関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

チェコ・デザイン 100年の旅 (感想後編)【世田谷美術館】

今日は前回に引き続き世田谷美術館の「チェコ・デザイン 100年の旅」についてです。前半は5章の戦中戦後の頃までについてでしたが、今日は戦後の6~10章についてご紹介して行こうと思います。まずは概要のおさらいです。

 → 前編はこちら

DSC06507.jpg

【展覧名】
 チェコ・デザイン 100年の旅

【公式サイト】
 https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00195

【会場】世田谷美術館
【最寄】用賀駅

【会期】2019年9月14日(土)~11月10日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
前編に引き続き、各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。

<第6章 1950-60年代:日常生活と応用美術の解放>
6章は社会主義国家となった1950年~60年代のコーナーです。1940年代の政治的転換はデザインや建築にも大きな影響があったようで、ソビエト由来の社会主義リアリズムが奨励されたそうです。しかし1950年代後半からはそうした状況が少しづつ緩和され始め、芸術家がどういう様式で制作するか厳格に要求されることはなくなっていきました。そして西側の動向や国内の消費産業にも注目してデザインは盛り上がりを見せ、1958年にはブリュッセル万国博覧会に参加して成功を収めました。その万博を機に広まった「ブリュッセル・スタイル」はこの時期特有の様式らしく、アンフォルメル、タシスム、抽象表現主義、シュルレアリスムなど自由な芸術様式からインスピレーションを得ていたようです。また、宇宙飛行の成功に影響を受けて 抽象的な台形や三角形をしたデザインや、プラスチックなど新素材を使ったものが登場したようです。そして1960年代はさらにイデオロギー的な制約は弱まったようで、ポップアートなども取り入れたデザインとなったようです。ここにはそうした意外にも自由だった時代のデザインが並んでいました。

105 エヴァ・ハヴェルコヴァー=リンハルトヴァー 「燭台」
こちらは有人宇宙飛行の成功にインスピレーションを得て作られた金色の燭台です。足の部分は鎌のようなものが3本あり、宇宙船の足をイメージさせます。全体的に軽さが強調されているようで、薄くて細身の作りになっているのも特徴かな。先進的で流線的なデザインの作品でした。

この隣にも宇宙開発を連想させる抽象的な絵柄のコーヒーセットがありました。

107 ヤロスラフ・イェジェク 「陶磁器製置物 1.ネコ 2.キジ 3.サギ」
こちらは黒い陶器の置物で、猫を表しているようですが顔は三角形で身体は溶けるように滑らかな曲線となっています。かなり単純化されても猫っぽさがあり、とにかくフォルムが美しく気品すら感じました。同様にキジとサギの置物もあったけど、サギはもはや何だか分からないくらい流麗なフォルムになっていて現代的な印象でした。

この辺はシンプルだけど滑らかで有機的なデザインの品が並んでいました。電話機や掃除機まであってチェコのデザインの豊かさを感じさせます。

116 ヤロスラフ・フランチシェク・コフ 「チェザタ・スクーター [501型]」 ★こちらで観られます
こちらは豚の鼻のようなライトが付いていることから「ピッグ」の愛称を持つスクーターです。長い鼻の部分に燃料タンクがあるらしく、座席の下に広いスペースが確保され車輪感覚も長くなり それによって乗り心地も良いそうです。色は白とスカイブルーのツートンカラーで、非常に爽やかな印象を受けます。何処か懐かしいレトロさもあって かなりお洒落な雰囲気でした。

この近くには映画のポスターや東京オリンピック向けのポスターがありました。


<第7章 1970-80年代:生活水準の見直しからポスト・モダンへ>
続いては1970~80年代のコーナーです。1968年に「プラハの春」とその後のワルシャワ条約機構軍による軍事介入(チェコ事件)が起きたことで その後20年間は創造的な機運と世界への門戸は閉ざされてしまいました。1970年の大阪万博の頃はまだ自由だった頃の気風があり成功することができたようですが、その後は外国に勝つための輸出製品と質の低い国内向けの製品に二分されるようになっていったようです。また、チェコ国内では深刻な住宅不足によって巨大団地が作られ、低品質の素材で作られた家具が並ぶ画一的なインテリアとなったようです。しかし1980年代前半以降は社会主義産業に背を向けてポスト・モダン的なデザインも生まれたそうで、ここにはそうした動乱の時代の作品が並んでいました。

134 ヤン・シュラーメク、ズビニェク・フジヴナーチュ、ヤン・ボチャン 「アームチェア [オオサカI]」
こちらは大阪万博のチェコ・スロバキア館のためのソファです。曲木で四角っぽい楕円を2つ並べて肘掛けとし、背もたれと座る部分も四角っぽい形を組み合わせています。滑らかで量感があり、1人用にしては大きくて堂々たる印象を受けました。確かにこれはまだモダンな雰囲気が残っているかもしれません。

この辺は電話機やアイロンなどもありました。またちょっとキュビスム的な雰囲気があるようにも思えるかな。割とソ連っぽい感じもあって未知で面白いw

153 ミラン・クニージャーク 「椅子 [コキューブ]」
こちらは白い木製の椅子で、背もたれの部分が稲妻のような変わった形をしています。全体的に直線的でカクカクしたデザインに思えるかなw これも1971年の作品なので、まだ自由さがあるように思えました。


<第8章 1990年代から現代まで:自由化と機能の再発見>
続いては1990年代から現代までのコーナーです。1989年のビロード革命によって民主化されると デザインの世界にも大きな影響を及ぼしたようで、多くの国営企業が民営化されたものの 外国との競争にさらされ多くの企業が破綻したようです。しかし外国からのデザインはチェコのデザイナーにインスピレーションを与え、亡命していたデザイナーたちが帰国してきて、1990年代初頭には独立したデザイン・スタジオも立ち上げられるようになったようです。その後はポスト・モダンやネオモダニズムといった様式が流行り、現在ではチェコ社会におけるデザインの社会的意義が高まっているそうです。ここにはそうした近年の品が並んでいました。

160 ラジム・パパーク、ヤン・トゥチェク 「ランプ [PUR]」
こちらは長方形のウレタンの頭と長く細い足を持つランプです。ちょっと異様な見た目で これがランプとは気づかずにスピーカーかと思いましたw オレンジのウレタンのランプは光った時の様子が想像できるのですが、黒いウレタンのランプもあって、どのように点灯するのか気になるところです。実際に光っているところを観てみたかったw

158 ヤン・チュトゥヴルニーク 「椅子 [コクシー]」
こちらは椅子で、正面から見ると正方形の青い背もたれにH型の穴が空いているような形をしています。横から見ると三角形に足がついているような感じで、何故 背もたれの部分に穴が空いているのかは分かりませんが、レトロヒューチャーな印象を受けるかな。2005年の作品らしいけど、斬新さと共にちょっと懐かしさを感じさせました。

169 マクシム・ヴェルチョフスキー 「花瓶 [ウォータープルーフ]」
こちらは白い長靴に見える花瓶です。滑らかで真っ白でツヤがあり優美な印象を受けます。それにしてもかなり長い長靴なので、相当に長い花しか入らなそうw アイディアが面白い作品でした。

この辺にはグラデーションが美しいガラスの花器などもありました。

159 ジュリー・コザ 「多機能椅子 [でんぐり返し]」 ★こちらで観られます
こちらはプラスチック?の椅子らしきもので、外側は白で くり抜かれた内側はオレンジ色となっています。有機的な形となっていて、ひっくり返したり立てたりすることで多機能性を持たせているそうです。とは言え、ひっくり返してどうやって使うんだ?という疑問もありますw 貝殻を思わせる滑らかで不定形なデザインが美しく、色も洒落た印象となっていました。


<第9章 (テーマ展示1)チェコのおもちゃと子どものためのアート>
続いてはチェコのおもちゃのデザインのコーナーです。ここには様々な時代の玩具が並び、民俗的な印象を受けるデザインが多く観られました。

191 ヴァーツラフ・シュパーラ 「小箱 [悪魔]」
こちらは四角い箱状のものを2つ重ねて手足をつけたロボットのような形の悪魔の像です。前面はスライドして外れそうなので恐らく小箱になると思われます。口は切り込みを入れて表し、目や角なども単純化されて表していて まるで口を大きく開けて笑っているような印象を受けます。素朴で憎めない顔で、民俗的なデザインにも通じているように思えました。

197 「掛け算計算筒」
こちらは円筒形の筒で、側面の上の方に1~10の数字が2段並んでいます。さらに下の方には斜めに円形の穴がついていて、その穴の中には数字が書かれています。つまり、この円筒形の数字を回転させるとその組み合わせの掛け算の結果が穴の中に表示される仕組みになっているようです。単純な作りですが、これは楽しみながら掛け算を覚えることができそうで面白い発想でした。これは知育に良さそう。

207 リブシェ・ニクロヴァー 「キツネのアコーディオン」 ★こちらで観られます
こちらはオレンジ色のキツネのプラスチックの玩具で、胴体の部分がアコーディオン状(蛇腹状)になっています。これを折りたたんだり伸ばしたりして遊ぶのかな? 他にも同様のライオンや猫などもあって可愛らしいデザインでした。


<第10章 (テーマ展示2)チェコ・アニメーション>
最後はチェコのアニメに関するコーナーです。チェコでは第二次世界大戦より前からアニメが作られていたようで、大戦後は国営の映画スタジオで作られたパペットアニメーションが世界的な評価を受けたようです。さらに1965年からは毎日夕方に子供向けのアニメが放送されていたそうで、アニメはチェコの文化を代表する創作領域の1つと言えるようです。ここにはそうした日本では知られざるアニメ作品が並んでいました。

213 ヨゼフ・チャペック(原案)、エデュワルド・ホフマン(監督) 「セル画 [こいぬとこねこは愉快な仲間]より」
こちらはタンポポにとまる蜂を見る赤毛のむく犬を描いたセル画です。背景は白地に水色の幾何学的な文様となっていて、かなりシンプルな印象を受けます。犬はマスコット的な可愛さで、1950年代とは思えないくらいのキャラクターでした。

この辺はアニメのセル画が並び、いずれも子供向けの可愛らしい絵柄でした。また、出口付近ではそうしたアニメを流していて、大半はセリフの無いカートゥーンアニメで軽快な音楽とパントマイム的な動きをしていました。可愛いものや滑稽なものがあって動きも滑らかでした。

最後にこちらは出口にあったビニールの牛の玩具(リブシェ・ニクロヴァー ファトラ社「膨らむおもちゃ [バッファロー]」)
DSC06528.jpg
実際に触ったり抱いたりすることができます。

角度違い
DSC06530_20191010015354fc4.jpg
結構複雑な形をしています。目が可愛いw


ということで、後半も観たことがないチェコのデザインの数々を楽しむことができました。旧東側でしたが時代によっては自由な気風があったりして、西側とはまた違ったデザインです。貴重な機会だし かなり満足したので図録も買いました。プロダクトデザインに興味がある方にはオススメの展示です。

おまけ:記念撮影スポットの写真
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