関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

遊びの流儀 遊楽図の系譜 【サントリー美術館】

前回ご紹介した展示を観た後、同じ東京ミッドタウンの中にあるサントリー美術館で「サントリー芸術財団50周年 遊びの流儀 遊楽図の系譜」を観てきました。

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【展覧名】
 サントリー芸術財団50周年 遊びの流儀 遊楽図の系譜

【公式サイト】
 https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2019_3/

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅

【会期】2019年6月26日(水)~8月18日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会期末が近いこともあってか結構お客さんが多かったですが、概ね自分のペースで観ることができました。

さて、この展示は日本古来の「遊び」をテーマにした展示で、中国の君子(文人)たちのたしなみとされた琴棋書画(琴・囲碁・書道・絵画)を中心に遊びの歴史を紹介する内容となっています。時代や展示品も多岐に渡り、8つの章から構成されていました。詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。なお、この展示は4期に分かれていて、私が観たのは最後の後期の内容でした。


<第1章 「月次風俗図」の世界 暮らしの中の遊び>
まずは12ヶ月の行事や風物を描く「月次絵」のコーナーです。「月次絵」は大和絵の重要なテーマで、その中には行事に伴う遊びの様子も描かれていました。

2 「月次風俗図屏風」
こちらは六曲一隻の屏風で、上下に画面を分けて一扇ごとに2ヶ月分の行事が描かれています。1月:正月、2月:涅槃会、3月:桜の花見、4月:藤の花見、5月:端午の節句、6月:祇園祭、7月:盂蘭盆会、8月:中秋の月見、9月:貴船狭小神輿、10月:亥子祭、11月:御火焚、12月:師走の風景 となっていて、右上から反時計回りに17世紀前半頃の京都の町の様子のようです。かなり細かく描かれていて、にぎやかで楽しげな雰囲気となっていました。季節ごとのイベントや遊びは現代と大差ないかもしれません。一周するとまた季節が巡るような構図となっているのも面白かったです。


<第2章 遊戯の源流 五感で楽しむ雅な遊び>
続いては五感を使った遊びに関するコーナーです。視覚だけでなく、嗅覚の組香や聴覚の琴、触覚の蹴鞠などが例に挙げられるようで、それらは武芸の上達をはかり古典的教養を高める意義をもつ遊戯でもあったようです。

8 海北友雪 「徒然草絵巻」
こちらは吉田兼好の『徒然草』の全章段を絵画化したもので、双六の名人についての9巻第110段を展示していました。要約すると、双六の名人は「勝とうと思って打ってはならない。負けないように打つべき」と言っていたのを含蓄ある教訓として紹介していて、双六をしている様子が描かれています。この言葉、現代でも通じると思うんですよね…。海北友雪の壮麗な絵も見どころの1つとなっていました。

この近くには「草花蒔絵双六盤」もありました。毎回これを観てもルールは分からないですが、バックギャモンとは違うルールとのことです。また、蹴鞠の鞠を挟んでおく器具なども展示されていました。

18 「打毬具」
こちらは馬に乗った人々が2組に分かれて長い柄の先に網をつけたもので鞠をすくい、自分の鞠門に入れるポロに似た競技の道具です。鞠には紅白の色がついていて、十字模様になった鞠もありルールによって使い分けていたようです。こんな競技が日本にもあったとは知らなかったので面白く思えました。

この近くには組香の道具「菊折枝蒔絵四種盤」もありました。緻密で豪華な装飾のセットです。


<第3章 琴棋書画の伝統 君子のたしなみ>
続いては君子の嗜みとされた琴棋書画に関するコーナーです。日本画でもお馴染みの題材で、屏風などと共に実際の道具類も展示されていました。

26 「芒菊桐紋蒔絵碁笥・碁盤」
こちらはクルミ材で出来た碁盤と、蒔絵の碁笥(ごけ。石の入れ物)で、碁石は天然の石を使った不揃いなものとなっています。碁笥にはススキや菊、桐などを繊細な高台寺蒔絵で表していて、煌やかな雰囲気です。解説によると、この碁笥と碁盤は豊臣秀吉から千利休へと下賜されたものだそうです。そんな貴重なものが伝わっているとは驚きでした。

24 海北友松 「琴棋書画図屏風」
こちらは六曲一双の屏風です。右隻には松の木の下で 碁盤の上に琴を置いて そこで頬杖をついて寝ている人や、それを観て呆れるような2人が描かれています。背後には大きな衝立に描かれた絵もあります。 一方、左隻では黄色い服の高士が書を差し出し、2人の人物が掛け軸を差し出している様子となっていました。合わせると琴棋書画が揃っていますが、何だかのんびりしていて緩いw 題材は定番だけど、ちょっと変わった構成となっていて面白かったです。


<第4章 「遊楽図」の系譜(1)「邸内遊楽図」の諸様相>
続いては遊びの様子を描いた「遊楽図」のコーナーで、特にこの章では邸内(庭先も含める)で遊ぶ様子を描いた作品が並んでいました。

36 「歌舞遊宴図屏風」
こちらは横長の六曲一双の屏風で、遊郭で沢山の人々が遊ぶ様子が描かれています。茶会、囲碁、双六、煙草、花見、舟遊び、水遊び、三味線などあらゆる遊びを描いているのではないかという位あります。賑やかで華麗な印象で、当時の遊興の様子が伝わってくる作品でした。

37 「婦女遊楽図屏風」
こちらは六曲一双の屏風で、屋敷や軒先で遊ぶ人たちが描かれています。ほとんどが女性で、縁側で寝てたり 扇を水辺で流していたり、円になって踊っていたり、身支度していたり、犬の世話をする女性なども描かれています。右隻は夏の光景のようで、涼し気な着物も可憐な印象となっていました。

近くには貝合わせの道具や煙管などもありました。また35「邸内遊楽図屏風」も小さい屏風ながらも鮮やかな色彩で目を引きました。


<第5章 「遊楽図」の系譜(2) 野外遊楽と祭礼行事>
続いても「遊楽図」のコーナーで、この章では野外での遊びや祭礼行事を描いた作品が並んでいました。

43 「四条河原遊楽図屏風」 ★こちらで観られます
こちらは京都の四条河原の賑わいを描いた屏風で、遊女歌舞伎の舞台や 犬の曲芸、ヤマアラシの見世物、弓の射的など様々な小屋が描かれています。中央に流れる鴨川では水遊びや釣りをしていて、さながらテーマパークのような感じです。河原は大水で流されたりするので、誰かの所有地という訳でなく、こうした見世物などが集まってきたと聞いたことがあります。歌舞伎の原点もここなので、そう考えると当時の大衆文化の賑わいは今でも生き続けているのかも。

ちかくには「四条河原図巻」という作品もありました。こちらもアシカ・熊・孔雀・鷲などの見世物や遊女歌舞伎の活況が描かれていました。


<第6章 双六をめぐる文化史 西洋双六盤・盤双六・絵双六>
続いては双六のコーナーです。双六は8世紀の正倉院の時代に日本に伝来して、身分を超えて多くの人が熱中して しばしば禁令が出さるほどだったようです。ここには双六盤などが展示されてました。

55 「清水・住吉図蒔絵螺鈿西洋双六盤」 ★こちらで観られます
こちらは西洋のバックギャモンも双六盤で、蒔絵に螺鈿で輝くような緻密な細工が施されています。表面には清水寺と住吉大社の境内を表したものがあるようで、私が観た時は住吉大社となっていました。輸出用の華美な装飾で、これで遊ぶのは相当に身分の高い人なのでは…。遊ぶのが勿体ないくらいの出来栄えでした。

59 「葵・浮線菊紋散唐草蒔絵碁盤・将棋盤・双六盤」
こちらは碁盤・将棋盤・双六盤の3つのセットで、この3つは特に普及して三面と呼ばれて婚礼の調度品とされたようです。尾張徳川家12代の正室の品と考えられるとのことで、碁笥には葵の御紋も表されています。全体的には蒔絵で唐草文様が施され、優美かつ威厳を感じさせるかな。名古屋の婚礼道具は流石ですねw


<第7章 カルタ遊びの変遷 うんすんかるたから花札まで>
続いてはカルタのコーナーです。カルタは南蛮文化の交流の際にポルトガル辺りから伝わったそうで、和歌と結びつき「百人一首かるた」など遊びを通じて教養を身につける用途にも使われました。ここには様々なカルタが並んでいました。

70 「金地うんすんかるた」 ★こちらで観られます
こちらは金地の75枚組のカルタで、花札くらいのやや小ぶりな大きさとなっています。トランプのように5種類のマークが15枚ずつ並んでいて、1~9はマークの数、10は福の神や達磨、11は中国の皇帝?、12は龍?などがマークを持っている絵柄となっています。また、解説によると ウンは一、スンは最高点を意味するとか、ウンは福の神、スンは唐人姿の絵札という意味を示すとか諸説あるようでした。いずれにせよ豪華なかるたです。

近くにはポルトガルから伝わったカルタを模倣した「天正かるた」などもありました。

77 「職人尽絵合かるた」
こちらは2枚セットで様々な職人を片方だけ文字入りにして描いたカルタです。櫛職人や団扇職人、人形職人などが描かれていて身分の高い人が世の中の仕組みを遊びながら学んだようです。視覚的に覚えやすいし、カルタは教育と相性が良いのは昔からなんでしょうね。
近くには諺を描いた子供向けのいろはかるた や、野菜のカルタ等もありました。いろはかるたは日本人なら誰しもが子供の頃に遊んでいるのでは? 現代に通じるものを感じました。

さらに花札もありました。任天堂の花札と似た絵柄でちょっと驚きw


<第8章 「遊楽図」の系譜(3) 舞踊・ファッションを中心に>
最後は再び「遊楽図」のコーナーで、踊りとファッションに着目した作品が並んでいました。

91 「輪舞図屏風」
こちらは60人近くの遊女と禿が手を繋いで円を組んでいる様子が描かれた屏風です。これから踊りだすところで、かなり真円に近い円形です。解説によると、これが描かれた寛政の頃に算術書『塵劫記』が普及し、幾何学的な形態への関心が高まっていたそうです。そう考えると遊びに算術にと様々な文化が花開いていた時期だったとわかりますね。江戸時代は知れば知るほど凄い時代です。

93 「舞踊図屏風」
こちらは六曲一隻の屏風で、一扇ごとに扇を持って踊る女性が1人ずつ描かれています。それぞれポーズが違っていて連続した動きのように思えるのが面白い構図です。優美で艶やかな雰囲気もあり、かなりの優品だと思います。

104 「婦女遊楽図屏風(松浦屏風)」 ★こちらで観られます
こちらは六曲一双の屏風に18人の等身大に近い女性が描かれた作品です。三味線を引いたり、カード遊びをしたり、何かを書いていて、琴棋書画の見立てになっているようです。立姿や座り姿など様々なポーズで、当時流行の小袖を着ているなど一種のファッションショーみたいな雰囲気もあり、非常に生き生きとして華やぎがあります。国宝指定されているだけあって、この展示で最も見応えのある作品でした。

この辺は女性を描いた掛け軸などが並んでいました。遊女が多く艶やかです。最後には「遊びの行方」ということで明治時代の双六なども並んでいました。


ということで、遊びについての歴史と共に優品の数々を観ることができました。特に「婦女遊楽図屏風(松浦屏風)」を観られただけでも満足です。もう会期末となっていますが、日本美術が好きな方には面白い内容だと思います。


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