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内藤コレクション展「ゴシック写本の小宇宙――文字に棲まう絵、言葉を超えてゆく絵」 【国立西洋美術館】

今日は写真多めです。前回ご紹介した国立西洋美術館の常設を観た際に、版画室で内藤コレクション展「ゴシック写本の小宇宙――文字に棲まう絵、言葉を超えてゆく絵」という展示を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので、写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 内藤コレクション展「ゴシック写本の小宇宙――文字に棲まう絵、言葉を超えてゆく絵」

【公式サイト】
 https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019gothic_manuscripts.html

【会場】国立西洋美術館
【最寄】上野駅

【会期】2019年10月19日(土)~2020年1月26日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_②_3_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
閉館時間が近かったこともあり空いていました。とは言え、ダッシュで観ることになったのでとりあえず写真だけ撮ってきた感じですw

さて、この展示は中世の聖書などの写本のコレクションを集めた内容で、大半は2016年に内藤裕史 氏が寄贈した作品のようです。内藤コレクションは約150点もあり、今回はまとまって展示される初の機会となっています。この展示は撮影可能となっていましたので、写真と共にご紹介していこうと思います。

「ラテン語聖書零葉:シラ書(イニシアルO、Qおよび枠装飾)」 ロレーヌ地方(メッス?) 1310~1320年頃
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こちらが聖書の写本。単にラテン語の文字だけでなく所々に装飾があるのが特徴です。

「時祷書零葉(ラテン語およびフランス語):死者のための聖務日課(イニシアルD/女性の胸像)」 フランス、おそらくアミアン 14世紀頃
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こちらはXとDの字のような所が絵柄になっていました。確かに女性の胸像があります。彩色も綺麗に残っていて保存状態も良さそうです。

この近くに前回ご紹介したルオーの作品がありました。内藤氏は戦後間もない時代の高校生3年生だった時、美術雑誌に載ったルオーを観て芸術への情熱に火がついたそうです。やがて医師になり 忙しい仕事や研究の傍らでも情熱を失わずに中世写本をコレクションしたそうです。また、内藤氏の写本収集のきっかけは、パリで美術館めぐりをした際にセーヌ川河畔の古本屋の屋台で中世ゴシック期の彩色写本の零葉を手にとって魅了されたことだったのだとか。

「ラテン語聖書零葉:創世記(イニシアルI/天地創造)」 イングランド 1225~1235年頃
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こちらは創世記の冒頭部分らしく、メダイヨンの中には天地創造やアダムとエヴァの話、楽園追放、アダムとエヴァの労働、カインとアベルなどが描かれているのだとか。ちょっと素朴な絵柄で確かに追放されたり労働してたりして、簡略的に示されていました。

「ラテン語詩篇集零葉8葉:詩篇67,71,73-77(シャンピ・イニシアルと装飾枠)」 フランドル(ブルージュ) 13世紀
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こちらは本になっているけど、かなりページ数が少なくて一部分と思われます。金や色彩で装飾されていて美術的な要素を感じます。ページの上部と下部に鳥の顔みたいなのが描いてあるデザインも面白い。

「ラテン語詩篇集零葉:暦 [表面] 7月(干草刈)」 フランドル(ブルージュ) 13世紀
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こちらは暦を描いた詩篇集。7月は鎌を持って干し草を刈る季節のようです。こちらも文字装飾は美しいけど絵は素朴なところが可愛いw

「ラテン語詩篇集零葉:暦  [裏面] 8月(麦刈)」 フランドル(ブルージュ) 13世紀
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裏面も観ることができました。こちらは女性がかがんで麦を刈り取っています。膝まで服をまくりあげていたり、当時の様子も伺えます。

「ラテン語詩篇集零葉:詩篇25(イニシアルI:教会の中に立つ男とドラゴン)」 マース川流域あるいはフランドル 1250~1260年
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教会に立つ男は左側、その足元と右上辺りにドラゴンがいます。男の下にいるのは鳥っぽく見えるかなw 頭文字が装飾されていたり、空白部分に幾何学文様があったりしてカラフルな印象を受けました。こうした装飾からどの地域で作られたがが推定できるようです。

「ラテン語詩篇集零葉:詩篇109(イニシアルD/聖三位一体)」 パリ 1270~1280年
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ちょっと細部がかすれているけど、Dの字の中に左にキリスト、右に父なる神、その間に聖霊の鳩がいて三位一体となっているようです。その上にいるのはドラゴンらしく、絵の構成も面白く思えました。普通、挿絵ってこんな真ん中に入れないでしょ…w

シュトゥットガルト:ミュラー&シンドラー 「ファクシミリ版『ランベス黙示録』」 1990年
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こちらは東京藝術大学附属図書館の所蔵品で、ファクシミリ版なので精巧なレプリカです。と言っても、どう観ても古い本にしか思えない完成度ですね。オリジナルは1260年頃のイギリスで作られたらしく、黙示録を挿絵を使って書いているようでした。

グラーツ大学出版会 「ファクシミリ版『ドゥース黙示録』」 1983年
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こちらも東京藝術大学附属図書館所蔵のレプリカ。オリジナルはイギリスの1270年で作られたもので、やはり黙示録が描かれています。

アップするとこんな感じ。
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ちょっと何のシーンだか分からないかなw Sの字の中に描かれているようでした。

グラーツ大学出版会 「ファクシミリ版『聖王ルイの詩篇』」 1972年
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こちらもレプリカですが、一際豪華な印象を受けました。オリジナルはフランスのルイ9世が所有していた詩篇だそうで、13世紀パリで作られた写本の傑作とされているようです。フォントまで美しく、装飾も細部まで見事です。

「ファクシミリ版『ピーターバラ動物寓意集』」 2003年
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こちらもレプリカ。動物の寓意を集めた内容らしく、中世に大いに人気を博したそうです。100点もの動物図があるようで、ここにも鹿やヤギらしきものが描かれていました。中世キリスト教の動物図鑑みたいな感じでしょうか。

「詩篇集零葉:キリストの鞭打ち・十字架を担うキリスト」 パリ 1260~1270年
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こちらは挿絵のみとなっている作品。どちらもキリストの受難をテーマにしていて、マリアらしき人物も描かれています。それにしても素朴な絵で、キリストは平然としている感じがしますw

「ラテン語詩篇集零葉:詩篇69(イニシアルS/水中から天の神に祈るダヴィデ王)」 ロレーヌあるいはシャンパーニュ地方 1310~1320年代
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こちらはSの字の中にダビデと神が描かれた作品。画面の所々にある横に区切る帯みたいなものや 音符のような文様が軽やかに感じられます。装飾的で美しい1枚でした。

「ポワティエのペトルス著『キリスト系図史要覧』(ラテン語) 断片:モーセとアーロン(左欄)、イスラエルの部族の宿営地一覧(右欄)」 イングランド 1270~1280年
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こちらはアダムとエヴァからイエス・キリストまでの主要な登場人物を系図にして事績を要約したもの。座っているのが恐らくモーセとアーロンでしょうか。聖書を読むと〇〇の子の△△が延々と続いて挫折しかけるので、こういう解説図があると嬉しいかもw 昔の人も図解して理解していたんですね。

「ポワティエのペトルス著『キリスト系図史要覧』(ラテン語) 断片:エルサレム概念図(左欄)、アレクサンドロス大王(右欄) イングランド 1270~1280年
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こちらも概念図や人物の系図。登場人物が多すぎてギッシリ書いてもほんの一部というw 当時の人たちの研究熱が伝わってきます。



ということで、全く観たことが無かった中世の写本の数々を観ることができました。内容を理解するのは難しいですが、絵・文字・装飾が一体となった独特の美しさがありました。この展示は常設の一部となっていますので、ハプスブルク展に行かれる方はこちらも寄ってみるのも良いかと思います。

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