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没後50年 坂本繁二郎展 (感想後編)【練馬区立美術館】

今日は前回に引き続き中村橋の練馬区立美術館の「没後50年 坂本繁二郎展」についてです。前半は3章までについてでしたが、後編は4~5章についてご紹介して参ります。まずは概要のおさらいです。

 → 前編はこちら

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【展覧名】
 没後50年 坂本繁二郎展

【公式サイト】
 https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=201906011559351169

【会場】練馬区立美術館
【最寄】中村橋駅

【会期】2019年7月14日(日)~9月16日(月・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
後半は4章の途中から下階に移動する感じになっていました。後編も引き続き各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<第4章 成熟-静物画の時代 1945-1963年>
4章は戦後のコーナーです。坂本繁二郎は1943年頃から野菜や果物に加え、能面や植木鉢、レンガなどを描くようになりました。能面は1944~1963年まで30点程度存在し、モチーフは由緒ある面でなくても良かったようです。また、静物が増える一方で馬も再び取り上げていて、戦前は二科会を中心に馬の大作を発表していましたが戦後は二科展には参加せず清光会や草人社展で主に発表していたようです。
この頃、芸術院会員推挙を皮切りに受賞や回顧展を重ねていたようで、1956年には文化勲章も受けています。その際、天皇陛下からの「何を描いていますか?」との質問に「静物を描いています」と答えたようです。ここにはそうした時代の作品が並んでいました。

71 坂本繁二郎 「植木鉢」
こちらは何の変哲もない2つの空っぽの植木鉢を描いた作品です。周りには落ち葉らしきものもあるかな。植木鉢は上向きと下向きに置かれていて、地の色と同じような色彩となっています。ぽつんと寂しげな印象で静かな雰囲気となっていました。

この辺は静物が並んでいます。本や砥石なんかもありました。

82 坂本繁二郎 「能面」
こちらは朱色を地に、表向きの能面と裏面の能面が置かれている静物です。近くには謡本や扇子なども置かれているのですが、気になるのは背景の朱で、まるで事件現場の血の川のように見えますw 能面の顔もちょっと怖いし、どんな意図でこれを描いたのか知りたいw ちょっと不穏さもあって記憶に残る作品でした。

この近くは能面をモチーフにした作品多めでした。

90 坂本繁二郎 「モートル図」
こちらは安川電機40年史の冊子の巻頭を飾る為に依頼されたもので、安川電機のモートル(モーター)が描かれています。横向きの円筒形に台の付いた形で、画面に対してモーターは大きめに見えます。変わったモチーフではあるものの、色合いは茶色や水色を多用した繁二郎らしい雰囲気です。解説によると、一度は絵にならぬと断ったとのことですが、異色の題材でもしっかりと個性が出ているように思えました。

91 坂本繁二郎 「猩々面」
こちらは全体的にピンクがかった地に、謡本を積んで そこに立て掛けた赤い顔の能面を描いた静物です。この猩々面というのは 酒を嗜み 酔っ払って戯れる妖精の面だそうで、赤い顔で口を開いてニヤッと笑い、歯が見える感じです。妙に生き生きしていて、不気味だけど愛嬌を感じるかなw 特に面白い顔の能面でした。

この辺にも能面を描いた静物が並んでいました。ただの石ころを描いた静物なんかもあります。

93 坂本繁二郎 「暁明の根子岳」
こちらは阿蘇山の根子岳を描いた作品です。全体的に淡い水色で、山と空を水色の濃淡で分けています。山頂付近には小さな雲がいくつか浮かんでいて、朝日の光を受けて輝くような白さです。清々しく神々しい朝の山景を観た感動がストレートに伝わってくる風景でした。

この後は再び静物で、植木鉢や野菜が並んでいました。

109 坂本繁二郎 「林檎・柿等」
こちらは薄紫の地に林檎や柿などが6つほど置かれている静物です。小さく丸々していてリズムを感じる配置となっていますが、中央付近に集まっていて四隅は空白が目立ちます。余白を活かすのはちょっと日本画っぽい気もするかな。この近くの静物も赤紫地で中央寄せの構図となっていたので、この頃の画風の特徴なのかもしれません。

この近くには能面と鼓などを描いた作品が並んでいました。そしてこの辺で下階に続きます。下階は4章と5章が混じっているような感じですが、引き続き能面などの静物が並んでいました。

105 坂本繁二郎 「雲仙の春・阿蘇の秋」
こちらは六曲一双の屏風で、油彩のようですが水彩のような軽やかな色彩です。左隻に山、右隻に海を描いていていずれも地平線が低く広々として清々しい雰囲気です。特に左隻は輝くような美しさでした。解説によると、10年経っても完成しなかったのを、6年後に再び取り組んで完成させた作品のようでした。

123 坂本繁二郎 「能面と鼓の胴」 ★こちらで観られます
こちらはいくつもの箱を積み重ねた静物で、箱は赤紫の濃淡で立体感を出しています。直角の多いスッキリした構図で、優しい色彩とソリッドな線の取り合わせが相反しているようで面白い作風でした。


<第5章 「はなやぎ」-月へ 1964-1969年>
最後の章は晩年のコーナーです。坂本繁二郎は1964年(82歳)の頃に月雲を描き始めたようで、この頃は視力の衰えが著しくアトリエにも出かけなくなって自宅の2階がアトリエとなっていました。そして晩年の坂本繁二郎は「一生絵を描いて生きた事を幸せに思っています」とか「生まれ変わっても画家になりたい」と語っていたそうです。そんな坂本繁二郎について、亡くなった翌年の追悼展の際に作家の井上靖は「氏の晩年のはなやぎ は美しいと思う」と述べていたそうで、この章のタイトルはそれに因んでいるようです。ここには晩年によく描いた月の作品などが並んでいました。

126 坂本繁二郎 「達磨」 ★こちらで観られます
こちらは赤い達磨を描いた静物で、目は黒丸2つ、口は横一文字に近い「へ」の字というシンプルな顔つきです。背景には雲のようなものが棚引いているのですが、これは「起」を絵画的に処理したものだそうです。つまり「七転び八起き」を意味しているらしく、繁二郎を慕う飲食店の店主を励ます為に描いたようです。素朴でマスコット的な可愛さがあり、意外な一面に思えました。

141 坂本繁二郎 「幽光」
こちらは絶筆で、青緑っぽい地にぼんやりとオレンジがかった箇所があり、そこが月のようです。雲に隠れているらしく、ぼんやりとして周りもまるで抽象画のような雰囲気に思えます。解説によるとこの頃には視力をほとんど失っていたようで、タイトル没後につけられたようです。目が見えなくなっても絵を描こうとするとは、心底 絵が好きだったんでしょうね。

この近くでは映像で坂本繁二郎のアトリエなども紹介していました。ガラス張りの部屋なのに、光にこだわって暗くして行ったらしく、それが視力を低下させる原因にもなっているようでした。

139 坂本繁二郎 「月光」
こちらはかなり繊細な色彩で馬小屋の中から月が出ている様子を描いています。手前に馬の首の影があり、空にぼんやりと月が光っている構図です。静かで神秘的な光景で、観ていてホッとするような穏やかさもありました。

この近くにはこの作品とよく似た構図の作品もありました。これに比べると形がハッキリしているかな。この構図が気に入ってたのかも?

127 坂本繁二郎 「月」
こちらは今回のポスターになっている作品で、深い青緑の地に煌々と輝く満月が描かれています。月の黄色の中には青や白があり、周りは虹のように薄っすらと赤くなっています。また、下の方には様々な色の雲もあって、繊細な色彩で風情を出しているように思いました。

この隣には月シリーズ最大の作品「月」もありました。3年掛けて描いた大作です。

131 坂本繁二郎 「牛」
こちらは1919年から描き始めたものの未完成だったのですが、1965年に発見して83歳の時に4ヶ月かけて完成させた作品です(実に45年後!) 地面に伏せている白い牛の後ろ姿で、細かく厚めのタッチで描かれています。色は落ち着いているものの、どっしりとした印象を受けるかな。久々に牛の絵で、時期によってモチーフも移り変わって行ったのが感じられました。


ということで、初期から晩年まで坂本繁二郎の代表作をじっくりと観ることが出来ました。充実した展示だったので図録も買って かなり満足です。 坂本繁二郎は絵画ファンの中でも人気の画家ですので、洋画好きの方は是非チェックしてみてください。貴重な機会だと思います。

おまけ:
美術館の入口に「達磨」をモチーフにしたマスコットが置かれていました。
DSC02759_20190806013540487.jpg
元々の絵がマスコットそのものなので、違和感無いですw
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