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円山応挙から近代京都画壇へ (感想前編)【東京藝術大学大学美術館】

先週のお盆休みに上野の東京藝術大学大学美術館で「円山応挙から近代京都画壇へ」を観てきました。見どころの多い展示でしたので前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。なお、この展示は前期後期で大きな展示替えがあるようで、私が観たのは前期の内容でした。

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【展覧名】
 円山応挙から近代京都画壇へ

【公式サイト】
 https://okyokindai2019.exhibit.jp/
 https://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2019/maruyama-shijo/maruyama-shijo_ja.htm

【会場】東京藝術大学大学美術館
【最寄】上野駅

【会期】
  前期:2019年08月03日(土)~09月01日(日)
  後期:2019年09月03日(火)~09月29日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
そこそこ混んでいて場所によっては人だかりがありましたが概ね自分のペースで観ることができました。

さて、この展示は京都画壇の王道とも言える円山派と四条派を中心にそこから派生した流派まで歴代の実力派が一堂に会するという内容となっています。画風の異なる2つの流派ですが、両者を学ぶものも現れ いつしか円山四条派と呼ばれるようになっていきました。4章構成で円山応挙からの流れと題材別に章分けされていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<すべては応挙にはじまる。>
まずは円山応挙からの円山派の始まりに関するコーナーです。円山応挙は18世紀半ばから後半に活躍した京都の画家で、写生を重んじ自然や花鳥・動物を生き生きと写し取った斬新な画風はたちまち京都で評判となりました。弟子には息子の円山応瑞、源琦(げんき)、山口素絢(やまぐちそけん)、渡辺南岳、長沢芦雪などがいて、さらに与謝蕪村の高弟だった呉春も晩年の応挙に弟子入りを請いましたが応挙は親友として迎えいれたようです。呉春は与謝蕪村譲りの南画と応挙の写生を融合させた四条派の祖となり、円山派と四条派はその後の京都画壇の中心となっていきます。さらに円山派の分派には原派・岸派・森派・鈴木派などもあり、このコーナーでは各派を代表する画家たちの作品が並んでいました。
 参考記事:円山応挙-空間の創造 (三井記念美術館)

12 山跡鶴嶺 「円山応挙像」
こちらは正座して座る円山応挙の肖像です。やや禿げていて、穏やかな顔つきをしているかな。応挙は弟子たちに自分の肖像を描かせ、最も似ていたこの作品を子孫に伝えたそうです。そのエピソードでも写生を重んじていた様子が伺えました。

11 円山応挙 「写生図巻(乙巻)」 ★こちらで観られます
こちらは応挙が様々なものをスケッチした写生図鑑です。筍、猿、蜘蛛、ホタル、松、ススキなど写実的かつ洒脱な雰囲気で描きあげています。特に猿のフワフワした毛並みなどはリアルでありながら可愛らしい雰囲気となっていました。解説によると、当時は筆使いの個性がないとの批判もあったそうです。曾我蕭白は「絵を望むのなら私に乞うべきだが、絵図なら円山主水(もんど。応挙のこと)が良かろう」と言っていたようで、それまでの絵画と一線を画するものと考えられていたのかもしれません。確かに曾我蕭白のファンタジックな作風とは大分違う気はしますw 一方、応挙は「実物に即して描かないと絵とは呼べない。強さや生命力は形をしっかり描けば備わる」と考えていたようです。応挙は西洋絵画の影響を受けた眼鏡絵などを描いていたこともあるので、西洋的なアプローチだったのかもしれませんね。
 参考記事:蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち 感想前編(千葉市美術館)

この隣には長沢芦雪の「孔雀図」もありました。写実的で堂々たる威厳のある孔雀図です。

この先に兵庫県の大乗寺の障壁画がその場に再現されるように展示されていました(東京会場のみ) これは応挙だけでなく一門が参加して作ったもので、大乗寺全体では13の部屋に165面もの障壁画を作成したそうです。仏間を中心に立体曼荼羅になっていると考えられるらしく、
 多聞天:仙人の間。生命・医薬
 持国天:農業の間。生産・経済
 増長天:芭蕉の間。政治
 広目天:山水の間。芸術
のような構成となっているようです。ここでは孔雀の間の円山応挙「松に孔雀図」、農業の間の呉春「四季耕作図」、使者の間の山本守礼「少年行図」と亀岡規礼「採蓮図」、禿山の間の呉春「群山露頂図」の4面がぐるりと廻って観られるようになっていました。

1 円山応挙 「松に孔雀図」 ★こちらで観られます
こちらが大乗寺の4×2面からなる襖絵で、金地を背景に松の木が描かれ、もう一方には松の下の岩の上で口を開けている孔雀が描かれています。墨の濃淡で描いているのですが、光の当たり方や観る角度によっては青っぽく見えるとのことで、確かに松は緑っぽく見える気がします。割と単純化されているようにも思えるものの、質感や生命感が強く感じられました。亡くなる3ヶ月前に完成した最晩年の作品です。

8 呉春 「群山露頂図」 ★こちらで観られます
こちらは点々を多用した南画風の作品で、いくつもの岩山の頭を描いています。空を飛ぶ鳥が観ているような景観で、霧が立ち込めるような感じも出ています。応挙というよりは南画の作風が濃いめのようですが、その分 情感豊かな表現となっていました。

6 山本守礼 「少年行図」 ★こちらで観られます
こちらは狩野派も学んだ応挙の弟子の作品で、中国の山間の道に馬を乗った人や少年らしき姿が描かれています。これは李白の七言絶句「少年行」を主題にしているそうで、狩野派譲りの漢画っぽさもありつつ南画のような感じも若干あるように思えました。応挙の弟子には色々いて面白い。

7 亀岡規礼 「採蓮図」 ★こちらで観られます
こちらも李白に詠まれた漢詩を題材にしていて、蓮を採った西施という美女にちなむ画題だそうです。蓮池で船に乗った女性たちが描かれ、優美な雰囲気です。これも南画的な感じを受けるかな。この画家は写生的な花鳥のイメージがあったのでちょっと意外。

9 呉春 「四季耕作図」 ★こちらで観られます
こちらは先程の「群山露頂図」から8年後に描かれたもので、だいぶ画風が変わっています。右から左へと季節が移り変わっていて、田植えのシーンと脱穀のシーンが描かれています。細部まで緻密ながら詩情溢れる光景となっていて、応挙と与謝蕪村の2人から学んだものが融合されているように思えました。

と、ここまでが大乗寺の障壁画です。ぐるりと観て回れるのが何とも贅沢な展示となっていました。

この先にあった長沢芦雪の「花鳥図」も良い作品です。近くにはだいぶ時代を隔てた上村松園の「羅浮仙女図」もありました。上村松園の先生の幸野楳嶺は円山派と四条派の両方に学んだ画家(もう1人の先生の竹内栖鳳も幸野楳嶺の弟子)なので、京都らしい系図と言えそうです。


<孔雀、虎、犬。命を描く。>
続いては動物を描いた作品のコーナーです。円山応挙は鳳凰や龍といった架空の動物よりも生きた鳥や動物をよく観察して描こうとしたそうで、それは弟子にも引き継がれていきました。写生に徹底する特徴は近代の京都画壇の重要な特性としてその後も強く影響していくことになります。ここにはそうした特徴の作品が並んでいました。

31 円山応瑞 「牡丹孔雀図」
こちらは応挙の息子が描いた孔雀図で、雌雄の2羽が並び長い羽が非常に優美な印象です。緑青・群青の色彩が輝くようで、力強さも感じられるかな。円山派が得意とした題材だけに見応えのある作品となっていました。

38 都路華香 「雪中鷲図」
こちらは江戸末期から明治にかけて活躍した幸野楳嶺の弟子の作品で、枝?にとまる鷲が描かれています。じっと見つめる眼が鋭く、大きな体つきが威圧感があり 鋭い爪と共に緊張感を漂わせています。周りには白い雪が舞っていて、自然の厳しさを感じさせました。ちょっと誇張した感もあるけど、迫力ある作品です。

近くに一番弟子の源琦による「四季花鳥図」もありました。こちらは穏やかで雅な雰囲気で、理想郷のような光景です。

59 森寛斎ほか 「魚介尽くし 」
こちらは28人の円山派・四条派の画家たちが描いた魚介類が並ぶ作品です。幸野楳嶺のカレイや望月玉泉のシジミ、森寛斎のサザエなど1人1人が様々な魚介を描いているわけですが、驚くほどに画風は統一されていて いずれも素早いタッチで描かれています。これだけお互いの作風を似せられるのは写生を元に研鑽を積んだからでしょうね。1人で描いたと言われたら信じそうな位の統一感でした。

51 岸竹堂 「猛虎図」 ★こちらで観られます
こちらは六曲一双の屏風で、左隻に1頭 右隻に3頭の虎の姿があります。中央に渓流があり左右の虎が睨み合って威嚇しているような構図で、虎は厳しい顔つきをしています。虎は来日したイタリアのサーカスで実際に観て描いたものらしく、我々の知る虎そのものです(それ以前は虎の皮と猫を参考に空想で描いたりしていた) 力強い体躯で筋肉の張り方までリアリティがあります。無数の線で表された毛の質感まで見事でした。

この近くには猿を得意とした森狙仙の「雪中燈籠猿図」などもありました。灯籠の中に隠れて雪から身を隠す猿たちが可愛い作品です。

48 長沢芦雪 「薔薇蝶狗子図」 ★こちらで観られます
こちらは5匹の子犬が戯れている様子が描かれた作品で、お座りしたり 伏せていたり 他の犬の尻尾を掴もうとしたり と無邪気な仕草をみせています。つぶらな眼をしていて芦雪らしい子犬かな。師匠の応挙もコロコロした犬をよく描きましたが、一層に可愛らしいマスコット的なものを感じました。

43 国井応文・望月玉泉 「花卉鳥獣図巻」
こちらは2人の合作による長い巻物で、国井応文は極彩色で鶏、孔雀、ガチョウ、七面鳥、朝顔、バラなど花鳥などを描いています。2人の画風はかなり異なり、望月玉泉は落ち着いた色彩で鶯や雀、梅などを描いていました。国井応文は円山派、望月玉泉は四条派なのでその違いが現れているようにも思えました。


ということでここまでが上階の展示となっていましたので今日はこの辺にしておこうと思います。やはり見どころは大乗寺の障壁画をそのまま展示している点で、実際の作りさながらに各画家の画風の違いなども楽しめました。また、写生を元にした動物画は可愛くもあり凛々しくもあって、各画家の個性も現れているように思えました。後半も見どころの多い内容となっていましたので、次回は残りの地下の展示をご紹介の予定です。

 → 後編はこちら

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