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サラ・ベルナールの世界展 【松濤美術館】

この前の土曜日に神泉の松濤美術館で「パリ世紀末ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展」を観てきました。

DSC03368.jpg

【展覧名】
 パリ世紀末ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展

【公式サイト】
 https://shoto-museum.jp/exhibitions/186sara/

【会場】松濤美術館
【最寄】渋谷駅・神泉駅

【会期】2019年12月7日(土)~2020年1月31日(金)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
さて、この展示はフランスのベル・エポック(良き時代)を象徴するサラ・ベルナールをテーマにしたもので、以前ご紹介した横須賀美術館の展示の巡回展となっています。巡回展なので中身はほぼ同じとなっていて、サラ・ベルナールの肖像、セルフプロデュースの一環としてミュシャやラリックの才能を見出した話、自らの著書や彫刻などが並ぶ内容となっています。同じ内容なので詳しくは横須賀美術館の時の記事をご参照頂ければと思いますが、章構成がやや異なっていましたので補足的に簡単にご紹介しておこうと思います。
 参考記事:サラ・ベルナールの世界展 (横須賀美術館)


<1章:サラ・ベルナールの肖像―女優、時代の寵児として>
まずは上階で、サラ・ベルナールの写真や肖像のコーナーです。

ここには58歳の時の写真とはとても思えないW.& D. ダウニー「街着姿のサラ・ベルナール」(★こちらで観られます)を始め、吸血鬼のようだと言って受け取りを拒否したナポレオン・サロニー「街着姿のサラ・ベルナール」、透き通るようなパステルで瑞々しい印象を受けるルイーズ・アベマの肖像画「サラ・ベルナール」(★こちらで観られます)、ファム・ファタール的な雰囲気で描かれたウォルター・スピンドラーの「サラ・ベルナールの横顔」などが並んでいます。基本的に美しい姿となっているのに異彩を放っているのがロートレックの「サラ・ベルナール」で、こちらは口をへの字にして老けた感じがあります。手を広げて何かの儀式のようにすら観えましたw

部屋の中央あたりには舞台で身につけていた装飾品が並び、ドレスの他に胸飾りや胸当てがありました。イミテーションを使っているように見えるけど、遠くからは分からないような細部までしっかりと細工が施されています。また、ルイーズ・アベマの「扇子 サラ・ベルナール」が2点あり、こちらは大きめの扇子で一方はフランスを国旗を持ったサラ・ベルナールが描かれ女神のような雰囲気となっています。愛国的なモチーフに囲まれているのでそうした意図がありそうです。また、もう一方は子供の日の記念扇子らしく裏面に著名人の名前が書いてありました。

その先も写真や肖像で、椿姫とテオドラに関するものが多かったように思います。ここはミュシャにも影響を与えたウジェーヌ・サミュエル・グラッセの「ジャンヌ・ダルク」があり、修正前後を見比べることができるようになっていて この展示の見どころの1つとなっています。

奥の部屋は私生活やプライベートに関する品が並んでいました。サラ・ベルナールはユダヤ人で高級娼婦の母を持ち、父はよく分かっていません。また、息子がいてポーランド貴族の娘(王女?)と結婚したようです。しかしこの息子が賭博で借金を作ってはサラ・ベルナールに返済させていたのでお金に余裕があるというわけでも無かったようです。お金に困って銀器のセットを売った話と共に銀器が紹介されていました。

こちらはサラ・ベルナールの私邸の写真(記念撮影のコーナーにあった拡大コピーです)
DSC03370_202001210048193a5.jpg
これだけ観ると大女優らしい感じですが、苦労も絶えなかったようですね。

その後は舞台のブロマイド、友人、家族(夫。異父妹2人、息子)、戯曲家、恋人たちの写真もありました。


<2章:パトロンとしてのサラ・ベルナール―ミュシャ、ラリックとの関係>
この章からは地下で、ここにはミュシャやラリックの作品が並んでいました。

ここで面白いのがアルフォンス・ミュシャの『ル・ゴロワ』誌 1894年クリスマス特別号『ジスモンダ』特集 付録紙面 で、これはまだ無名のポスター作家だった時に描いたものらしく、読者に大好評だったので これがきっかけでサラ・ベルナールの公演のポスター製作の依頼を受けるようになったそうです。締め切りがわずか5日だったというのは有名な話通りですが、クリスマスで他の人がいなかったからミュシャが引き受けた…というよく聞く話は誇張されているのかもしれませんね。
ここにはミュシャの出世作「ジスモンダ」(★こちらで観られます)を始め、夫と子を殺した狂気の女の舞台「メディア」、男装の「ロレンザッチオ」などお馴染みの作品が並んでいました。少し先にはミュシャに帰属となる衣裳案のスケッチもあります。

このコーナーの見どころはミュシャがデザインしルネ・ラリックが製作したとされる「舞台用冠 ユリ(エドモン・ロスタン作『遠国の姫君』にて使用)」(★こちらで観られます)で、2人の共作はこの1作のみとされるので貴重な品と言えます。

今回はラリックの作品は若干少なかったかな? 香水瓶、ガラス壺などがありますが点数はあまりありません。いずれもアール・ヌーヴォー的な動植物の文様となっていて優美な雰囲気となっていました。


<3章:サラ・ベルナールとその時代-ベル・エポック>
続いてはサラ・ベルナールが活躍したベル・エポックの時代のポスターなどが並ぶコーナーです。

ここにはミュシャの代表作「黄道十二宮」「夢想」「JOB」などが並び、油彩で祖国チェコに帰った頃の「巫女」もありました。また、テオフィール=アレクサンドル・スタンランの描いた「シャ・ノワール」(黒猫が描かれたポスター)やジュール・シェレの「カルナバル 1894年」といったこの時代の有名なポスターもあり、見所となっています。

ここでちょっと面白いのが長い衣を回転させて踊るロイ・フラーに関するポスターで、サラ・ベルナールとは違った方向で一世を風靡した様子が伺えました。他にロートレックやボナールのポスターなどもあります。


<4章:サラ・ベルナール伝説>
最後は再びサラ・ベルナールについてで、ここには自著や彫刻など女優以外の仕事などを紹介していました。

アンドレ・ジルによる「サラ・ベルナール」という風刺画では左手にパレット、右手に彫刻用の道具を持って白い仮面を頭に付けた姿で描かれ、虎の尻尾と獣の足がつけられていました。ここではサラ・ベルナールは芸術家=オーケストラとして描いているようですが、獣の足は彼女の悪魔的とされる趣味に基づいているようです。さらに青い蝶が無数に描かれていて、これは電報(プチ・ブルー)を表しているとのことで、当時のサラ・ベルナールの多才さや幅広い社交を逆に皮肉っているように観えました。

少し先には自著の『雲の中で ある椅子の印象』があり、これは気球に乗って雲の中に飛び立つ話のようです。翌日に報告書を書くものの、その中ではあえて椅子が印象を語る… というちょっと変わった形式の脚色になっているようです。また、自作の戯曲『告白』もあり、これは今でも上演される演目なのだとか。女優だけでなく戯曲にも才があったんですね。

最後に彫刻に関する品があって、サロンに出品した「嵐の後」の石膏原型の写真がありました。また、キメラのような自刻像もあり 悪魔的な趣味というのも頷けるかなw 何度観ても彫刻は上手すぎて怪しい気はしますw

他にサラ・ベルナールの日に関する品などもありました。


ということで、内容的には同じでしたが 忘れていた部分もあって再度楽しむことが出来ました。ミュシャをはじめ多くの芸術家にインスピレーションを与えた女優だけに、知っておくと今後の美術鑑賞の際に見識が広がると思います。

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