ブラティスラヴァ世界絵本原画展―BIBで出会う絵本のいま 【うらわ美術館】
前回ご紹介したカフェに寄った後、浦和のうらわ美術館で「ブラティスラヴァ世界絵本原画展―BIBで出会う絵本のいま」という展示を観てきました。
【展覧名】
ブラティスラヴァ世界絵本原画展―BIBで出会う絵本のいま
【公式サイト】
https://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/exhibition/whatson/exhibition/p064849.html
【会場】うらわ美術館
【最寄】浦和駅
【会期】2019年7月13日(土)~8月28日(水)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はスロヴァキア共和国の首都ブラティスラヴァで2年ごとに開催されている世界最大規模の絵本原画コンクール「ブラティスラヴァ世界絵本原画展(Bienniel of Illustrations Brastislavaで略称BIB)」に関する展示です。ブラティスラヴァ世界絵本原画展は1967年に第1回が開催された半世紀に及ぶ歴史があり、実験的でユニークな作品が集まる原画展らしく、1作家につき10点程度と絵本2冊まで、1ヶ国あたり15名の応募が可能となっているようです。この展示ではそのBIBの2017年の作品を3つの部に分けて紹介していて、1部:2017年の受賞作、2部:2017年の日本代表作、3部:2017年に特に注目された4ヶ国の作品 という構成となっていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<第1部 BIB2017受賞作家>
まずは2017年の受賞作に関するコーナーです。第26回となる2017年は373組488冊2657点の原画が出品されたそうで、9名の審査員が4日間かけて審査しグランプリ1件、金のりんご賞5件、金牌5件、出版社賞4件の受賞となったようです。ここにはそうした選りすぐりの作品が並んでいました。
1-16 ペテル・ウフナール 「ボイニツェに暮らすブーベルたち」 子ども審査員賞
こちらはスロヴァキアの8~14歳の子供審査員7名によって選ばれた作品で、小さな架空の生き物と人間の交流を描くファンタジーです。淡く幻想的な色彩で、シュールさと懐かしさを感じる絵柄となっていました。特に色の使い方が美しい作風です。
この展示では実際の絵本も置かれていて、手にとって読むことも出来ます。外国語で読めなくても絵が素晴らしい作品が多いので、これは嬉しい。この辺に並んでいた受賞作は西洋妖怪のようなものが出てくる絵本が多かったように思いますw
1-11 ロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴ 「うるさく、しずかに、ひそひそと」 金牌
こちらは赤・青・黄色といった限られた色でビルや道路、人々などを単純化して幾何学的に描いた絵柄となっています。様々な音の大きさをデシベルで説明をしているようで、核爆発は220db、ツングースカの隕石は315dbとか 最強クラスの音まで載っています。また、沢山の文字が雨のように降ってきている場面があり、「時には静けさで過ごすのも必要」と書いてあり、傘で降ってくるような街の音をブロックしているようなシーンとなっていました。この示唆に富んだ場面とモダンな絵柄はかなり秀逸でした。
ロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴ 「イヴァン・フランコーのすべて」
こちらは先程と同じ作家の別の絵本で、様々な技法を使った絵柄となっています。ロシア・アヴァンギャルドやアウトサイダー・アートみたいな表現もあって、多彩な表現を楽しめます。この作家は今回の展示でも特に面白く気に入りました。
1-7 ハンネ・バルトリン 「すべてについての話」 金牌
こちらは今回の展示のポスターにもなっている作品。会場の外で1つのページを拡大したコピーを撮影できました。

真っ赤なヌリカベみたいなw しかしこの作品は実は深くて、『あなたについての話』という箇所では「思考があなたなら、何も考えていない時のあなたは一体誰?」といった哲学的な問いをしてくる内容となっています。淡い水彩の具象だったり、抽象だったりと絵柄も様々で流石は受賞作といった感じでした。
1-9 ミロコマチコ 「けもののにおいがしてきたぞ」 金牌 ★こちらで観られます(pdf)
こちらはかなり勢いを感じるプリミティブな絵柄の作品。強烈な色彩と素早い筆致で、草むらに潜む虎などの獣を描いています。割と怖いので子供が怖がらないのかな?w 一見すると子供の絵のような感じにも観えますが、アートとしても非常に見応えがあると思います。
この近くにはミロコマチコ氏が受賞した金牌と賞状、アイディア帳なども展示されていました。
1-3~5 荒井真紀 「たんぽぽ」 金のりんご賞 ★こちらで観られます(pdf)
こちらは道端のたんぽぽの一生を水彩で丁寧に描いた作品です。地下深くまで根が伸びている様子の断面や、花が綿毛に変わっていき枯れて行く様子など 普段観られないような生態までしっかりと表現しています。繊細で瑞々しい絵柄で、透明感がありました。
荒井真紀 氏は朝顔とヒマワリに関して同様の作品があるようで、これが3作目のようです。近くにはラフ画やトロフィー、賞状などもありました。金のりんご賞のトロフィーは本当にりんごの形をしていますw
1-12 ガング・デザイン/パニ・ユレック 「いたずら雑種犬をつくろう」 出版社賞 ★こちらで観られます(pdf)
こちらは多様性の大切さを子供に伝えるプロジェクトから生まれた参加型の絵本で、40種類の純血種の犬のカードの体の部分を組み合わせ、雑種犬を作るというコラージュ遊びの仕掛けとなっています。入れ物も犬の形になっていて、耳と舌が箱からはみ出しているのが可愛いw 面白いだけでなく現代的な主題で興味深い作品です。
1-1 ルトウィヒ・フルベーダ 「鳥たち」 グランプリ
こちらはグランプリ作品で、街に立つ2つの彫像の物語となっています。2人は愛し合っているのですが、触れ合うことはできず 2人の間を結ぶのは行き交う鳥たち…という話です。線の細い写実性のある素描と、細い点線が並ぶ抽象的で色とりどりな渦のような背景が特徴で、幻想的な印象を受けます。空の色も郷愁を誘い、ちょっと内容も読んでみたくなる画風でした。(置いてあるのは外国語なので中身は分かりませんでしたが…w)
<第2部 BIB2017日本代表作家-絵本づくりとそのひみつ>
続いては日本代表のコーナーです。2017年は15組16タイトルが選ばれたそうですが、日本では年間1000冊も新刊絵本が出るので狭き門となっているようです。
2-1 あずみ虫 「わたしのこねこ」
こちらは女の子が飼っている子猫の気持ちが分かるようになるまでの話です。切り絵の優しい絵柄と色彩で、小さい黒猫と一緒に寝たりしている微笑ましい場面となっています。解説によるとラフを描いてからハサミで形を作ってアクリルで色付けしているそうで、あずみ虫 氏は実際に黒猫を一時期飼っていたことがあるそうです。心温まる作風でした。
この近くにはアイヌの文化を描いた絵本などもありました。
2-10 町田尚子 「ネコヅメのよる」 ★こちらで観られます(pdf)
こちらも猫を描いた絵本ですが、ちょっと怖い猫ですw 瞳が細くなった猫の顔を画面いっぱいに描いたり、暗闇の中にいる猫の集団を描いたり、大量の猫が夜の住宅街を行進しているような絵があったり… 化け猫みたいw 中身も気になるので読みたかったのですが、子供たちが読んでいたので諦めました…。気になる…。
この近くには原爆ドームを擬人化したスズキコージ「ドームがたり」や点字を使った村山純子「さわるめいろ」などもありました。「さわるめいろ」の原画は点々で描かれていますが、本ではツブツブの突起があって、指で追いながら迷路を楽しむことができました。
2-13 ヨシタケシンスケ 「このあとどうしちゃおう」
こちらはほのぼのした漫画のような絵柄で、死ぬ前にお爺さんが考えてノートに残した死後の世界を描いています。天国はこんな所という絵では、温泉があるとか、有名人に結構会えるとか、お刺身が美味しいとか、発想が素朴で可愛いw しかし、お爺さんは本当はすごく悲しくて、このノートを残したのでは?というシーンが何とも言えない寂しさを出しています。満員の喫茶店で1人ぽつんと座っている様子で、リアルな孤独感と共に考えさせられるものがありました。
<第3部 いま気になる絵本の国-中国・イラン・イスラエル・韓国>
最後は注目の4つの国の絵本についてです。中国・イラン・イスラエル・韓国の作品がいくつか並んでいました。
3-2 熊亮 「風と一緒に散歩」 中国
こちらは西遊記の孫悟空の話で、モノクロームの水墨画のような感じです。絵柄は独特で、かなり勢いがあり力強く原始的なパワーがありました。
他の中国の絵本は割と日本の絵本に似た雰囲気のが多いように思えたかな。日中戦争をテーマにした絵本なんかもあるのが如何にも中国的ですが。
3-30 リオラ・グロスマン 「愛の羽」 イスラエル
こちらは孔雀のオスがメスに好かれたくて自慢の羽を見せるものの、自惚れ屋は嫌いと言われる物語です。それでもメスに好かれるために自分の羽を欲しがる動物たちに羽を抜き与えていき、その辛さに耐えていくうちに愛は与えるものだと気づくというストーリーのようです。社会主義的な側面や宗教的な示唆があるのはイスラエルっぽい所でしょうか。絵は子供向けらしい優しく可愛い絵柄でした。
3-37 リ・ジョンホ 「散策」 韓国
こちらは巨大な本をモチーフにしたシュールな光景の作品。巨大な本の側面がカーテンのようになっていて中に入ろうとしている子供の絵や、宇宙の本を広げ、それを釣り堀のように釣りをしている子供の絵など、超現実的で静けさを感じる作風となっています。色も落ち着いていて神秘性の高い絵本でした。
3-18 ファルシード・シャフィーイー 「ザッハーク」 イラン
こちらは11世紀に完成した民族叙事詩『シャー・ナーメ(王書)』に登場する肩から蛇を生やした邪悪な王の物語です。様々なエピソードを紹介しているようですが、抽象がかった王の顔や馬の影絵など、表現が現代的です。現代アートや素朴な版画を思わせる斬新さがあって絵として面白い作品でした。
出口あたりで観覧者による人気投票がありました。金と銀が子供で、ピンクが大人による投票です。

一番人気がありそうなのは町田尚子 氏の「ネコヅメのよる」だったかな。怖いけど子供にも人気w
私はロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴ 「うるさく、しずかに、ひそひそと」に一票

子供より大人に人気でした。 この芸術性を理解できる子供は有望でしょうねw
ということで、かなり多様な作風を観ることができて満足度高めでした。最近の絵本はこんなに芸術性が高いのかと驚かされます。親子連れが多く訪れていましたが、子供だけでなく親御さんもアートとして十分に楽しめると思います。この夏、親子で観るのにオススメの展示です。

【展覧名】
ブラティスラヴァ世界絵本原画展―BIBで出会う絵本のいま
【公式サイト】
https://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/exhibition/whatson/exhibition/p064849.html
【会場】うらわ美術館
【最寄】浦和駅
【会期】2019年7月13日(土)~8月28日(水)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。
さて、この展示はスロヴァキア共和国の首都ブラティスラヴァで2年ごとに開催されている世界最大規模の絵本原画コンクール「ブラティスラヴァ世界絵本原画展(Bienniel of Illustrations Brastislavaで略称BIB)」に関する展示です。ブラティスラヴァ世界絵本原画展は1967年に第1回が開催された半世紀に及ぶ歴史があり、実験的でユニークな作品が集まる原画展らしく、1作家につき10点程度と絵本2冊まで、1ヶ国あたり15名の応募が可能となっているようです。この展示ではそのBIBの2017年の作品を3つの部に分けて紹介していて、1部:2017年の受賞作、2部:2017年の日本代表作、3部:2017年に特に注目された4ヶ国の作品 という構成となっていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<第1部 BIB2017受賞作家>
まずは2017年の受賞作に関するコーナーです。第26回となる2017年は373組488冊2657点の原画が出品されたそうで、9名の審査員が4日間かけて審査しグランプリ1件、金のりんご賞5件、金牌5件、出版社賞4件の受賞となったようです。ここにはそうした選りすぐりの作品が並んでいました。
1-16 ペテル・ウフナール 「ボイニツェに暮らすブーベルたち」 子ども審査員賞
こちらはスロヴァキアの8~14歳の子供審査員7名によって選ばれた作品で、小さな架空の生き物と人間の交流を描くファンタジーです。淡く幻想的な色彩で、シュールさと懐かしさを感じる絵柄となっていました。特に色の使い方が美しい作風です。
この展示では実際の絵本も置かれていて、手にとって読むことも出来ます。外国語で読めなくても絵が素晴らしい作品が多いので、これは嬉しい。この辺に並んでいた受賞作は西洋妖怪のようなものが出てくる絵本が多かったように思いますw
1-11 ロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴ 「うるさく、しずかに、ひそひそと」 金牌
こちらは赤・青・黄色といった限られた色でビルや道路、人々などを単純化して幾何学的に描いた絵柄となっています。様々な音の大きさをデシベルで説明をしているようで、核爆発は220db、ツングースカの隕石は315dbとか 最強クラスの音まで載っています。また、沢山の文字が雨のように降ってきている場面があり、「時には静けさで過ごすのも必要」と書いてあり、傘で降ってくるような街の音をブロックしているようなシーンとなっていました。この示唆に富んだ場面とモダンな絵柄はかなり秀逸でした。
ロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴ 「イヴァン・フランコーのすべて」
こちらは先程と同じ作家の別の絵本で、様々な技法を使った絵柄となっています。ロシア・アヴァンギャルドやアウトサイダー・アートみたいな表現もあって、多彩な表現を楽しめます。この作家は今回の展示でも特に面白く気に入りました。
1-7 ハンネ・バルトリン 「すべてについての話」 金牌
こちらは今回の展示のポスターにもなっている作品。会場の外で1つのページを拡大したコピーを撮影できました。

真っ赤なヌリカベみたいなw しかしこの作品は実は深くて、『あなたについての話』という箇所では「思考があなたなら、何も考えていない時のあなたは一体誰?」といった哲学的な問いをしてくる内容となっています。淡い水彩の具象だったり、抽象だったりと絵柄も様々で流石は受賞作といった感じでした。
1-9 ミロコマチコ 「けもののにおいがしてきたぞ」 金牌 ★こちらで観られます(pdf)
こちらはかなり勢いを感じるプリミティブな絵柄の作品。強烈な色彩と素早い筆致で、草むらに潜む虎などの獣を描いています。割と怖いので子供が怖がらないのかな?w 一見すると子供の絵のような感じにも観えますが、アートとしても非常に見応えがあると思います。
この近くにはミロコマチコ氏が受賞した金牌と賞状、アイディア帳なども展示されていました。
1-3~5 荒井真紀 「たんぽぽ」 金のりんご賞 ★こちらで観られます(pdf)
こちらは道端のたんぽぽの一生を水彩で丁寧に描いた作品です。地下深くまで根が伸びている様子の断面や、花が綿毛に変わっていき枯れて行く様子など 普段観られないような生態までしっかりと表現しています。繊細で瑞々しい絵柄で、透明感がありました。
荒井真紀 氏は朝顔とヒマワリに関して同様の作品があるようで、これが3作目のようです。近くにはラフ画やトロフィー、賞状などもありました。金のりんご賞のトロフィーは本当にりんごの形をしていますw
1-12 ガング・デザイン/パニ・ユレック 「いたずら雑種犬をつくろう」 出版社賞 ★こちらで観られます(pdf)
こちらは多様性の大切さを子供に伝えるプロジェクトから生まれた参加型の絵本で、40種類の純血種の犬のカードの体の部分を組み合わせ、雑種犬を作るというコラージュ遊びの仕掛けとなっています。入れ物も犬の形になっていて、耳と舌が箱からはみ出しているのが可愛いw 面白いだけでなく現代的な主題で興味深い作品です。
1-1 ルトウィヒ・フルベーダ 「鳥たち」 グランプリ
こちらはグランプリ作品で、街に立つ2つの彫像の物語となっています。2人は愛し合っているのですが、触れ合うことはできず 2人の間を結ぶのは行き交う鳥たち…という話です。線の細い写実性のある素描と、細い点線が並ぶ抽象的で色とりどりな渦のような背景が特徴で、幻想的な印象を受けます。空の色も郷愁を誘い、ちょっと内容も読んでみたくなる画風でした。(置いてあるのは外国語なので中身は分かりませんでしたが…w)
<第2部 BIB2017日本代表作家-絵本づくりとそのひみつ>
続いては日本代表のコーナーです。2017年は15組16タイトルが選ばれたそうですが、日本では年間1000冊も新刊絵本が出るので狭き門となっているようです。
2-1 あずみ虫 「わたしのこねこ」
こちらは女の子が飼っている子猫の気持ちが分かるようになるまでの話です。切り絵の優しい絵柄と色彩で、小さい黒猫と一緒に寝たりしている微笑ましい場面となっています。解説によるとラフを描いてからハサミで形を作ってアクリルで色付けしているそうで、あずみ虫 氏は実際に黒猫を一時期飼っていたことがあるそうです。心温まる作風でした。
この近くにはアイヌの文化を描いた絵本などもありました。
2-10 町田尚子 「ネコヅメのよる」 ★こちらで観られます(pdf)
こちらも猫を描いた絵本ですが、ちょっと怖い猫ですw 瞳が細くなった猫の顔を画面いっぱいに描いたり、暗闇の中にいる猫の集団を描いたり、大量の猫が夜の住宅街を行進しているような絵があったり… 化け猫みたいw 中身も気になるので読みたかったのですが、子供たちが読んでいたので諦めました…。気になる…。
この近くには原爆ドームを擬人化したスズキコージ「ドームがたり」や点字を使った村山純子「さわるめいろ」などもありました。「さわるめいろ」の原画は点々で描かれていますが、本ではツブツブの突起があって、指で追いながら迷路を楽しむことができました。
2-13 ヨシタケシンスケ 「このあとどうしちゃおう」
こちらはほのぼのした漫画のような絵柄で、死ぬ前にお爺さんが考えてノートに残した死後の世界を描いています。天国はこんな所という絵では、温泉があるとか、有名人に結構会えるとか、お刺身が美味しいとか、発想が素朴で可愛いw しかし、お爺さんは本当はすごく悲しくて、このノートを残したのでは?というシーンが何とも言えない寂しさを出しています。満員の喫茶店で1人ぽつんと座っている様子で、リアルな孤独感と共に考えさせられるものがありました。
<第3部 いま気になる絵本の国-中国・イラン・イスラエル・韓国>
最後は注目の4つの国の絵本についてです。中国・イラン・イスラエル・韓国の作品がいくつか並んでいました。
3-2 熊亮 「風と一緒に散歩」 中国
こちらは西遊記の孫悟空の話で、モノクロームの水墨画のような感じです。絵柄は独特で、かなり勢いがあり力強く原始的なパワーがありました。
他の中国の絵本は割と日本の絵本に似た雰囲気のが多いように思えたかな。日中戦争をテーマにした絵本なんかもあるのが如何にも中国的ですが。
3-30 リオラ・グロスマン 「愛の羽」 イスラエル
こちらは孔雀のオスがメスに好かれたくて自慢の羽を見せるものの、自惚れ屋は嫌いと言われる物語です。それでもメスに好かれるために自分の羽を欲しがる動物たちに羽を抜き与えていき、その辛さに耐えていくうちに愛は与えるものだと気づくというストーリーのようです。社会主義的な側面や宗教的な示唆があるのはイスラエルっぽい所でしょうか。絵は子供向けらしい優しく可愛い絵柄でした。
3-37 リ・ジョンホ 「散策」 韓国
こちらは巨大な本をモチーフにしたシュールな光景の作品。巨大な本の側面がカーテンのようになっていて中に入ろうとしている子供の絵や、宇宙の本を広げ、それを釣り堀のように釣りをしている子供の絵など、超現実的で静けさを感じる作風となっています。色も落ち着いていて神秘性の高い絵本でした。
3-18 ファルシード・シャフィーイー 「ザッハーク」 イラン
こちらは11世紀に完成した民族叙事詩『シャー・ナーメ(王書)』に登場する肩から蛇を生やした邪悪な王の物語です。様々なエピソードを紹介しているようですが、抽象がかった王の顔や馬の影絵など、表現が現代的です。現代アートや素朴な版画を思わせる斬新さがあって絵として面白い作品でした。
出口あたりで観覧者による人気投票がありました。金と銀が子供で、ピンクが大人による投票です。

一番人気がありそうなのは町田尚子 氏の「ネコヅメのよる」だったかな。怖いけど子供にも人気w
私はロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴ 「うるさく、しずかに、ひそひそと」に一票

子供より大人に人気でした。 この芸術性を理解できる子供は有望でしょうねw
ということで、かなり多様な作風を観ることができて満足度高めでした。最近の絵本はこんなに芸術性が高いのかと驚かされます。親子連れが多く訪れていましたが、子供だけでなく親御さんもアートとして十分に楽しめると思います。この夏、親子で観るのにオススメの展示です。
- 関連記事
-
-
原三溪の美術 伝説の大コレクション (感想後編)【横浜美術館】 2019/08/12
-
原三溪の美術 伝説の大コレクション (感想前編)【横浜美術館】 2019/08/11
-
マイセン動物園展 【パナソニック汐留美術館】 2019/08/10
-
第13回 shiseido art egg 小林 清乃展 【資生堂ギャラリー】 2019/08/09
-
流線形の鉄道 1930年代を牽引した機関車たち 【旧新橋停車場 鉄道歴史展示室】 2019/08/08
-
没後50年 坂本繁二郎展 (感想後編)【練馬区立美術館】 2019/08/06
-
没後50年 坂本繁二郎展 (感想前編)【練馬区立美術館】 2019/08/05
-
ブラティスラヴァ世界絵本原画展―BIBで出会う絵本のいま 【うらわ美術館】 2019/08/04
-
2019 MOMASコレクション 第2期 【埼玉県立近代美術館】 2019/08/01
-
MAY I START?計良宏文の越境するヘアメイク 【埼玉県立近代美術館】 2019/07/31
-
みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ-線の魔術 (感想後編)【Bunkamura ザ・ミュージアム】 2019/07/30
-
みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ-線の魔術 (感想前編)【Bunkamura ザ・ミュージアム】 2019/07/29
-
アートアクアリウム展2019 & ナイトアクアリウム 【日本橋三井ホール】 2019/07/28
-
平成30年度新収品展 【東京国立博物館 平成館】 2019/07/27
-
特別展「三国志」 (感想後編)【東京国立博物館 平成館】 2019/07/26
-
記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。


更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
プロフィール
Author:21世紀のxxx者
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。
関東の方には休日のガイドやデートスポット探し、関東以外の方には東京観光のサイトとしてご覧頂ければと思います。
画像を大きめにしているので、解像度は1280×1024以上が推奨です。
↓ブログランキングです。ぽちっと押して頂けると嬉しいです。
【トラックバック・リンク】
基本的にどちらも大歓迎です。アダルトサイト・商材紹介のみのサイトの方はご遠慮ください。
※TB・コメントは公序良俗を判断した上で断り無く削除することがあります。
※相互リンクに関しては一定以上のお付き合いの上で判断させて頂いております。
【記事・画像について】
当ブログコンテンツからの転載は一切お断り致します。(RSSは問題ありません)
更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter
展覧スケジュール
検索フォーム
ブログ内検索です。
【○○美術館】 というように館名には【】をつけて検索するとみつかりやすいです。
全記事リスト
カテゴリ
リンク
このブログをリンクに追加する
日ごろ参考にしているブログです。こちらにも訪れてみてください。
<美術系サイト>
弐代目・青い日記帳
いづつやの文化記号
あるYoginiの日常
影とシルエットのアート
建築学科生のブログ
彫刻パラダイス
ギャラリークニャ
「 10秒美術館 」 ~元画商がほんのり捧げる3行コメント~
だまけん文化センター
横浜を好きになる100の方法
美術品オークション
<読者サイト>
アスカリーナのいちご日記
Gogorit Mogorit Diary
青い海(沖縄ブログ)
なつの天然生活
月の囁き
桜から四季の花まで、江戸東京散歩日記
うさみさんのお出かけメモ (u_u)
森の家ーイラストのある生活
Croquis
ラクダにひかれてダマスカス
<友人のサイト>
男性に着て欲しいメンズファッション集
Androidタブレット比較
キャンペーン情報をまとめるブログ
日ごろ参考にしているブログです。こちらにも訪れてみてください。
<美術系サイト>
弐代目・青い日記帳
いづつやの文化記号
あるYoginiの日常
影とシルエットのアート
建築学科生のブログ
彫刻パラダイス
ギャラリークニャ
「 10秒美術館 」 ~元画商がほんのり捧げる3行コメント~
だまけん文化センター
横浜を好きになる100の方法
美術品オークション
<読者サイト>
アスカリーナのいちご日記
Gogorit Mogorit Diary
青い海(沖縄ブログ)
なつの天然生活
月の囁き
桜から四季の花まで、江戸東京散歩日記
うさみさんのお出かけメモ (u_u)
森の家ーイラストのある生活
Croquis
ラクダにひかれてダマスカス
<友人のサイト>
男性に着て欲しいメンズファッション集
Androidタブレット比較
キャンペーン情報をまとめるブログ
最新記事
-
最近観た展示 (202303) (05/26)
-
展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2023年04月号】 (04/01)
-
最近観た展示 (202302) (03/10)
-
最近観た展示 (202301) (02/10)
-
展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2023年01月号】 (01/01)
-
2022年の振り返り (12/31)
-
最近観た展示 (202212) (12/30)
-
最近観た展示 (202211) (12/29)
-
最近観た展示 (202210) (11/11)
-
最近観た展示 (202209) (10/07)
-
展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2022年10月号】 (10/02)
-
最近観た展示 (202208) (08/30)
-
最近観た展示 (202206~07) (07/28)
-
展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2022年07月号】 (07/07)
-
映画「トップガン マーヴェリック」4DX SCREEN吹替版 (ややネタバレあり) (06/21)
-
映画「シン・ウルトラマン」(ややネタバレあり) (06/20)
-
メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 (感想後編)【国立新美術館】 (06/12)
-
メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 (感想前編)【国立新美術館】 (06/06)
-
ダミアン・ハースト 桜 【国立新美術館】 (05/23)
-
最後の印象派、二大巨匠 シダネルとマルタン展 【SOMPO美術館】 (05/16)
-
最近観た展示 (05/09)
-
ミロ展-日本を夢みて (感想後編)【Bunkamura ザ・ミュージアム】 (04/25)
-
ミロ展-日本を夢みて (感想前編)【Bunkamura ザ・ミュージアム】 (04/20)
-
奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム 【東京都庭園美術館】 (04/11)
-
展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2022年04月号】 (04/01)
-
【密蔵院】の安行寒桜の写真 (03/27)
-
グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生【世田谷美術館】 (03/22)
-
大・タイガー立石展 世界を描きつくせ!【うらわ美術館】 (03/14)
-
大・タイガー立石展 世界を描きつくせ! 【埼玉県立近代美術館】 (03/07)
-
もうすぐ再開予定 (02/28)
-
2021 MOMASコレクション 第3期 【埼玉県立近代美術館】 (01/21)
-
鎌倉の写真 (2021年11月) (01/18)
-
没後70年 吉田博展 【川越市立美術館】 (01/16)
-
今後の更新について (01/14)
-
【山崎美術館】の案内 (2021年11月) (01/11)
-
保岡勝也 「旧山崎家別邸」 (01/09)
-
映画「劇場版 呪術廻戦 0」(ややネタバレあり) (01/07)
-
TERUHISA KITAHARA 鉄道コレクション展 【京橋エドグランタウンミュージアム】 (01/05)
-
展覧会年間スケジュール (1都3県) 【2022年01月号】 (01/01)
-
2021年の振り返り (12/31)
-
ヘラルボニー/ゼロからはじまる 【BAG-Brillia Art Gallery】 (12/29)
-
映画「キングスマン:ファースト・エージェント」(ややネタバレあり) (12/27)
-
横溝美由紀「Landscape やわらかな地平のその先に」 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】 (12/26)
-
第15回 shiseido art egg 【資生堂ギャラリー】 (12/23)
-
映画「マトリックス レザレクションズ」(ややネタバレあり) (12/21)
-
ブダペスト国立工芸美術館名品展 ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ 【パナソニック汐留美術館】 (12/19)
-
鈴木其一・夏秋渓流図屏風 【根津美術館】 (12/16)
-
【根津美術館】の紅葉 2021年11月 (12/14)
-
カフェラヴォワ 【新宿界隈のお店】 (12/12)
-
川瀬巴水 旅と郷愁の風景 【SOMPO美術館】 (12/10)
最新コメント
- 21世紀のxxx者:イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン (感想後編)【三菱一号館美術館】 (12/09)
- ゆーき:イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン (感想後編)【三菱一号館美術館】 (12/09)
- 21世紀のxxx者:奇蹟の芸術都市バルセロナ (感想前編)【東京ステーションギャラリー】 (01/03)
- うさぴょん:キヨノサチコ絵本原画の世界 みんな大好き!ノンタン展 【松屋銀座】 (03/21)
- 21世紀のxxx者:川豊 【成田界隈のお店】 (03/04)
- 21世紀のxxx者:劇団四季 「MAMMA MIA!(マンマ・ミーア!)」 (03/04)
- 萌音:川豊 【成田界隈のお店】 (03/03)
最新トラックバック
月別アーカイブ
- 2023/05 (1)
- 2023/04 (1)
- 2023/03 (1)
- 2023/02 (1)
- 2023/01 (1)
- 2022/12 (3)
- 2022/11 (1)
- 2022/10 (2)
- 2022/08 (1)
- 2022/07 (2)
- 2022/06 (4)
- 2022/05 (3)
- 2022/04 (4)
- 2022/03 (4)
- 2022/02 (1)
- 2022/01 (9)
- 2021/12 (12)
- 2021/11 (14)
- 2021/10 (10)
- 2021/09 (6)
- 2021/08 (9)
- 2021/07 (10)
- 2021/06 (9)
- 2021/05 (11)
- 2021/04 (12)
- 2021/03 (12)
- 2021/02 (13)
- 2021/01 (13)
- 2020/12 (13)
- 2020/11 (14)
- 2020/10 (14)
- 2020/09 (14)
- 2020/08 (15)
- 2020/07 (14)
- 2020/06 (15)
- 2020/05 (15)
- 2020/04 (16)
- 2020/03 (24)
- 2020/02 (26)
- 2020/01 (28)
- 2019/12 (28)
- 2019/11 (26)
- 2019/10 (28)
- 2019/09 (28)
- 2019/08 (28)
- 2019/07 (28)
- 2019/06 (28)
- 2019/05 (28)
- 2019/04 (28)
- 2019/03 (28)
- 2019/02 (26)
- 2019/01 (29)
- 2018/12 (29)
- 2018/11 (28)
- 2018/10 (29)
- 2018/09 (27)
- 2018/08 (29)
- 2018/07 (29)
- 2018/06 (28)
- 2018/05 (29)
- 2018/04 (28)
- 2018/03 (29)
- 2018/02 (26)
- 2018/01 (28)
- 2017/12 (30)
- 2017/11 (28)
- 2017/10 (30)
- 2017/09 (27)
- 2017/08 (26)
- 2017/07 (25)
- 2017/06 (9)
- 2017/05 (18)
- 2015/04 (1)
- 2014/12 (1)
- 2014/10 (1)
- 2014/09 (1)
- 2014/08 (1)
- 2014/07 (1)
- 2014/06 (1)
- 2014/05 (1)
- 2014/04 (6)
- 2014/03 (12)
- 2014/02 (11)
- 2014/01 (16)
- 2013/12 (15)
- 2013/11 (17)
- 2013/10 (22)
- 2013/09 (23)
- 2013/08 (22)
- 2013/07 (24)
- 2013/06 (20)
- 2013/05 (25)
- 2013/04 (23)
- 2013/03 (24)
- 2013/02 (23)
- 2013/01 (27)
- 2012/12 (24)
- 2012/11 (27)
- 2012/10 (28)
- 2012/09 (27)
- 2012/08 (28)
- 2012/07 (28)
- 2012/06 (27)
- 2012/05 (22)
- 2012/04 (18)
- 2012/03 (28)
- 2012/02 (26)
- 2012/01 (28)
- 2011/12 (28)
- 2011/11 (27)
- 2011/10 (28)
- 2011/09 (27)
- 2011/08 (27)
- 2011/07 (28)
- 2011/06 (27)
- 2011/05 (28)
- 2011/04 (27)
- 2011/03 (23)
- 2011/02 (26)
- 2011/01 (28)
- 2010/12 (28)
- 2010/11 (28)
- 2010/10 (29)
- 2010/09 (27)
- 2010/08 (29)
- 2010/07 (28)
- 2010/06 (28)
- 2010/05 (27)
- 2010/04 (27)
- 2010/03 (31)
- 2010/02 (27)
- 2010/01 (29)
- 2009/12 (29)
- 2009/11 (28)
- 2009/10 (24)
- 2009/09 (25)
- 2009/08 (27)
- 2009/07 (23)
- 2009/06 (20)
- 2009/05 (29)
- 2009/04 (30)
- 2009/03 (14)
- 2009/02 (5)
- 2009/01 (2)
- 2008/11 (1)
メディア掲載
記事の共有
この記事をツイートする
ツイート
広告
美術鑑賞のお供
細かい美術品を見るのに非常に重宝しています。
愛機紹介
このブログの写真を撮ってます。上は気合入れてる時のカメラ、下は普段使いのカメラです。
RSSリンクの表示
QRコード

アクセスランキング
twitter
メールフォーム
※できるだけコメント欄にお願い致します。(管理人だけに表示機能を活用ください) メールは法人の方で、会社・部署・ドメインなどを確認できる場合のみ返信致します。