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天皇と宮中儀礼 【東京国立博物館 平成館】

今日は写真多めです。前々回・前回とご紹介した東京国立博物館平成館の特別展を観た後、同じ平成館の1階で「天皇と宮中儀礼」という特集を観てきました。この展示は撮影可能となっていましたので写真を使ってご紹介していこうと思います。

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【展覧名】
 天皇と宮中儀礼

【公式サイト】
 https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1983

【会場】東京国立博物館 平成館 企画展示室
【最寄】上野駅

【会期】2019年10月8日(火)~2020年1月19日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間20分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は令和元年の御即位に合わせて天皇の宮中行事を紹介する内容で、「即位礼と大嘗祭」「悠紀主基屏風」「御所を飾る絵画」「年中行事」「行幸と御遊」という5つのテーマ35点(入れ替え含む)から成っています。宮中行事は大きく年中行事と臨時行事の2つに分けられ、年中行事はその名の通り毎年行われ、臨時行事は天皇即位や大嘗祭などが含まれます。こうした行事は過去の先例を重視するので絵画や資料が多く残されたようで、この展示ではそうした品々が並んでいました。詳しくは気に入った作品をいくつか写真と共にご紹介していこうと思います。

森田亀太郎(模) 「高御座図」
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こちらは天皇の御座を描いた作品です。頂点にいるのは鳳凰で、その周りにいるのも鳳凰のようです。台座の部分にも鳳凰や麒麟らしき姿があるかな。いずれも名君の時代に現れる霊獣なので、天皇に相応しいモチーフだと思います。解説によると、高御座は皇位の象徴であるとのことでした。先日の即位礼でこれに似たのを観ましたね。
 参考記事:不滅のシンボル 鳳凰と獅子 (サントリー美術館)

「延喜式 巻七(甲)」 平安時代・11世紀
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こちらは国宝で、延喜5年(905年)から醍醐天皇の命によって編纂された律令制における施行細目です。この巻7には大嘗祭について書かれていて、悠紀地方・主基地方を定めることから始まって大嘗宮を作ることなど、詳細な規定が記載されているようです。結構ボロボロになっていて読めませんが、悠紀主基の斎田選びは現在でも行われているのでその影響力が伺えます。ちなみに明治以降は悠紀地方は京都以東、主基地方は以西が選ばれるようになり令和は下野(栃木県)と丹波(京都府)で、平成の際は羽後(秋田県)と豊後(大分県)でした。

藤島助順 「旧儀式図画帖 第三 剣璽渡御」 明治時代
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こちらは明治末期に光格天皇から仁孝天皇へと譲位された際の記録画です。内裏の新帝の元に宝剣と神璽が届けられた時の様子とのことで、それぞれの役割も伝えているようです。こうした儀式の記録をしっかり残しておくことで次世代へと受け継がれていったんですね。

「御即位大嘗祭絵巻」 大正4年(1915)
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こちらは御即位と大嘗祭の様子が描かれた絵巻で、会期によって場面替えして展示しているようです。明治維新後に天皇の即位などを規定する登極令が制定され、大正・昭和の即位礼と大嘗祭はそれに基づいて行われたそうです。絵巻だけ観ると平安時代の様子にも思えますが、時代と共に即位礼や大嘗祭も変わっていったんですね。

この辺に大嘗祭の説明がありました。大嘗祭は即位後初めて行われる新嘗祭(五穀豊穣を祈る宮中祭祀)なので、一世に一度だけとなります。 亀卜の占いによって悠紀・主基の2国を選んで、それぞれの国の斎田で祭祀のための稲を栽培し、11月の祝日になると天皇は純白の御斎服を着用して悠紀・主基の神殿に向かい、自ら祭神に新穀を備えられるそうです。
ちなみに令和の大嘗祭の詳細なスケジュールは11月14日~15日が大嘗宮の儀、16~18日が大饗の儀となっていて、皇居内に設けた大嘗宮で夕方から翌日の夜明けにかけて行われます。つまり この記事を書いた時点から約2週間後に一大イベントが行われるので注目です。

土佐光貞 「悠紀屏風 明和元年度正月・二月帖」「主基屏風 明和元年度三月・四月帖」
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こちらは大嘗祭の際に両斎国から献上される悠紀主基屏風で、令和でも作成され大饗の儀で飾られる予定です(調べても令和は誰が描いたのかまだ分からず…) この屏風にはそれぞれ同時代の一流の歌人が四季の風物を2ヶ月ごとに詠んだ3首の和歌が色紙になって貼られていて、2扇ずつ歌に合わせた絵柄になっているようです。この時は後桜町天皇の大嘗祭で、悠紀は近江・主基は丹波となっていたようです。現存最古の大嘗会屏風ということで貴重な品となっていました。

続いては「行幸と御遊」に関するコーナーです。

「十訓抄」 江戸時代・享保6年(1721)
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『十訓抄』は鎌倉時代に成立した説話集で、10箇の徳目に相応しい話が書かれているそうです。この場面では白河天皇が小野宮に隠棲している皇太后(後冷泉院の后)のところに雪見に行幸した際に、人々が機転をきかせて華やかにもてなした「小野雪見御幸」が描かれています。天皇が急に行く気になったのでお供がダッシュで先方に知らせにいって、何とか上手く行った…とそんな話ですw 後日、天皇が謝礼を小野宮に送った所、宮は知らせにきてくれたお供にそれを賜ったのだとか。ここではうやうやしくお出迎えしていて準備バッチリと言った感じですね。

「小野雪見御幸絵巻(模本)」
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こちらも小野雪見御幸を描いた作品。童女に蜜柑とお酒を捧げさせてもてなしているようです。割といつでも家にありそうなものだけど、お供のファインプレーが無かったら何を出したんでしょうかねw

藤島助順 「旧儀式図画帖 第七 修学院御幸始」 明治時代
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こちらは京都郊外の修学院離宮に御幸している様子を描いた作品。描かれているのは どの天皇か分かりませんが、後水尾天皇や霊元天皇はしばしばここに御幸していたそうです。その後はしばらく途絶えてしまったそうですが、文政7年(1824)に光格上皇が再興したそうです。雅な色彩でその様子を鮮明に伝えているようでした。

近くの「御所を飾る絵画」のコーナーには中国風の人物たちが描かれた「大宋屏風」がありました。その後は「年中行事」のコーナーです。

狩野〈勝川院〉雅信 他(模) 「近代年中行事絵(模本) 巻二」
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こちらは3月3日の宮中行事を描いたもので、2羽の雄鶏による闘鶏が行われています。庭先に2羽いて みんなで見守っているようですが、見てる場所が遠すぎないか?w 桃の節句にそんな儀式があるというのも初めて知って驚きでした。

住吉如慶 「年中行事図屏風」 江戸時代・17世紀
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こちらは平安時代の儀式の様子を参考にしながら描いた作品で、正月十八日に行われる「賭弓(のりゆみ)」という弓の技芸を競う儀式が描かれています。

一部をアップするとこんな感じ
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流石は住吉如慶だけあって人々の表情も豊かで臨場感があります。弓を弾いている姿には緊張感もありました。

「年中行事絵(模本)」 江戸時代・19世紀
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こちらは様々な年中行事を描いた絵巻の模本で、ここでは天皇が年始に上皇・皇太后の住まいを訪れ拝謁する「朝覲行幸」が描かれているそうです。1人だけ赤くてやけに目立つけどこれが天皇なのかな?? そうは思えないポーズですが…w 素人には全く分かりませんが、この年中行事絵は当時の宮中儀式や生活を知る百科事典のような存在とのことでした。


ということで、様々な宮中儀礼について知ることができました。即位礼は既に終わりましたが、11月14日の大嘗祭に関して詳しく知っておくと、より深みを感じるイベントになると思います。タイミングの良い内容なので、正倉院展を観に行かれる方はこちらも合わせて観ることをオススメします。
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