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ウィリアム・ド・モーガン 艶と色彩 -19世紀 タイル・アートの巨匠-【パナソニック電工汐留ミュージアム】

旧新橋停車場 鉄道歴史展示室を観た後、パナソニック電工汐留ミュージアムで「ウィリアム・ド・モーガン 艶と色彩-19世紀タイルアートの巨匠-」を観てきました。タイトルの通り、装飾されたタイルや花瓶など、生活に密着したアーツ・アンド・クラフツの展覧会で、ラスター彩の復興などに功績のあるウィリアム・ド・モーガンの個展となっています。

P1090813.jpg


【展覧名】
 ウィリアム・ド・モーガン 艶と色彩-19世紀タイルアートの巨匠-

【公式サイト】
 http://panasonic-denko.co.jp/corp/museum/exhibition/09/091017/index.html

【会場】パナソニック電工汐留ミュージアム


【最寄】JR/東京メトロ 新橋駅  都営大江戸線汐留駅
【会期】2009年10月17日(土)~12月20日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
アーツ・アンド・クラフツに関しては、今年の春先にも上野で「生活と芸術 アーツ&クラフツ展 ウイリアム・モリスから民芸まで」展がありましたが、こちらは個展ならではの奥深い内容でした。
まず、ウィリアム・ド・モーガンの略歴についてですが、至極簡単にまとめると以下のようになります。
 数学者の父から科学的な思想を受けて育つ
       ↓
 ロイヤルアカデミースクールに学ぶ
       ↓
 ウィリアム・モリスと親交を深める
       ↓
 ステンドグラスの製作
       ↓
 陶器やタイルの製作

また、彼の作品は工房の移転によって、3つの時代に分けられるそうです。
 ・チェルシー時代(1872年~1882年)
   イスラムへの関心が高まった頃です。手狭になり次に移転。

 ・マートン・アビー時代(1882年~1888年)
   モリスと工房を並べて製作した次代で、タイルに加え壷や花器を製作。
   持病で通うのが辛くなったので次に移転。(うろおぼえ情報ですw)

 ・フラム時代(1888年~)

という流れのようです。説明ボードは詳しいのですが、作品の並び順などからはどの作品がいつのものかわかりにくいかも。とりあえず、いつものように気になった作品をご紹介します。(似たような名前の作品が多いので念のために番号もつけておきます)


<1章 モリスとの出会い、影響>
モーガンは、産業革命の流れからクラフツマンの役割を守ることを志し、クラフツマンの仕事が人々に喜びを与えると考えていたようです。このコーナーではタイルを中心に初期のデザインから展示されていました。

2~3 タイル「ベッドフォード・パーク・アネモネ」
初期のデザインで、青いアネモネのタイルと茶色がかった紫のタイルです。サイコロの5の目のような配置で5つの花が描かれていました。葉っぱも紋章のように単純化され、デザインと実用品の両方の面を持っているように思いました。

6~10 タイル「カーネーション」
2つのカーネーションと渦巻くような葉っぱが描かれているタイルです。同じようで、色合いや絵が少しずつ違うタイルが並んでいます。様々なバージョンがあるようでした。

8 タイル「四つのタイルのカーネーション」
これもカーネーションのタイルです。実際に沢山作られて、壁にはめ込まれている写真もありました。実際に使われている様子は非常に華やかでした。


前述のように、この辺は図案が同じでも色合いや形がちょっとずつ違うタイルが多いです。輪郭がぼんやりした感じのものから、引き締まった感じのタイルまで比べられるのも面白かったです。


32~35 タイル「BBB」
BBBというのは、鋳鉄の暖炉を作っていた「バーナード・ビショップ・アンド・バーナード」の略だそうです。これは暖炉のためにつくられたようで、青い花が大きく描かれ、中央に花弁、周りには葉が描かれています。デフォルメされながらも優美な印象で、装飾的でした。


<2章 技法と素材>
モーガンは常に新しい技術を模索していたようで、試行錯誤の中からそれまで消滅していた「ラスター彩」の技術を復興させるという功績を残しました。
 参考:ラスター彩のwiki
また、図案の輪郭線の転写について、「手書き転写」という正確な転写技術を考案したそうです。(この手描き転写はトレーシングペーパーを使って顔料をなぞる技術であると紹介されていました。) この章ではそうした技法にまつわる作品が展示されていました。

40 タイル「左向きのヘビ」
朱色の濃淡で描かれたヘビのタイルです。周りをぐるっと周るように巻いています。口には木の実のなる枝をくわえていて、動きを感じました。

49 ラスター彩皿「シカとトカゲ」
大きな皿です。真ん中に大きな木が描かれ、その後ろに振り返ったシカが描かれています。また、中央の木の幹にはよじ登る2匹のトカゲが描かれています。そして、この作品はラスター彩の技法で作られていて、観る角度を変えると青色に色が変化して見えるのが美しかったです。

50 ラスター彩皿「ガレオン船」
朱色の大海原を行く淡いブルーの戦艦です。船体の横やマストに少し濃い青が使われています。ひるがえる帆にも朱の濃淡で鳥やドラゴンの様なものが描かれていました。空の銀と朱色も見事です。ラスター彩を再興した当初は単純な輪郭だけしか表現できなかったようですが、すぐに濃淡を表現できるようになったそうです。酸腐食させて淡いブルーを出すという技法が紹介されていて、この作品にも高度化した技術が生かされているようでした。

54 ラスター彩皿「アイベックスとシカ」 ★こちらで観られます
中央にシカとそれを円形にとりかこむシカ?が描かれています。渦巻き模様が多いデザインでエキゾチックな雰囲気でした。虹色に光るラスター彩も美しさを引き立てます。


<3章 デザインの源泉と主題>
このコーナーは1章と2章の内容が混ざったような感じかな。

78 把手付花器「花と葉」
全体で青い花が鮮やかな、青いとってのついた壷です。壷の膨らんでいるところに模様の豊かな部分を配し、器の形と茎や葉の曲線が呼応していると解説されていました。
この辺りの壁には花をあしらったタイルがずらりと並んでいました。

85 レリーフ・タイル「ライオンの紋章」
ライオンが上下2段に2頭いて、上が右向き下が左向きです。多分、上は雄で下は雌じゃないかな。浮き上がったライオンがメタリックな雰囲気を持っていました。

87 ラスター彩皿「シカ」
朱色の2匹のシカが左向きで飛び跳ねているような躍動感があります。背景は金色のような黄色っぽいラスター彩で、日本的な雰囲気もしました。表面には刷毛のような跡が残っていましたが、意図的なものかはわかりませんでした。

88 皿「猛々しいライオンと葉」
大きな皿に青地と植物をバックにライオンが左向きに歩いています。口を威嚇しているようにも見えます。毛並みまでわかるような色付けも細かかったです。

91 皿「ヘビと花」
これは4章にあったような気がしますがカタログでは3章のようです。ヒマワリっぽい花とヘビが描かれています。紋章のような配置で装飾性が高いように感じました。

95 タイル「ワシと野ウサギ」
朱色の濃淡のタイルです。ワシが野うさぎの背後から足のつめで掴む様子が描かれています。ちょっと怖いけど面白い意匠です。

102 錫釉皿「風変わりなクジャク」
皿に円と曲線を多用したデザインで、くりっとした目のクジャクが3羽描かれています。鮮やかなコバルトブルーのような青い羽が優美で美しかったです。それにしても可愛らしい。

<4章 室内装飾のタイル>
モーガンはタイルを一点ものの芸術としてではなく、建築全体のスケールで、装飾素材としてとらえていたようです。このコーナーには暖炉の再現コーナーがあり、椅子に座ってタイルや暖炉を眺めることができます。藍色の濃淡で抽象画のようなタイルが敷き詰めてあり、全体的なスケールでの装飾というのが何となく伝わりました。

134 錫釉タイル・パネル「カーネーションの花瓶」
ロシア皇帝のヨットの為に作られたタイルパネルです。16枚のパネルが組み合わさっていて、左右対称な感じ(ちょっと左右で違う)で、真ん中につぼみのような形の葉っぱと周りに青いカーネーションが描かれています。まるで絵画のような出来栄えでした。

139 タイル・パネル「フローラル・オジー」
これも16枚のパネルです。左右対称っぽいスペードのような形の図形が描かれています。イスラムの文様なのかな?と思いました。

135 タイル・パネル「城とボート」
縦6個×横3個のタイルを組み合わせた作品です。レンガの城門とその前に流れる川と船を書いています。装飾性は少なめで絵画的な雰囲気でした。色合いも絵画っぽかったです。

148 タイル・パネル「木立の中の噴水」
これもタイルの組み合わせで描いた噴水です。デフォルメされた水の流れの曲線や、噴水の装飾の円や曲線が優美でした。

142 タイル・パネル「サギ」
2枚ワンセットが2セット、縦に4枚並んでいます。川辺に立つ鷺と、川を泳ぐ魚の群れが描かれていました。実際にはありえないような構図ですが簡略化されていて面白かったです。

ということで、タイルが多く地味な感じもしますが、結構満足できる内容でした。この手の作品はたとえ写真があったとしても、実際に観ないと素晴らしさはわからないと思います。特にラスター彩は光の反射具合で虹色に変わるので、自分なりの美しい角度を発見するのも面白いかと思います。



おまけ。ここは出口付近にジョルジュ・ルオーのコーナーがあるので、今回も観てきました。2点だけご紹介。

<ルオーのコーナー>
ジョルジュ・ルオー 「キリストと漁夫たち」
ガラリアの湖畔の船や漁夫が描かれている作品。ルオーらしい濃い色彩で輪郭も太く濃いのが強烈な印象を与えます。青空に太陽が昇りのんびりした印象も感じました。

ジョルジュ・ルオー 「ゲッセマニ」
ギュスターヴ・モローの弟子だった頃の作品で、後年の絵とは全然違う雰囲気です。レンブラントなどついて学んでいたようで明暗の表現に影響が観られるのだとか。モローの影響もよくわかる作品です。



-----------------------------------
上記の記事とは全く関係ありませんが、12/2に平山郁夫氏が亡くなったというニューズがありました。美術館でよく作品を観る機会があるので、驚きました。
 参考リンク:日本画家の平山郁夫氏が死去、79歳
被爆者として平和を祈り、日本のみならず世界の文化財の保護に尽力した氏へ、謹んで哀悼の意を表します。
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Comment
No title
汐留のパナソニックのあそこにこのようなミュージアムがあるんですかぁ~。新たな発見です!!
Re: No title
コメントありがとうございます^^
あまり知られていないのかもしれませんね。2~3Fとかは住宅展示場っぽいです。たまにミュージアムの前でも何か住宅系のイベントをやってたりします。 綺麗な美術館ですよ。
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