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2019 MOMASコレクション 第3期 【埼玉県立近代美術館】

前々回、前回とご紹介した埼玉県立近代美術館の特別展を観た後、常設も観てきました。今回は「2019 MOMASコレクション 第3期」というタイトルとなっていました。

DSC09044.jpg DSC09051.jpg

【展覧名】
 2019 MOMASコレクション 第3期

【公式サイト】
 http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?page_id=422

【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅

【会期】2019年10月26日(土)~2020年2月2日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は常設展で、埼玉県立近代美術館では年4回テーマを決めて入れ替えていて、今回は2019年度の3期となっていました。今回も3つの章から構成されていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います、
 参考記事:
  2019 MOMASコレクション 第1期 (埼玉県立近代美術館)
  2019 MOMASコレクション 第2期 (埼玉県立近代美術館)


<セレクション:ドニとかフジタとか>
まずは近代西洋絵画のコーナーです。

ウジェーヌ・ドラクロワ 「聖ステパノの遺骸を抱え起こす弟子たち」
こちらは前のめりに倒れて体を弟子に支えられている聖ステパノを描いた作品です。そんな所に首が来るの?ってくらい だらんとしていて、周りには石打された時の石や血が描かれています。全体的に筆致は粗めですが、劇的な雰囲気となっていて各人物の身振り・ポーズによって動きを感じさせました。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 「『ラ・ルビュ・ブランシュ』誌 ポスター」 ★こちらで観られます
こちらは羽飾りの帽子に水玉のドレスを着て、毛皮の襟巻きをした女性を描いたポスターです。モデルはこのポスターが宣伝している雑誌の編集長の奥さんで、当時の芸術家のミューズ(芸術の女神)的な存在だったようです。やけに斜めったポーズになっているのはスケートをしているためで、背景には薄っすらとスケートリンクの線も見えます。ロートレックは顔の特徴を誇張する画風で、日本の写楽からの影響が指摘される画家ですが、この作品ではすっきりした顔立ちでちゃんと美人に描いていますw ロートレックの代表作とも言えるポスターの1つです。
 参考記事:トゥールーズ=ロートレック展 (三菱一号館美術館)

ヤン・トーロップ 「生命の守護神」
こちらはジャカルタ保険の15周年記念のタイル壁画の下絵で、インドネシア生まれのオランダ画家ヤン・トーロップによるものです。中央に両手を差し出す背中に羽が生えた人がエジプト風に描かれていて、これはスエズ運河の擬人化のようです。また、左右にはそれぞれオランダ人とインドネシア人らしき 子供を抱きかかえる母親が描かれていて、この会社の成り立ちを想起させます。さらに周りには砂時計の文様など時間と保険をほのめかすモチーフも描かれていて 見立てが多い作風です。全体的にぺったりと平面的で、アール・ヌーヴォー的な要素もあるかな。ゴーギャンらが使うクロワゾニスムの技法も取り入れているとのことで、装飾的な印象を受けました。

この近くにはゴーギャンの版画やドニ、シャガール、フジタなどこの美術館の名コレクションも並んでいました。

レオナール・フジタ 「二人の裸婦」
こちらは身を寄せ合う金髪の裸婦と黒髪の裸婦を描いた作品(エッチングの版画)です。目鼻がキリッとしていて、2人とも右の方に視線を向けていて、金髪の女性はやや不安げに見えます。2人とも細い輪郭で描かれ 真っ白な体をしている点に藤田嗣治(レオナール・フジタ)らしさを感じました。

田中保 「窓辺の婦人」
こちらは海の見える窓を背に 赤いソファに座っている女性を描いた作品です。手には本を持っていて、背景には日本の屏風のようなものも見えているけど恐らく海外じゃないかな?? ちょっと不自然なポーズをしているようにも思えましたが、強く賢そうな眼差しで 華麗な印象を受けました。

近くにはアール・ヌーヴォーを広めたサミュエル・ビングの『芸術の日本』も展示されていました


<近代日本画における中国(前期)>
続いては中国の題材を描いた近代日本画のコーナーです。

橋本雅邦 「竹梅図」 ★こちらで観られます
こちらは二曲一双の金屏風で、右隻は下の方に花の咲いた梅の木が描かれ、左隻には数本の竹が描かれています。いずれも四君子(竹・松・梅・蘭)のテーマで、高潔さを象徴しているようです。どちらも余白を広く取り、静けさと空間の広がりを感じさせました。

本多天城 「蓬莱山之図」「羅浮仙図」
こちらは2幅対の掛け軸で、作者の本多天城は狩野芳崖の弟子です。縦長の岩山が並ぶ中国の仙境のような風景で、楼閣なども描かれています。割と生々しい色彩で緻密な描写となっていて、場所によっては透けていたりして斬新な画風に思えました。

この近くには狩野芳崖の作品もありました。

菱田春草 「湖上釣舟」
こちらは二曲一隻の屏風で、湖の岩場の近くで小舟に乗って釣りをしている人物が描かれています。画面の大半は余白で、静寂が漂うような光景です。解説によると、これは唐の詩人 柳宗元の詩「江雪」に由来し、雪の降る厳しい寒さと詩人の孤独の心情を表しているようです。モヤの表現には没線彩画の描法が使われていて、幻想性を醸し出していました。


<ゆれるかげ>
最後は現代美術のコーナーです。光をテーマにした作品が多めでした。

金昌烈 「水滴 J.T.83002」
こちらは沢山の水滴が描かれた作品です。影が出来ていて立体感があり、まるでキャンバスに本物の水滴が無数にくっついているようなリアルさがあります。さらに所々にシミのようなものがあり、水が染み込んだような感じに見えました。こんなものをモチーフにするのも面白いですが、騙し絵的で超現実な描写も見事でした。

野村仁 「太陽7月」
こちらは暗闇の中にノの字の光が輝いているような写真です。それが反転したような写真とセットになっていて、これは太陽の軌跡を長時間露光で撮ったもののようです。作者の野村仁はこうした長時間の変化を写真で表す作風で、特に星や太陽は得意のモチーフだと思います。普段見えているようで見えていない世界を認識できて面白い作品でした。
 参考記事:野村仁 変化する相―時・場・身体 (国立新美術館)

秋岡美帆 「ゆれるかげ」
こちらはぼんやりした緑や白で何となく木陰を思わせる抽象画です。具体的には何だか分かりませんが、タイトル通りに揺らめくような印象を受け、柔らかい光を感じました。


ということで、今回もタイプの異なる3つのコーナーを楽しむことができました。ここは常設も凝った展示をしていることが多いので、特別展を観る際には常設も合わせて観ることをオススメします。

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