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ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展 (感想前編)【Bunkamura ザ・ミュージアム】

インフルエンザになってしばらくお休みしていました。2週間ほど前に渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで「建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」を観てきました。充実の内容となっていましたので、前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

20191103 163401

【展覧名】
 建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展

【公式サイト】
 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/19_liechtenstein/

【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅

【会期】2019/10/12(土)~12/23(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
多くのお客さんで賑わっていて 場所によっては人だかりもあるくらいでしたが、概ね自分のペースで観ることができました。

さて、この展示はスイスとオーストリアの間にある小豆島くらいの大きさの国「リヒテンシュタイン」の建国300年を記念し、その美術コレクションを紹介する内容となっています。リヒテンシュタインは神聖ローマ帝国の時代に皇帝から自治権を与えられ、神聖ローマ帝国崩壊後は独立した国となりました(連邦国家に入った時期もあったみたいですが再独立して現在に至ります) 歴代のリヒテンシュタイン侯は芸術を庇護したことから小国ながらも美術品のコレクションが充実しているようで、2012年にも大規模な展覧会を日本で開催しました。今回はその時と被ってる作品は少なかったように思うので、コレクションの厚みは相当なものだと思われます。展示はテーマ別に分かれていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
 参考記事:
  リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝 感想前編(国立新美術館)
  リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝 感想後編(国立新美術館)
  ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史 感想前編(国立西洋美術館)
  ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史 感想後編(国立西洋美術館)


<第1章 リヒテンシュタイン侯爵家の歴史と貴族の生活>
まずはリヒテンシュタイン侯爵家の歴史に関する作品のコーナーです。リヒテンシュタイン家は12世紀から歴史の記録に現れ、当初からハプスブルク家と結びついて政治や軍事の面から支配を助けていたようです。カール1世(1569年~1627年)の時代に世襲侯爵位を獲得して貴族の仲間入りを果たすと、以降は権力の拡張を目指していきます。そして1719年(今から300年前)に神聖ローマ皇帝カール6世によってリヒテンシュタイン侯国が承認されました。ここにはそうした歴代のリヒテンシュタイン家の人々を描いた作品などが並んでいました。

2 フランチェスコ・ソリメーナに帰属 「リヒテンシュタイン侯ヨーゼフ・ヴェンツェル1世」 ★こちらで観られます
こちらは黒光りする甲冑を着て、その上から衣を羽織っている侯爵の姿を描いた作品です。武勲の誉れ高い人物だったそうで、傍らには剣が置かれていてそれを示し、目も軍人らしい強い眼差しです。しかし、白い巻毛のかつらを被っているので貴族っぽさのほうが強く感じられるかな。実際の年よりも若く描かせたとのことで、覇気ある雰囲気となってありました。なお、この侯爵はリヒテンシュタイン家のコレクションの相続ルールやコレクション目録を作ったらしいので、長年の方向性を決めた存在とも言えそうです。

この辺は歴代侯爵の肖像などが並びます。

8 フリードリヒ・フォン・アマーリング 「リヒテンシュタイン侯女カロリーネ、1歳半の肖像」
こちらはつぶらな瞳をした1歳半の女の子の肖像です。白い衣を着ていて、キリッとした表情は年齢以上に賢そうな凛々しさです。幼くても貴族らしい雰囲気なので理想化しているのかな? この目力は以前に観たような気がしました。

10 ヨーゼフ・ノイゲバウアー 「リヒテンシュタイン侯フランツ1世、8歳の肖像」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている作品で、長い金髪の8歳の少年が描かれた肖像です。色白で一見すると女性のように思えるのは 慈愛のような優しい目をしているからかな。柔和で賢そうな印象の少年です。まさに貴族の美少年と言ったところですが、晩年は激動の人生だったのだとか。

この辺には音楽や宴に関する作品もありました。また、馬を描いた作品もいくつかあり、リヒテンシュタイン家は馬の繁殖を飼育に力を注いでいたことが紹介されていました。


<第2章 宗教画>
続いては宗教画のコーナーです。ここには聖書や聖人に関するの話を絵画化したものが並んでいました。

18 ジモラモ・フォラボスコ 「ゴリアテの首を持つダヴィデ」
こちらは背中に巨大なゴリアテの生首を担いでいるダヴィデを描いた作品です。ダヴィデはうつむいていて何処かをじっと観ているような静かな表情に見えます。一方、ゴリアテの額からは血が出ていて、ダヴィデの投石機によって倒されたこと想起させます。(ダヴィデの腰にも投石機が描かれています) 明暗が劇的で、暗闇の中から浮かび上がるような雰囲気となっていました。

この辺には東方三博士の礼拝や楽園追放を題材にした作品も並んでいました。

27 ヤン・ブリューゲル(子)、ヘンドリク・ファン・バーレン 「風景の中の聖母子」
こちらは森の中の樹の下で座っているマリアと、その膝の上に乗った赤ん坊のキリストを描いた聖母子像です。近くには洗礼者ヨハネっぽい子供やプットーらしき羽根の生えた子が2人いて、他にもリスや子猿などの姿もあります。一方で背景は長閑な光景が広がっていて、理想郷的な雰囲気もありました。フランドルっぽさを感じる構図の作品です。

28 ルーカス・クラーナハ(父) 「聖エウスタキウス」
これは以前に観たのを覚えていました。古代ローマの騎士であるエウスタキウスが狩りをしにいって鹿をしとめようとしたところ、鹿の頭からキリストの磔刑像が表れたという奇跡を絵画化したものです。画面上に鹿がいて角の間に十字架にかけられたキリストの姿があり、その下では跪いて手を合わせ仰ぎ見る赤い鎧のエウスタキウスがいて、周りには馬や犬たちも描かれています。鹿は堂々たる雰囲気で神秘的な印象を受けるかな。緻密で色鮮やかに表されていて、目の前の光景のような臨場感もありました。なお、エウスタキウスはこの奇跡によってキリスト教に改宗し、後に殉教して列聖されました。

32 シモーネ・カンタリーニ 「少年の洗礼者聖ヨハネ」 ★こちらで観られます
こちらは十字架のついた杖を持ち、羊を抱きかかえるようなポーズの洗礼者ヨハネを描いた作品です。光があたっているような劇的な明暗表現となっていて、これはカラヴァッジョの影響のようです。少年姿で描かれていて、やや不安げな表情をしているかな。羊はキリストの犠牲を暗示しているとのことなので、それを暗に感じ取っているような雰囲気でした。


<第3章 神話画・歴史画>
続いてはギリシャ神話などを描いた作品のコーナーです。ここには絵皿や陶器なども並んでいました。

37 ペーテル・パウル・ルーベンスと工房 「ペルセウスとアンドロメダ」 ★こちらで観られます
こちらは鎧姿のペルセウスが海辺の岩に繋がれたアンドロメダを助けているシーンを描いた作品です。その背後には羽の生えた馬ペガサスや、羽根の生えた子供たち(クピド?)などもいて、左下には小さく退治されて苦悶の表情を浮かべる海獣の姿もあります。甲冑の輝きやアンドロメダの肌ツヤなどが非常に見事な質感となっていて、ルーベンスらしい生き生きとした描写に思えます。うつむいて目を合わせようとしないアンドロメダは困惑している心情を表しているとこのことで、内面までも感じさせる劇的な場面となっていました。

この近くにあったフランチェスコ・マジョットの「バッカスとアリアドネ」も優美な群像となっていました。

36 ヘンドリク・ファン・バーレン 「エウロパの略奪」 ★こちらで観られます
こちらは「エウロパの略奪」を題材にした作品です。赤や青の美しい衣を着た女性たちが並び、その中心に羽根飾りを付けた一際鮮やかな青の服の女性(エウロパ)が描かれ、その傍らには花輪を首にかけた白い牛が描かれています。周りにはプットーや白牛に衣をかけたり花輪を繕う女性もいて一種のパレードのような華やかさがあります。しかし、実はこの白い牛はユピテルの変身した姿で、この後エウロパを背に乗せて略奪していく話となっていて、背景の海辺には小さくそのシーンが描かれています。1つの画面で2つのシーンがそれとなく盛り込まれているのが面白い構図です。色鮮やかで動きもあって見栄えのする作品でした。


ということでまだ今日は本調子でないのでここまでにしようと思います。長年のコレクションだけあって質の高い作品ばかりで、特に3章の神話画は前半の見どころではないかと思います。後半は撮影可能なエリアもあったので、次回は写真も使ってご紹介していこうと思います(コンデジにSDを入れ忘れたためスマフォの画像ですが…w)

 → 後編はこちら


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