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ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展 (感想後編)【Bunkamura ザ・ミュージアム】

今日は前回に引き続きBunkamura ザ・ミュージアムの「建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」についてです。前半は3章まででしたが、後半は残りの4~7章についてご紹介していこうと思います。

 → 前編はこちら

【展覧名】
 建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展

【公式サイト】
 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/19_liechtenstein/

【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅

【会期】2019/10/12(土)~12/23(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
後半の方が空いていたようにも思いますが、最後の7章は撮影可能ということもあって順番待ちをしたりして時間がかかりました。後編も引き続き気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
 参考記事:
  リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝 感想前編(国立新美術館)
  リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝 感想後編(国立新美術館)
  ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史 感想前編(国立西洋美術館)
  ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史 感想後編(国立西洋美術館)


<第4章 磁器-西洋と東洋の出会い>
4章は日本や中国から伝わった磁器のコーナーです。ここには磁器そのものに加え、装飾を施した品なども展示されていました。

50 中国・景徳鎮窯 「色絵花唐草文大皿」
こちらは円形の大皿で、一見すると伊万里の金襴手様式に見えますが 中国の景徳鎮窯で伊万里を写した「チャイニーズイマリ」と呼ばれる品です。中央に花瓶に入った花、周りにも花や茎が金や赤で表されていて、豪華な文様となっています。ややゴチャゴチャした感じまで金襴手様式そのものですw 外国人にはこういう派手なのが受けたんでしょうね。

この辺には有田焼や柿右衛門様式の作品もありました。

61 有田窯・金属装飾:イグナーツ・ヨーゼフ・ヴュルト 「青磁色絵鳳凰文金具付蓋物」 ★こちらで観られます
こちらは鳳凰や雲紋の描かれた蓋付きの有田焼の周りに装飾的な金色の金具が杯状に取り付けられた作品です。陶器の蓋の上にはラッパを吹くサテュロスらしき人物像(解説によると森の精シラノス?)が表され、両脇には花のような文様の把手が付けられています。私には要らん装飾をつけたようにしか思えませんが、元々高価な有田をさらにパワーアップさせてゴージャスに見せたような感じです。この時代にヨーロッパに渡った陶器はこうして装飾されることが多いので、当時の美意識なのだと思います。情緒もへったくれもないですねw

この部屋の中央にも大きな磁器を金具で装飾した品がありました。

76 ビンビ(本名:バルトロメオ・デル・ビンボ) 「花と果物の静物とカケス」
こちらはユリ・バラ・カーネーションなどの花と、さくらんぼ・リンゴなどが描かれた大きな静物画です。東洋の磁器なども描かれていて、この時代の富の象徴の1つとなっていそうです。一見すると瑞々しく豪華な雰囲気ですが、大きな鉢は壊れ 花は枯れているものがあるなどヴァニタス画としての側面もあるようです(寓意を含む静物画で、この世の虚しさとそれに対する信仰の永遠性などが暗に示される) 光の反射や質感表現が見事で、目を引く静物でした。


<第5章 ウィーンの磁器製作所>
続いてはウィーンで作られた陶器のコーナーです。1718年に開設されたウィーンの磁器製作所は20世紀初めまでまでの200年ほどの間、リヒテンシュタイン家の夏の離宮に隣接した場所に工房を構えていたそうで、両者は密接な関係があったようです。リヒテンシュタイン家は大規模な注文を行ったり、絵付け師たちにギャラリーの作品を見せて学ばせて製作所に寄与したようです。ここにはそうしたウィーンの磁器製作所で作られた作品が並んでいました。

77 ウィーン窯(デュ・パキエ時代) 「インド文様花鳥文カップと受皿(トランブルーズ)」
こちらはカップと受け皿のセットで、受け皿の中央部分にカップを支えるようなものが付いているのが特徴です。これはベッドで当時貴重だったホットチョコレートを飲むために作られた容器で、傾けても倒れないような作りとなっているようです。こうしたものは「トランブルーズ」と呼ばれ、当時は流行したようです。花模様でピンク色となっていて女性的な華やかさがあるかな。起きて飲めよ!と誰もが突っ込みたくなると思いますが、ギミックも面白い品でした。

この辺はウィーン窯で作られた優美な陶器が並んでいました。東洋の品と違って形自体から西洋的です。

88 ウィーン窯・帝国磁器製作所(ゾルゲンタール時代) 「カウニッツ=リートベルク侯ヴェンツェル・アントンの肖像のある嗅煙草入」 ★こちらで観られます
こちらはピンク色を背景に人物の横顔がカメオのように描かれていて、周りに月桂樹の装飾が描かれた嗅ぎタバコ入れです。色合い的に女性のものかな?? この人物は国務大臣を務めた人物でウィーン芸術アカデミーの後ろ盾でもあったそうです。陶器とは思えないほど精緻な作りで、可愛らしく小ぶりな印象を受けました。

72 ウィーン窯・帝国磁器製作所(ゾルゲンタール時代) 「黒地金彩楼閣唐人物文水差」
こちらは深い赤地に金で東洋風の建物や椰子の木などが描かれたカップとソーサーです。淵は黒地に金となっていて、日本の蒔絵を思わせる色の取り合わせになっています。中国や日本の趣味を取り入れたような面白い品となっていました。


<第6章 風景画>
続いては再び絵画のコーナーです。フランドルやオランダ絵画が特に多かったかな。風景画が並んでいました。

96 ヤン・ブリューゲル(父) 「市場への道」 ★こちらで観られます
こちらはかなり小さめの作品で、崖に立つ大きな木とその近くで休む人たちが描かれています。背景は城や川、遠くの山などが見える見渡しのいい場所となっています。遠くは青みがかっていて空気遠近法を使っているんじゃないかな。小さい画面であるのに関わらずかなり緻密な描写で、雄大かつ伸び伸びとした印象を受けました。

101 サロモン・ファン・ロイスダール 「オランダの河川風景」
こちらは川に浮かぶ船が描かれた作品です。奥には教会、河岸には馬車、手前の小舟では網を張って漁をする様子となっていて、オランダの日常風景を観ている気分になります。全体的にどんよりとしていて、この日の空気まで伝わって来るような臨場感でした。

107 フェルディナンド・ゲオルグ・ヴァルトミュラー 「イシュル近くのヒュッテンエック高原からのハルシュタット湖の眺望」 ★こちらで観られます
こちらは小さめの風景画で、高原の小屋とその周りの人々が描かれています。背景には雄大な山々の連なりや湖が描かれていて、写真以上にリアリティを感じるような表現です。特に緻密な明暗表現が見事で、陽の光や自然の美しさをつぶさにあらわしていて 質感だけでなく情感も豊かでした。


<第7章 花の静物画>
最後は花の静物画のコーナーで、ここは撮影可能となっていました。私も撮影してきたつもりだったのですが、コンデジにSDカードを入れ忘れていたようで、スマフォで撮った数枚だけ残っていましたw 作品名も撮ってなかったので、簡単にいくつかご紹介。

こちらは今回の展示のポスターにもなっている作品
20191103 163401
黒を背景に写真以上にくっきりとした色彩となっています。質感表現の局地ですね。

こちらはオウムがいる静物画
20191103 163414
実際にこんなに花が入るのか分かりませんが、色とりどりの花がぎっしり詰まる様子は絢爛そのもの。配置に流れも感じられます。

こちらは絵皿
20191103 163428
絵皿になっても精密さ・豪華さは変わりません。何を盛り付けたら合うのか気になりますw

こちらはブドウの静物画
20191103 163436
非常に瑞々しくツヤのある描写です。思わずそこにあるのかと思ってしまいそうなリアルさw 

再び花の静物
20191103 163446
これもぎっしりと様々な花を咲かせています。蝶みたいなのもいるかな。
これは分かりませんが、こうした作品の中には季節を超えた取り合わせがあったりします。

最後に花模様のカップ・ソーサーのセット
20191103 163507
金ピカ過ぎて私の趣味ではないですが、これだけ揃うと壮観ですね。


ということで、リヒテンシュタインのコレクションの数々を楽しむことができました。後半は風景画と花の静物画が見どころだったように思います。最後の章は撮影可能なので、観に行く予定の方はスマフォやカメラを持っていくと思い出になると思います。質の高い展覧会でした。

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