです。中国・イラン・イスラエル・韓国の作品がいくつか並んでいました。

3-2 熊亮 「風と一緒に散歩」 中国
こちらは西遊記の孫悟空の話で、モノクロームの水墨画のような感じです。絵柄は独特で、かなり勢いがあり力強く原始的なパワーがありました。

他の中国の絵本は割と日本の絵本に似た雰囲気のが多いように思えたかな。日中戦争をテーマにした絵本なんかもあるのが如何にも中国的ですが。

3-30 リオラ・グロスマン 「愛の羽」 イスラエル
こちらは孔雀のオスがメスに好かれたくて自慢の羽を見せるものの、自惚れ屋は嫌いと言われる物語です。それでもメスに好かれるために自分の羽を欲しがる動物たちに羽を抜き与えていき、その辛さに耐えていくうちに愛は与えるものだと気づくというストーリーのようです。社会主義的な側面や宗教的な示唆があるのはイスラエルっぽい所でしょうか。絵は子供向けらしい優しく可愛い絵柄でした。

3-37 リ・ジョンホ 「散策」 韓国
こちらは巨大な本をモチーフにしたシュールな光景の作品。巨大な本の側面がカーテンのようになっていて中に入ろうとしている子供の絵や、宇宙の本を広げ、それを釣り堀のように釣りをしている子供の絵など、超現実的で静けさを感じる作風となっています。色も落ち着いていて神秘性の高い絵本でした。

3-18 ファルシード・シャフィーイー 「ザッハーク」 イラン
こちらは11世紀に完成した民族叙事詩『シャー・ナーメ(王書)』に登場する肩から蛇を生やした邪悪な王の物語です。様々なエピソードを紹介しているようですが、抽象がかった王の顔や馬の影絵など、表現が現代的です。現代アートや素朴な版画を思わせる斬新さがあって絵として面白い作品でした。


出口あたりで観覧者による人気投票がありました。金と銀が子供で、ピンクが大人による投票です。
DSC02306.jpg
一番人気がありそうなのは町田尚子 氏の「ネコヅメのよる」だったかな。怖いけど子供にも人気w

私はロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴ 「うるさく、しずかに、ひそひそと」に一票
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子供より大人に人気でした。 この芸術性を理解できる子供は有望でしょうねw


ということで、かなり多様な作風を観ることができて満足度高めでした。最近の絵本はこんなに芸術性が高いのかと驚かされます。親子連れが多く訪れていましたが、子供だけでなく親御さんもアートとして十分に楽しめると思います。この夏、親子で観るのにオススメの展示です。
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