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大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演 (感想前編)【江戸東京博物館】

前回ご紹介した常設を観る前に江戸東京博物館で特別展「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」を観てきました。メモを多めに取ってきたので前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。なお、この展示は8つの会期があり、私が観たのは最後から2番めの会期でした。

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【展覧名】
 特別展「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」

【公式サイト】
 https://dai-ukiyoe.jp/

【会場】江戸東京博物館
【最寄】両国駅

【会期】2019年11月19日(火)~2020年1月19日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会期末が近いこともあって非常に混んでいて、チケットを買うのに20分くらい並びました。中に入っても列が幾重にも出来ていて、あまり自分のペースで観ることはできませんでした。

さて、この展示は2014年に行われた開館20周年記念特別展「大浮世絵展」の第2段で、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳という5人の浮世絵師の代表作が集まる内容となっています。世界各国の著名な美術館・博物館から摺りの良い品が集まっていて、作者ごとに章分けされていました。詳しくは各章ごとに気になった作品と共にご紹介していこうと思います。


<第1章 喜多川歌麿>
まずは歌麿のコーナーです。喜多川歌麿は狩野派の鳥山石燕に学び、北川豊章の号で役者絵などを描いていました。1781年からは歌麿と改め、蔦屋重三郎のサポートを得て活動しはじめ一気に実力を発揮していきました。ここにはそうした歌麿の代表的な作品が並んでいました。
 参考記事:歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎 (サントリー美術館)

2 喜多川歌麿 「婦人相学十躰 浮気之相」
こちらは横を見ている女性像で、腰の辺りまで描かれた半身像となっています。胸が露わで湯上がりの姿らしく、誰かと話しているような振り返るポーズをしています。このシリーズは観相学をテーマにしていて、この女性は浮気の相とのことですが、恋愛の浮気のこととは限らず落ち着きの無い様子という意味もあるようです。見た目は涼し気な美人といった感じで、切れ長の目が艷やかでした。

この辺は人相学のシリーズが並んでいました。色彩は淡めで線の細い画風です。

31 喜多川歌麿 「歌撰恋之部 あらはるる恋」
こちらは団扇を持ち項垂れるようなポーズの女性が描かれた作品です。簪を挿し直そうとしているけど、恋する気持ちが表に出て動揺しているのが現れた場面のようです。このシリーズは恋の諸相を描いたもので、心情表現が巧みな作品となっていました。

55 喜多川歌麿 「櫛」
こちらは更紗模様を背景に、鼈甲の櫛を持つ遊女が描かれた作品です。櫛が透けて顔が見えるような構図で、繊細な表現となっています。一方、背景がアジア風なので他の作品には無い異国情緒が感じられました。

この辺は遊女の生活を描いた作品などが並んでいました。

61 喜多川歌麿 「針仕事」
こちらは3枚続きの美人画で、質素な服を着た針仕事をする女性たちが描かれています。右下には猫に鏡を向けている子がいて、猫が毛を逆立てていたり、足元で子供が団扇で遊んでいたりと家庭的な雰囲気となっています。左下には布を透かして じっくり見ている女性がいて、その布越しに顔が見えるという 先ほどの「櫛」と似た発想も見受けられます。この頃は派手な絵が禁じられたりしていたようですが、日常の様子を描いても魅力ある作品となっていました。

この近くには同様に透かしものを通して美人が見えるという作品がありました。得意の構図だったと思われ、高度な技術と共に面白い趣向となっていました。

73 喜多川歌麿 「錦織歌麿形新模様 浴衣」
こちらは花柄の着物を着た女性を描いた作品です。珍しいのが着物を輪郭線を用いずに描いている点で、平面的に見えることもあって花模様が非常に目を引きます。手や顔には輪郭があるので、体だけちょっと違和感もあるけど、実験的で斬新な作風となっていました。

勿論、この他にも見どころが多く今回の5人の中では最も目新しさがあったように思います。


<第2章 東洲斎写楽>
続いては写楽のコーナーです。美術に詳しくない人でもその名を知っているほど有名な浮世絵師ですが、実際には突然デビューして1~2年で消えた謎の人物です。蔦屋重三郎の元で黒雲母摺28枚の大首絵というド派手なデビューを飾り当時センセーショナルを巻き起こしましたが、誇張した突飛な画風は長く支持されなかったようです。大田南畝の言葉を借りれば「あまりに真を画かんとて、あらぬさまにかきしかば、長く世におこなわれず、一両年にして止む」ということで短命の活動期間となっています。それでも10ヶ月で140点もの作品を発表するなど足跡は大きく、海外でもロートレックをはじめとして多くの芸術家に影響を与えました。現在、その正体は阿波侯の能役者 斎藤十郎兵衛が有力視されているようです。ここにはそんな写楽の代表作が並んでいました。
 参考記事:
  写楽 感想前編(東京国立博物館 平成館)
  写楽 感想後編(東京国立博物館 平成館)

105 東洲斎写楽 「3代目大谷鬼次の江戸兵衛」 ★こちらで観られます
こちらは写楽の作品の中でも特に有名な悪役を描いた大首絵です。黒雲母を背景に、着物の中から両手を開いて出し見得を切る姿で描かれていて、敵役らしい険しい表情を浮かべています。こちらは盗賊の頭で、今まさに襲いかかる所らしく 目は釣り上がり口をへの字にしていて誇張した感じに観えます。西洋の美術よりも早くこの境地に至っていたことに驚かされる1枚です。

110 東洲斎写楽 「初代市川男女蔵の奴一平」
こちらは先程の江戸兵衛に金を奪われる人物を描いた大首絵です。刀を持って金を守ろうとしていますが、やや頼りない顔つきで上半身が後ろに倒れ気味で腰が引けた感じになっています。やられ役だけあって既にその様子が表れているのが面白い。

115 東洲斎写楽 「市川鰕蔵の竹村定之進」 ★こちらで観られます
こちらは『恋女房染分手綱』のヒロインの父親役を描いた大首絵です。切腹する場面らしく歯を食いしばっていて鬼気迫る形相をしています。やはり誇張された表情ですが、真に迫る役者ぶりが伝わってくるようでした。

132 東洲斎写楽 「初代中山富三郎の松下造酒之進娘宮ぎの」
こちらは悲劇のヒロイン役をする女形の役者を描いた作品です。やたら目と口が小さく 鼻が長くて顎が出ている特徴的な顔つきとなっています。それでも微笑んでいるような感じが出ていて、戯画になりそうでならないギリギリの線に思えるかなw この初代中山富三郎は「ぐにゃ富」というあだ名が付いていたそうで、他の作品でも同様に描かれているので実際にこんな顔つきだったのかも? ひと目で覚えられる個性がありました。


ということで、長くなってきたので今日はここまでにしようと思います。浮世絵の中でも特に有名な絵師の代表作を集めているので 割と見慣れた作品が多いですが、浮世絵のベスト盤とも言える内容だと思います。美術初心者でも楽しめるラインナップなので、人気なのも頷けました。後半も面白い作品が目白押しとなっていましたので、次回は残り3人についてご紹介の予定です。

 → 後編はこちら

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