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鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開 【東京国立近代美術館】

前々回・前回とご紹介した東京国立近代美術館の展示を観た後、同じ本館の所蔵品ギャラリー第10室で「鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開」を観てきました。

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【展覧名】
 鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開

【公式サイト】
 https://www.momat.go.jp/am/exhibition/kiyokata2019/

【会場】東京国立近代美術館 所蔵品ギャラリー第10室
【最寄】竹橋駅

【会期】2019年11月1日(金)~ 12月15日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
土曜日の遅い時間に行ったこともあってそれほど混んでいませんでしたが、夕方くらいまではかなり多くの人がいたようでチケット売り場には行列ができていました。

さて、この展示は美人画で名高い近代日本画家の鏑木清方のミニ個展で、普段は常設展示されている3階の一部屋だけとなっています。というのも、今回は新収蔵品のお披露目としての開催で、1975年以来 行方不明となっていた「築地明石町」「新富町」「浜町河岸」の幻の三部作が一気に収蔵されたので、それが今回の主役となります。簡単にメモしてきましたので、いくつか気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。
 参考記事:清方/Kiyokata ノスタルジア (サントリー美術館)

鏑木清方 「墨田河舟遊」
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こちらは4階の常設展示のハイライトのコーナーにあり、これだけは別料金を払わなくても常設として観ることができます。(写真もOK) 文展への出品作で、江戸時代の舟遊びの光景を描いています。

右隻のアップ。
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屋形船の中で人形舞の宴が催されています。影の無い明るく柔らかい色彩で優美な雰囲気です。屋根の上で隣の舟を突いている人も気になるw

さらに屋形船の中をアップにしたもの
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人形の衣装まで華やかに描かれています。そして御簾越しの女性の表現が見事で、柔らかく繊細な印象を受けました。

こちらは左隻のアップ
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こちらも小さめの屋形船が描かれています。

屋形船のアップ
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この清らかで透き通るような肌の女性が清方の真骨頂ではないかと思います。着物の滑らかな輪郭線も優美さを強めているように思えました。

そして今回の展示の会場に入ると、「築地明石町」に描かれた着物の再現や、モデルを務めた江木ませ子のポートレートなどもありました。

鏑木清方 「明治風俗十二ヶ月」
こちらは12幅対の掛け軸で、1幅ごとに1~12月まで各月の風物を交えた美人が描かれています。かるた(一月)、梅やしき(二月)、けいこ(三月)、花見(四月)、菖蒲湯(五月)、金魚屋(六月)、盆燈籠(七月)、氷店(八月)、二百十日(九月)、長夜(十月)、平土間(十一月)、夜の雪(十二月)となっていて、階層や身分の異なる女性たちが季節と共に古き良き時代を感じさせます。髪を整えたりする身振りに気品が感じられ、いずれも華やいだ雰囲気となっています。

左:盆燈籠(七月) 右:氷店(八月)
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こちらの写真は以前に常設展示されていた時に撮ったものです。今回の展示では撮影不可となっています。
特に夏は涼しげなモチーフと共に清涼感があります。のんびりしていて郷愁も誘われました。

左:平土間(十一月) 右:夜の雪(十二月)
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こちらの写真は以前に常設展示されていた時に撮ったものです。今回の展示では撮影不可となっています。
12月はやはり寒そうな感じですが、11月は暖色系で温かみがあるかな。人力車とガス燈が描かれているなど、時代を感じさせるモチーフも清方らしさだと思います。
 参考記事:
  東京国立近代美術館の案内 (2010年09月)
  東京国立近代美術館の案内 (2011年12月)


次の作品をご紹介する前に、ちょっと掛け軸の各部位の名前をご説明。 これも以前に作った画像ですw
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掛け軸というと中央の部分が注目されますが、周りの部分にも絵を描くこともあり、そこに絵を描いたものを描表装と呼びます。

鏑木清方 「端午の節句」
そしてこちらが描表装となっている作品。中央の絵の部分には桃太郎の武者人形が座っていて、丸々と可愛らしい姿となっています。一方、中廻しから天にかけて大きな鯉のぼりと吹き流しが描かれ、青い背景がまるで空のように思えます。紅白の吹き流しは特に色鮮やかで桃太郎より目立っているようなw 力強く昇っていくような面白い表装となっていました。

この隣にも描表装の「弥生の節句」がありました。
そしていよいよ今回のメインである三部作が続きます。三部作は清方の思い出深い街の風情をそれに相応しいモチーフ・似つかわしい女性と共に象徴的に描いたものとなっています。

鏑木清方 「新富町」 ★こちらで観られます
まずこの新富町は 朱色の傘を持つ緑色の着物の女性がうつむいている様子が描かれています。新富町は古くから劇場を抱え 花街としても知られていたので、女性は新富町芸者で背景の建物は新富座だそうです。新富座は明治の頃は近代的な劇場だったものの、大正に入ると衰退して関東大震災で廃座してしまいました。それと関係しているかは分かりませんが、女性のやや憂いを帯びたような顔をしていて内省的に思えるかな。傘の色が明るくも上品で、モチーフにもリズムが感じられました。

鏑木清方 「築地明石町」 ★こちらで観られます
こちら今回の目玉で、木の柵の前でやや振り返る姿勢で立っている水色~緑の着物の上に黒の羽織を着た女性像です。築地明石町は明治期には外国人居留地になっていた為、ハイカラな街だったようで木の柵はそこに洋館があることを示しているようです。また、女性の髪は上流の婦人を思わせる「夜会巻」もしくは「イギリス巻き」と呼ばれる短めの髪型で、この作品では先程の写真のモデルを使って描いているようです。指には金の指輪が光っているので既婚かな。着物からは所々に朱色の部分がのぞいていてアクセントになっています。遠くを観るような目つきで凛とした印象を受けました。 一方、背景の柵には朝顔が巻き付いているので初夏と思われます。 薄っすらとマストのある舟の姿もあって瀟洒で爽やかな雰囲気となっていました。
 参考記事:浜離宮と新橋停車場~東京150年 江戸から明治へ~ (旧新橋停車場 鉄道歴史展示室)

鏑木清方 「浜町河岸」 ★こちらで観られます
続いては浜町で、扇子を持って口元に当てる若い芸子らしき人物と、背景に薄っすらと火の見櫓らしきものが描かれています。こちらは清方が6年暮らした町で、歌舞伎舞踊の振り付けで一時代を築いた2代目 藤岡勘右衛門が家を構えていたそうです。その為、この女性は踊りの稽古帰りらしく、着物も結構派手めです。若々しくて何か悩んでいるような顔が艶かしく思えました。

鏑木清方 「初冬の花」
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こちらの写真は以前に常設展示されていた時に撮ったものです。今回の展示では撮影不可となっています。
こちらは小菊という芸者を描いた作品で、赤と薄紫のストライプの着物姿でキセルを盆に入れれいるのかな? 伏目がちで所作が伝わってくるような奥ゆかしい雰囲気となっていました。この女性とは泉鏡花を囲む会で知り合ったそうで、泉鏡花の小説にも出てきそうな感じかも…w
 参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)

この辺には泉鏡花の小説のラストシーンを描いた「晩涼」もありました。

伊東深水 「清方先生寿像」
こちらは弟子の伊東深水による清方の肖像です。結構老けている頃の姿で、原稿用紙をテーブルに置いてペンを持っています。遠くを観るような目で物思いに耽っているのかもしれません。テーブルには泉鏡花全集と美術雑誌『アトリエ』の抽象美術特集号が置かれていて、清方の仕事や研究の様子が伺えます。これを観た俳人の久保田万太郎は「清方先生の首を振るクセが出ている」と評したそうで、深水もそれを聞いて喜んだのだとか。確かに人柄までにじみ出てくるような肖像画でした。

この他にも新しく寄贈された「鶴八」という作品もありました。こちらはテレ東の「なんでも鑑定局」で有名な中島誠之助 氏が寄贈した作品で、3部作の発見の報を聞いて寄贈されたそうです。流石、いい仕事してますねw


ということで、ミニ展示ではありましたが3部作を始め清方の魅力の詰まった作品をじっくり鑑賞することができました。もう会期末が迫っていますので、気になる方は今週末にどうぞ。なお、2022年春には同じく東京国立近代美術館で「没後50年 鏑木清方大回顧展(仮)」が開催されるようで、その時にまた3部作を観る機会がありそうです。

おまけ:
北の丸公園の紅葉
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この後、あっという間に冬になってしまい、今年は紅葉の時期は短かった…。

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