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マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展 (感想後編)【三菱一号館美術館】

今日は前回に引き続き三菱一号館美術館の「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展」についてです。前編は2章まででしたが、後半は3章から最後までご紹介していこうと思います。まずは概要のおさらいです。

 → 前編はこちら

DSC04074_201909140109123ee.jpg

【展覧名】
 マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展

【公式サイト】
 https://mimt.jp/fortuny/

【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅/有楽町駅など

【会期】2019年7月6日(土)~10月6日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
3章の大部屋は指定された場所からだけ撮影可能となっていて、そこだけはちょっと混雑していたように思います。後編も引き続き各章ごとに簡単にご紹介していこうと思います


<第3章 最新の染織と服飾 輝く絹地と異国の文様>
3章は特に名高い服装に関するコーナーです。20世紀初頭の欧米では古代遺跡ブームが起きたそうで、マリアノ・フォルチュニはクレタ文明の草花文様や抽象文様を染め付けた絹のストール「クノッソス」をデザインしました。また、中世やルネサンス、極東、中東などの文様を取り入れたテキスタイルなども制作していたようです。そして「デルフォス」は紀元前5世紀の青銅彫刻「デルフォイの御者」の服装に着想を得てデザインされました。デルフォスはコルセットが不要で女性の自然な体型を美しく演出することができ、現代のファッションの先駆けとなる画期的なドレスだったようです。ここにはそうした異国趣味から着想された作品が並んでいました。

先述の通り、3章は一部だけ撮影可能でした。こちらはデルフォスやクノッソスの展示風景
DSC04080.jpg
この距離だと分かりづらいですが、裾の辺りに細かいプリーツ(ひだ)があります。ギリシア時代の御者の像が着想源になっただけあって、神話的な印象を受けますね。

こちらはマリアノ・フォルチュニの奥さんの肖像画
DSC04096_20190914010917995.jpg
マリアノ・フォルチュニはデルフォスを考案したのは妻のアンリエットであると言っていたそうです。若干、怪訝そうな顔でこちらを見ているように思えますが…w 着物のようなガウンについては後の章で出てきます。

この近くには「デルフォイの御者」の写真もありました。ひだのある真っ直ぐな衣を着ていて、確かにデルフォスと共通する部分が多いように思えます。ただし、御者の服のひだはプリーツではなくドレープなのだとか。その違いが私には区別が難しいですが、プリーツのほうが規則正しく細かいひだのように思えました。

続いて奥に見えるのがテキスタイル
DSC04089.jpg
幾何学文様となっていて、異国情緒が漂います。

こちらもテキスタイル
DSC04102.jpg
優美な雰囲気で、同じく中世美術の復興を目指したアーツ・アンド・クラフツともまた少し異なる印象を受けます。

カーペットなどもありました。
DSC04108.jpg
この後の部屋にもテキスタイルの試し刷りなどがあり、中東やアジア的な文様が多かったように思います。プリミティブさもありつつ気品もある感じです。

こちらは照明。これは当時のものではなく模造品のようです。
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模造品でも分かるデザインの面白さがあります。文様は中東風で渦巻くような造形も見事でした。

この章には他に、赤のデルフォス、テキスタイル工房や販売店舗の写真、デルフォスの特許証書、自宅で自作の服をモデルに着させて撮ったカラー写真などもありました。特にカラー写真は豪華な印象を受け、写真の腕も良かったことが伺えました。


<第4章 写真の探求>
続いては写真作品のコーナーです。写真にも活動を広げたマリアノ・フォルチュニは、No.4パノラム・コダックというカメラで撮影していたそうで、これは140度の画角を持ちオートクローム方式で当時のあらゆる種類のプリントを試すことができたようです。

ここにはヴェネツィアの町並みやサンマルコ大聖堂、路地、自宅、ギリシャ彫刻などを撮った写真が並び、中には「デルフォイの御者」も写っているアルバムもあり、写真が着想の源になっていたのかも知れません。また、「雲の習作、パリ」という写真は横長のパノラマ画面となっていて、雲が主役というちょっと変わった題材に思えました。逆光で黒くなった街のシルエットが陰影を感じさせて風情があり、服だけでなく風景や建物についても関心を寄せていたのではないかと思わせました。

部屋の中央にはデルフォスのドレスや、イスラム風のコートなども展示されていました。


<第5章 異国、そして日本への関心と染織作品への応用>
続いてはマリアノ・フォルチュニと日本の関係についてです。マリアノ・フォルチュニの両親は裕福で世界各地の品々を蒐集していたそうで、その中には日本の品も含まれていました。マリアノ・フォルチュニも両親から異国への興味を受け継ぎ、日本文化や芸術に関する書籍を集めていたようで、それをテキスタイルの下図や作品に利用していきました。特に型染めの技術に関する知識は深く、自らの作品にも取り込んでいます。

ここには着物から転用されたテキスタイルがずらりと並んでいて、母のセシリアが収集していた「桜藤流水模様小袖」など純和風の品も展示されています。この小袖は母が亡くなった後は妻のアンリエットが室内着として着用していた(ガウンのように羽織る感じ)ようです。黄緑地に流水や藤の文様がある文様で、涼し気な印象を受けました。

他には日本の染型紙がいくつかあり、これらはパリで売られていたものを入手していたようです。これから着想を得て型紙を使って自らの作品も作っていました。また、日本の着物そのものに見える室内着もあり、その観察眼と再現性の高さが伺えました。

その先には当時出版されてマリアノ・フォルチュニの書斎に置かれた日本の図案集もありました。ジャポニスムからの影響はこの章を観ると明らかです。


<終章 世紀を超えるデザイン>
最後は現代に続く内容の章となります。マリアノ・フォルチュニは1949年にヴェネツィアで没し、妻のアンリエットの意向によってデルフォスの制作は打ち切られてしまいました。しかしデルフォスは今でも愛好されているそうで、その輝きは失っていないようです。また、先程の絹吊りランプなどは今でも生産されているのだとか。

ここには絹吊りランプやデルフォスのドレス、コートなどがいくつかありました。また、「ヴァレンティノ、オート・クチュール、2016 年春夏コレクション」の映像ではマリアノ・フォルチュニをオマージュしたデザインの服を着たモデル達が映され、確かにその精神性が現代でも息づいているのが見て取れました。


ということで、後半は異国情緒ある服飾と共に着想源に関しても知ることができました。日本からの影響も少なくなさそうなので、親近感の湧くデザインもありました。色々なジャンルの作品がありますが、特に服飾関係に興味がある方向けの内容のように思います。

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