関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展 (感想前編)【三菱一号館美術館】

1ヶ月ほど前のお盆の時期に丸の内の三菱一号館美術館で「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

DSC04076_20190913014956c75.jpg

【展覧名】
 マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展

【公式サイト】
 https://mimt.jp/fortuny/

【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅/有楽町駅など

【会期】2019年7月6日(土)~10月6日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
お盆中とは言え平日に行ったこともあり、それほど混むことなく快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はマリアノ・フォルチュニという「ヴェネツィアの魔術師」と呼ばれた作家に関する個展となっています。マリアノ・フォルチュニは特に服飾の世界で活躍し「デルフォス」と呼ばれるドレスで時代の寵児となったようで、その活動を軸に絵画、版画、写真、舞台装置なども手掛けたようです。その多岐に渡る活動やルーツについて7章構成で展示していましたので、各章ごとにその様子を簡単にご紹介していこうと思います。


<序章 マリアノ・フォルチュニ ヴェネツィアの魔術師>
まずはマリアノ・フォルチュニとは何者か?を簡単に紹介する序章です。マリアノ・フォルチュニは1871年にスペインのグラナダで生まれ、同じ名前の父マリアノは中東の風俗画で人気を誇った画家、母セシリアも芸術家一族の出身という家系だったようです。3歳の時に父が亡くなりパリに移ると、画家の叔父やオリエンタリスムの画家バンジャマン=コンスタンに絵を学び、印象派の動向には目もくれず父の油彩や版画を模写し、オールドマスターたちの作品を研究したようです。そして1889年にヴェネツィアに一家で移住すると、現在はマリアノ・フォルチュニの美術館になっている邸宅で伝説的なドレス「デルフォス」などを世に送っていきました。

マリアノ・フォルチュニ 「自画像」
こちらは10代後半頃の若い自画像で、窓の外の海を見ている横顔で描かれています。印象派には関心が無かったとのことですが、結構大胆な筆致に見えるかな。写実的な画風です。賢そうな顔つきで、育ちが良さそうに見えました。

この近くには父の描いた小さな油彩や、9歳の時の絵画、父の作品を模写した花の静物などもありました。ちなみに母親はプラド美術館の館長の娘だったのだとか。芸術界のサラブレッドみたいな感じですね。

マリアノ・フォルチュニ 「デルフォス(紫)」
こちらは3章の内容ですが、序章にありました。胸元がV字の紫色のドレスで、足元の裾が広がり花のような美しい形となっています。私はマリアノ・フォルチュニの名前を知らなかったものの、このドレスは今までに何度か観ているのでこの時代を象徴するドレスなのは間違いなさそうです。この後いくつかのパターンが出てきますが、特に見どころはプリーツ(細かいヒダ)で、100年経っても解れることなく形を保っていて、現在では製法が分からなくなっているそうです。このプリーツのおかげで優美な印象を受けました。

この章には他に当時の本人や家族の写真、家の写真などもありました。ヴェネツィアに引っ越したのはマリアノ・フォルチュニが喘息を起こすので、馬車の無い街へということが理由だったようです。


<第1章 絵画からの出発>
続いてはマリアノ・フォルチュニの芸術活動の始まりである絵画に関するコーナーです。父はスペインを代表する画家でしたが、36歳(マリアノ・フォルチュニが3歳の時)亡くなり、マリアノ・フォルチュニはその父への賞賛を胸に才能を広げていったそうです。ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼ、ティエポロなどヴェネツィア派の巨匠を模写し研究する一方で、父の作品も模写しています。また、ワーグナーの舞台を観て感激し、舞台の場面も多く描くようになったようです。マリアノ・フォルチュニは自身を第一義に画家であると認識していたようで、ここにはそうした絵画作品が並んでいました。

マリアノ・フォルチュニ 「仏陀伝の一場面」
こちらは白い馬にまたがり両手を挙げる青年らしい人物の後ろ姿が描かれた作品です。水辺の様子らしく、近くには象らしき姿もあります。細部はあまり分かりませんが、幻想的で珍しいテーマの作品に萌えました。

この辺にはティントレットやティエポロ、ルーベンスの模写などもありました。流石に本人の作品に比べると粗めに見えますが、かなりの腕前であるのが分かります。また、裸婦の写真などもあり絵の構想を練る際にスケッチ代わりに本人が撮影したものとのことでした。


<第2章 総合芸術、オペラ ワーグナーへの心酔>
続いては舞台美術やワグナーへの傾倒に関するコーナーです。マリアノ・フォルチュニはワグナーのオペラに感激し、それを教えてくれたスペインの画家と共に1892年にヴァイロイトの(ワグネリアンの聖地)に旅し、その関心を絵画から舞台美術と照明技術へと移していきました。そして応用電気工学や物理学、光学を研究し、音楽・演技・照明・舞台装置の共感覚の実現を目指していったようです。その結果、「クーポラ」と呼ばれる半球形のステージセットに拡散光と間接照明を用いた照明装置を組み合わせ、革新的な舞台機構を発明したそうです。やがてこのイリュージョンを創出する「クーポラ・フォルチュニ」は舞台装置と照明に革命をもたらし、ヨーロッパ各地の主要な劇場で採用されていきました。ここにはそうした舞台装置に関する品が並んでいました。

マリアノ・フォルチュニ 「舞台装置[クーポラ・フォルチュニ]構想スケッチ」
マリアノ・フォルチュニ 「パリ、ベアルン伯爵夫人私設劇場のための遠隔操作舞台照明装置の構想」
これらは舞台装置の為の構想で、細かい字や絵でスケッチされています。後者は円と線で描かれていて配線図みたいに見えるかな。解説によると、マリアノ・フォルチュニはヴァイロイトの舞台を見て舞台装置や照明に失望し、新しい装置を作ろうと考えたようです。「クーポラ・フォルチュニ」は絵の具のように舞台で色を混ぜることのできる照明で、これがあれば書き割りの色も照明で変えられるという画期的なものだったようです。近くにクーポラの写真もあり、光の色や強さで朝や夜など微妙な雰囲気の違いも出せるようでした。

マリアノ・フォルチュニ 「リヒャルト・ワーグナーのオペラ『パルジファル』より クンドリ」 ★こちらで観られます
こちらは十字架を背負ってゴルゴタの丘を登るキリストを嘲笑したことで呪われて永遠に生きることになった美女を描いた作品です。黒髪の裸婦がピンクの花に囲まれていて、キリッとした表情の妖艶な女性に見えます。全体的に明るいのに妖しい雰囲気なのが面白いかな。この展示でも特に気に入った作品です。

この辺にはワグナーの舞台を描いた絵画や舞台の模型の写真などもありました。また、「デルフォス」のドレスや着物をジャケットにした作品もありました。日本の着物そのものといった感じですが西洋製のようです。


ということで、今日はここまでにしておこうと思います。多彩な活動をしていたということで、早くも絵画・写真・服飾・舞台装置などの作品があったのですが、模写や資料などちょっとピンと来ないものも多かったように思います。3章は撮影可能の箇所もありましたので、次回は3章から最後までご紹介の予定です。


 → 後編はこちら

関連記事


記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。

 

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter



コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

21世紀のxxx者

Author:21世紀のxxx者
 
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

関東の方には休日のガイドやデートスポット探し、関東以外の方には東京観光のサイトとしてご覧頂ければと思います。

画像を大きめにしているので、解像度は1280×1024以上が推奨です。

↓ブログランキングです。ぽちっと押して頂けると嬉しいです。





【トラックバック・リンク】
基本的にどちらも大歓迎です。アダルトサイト・商材紹介のみのサイトの方はご遠慮ください。
※TB・コメントは公序良俗を判断した上で断り無く削除することがあります。
※相互リンクに関しては一定以上のお付き合いの上で判断させて頂いております。

【記事・画像について】
当ブログコンテンツからの転載は一切お断り致します。(RSSは問題ありません)

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter

ピックアップ
オランジュリー美術館展
 前編 後編

コートールド美術館展
 前編 後編

バスキア展
 前編 後編

ゴッホ展
 前編 後編

ハプスブルク展
 前編 後編
展覧スケジュール
現時点で分かる限り、大きな展示のスケジュールを一覧にしました。

展展会年間スケジュール (1都3県)
検索フォーム
ブログ内検索です。
【○○美術館】 というように館名には【】をつけて検索するとみつかりやすいです。
全記事リスト

全記事の一覧リンク

カテゴリ
リンク
このブログをリンクに追加する

日ごろ参考にしているブログです。こちらにも訪れてみてください。

<美術系サイト>
弐代目・青い日記帳
いづつやの文化記号
あるYoginiの日常
影とシルエットのアート
建築学科生のブログ
彫刻パラダイス
ギャラリークニャ
「 10秒美術館 」 ~元画商がほんのり捧げる3行コメント~ 
だまけん文化センター
横浜を好きになる100の方法
美術品オークション

<読者サイト>
アスカリーナのいちご日記
Gogorit Mogorit Diary
青い海(沖縄ブログ)
なつの天然生活
月の囁き
桜から四季の花まで、江戸東京散歩日記
うさみさんのお出かけメモ (u_u)
森の家ーイラストのある生活
Croquis
ラクダにひかれてダマスカス

<友人のサイト>
男性に着て欲しいメンズファッション集
Androidタブレット比較
キャンペーン情報をまとめるブログ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
メディア掲載
■2012/1/27
NHK BSプレミアム 熱中スタジアム「博物館ナイト」の収録に参加してきました
  → 詳細

■2011/11/21
海の見える杜美術館の公式紹介サイトに掲載されました
  → 詳細

■2011/9/29
「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
  → 詳細

■2009/10/28
Yahoo!カテゴリーに登録されました
  → 絵画
  → 関東 > 絵画

記事の共有
この記事をツイートする
広告
美術鑑賞のお供
細かい美術品を見るのに非常に重宝しています。
愛機紹介
このブログの写真を撮ってます。上は気合入れてる時のカメラ、下は普段使いのカメラです。
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
22位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
デザイン・アート
3位
アクセスランキングを見る>>
twitter
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

※できるだけコメント欄にお願い致します。(管理人だけに表示機能を活用ください) メールは法人の方で、会社・部署・ドメインなどを確認できる場合のみ返信致します。