山口蓬春展 新日本画創造への飽くなき挑戦 (感想後編)【日本橋タカシマヤ】
今日は前回に引き続き日本橋タカシマヤの「山口蓬春展 新日本画創造への飽くなき挑戦」についてです。前半は1~2章についてでしたが、後編は3章から最後までご紹介して参ります。まずは概要のおさらいです。
→ 前編はこちら

【展覧名】
山口蓬春展 新日本画創造への飽くなき挑戦
【公式サイト】
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/event/hoshun.html
【会場】日本橋タカシマヤ(日本橋高島屋)
【最寄】日本橋駅
【会期】2019年8月7日(水)~8月19日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
前半は蓬春モダニズムまでの流れを追ってきましたが、3章以降は西洋画と日本画が融合したような新日本画が花開く時期の作品が並んでいました。引き続き各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<Ⅲ 南方へ>
3章は大型作品1点と資料となっていました。山口蓬春は1938年に台湾総督府主催の美術展の審査員として台湾に赴き、初めて目にする異国の風景に創作意欲を掻き立てられたそうです。そしてその後も毎年のように台湾・中国を訪れるようになります。この頃、画風の変化も始まっていたそうで、フォルムの単純化や装飾的な造形の芽生えが観られるようになりました。また、戦時中は戦争協力を求められ、戦争画を描くこともあったようですが、激戦の1945年頃には世田谷から山形へと疎開したようです。ここには台湾を題材にした作品が展示されていました。
23 山口蓬春 「南嶋薄暮」 ★こちらで観られます
こちらは赤い屋根と白い壁の台湾の家を背景に、木に繋がれたコブ牛が描かれています。家の周りには褐色の肌のパイワン族の女性たちが頭の上に荷物を載せて運んでいる様子や、家の中でチャイナ服のような女性が座って手仕事をしている様子も描かれています。空は深い青で、星が1つだけ輝いているのが清々しく、強い色彩と共に南国の情緒が漂っていました。細かい筆致で写実性があるのに南国での感動をそのまま表しているような印象を受けるのも見事です。
この近くには蓬春が撮った写真も並んでいて、この作品そのものの家やコブ牛、女性たちが写っていました。
<Ⅳ 蓬春モダニズムの展開>
続いては戦後間もない頃のコーナーです。山口蓬春は1947年に山形から神奈川県の葉山に移り、翌年に新居(今の山口蓬春記念館がある所)を構えました。この新居はすぐ近くに葉山御用邸があることから香淳皇后に絵の手ほどきをすることもあり、皇室との縁も深まったそうです。また、戦後は日展を中心に活動したようで、新しい日本画を目指し時代感覚を取り入れた近代的な造形に昇華していきます。漫然とした自然描写を廃し、「もっと明るく、もっと複雑な、もっと強い、もっとリズミカルな」といった画風は「蓬春モダニズム」と呼ばれていきました。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
28 山口蓬春 「夏の印象」
こちらはテーブルの上の麦わら帽子や貝殻を描いた作品で、画面の周りには朝顔の花と葉っぱが額のように取り囲んでいます。色面と輪郭がちょっとズレている表現はデュフィやマティスを思わせるかな。淡く軽やかな色彩で清涼感のある雰囲気です。葉っぱのリズムや単純化も心地よく、この展示でも特に気に入りました。
30 山口蓬春 「望郷」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている作品(の本画)で、北極のシロクマと南極のペンギンが一堂に会するという自然界にはありえない風景となっています。シロクマは遠くを観ていて、タイトルから察するに故郷を思っているのでしょうか。氷は縞模様で表されていたり、空の太陽が日食のように重なっているのも誇張された感じがします。解説によると、上野動物園でシロクマを観て画題に選んだようです。また、左右にこれとほぼ構図の小型作品が2点並んでいて、それぞれ小下絵と小下図となっています。小下絵は本画の前に描いて東山魁夷の新築祝いの際に贈ったそうで、小下図は歌舞伎役者の中村歌右衛門がクマ好きと聞いて贈ったのだとか。3点揃っての展示は今回が初ということで貴重な機会となっていました。
<Ⅴ リアリズムの追求>
続いては静物のコーナーです。近代的な形や色を追求する作品は先程の「望郷」を1つの区切りを迎えたそうで、その後は清澄な詩情の時代へと変わります。1955年に「これからの日本画はすべて写実が基盤になる」と語り、リアリズムを目指す静物画を中心に制作するようになりました。
35 山口蓬春 「枇杷」
こちらは古九谷の皿に入った枝付きの枇杷の静物画です。丸々してるけど まだ緑から黄色に変わる頃なので、食べても美味しくなさそうw 写実的で皿の模様まで丁寧に描いている一方、実際には角度的に見えないはずの高台まで描いていて、装飾的に表現しているようです。どっしりとした質感があって、これまでの作風からまた変わったのが感じられました。
34 山口蓬春 「まり藻と花」 ★こちらで観られます
こちらはテーブルの上のグラスに入ったマリモと、花瓶に入った朝顔を描いた作品です。写実的に描いていますがキュビスム的な平面性・多面性や単純化が観られるように思います。黒の隈取がこの頃の特徴らしく、この絵でもそれが確認できます。青を背景にして落ち着いた雰囲気で、洋画のような色彩感覚でした。
この頃、山口蓬春に指導を求める若手が20人近く蓬春の元に集まっていたそうで、画塾という形では無かったようですが日本画の1つの指針を示していたようです。
<Ⅵ 新日本画への昇華>
続いては晩年のコーナーです。山口蓬春はかつては大和絵の文学的叙情性から抜け出すために動物や人物を画面から消しとっていましたが、1960年頃に春夏秋冬の連作を描き始めると、小鳥が再び登場するようになったようです。意識的に遠ざけていた四季花鳥という伝統的な大和絵の画題に 敢えて挑戦する円熟した境地に達したようで、晩年は岩絵具の清澄な色彩に深みが増し 洗練された構図に明るさが満ちたそうです。没後、山口蓬春について美術評論家の河北倫明は「誰かが蓬春のレベルを維持しなくてはならない」と語っていたそうで、蓬春は西洋画・日本画を超えた近代日本画の1つの到達点と言えるようです。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
41 山口蓬春 「新冬」 ★こちらで観られます
こちらは金地を背景に真っ赤な紅葉の落ち葉が重なり、その上で小鳥がじっとしている様子が描かれた作品です。金と赤が響き合い 強い色彩ですが 深みがあり不思議なほど落ち着いた印象を受けます。単純化された紅葉と写実的な小鳥が静かで、冬を迎えようとする時期の風情が感じられました。
この辺は静物画も多く並んでいました。
42 山口蓬春 「花菖蒲」
こちらは金地を背景に青・白・紫などの5つの花菖蒲が描かれた作品です。緑の葉っぱも鮮やかで、リズミカルな配置となっています。題材や色合いからやはり琳派を思わせるかな。初期とは違った画風に思えますが、画題は回帰している感じも受けました。
近くには紫陽花と白い菖蒲を描いた作品などもありました。油彩のような鮮やかさの作品が多いです。
46 山口蓬春 「陽に展く」
こちらは大輪を咲かすヒマワリを描いた作品で、金地を背景にして夏の日差しを感じさせます。正面を向いて力強い花や、後ろを向いている花、下向きの花、花のないものなどもあり、ヒマワリの様々な姿や過程が1つの絵に表されているようにも思えます。単純化されつつ生命感が感じられ、特に目を引く作品となっていました。
この近くには皇居宮殿正殿松の間の「楓図」の下絵もありました。今でも重要な行事で使われる部屋に飾られている山口蓬春の代表作の下絵です。
<エピローグ 蓬春へのオマージュ>
続いては蓬春に触発された画家のコーナーです。と言っても2点のみで、東山魁夷と片岡球子が1点ずつでした。山口蓬春は若い頃に画壇の板挟みになって悩んだこともあるので自らの画塾は作らなかったようですが、慕ってきた後進画家を熱く指導したようです。蓬春の新日本画の精神を受け継いだ著名画家の中から上記2名が選ばれて展示されていました。
50 片岡球子 「富士に献花」
金地を背景にかなり縦長でいかつい形をした富士山が描かれ、手前には3輪の牡丹が描かれています。強い色彩とややグロいデフォルメで、ひと目で片岡球子と分かる個性です。これまでの日本画にはない強烈な画風で、自由な精神が感じられました。
この隣に東山魁夷の作品もありました。
<画室再現>
こちらだけ撮影可能となっていました。今でも葉山に山口蓬春の記念館があります(ブログ休止中に行ったことがありますが、非常に良いところです)

この近くには美術界だけでなく多くの人と交流があったのをボードで解説していました。アートディレクター的な形での関わりで小津安二郎や先述の中村歌右衛門などの名もあり、意外なところでは日本野鳥の会などもありました(師匠である松岡映丘の兄の柳田国男もメンバー) また、映像でこの展示で観てきた流れに沿って山口蓬春の変遷を紹介していました。
<髙島屋所蔵の山口蓬春作品>
最後にタカシマヤと山口蓬春の関わりを示す品が数点並んでいました。
53 山口蓬春 「鳥」
こちらは横浜タカシマヤの団扇の原画で、葉っぱにとまった小鳥が描かれています。1962年の作なので この展示では6章あたりの頃のものです。葉っぱは滲みを活かした色彩と単純化された形態で、やや琳派風に思えるかな。小品ながらも愛らしく、ノベルティとは思えないほどの気品が感じられました。
ということで、後半は特に面白い作品が多かったように思えます。展覧会のタイトル通り、蓬春モダニズム以降も飽くなき挑戦を試みていた様子も伝わってきて予想以上に楽しめました。東京では既に終わってしまいましたが、今後の参考にもなる展示でした。
→ 前編はこちら

【展覧名】
山口蓬春展 新日本画創造への飽くなき挑戦
【公式サイト】
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/event/hoshun.html
【会場】日本橋タカシマヤ(日本橋高島屋)
【最寄】日本橋駅
【会期】2019年8月7日(水)~8月19日
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況】
混雑_1_2_③_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
前半は蓬春モダニズムまでの流れを追ってきましたが、3章以降は西洋画と日本画が融合したような新日本画が花開く時期の作品が並んでいました。引き続き各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
<Ⅲ 南方へ>
3章は大型作品1点と資料となっていました。山口蓬春は1938年に台湾総督府主催の美術展の審査員として台湾に赴き、初めて目にする異国の風景に創作意欲を掻き立てられたそうです。そしてその後も毎年のように台湾・中国を訪れるようになります。この頃、画風の変化も始まっていたそうで、フォルムの単純化や装飾的な造形の芽生えが観られるようになりました。また、戦時中は戦争協力を求められ、戦争画を描くこともあったようですが、激戦の1945年頃には世田谷から山形へと疎開したようです。ここには台湾を題材にした作品が展示されていました。
23 山口蓬春 「南嶋薄暮」 ★こちらで観られます
こちらは赤い屋根と白い壁の台湾の家を背景に、木に繋がれたコブ牛が描かれています。家の周りには褐色の肌のパイワン族の女性たちが頭の上に荷物を載せて運んでいる様子や、家の中でチャイナ服のような女性が座って手仕事をしている様子も描かれています。空は深い青で、星が1つだけ輝いているのが清々しく、強い色彩と共に南国の情緒が漂っていました。細かい筆致で写実性があるのに南国での感動をそのまま表しているような印象を受けるのも見事です。
この近くには蓬春が撮った写真も並んでいて、この作品そのものの家やコブ牛、女性たちが写っていました。
<Ⅳ 蓬春モダニズムの展開>
続いては戦後間もない頃のコーナーです。山口蓬春は1947年に山形から神奈川県の葉山に移り、翌年に新居(今の山口蓬春記念館がある所)を構えました。この新居はすぐ近くに葉山御用邸があることから香淳皇后に絵の手ほどきをすることもあり、皇室との縁も深まったそうです。また、戦後は日展を中心に活動したようで、新しい日本画を目指し時代感覚を取り入れた近代的な造形に昇華していきます。漫然とした自然描写を廃し、「もっと明るく、もっと複雑な、もっと強い、もっとリズミカルな」といった画風は「蓬春モダニズム」と呼ばれていきました。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
28 山口蓬春 「夏の印象」
こちらはテーブルの上の麦わら帽子や貝殻を描いた作品で、画面の周りには朝顔の花と葉っぱが額のように取り囲んでいます。色面と輪郭がちょっとズレている表現はデュフィやマティスを思わせるかな。淡く軽やかな色彩で清涼感のある雰囲気です。葉っぱのリズムや単純化も心地よく、この展示でも特に気に入りました。
30 山口蓬春 「望郷」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている作品(の本画)で、北極のシロクマと南極のペンギンが一堂に会するという自然界にはありえない風景となっています。シロクマは遠くを観ていて、タイトルから察するに故郷を思っているのでしょうか。氷は縞模様で表されていたり、空の太陽が日食のように重なっているのも誇張された感じがします。解説によると、上野動物園でシロクマを観て画題に選んだようです。また、左右にこれとほぼ構図の小型作品が2点並んでいて、それぞれ小下絵と小下図となっています。小下絵は本画の前に描いて東山魁夷の新築祝いの際に贈ったそうで、小下図は歌舞伎役者の中村歌右衛門がクマ好きと聞いて贈ったのだとか。3点揃っての展示は今回が初ということで貴重な機会となっていました。
<Ⅴ リアリズムの追求>
続いては静物のコーナーです。近代的な形や色を追求する作品は先程の「望郷」を1つの区切りを迎えたそうで、その後は清澄な詩情の時代へと変わります。1955年に「これからの日本画はすべて写実が基盤になる」と語り、リアリズムを目指す静物画を中心に制作するようになりました。
35 山口蓬春 「枇杷」
こちらは古九谷の皿に入った枝付きの枇杷の静物画です。丸々してるけど まだ緑から黄色に変わる頃なので、食べても美味しくなさそうw 写実的で皿の模様まで丁寧に描いている一方、実際には角度的に見えないはずの高台まで描いていて、装飾的に表現しているようです。どっしりとした質感があって、これまでの作風からまた変わったのが感じられました。
34 山口蓬春 「まり藻と花」 ★こちらで観られます
こちらはテーブルの上のグラスに入ったマリモと、花瓶に入った朝顔を描いた作品です。写実的に描いていますがキュビスム的な平面性・多面性や単純化が観られるように思います。黒の隈取がこの頃の特徴らしく、この絵でもそれが確認できます。青を背景にして落ち着いた雰囲気で、洋画のような色彩感覚でした。
この頃、山口蓬春に指導を求める若手が20人近く蓬春の元に集まっていたそうで、画塾という形では無かったようですが日本画の1つの指針を示していたようです。
<Ⅵ 新日本画への昇華>
続いては晩年のコーナーです。山口蓬春はかつては大和絵の文学的叙情性から抜け出すために動物や人物を画面から消しとっていましたが、1960年頃に春夏秋冬の連作を描き始めると、小鳥が再び登場するようになったようです。意識的に遠ざけていた四季花鳥という伝統的な大和絵の画題に 敢えて挑戦する円熟した境地に達したようで、晩年は岩絵具の清澄な色彩に深みが増し 洗練された構図に明るさが満ちたそうです。没後、山口蓬春について美術評論家の河北倫明は「誰かが蓬春のレベルを維持しなくてはならない」と語っていたそうで、蓬春は西洋画・日本画を超えた近代日本画の1つの到達点と言えるようです。ここにはそうした時期の作品が並んでいました。
41 山口蓬春 「新冬」 ★こちらで観られます
こちらは金地を背景に真っ赤な紅葉の落ち葉が重なり、その上で小鳥がじっとしている様子が描かれた作品です。金と赤が響き合い 強い色彩ですが 深みがあり不思議なほど落ち着いた印象を受けます。単純化された紅葉と写実的な小鳥が静かで、冬を迎えようとする時期の風情が感じられました。
この辺は静物画も多く並んでいました。
42 山口蓬春 「花菖蒲」
こちらは金地を背景に青・白・紫などの5つの花菖蒲が描かれた作品です。緑の葉っぱも鮮やかで、リズミカルな配置となっています。題材や色合いからやはり琳派を思わせるかな。初期とは違った画風に思えますが、画題は回帰している感じも受けました。
近くには紫陽花と白い菖蒲を描いた作品などもありました。油彩のような鮮やかさの作品が多いです。
46 山口蓬春 「陽に展く」
こちらは大輪を咲かすヒマワリを描いた作品で、金地を背景にして夏の日差しを感じさせます。正面を向いて力強い花や、後ろを向いている花、下向きの花、花のないものなどもあり、ヒマワリの様々な姿や過程が1つの絵に表されているようにも思えます。単純化されつつ生命感が感じられ、特に目を引く作品となっていました。
この近くには皇居宮殿正殿松の間の「楓図」の下絵もありました。今でも重要な行事で使われる部屋に飾られている山口蓬春の代表作の下絵です。
<エピローグ 蓬春へのオマージュ>
続いては蓬春に触発された画家のコーナーです。と言っても2点のみで、東山魁夷と片岡球子が1点ずつでした。山口蓬春は若い頃に画壇の板挟みになって悩んだこともあるので自らの画塾は作らなかったようですが、慕ってきた後進画家を熱く指導したようです。蓬春の新日本画の精神を受け継いだ著名画家の中から上記2名が選ばれて展示されていました。
50 片岡球子 「富士に献花」
金地を背景にかなり縦長でいかつい形をした富士山が描かれ、手前には3輪の牡丹が描かれています。強い色彩とややグロいデフォルメで、ひと目で片岡球子と分かる個性です。これまでの日本画にはない強烈な画風で、自由な精神が感じられました。
この隣に東山魁夷の作品もありました。
<画室再現>
こちらだけ撮影可能となっていました。今でも葉山に山口蓬春の記念館があります(ブログ休止中に行ったことがありますが、非常に良いところです)

この近くには美術界だけでなく多くの人と交流があったのをボードで解説していました。アートディレクター的な形での関わりで小津安二郎や先述の中村歌右衛門などの名もあり、意外なところでは日本野鳥の会などもありました(師匠である松岡映丘の兄の柳田国男もメンバー) また、映像でこの展示で観てきた流れに沿って山口蓬春の変遷を紹介していました。
<髙島屋所蔵の山口蓬春作品>
最後にタカシマヤと山口蓬春の関わりを示す品が数点並んでいました。
53 山口蓬春 「鳥」
こちらは横浜タカシマヤの団扇の原画で、葉っぱにとまった小鳥が描かれています。1962年の作なので この展示では6章あたりの頃のものです。葉っぱは滲みを活かした色彩と単純化された形態で、やや琳派風に思えるかな。小品ながらも愛らしく、ノベルティとは思えないほどの気品が感じられました。
ということで、後半は特に面白い作品が多かったように思えます。展覧会のタイトル通り、蓬春モダニズム以降も飽くなき挑戦を試みていた様子も伝わってきて予想以上に楽しめました。東京では既に終わってしまいましたが、今後の参考にもなる展示でした。
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