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塩田千春展:魂がふるえる 【森美術館】

今日は写真多めです。この前の金曜日の会社帰りに六本木の森美術館で「塩田千春展:魂がふるえる」を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 塩田千春展:魂がふるえる

【公式サイト】
 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/shiotachiharu/index.html

【会場】森美術館
【最寄】六本木駅

【会期】2019年6月20日(木)~ 10月27日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
金曜日の夜だったこともあり、それほど混むこともなく快適に鑑賞することができました。

さて、この展示はベルリンを拠点にグローバルな活躍をされている塩田千春 氏の過去最大規模の個展となっています。記憶、不安、夢、沈黙など 形の無いものを表現したパフォーマンスやインスタレーションで知られているとのことで、この展示でも会場そのものを作品にしてしまうような大掛かりなインスタレーションがいくつかあり、驚きの連続となっていました。撮影可能となっていましたので、気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。

塩田千春 「手の中に」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
手が針の束を持っているように見えるかな。この後もいくつか手や針をモチーフにした作品があったので、よく使われるモチーフなのかもしれません。

塩田千春 「不確かな旅」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは部屋全体が赤い毛糸で包まれた大型作品。毛細血管のように張り巡らされていて驚きの光景が広がっていました。

所々に針金で出来た舟があり、そこから毛糸が出ている感じです。
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
赤い糸は縁を結ぶイメージがあるので、人との繋がりかな?と思いましたが実際の意味は分かりませんでした。

塩田千春 「蝶のとまっているひまわり」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは5歳の頃の絵。ミロ的な簡略化を想起してしまうのは考えすぎかなw 何故か鏡文字になっているサインや色彩感覚など、非凡なものを感じさせます。

ここで簡単な略歴がありました。塩田千春 氏は1972年に大阪生まれ、1992~1996年に京都精華大学美術学部で洋画を専攻、彫刻科で村岡三郎 氏の助手も務めたそうで、在学中にオーストラリアに留学もしています。19歳の時滋賀県立近代美術館でポーランドのマグダレーナ・アバカノヴィッチの個展を観たのを契機に、彼女のもとで学ぶためにドイツ留学を決意し、1996年に渡欧しハンブルグ美術大学に入学。1997~1998年はブラウンシュヴァイク美術大学でマリーナ・アブラモヴィッチに師事し、その後ベルリン芸術大学でレベッカ・ホルンにも師事したそうです。その後はベルリンを拠点に数多くの展覧会で作品を発表していて、すべて合わせると300以上もの展覧会に出品しているのだとか。

塩田千春 「絵になること」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは大学在学中にオーストラリアに交換留学に行っていた頃の作品。自分が絵になる夢を観たそうで、自身が絵画の一部となった感覚を表そうとしているようです。血まみれの事件じゃないのねw この後も全身を使った作品がいくつかあり、こうした作風も特徴のように思えました。

塩田千春 「物質としての存在のあり方」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは京都の法然院を会場にしたインスタレーションの記録写真。生と死、輪廻転生などを表現しているそうで、「生まれた時に物質として見えるのはへその緒、死ぬ時に残るのは灰」という言葉からへその緒をイメージしました。ここでも作品と一体化してますね。

この辺は過去のインスタレーションの写真と解説が並んでいました。本人の言葉を交えた解説がわかりやすくてありがたい。

塩田千春 「私の死はまだ見たことがない」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは180個もの牛の頬骨を使った作品。タイトルはマルセル・デュシャンの墓碑の「されど、死ぬのはいつも他人ばかり」に呼応しているとのことで、確かに他者の死を連想させるモチーフになっています。水を求めて集まってきたような配置になっていて、その中心には本人が首だけ出して埋まってるという…w 死んでいるのに生き物のように見えるのが面白い作品でした。

塩田千春 「親戚の顔」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは塩田千春 氏の親戚の写真を並べた作品。ドイツの地で自分の帰り道がないように感じて昔のことを思い起こしたそうです。記念写真が多くて一家の歴史を観るような感じかな。一種のノスタルジーなのかもしれません。

塩田千春 「眠っている間に」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは映像作品。糸が張り巡らされている中で何人か寝ている様子が映されていました。糸が繭のようで人々は荘子の「胡蝶の夢」を観て夢と現実の狭間にいるとのことで、シュールさも感じられます。やはりここでも糸を使っていて幻想的な雰囲気を出していました。

塩田千春 「アフター・ザット」「皮膚からの記憶」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
「皮膚からの記憶」は第1回ヨコハマトリエンナーレでも出品された作品。泥だらけのドレスをシャワーで流し落とすインスタレーションですが、「ドレスは身体の不在を表し、どれだけ洗っても皮膚の記憶は洗い流すことができない」とのことです。この時は観に行ってないので、また別の機会で観てみたい…。

塩田千春 「皮膚からの記憶」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
これだけ並ぶと無茶苦茶怖いですw このインパクトは一度観たらトラウマレベル

塩田千春 「ウォール」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらも映像作品。またもや自ら体を張っていますw 血が連想させる家族・民族・国家・宗教などの境界線を壁に喩えているそうで、「その壁を超えることの出来ない人間の存在を表現」しているとのことです。チューブの中の血が巡る様子は中々美しく、これもへその緒などを思わせるものがありました。

他にも色々と衝撃的な作品はいくつかありましたw

塩田千春 「セルI」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちら水彩作品。確かに植物の断面の細胞のように見えるかな。下の方に人間らしきものが描かれ、魂なのかも…。

塩田千春 「存在の状態」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらも赤い糸を使った作品。こちらは意図は分かりませんでしたが、少しづつ異なる幾何学的な形が意味深ですね。

塩田千春 「外在化された身体」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは心と身体がバラバラになっていくの表現しているようです。下の方に手が転がっていて、ボロボロのネットは心なのかな?

塩田千春 「小さな記憶をつなげて」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
先程の写真の奥にも写っていた作品です。沢山の玩具が赤い糸で繋がっています。ここは解説がないで詳細不明ですが、この糸は子供の頃の記憶の糸なのではないかと思いました。

塩田千春 「静けさのなかで」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは9歳の頃に隣の家が火事になり、次の日に外にぽつりとピアノが置かれていたという体験に基づく作品。言い知れぬ不安と死を感じる一方で、廃墟的な美しさも感じられました。

塩田千春 「静けさのなかで」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
椅子も焼けて座る部分が無い残骸となっています。この空間の世界観にはかなり圧倒されました。説明しづらい恐怖と好奇心が混じったような気持ちになります。

塩田千春 「時空の反射」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは鏡を使ってドレスが2つあるように見えています。黒い糸はどうしても死を連想させるかな。純白のドレスなのにちょっと不穏というかw

塩田千春 「内と外」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは外側。割れた窓枠がいくつも重なってできた要塞のようにも見えます。

塩田千春 「内と外」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは内側。外側とは印象が違って見えるかな。いくつもの世界に繋がっているような光景に思えました。

塩田千春 「集積-目的地を求めて」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは沢山のスーツケースを階段状に赤い糸で吊るした作品。かなり圧倒的な光景です。

塩田千春 「集積-目的地を求めて」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
裏から観ることもできます。作者の言葉によると「スーツケースの山を見るとその数だけ人の生をみてしまう。故郷を離れどこかに目的地を求め、どうして旅に出たのか。その出発の日の朝の人々の気持ちを思い起こしてしまう」ということで、このスーツケースは持ち主の人生そのものを表しているのかもしれません。連なり混じり合うような配置も作者の境地を反映しているようでした。

塩田千春 「魂について」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらはドイツの小学生に魂(ゼーレ)って何?と聞いたインタビュー映像。割と深い回答が多くてちょっとビックリ。作者も病気で生きることに精一杯だったそうで、魂について今一度考えさせられるような映像でした。


ということで、非常に印象深い展示となっていました。単に見栄えがするというだけでなく、生と死に真摯に向き合うような作品が多く「魂がふるえる」というのも大袈裟ではない内容でした。解説もわかりやすいので現代アート好きだけでなく幅広い層が楽しめる展示だと思います。
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