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[汝の隣人を愛せよ][今井麗 IMAI Ulala] 【東京オペラシティアートギャラリー】

先日ご紹介したICCに行く前に東京オペラシティアートギャラリーで展示を観てきました。企画展は準備中なので先に常設をご紹介しようと思います。今回は「収蔵品展069 汝の隣人を愛せよ」と「project N 78 今井麗 IMAI Ulala」いう2つの内容となっていました。

DSC05656_20200305005425393.jpg

【展覧名】
 収蔵品展069 汝の隣人を愛せよ
 project N 78 今井麗 IMAI Ulala

【公式サイト】
 http://www.operacity.jp/ag/exh230.php
 http://www.operacity.jp/ag/exh231.php
  
【会場】東京オペラシティアートギャラリー
【最寄】初台駅

【会期】2020年1月11日(土)~3月22日(日) ※2月29日~3月16日は臨時休館
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
空いていて快適に鑑賞することができました。

さて、今回の収蔵品展は「汝の隣人(となりびと)を愛せよ」という聖書の一節をタイトルにしていて、自己と他者との関係を問うようなテーマの作品が中心となっています(と言ってもテーマに沿ってるのか分からない絵が多いですがw) また、後半では今井麗(いまい うらら)氏という1982年生まれの現代画家が紹介されていて、こちらは撮影可能となっていました。詳しくはそれぞれ気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<汝の隣人を愛せよ>
まずは収蔵品展です。今回はシュルレアリスム的な作品が多めだったように思います。

39 加藤清美 「哀しき旅人その2」 ★こちらで観られます
こちらは今回のパンフレットに載っている作品で、枯れ木の側に茶色い服の旅人の後ろ姿と、空飛ぶ人物(女性?)が描かれています。2人はお互いの存在にあまり関心がないように見えて、特に空飛ぶ人がシュールに思えます。枯れ木のせいか寂しげな雰囲気もあって独特の世界観となっていました。
この近くには似たような雰囲気の作品が3点ありました。静かで人形のように無表情なのがちょっと怖いw

5 有元利夫 「花火のある部屋」
こちらは舞台のようなところを描いたもので、中央にはステッキを持ったドレスの女性、その周りを4つの噴出花火が囲っている様子が描かれています。しかし花火には勢いは感じられず、静かで静止したように見えるかな。マジックか儀式のようにも思えます。くすんだマチエールで、中世のフレスコ画を思わせる味わいとなっていて、一層にシュールに感じられました。
この近くにはスケッチもありました。
 参考記事:有元利夫展 天空の音楽 (東京都庭園美術館)

61 落田洋子 「完璧なプライバシー」
こちらは4本の煙突から煙を出すホテルと、その前に裸の男たちが無数に集まっている光景を描いた作品です。左右にはやたら大きめの人が雲のような(綿のような)ものを抱いていたりして、中々に不条理な雰囲気です。ホテルも缶の容器みたいに見えるし、ミニチュアの世界か夢の中といった感じに見えました。タイトルも意味深だけど意図は分からず。

76 相馬武夫 「午後の詩興」 ★こちらで観られます
こちらは今回のパンフレットに載っている作品で、服だけで人の頭の無い人物像と 裸婦がテーブルで向き合っている様子が描かれています。背景は草原で水晶玉のようなものを運ぶ給仕らしき姿があり、シュールな光景です。裸婦は無表情だし全体的に物哀しい雰囲気があるかな。空から降り注ぐ光のような表現もあったりして、何らかの意図はありそうでした。

40 河原朝生 「室内I:夏の終わり」
こちらは赤い壁紙の部屋の中から海に浮かんでいる船を観ている男女が描かれた作品です。女性は椅子に座っていて、男性はステッキを持っています。平面的で空虚な部屋で、静かな色彩と共に時間が止まったような雰囲気となっていました。これも描かれているもの自体は現実的だけど超現実的な感じになるのが面白い。

62 オノデラユキ 「古着のポートレート No.10」
こちらは空を背景に 服だけが撮られた白黒写真で、まるで人が着ている時のような感じになっています。透明人間がいたらこう見えるのではないか?という奇妙さがあり、やや迫りくるような雰囲気で不安も覚えましたw 発想が面白い作品です。

18 舟越桂 「[午後にはガンター・グローヴにいる]のためのドローイング」
こちらは廊下の奥で真正面を向いて立っているように見えて目を引きました。黒い服の男性の立像のドローイングで、目の表現などに舟越桂らしさを感じるけど温和な印象に思えました。立派な人物像なので完成作を観てみたくなります。

44 香月泰男 「シベリヤ・シリーズ 雪(窓)」
こちらは4つの黒い窓枠の中に4人の顔が描かれた作品です。目が三角だったりして素朴な表現ですが、苦しそうな顔や憔悴した顔などシベリア抑留の辛さが伝わってくるように思えます。恨めしそうに外を見る目が何とも悲しい。地獄の中のような印象深い作品です。

この辺は素描が並んでいました。小作青史の恐ろしげな絵(★こちらで観られます)や池田龍雄の妖怪のような禽獣記シリーズ(★こちらで観られます)などが並んでいます。

0 加藤ゆわ 「瞬秋」
こちらは2人の着物の女性が並んで歩く様子が描かれた作品です。1人は歯を出して笑っていて、もう1人は頭の上に載ったイチョウの葉っぱを観るように視線を上に向けています。葉っぱが頭に載ったのを かしましく笑い合ってる場面でしょうか。ハッキリ言って2人とも可愛くはないw 美化せずにありのままの日常といった感じに思えます。 画風は全体的に色が明るく平面的で滑らかな仕上げとなっていました。

1 相笠昌義 「みる人」
こちらは真っ白な壁の部屋で等間隔に並んでいる人たちを描いた作品です。どうやら絵画展の様子から絵画を透明にしたような感じらしく、人々が熱心に壁を眺めているような光景になっていますw 、また、やけに白い空白部分が広い構図となっていてガランとした雰囲気となっているのも面白い。近くには相笠昌義 氏の作品が他に2点ほどあって、どれも好みでした。


<今井麗 IMAI Ulala>
続いては今井麗 氏のコーナーです。多摩美術大学の出身で、オルセー美術館でマネの「アスパラガス」を観たことを画家志望の契機にあげているそうで、静物画を中心に描いているようです。ここは撮影可能でしたので写真と共にご紹介して参ります。

今井麗 「テラス」
DSC05659.jpg
明るく爽やかな色調で平面的な画風かな。穏やかな光景の中にあるキャラクターの顔が特に目を引きますw 食べかけのケーキがあったりして、ここには描かれていない人の存在や その人となりを想像させるように思えました。

今井麗 「山型食パン」
DSC05663.jpg
何の変哲もないモチーフですが、何故か瑞々しく幸せな雰囲気があるように思えます。親しみやすい画風ですね。

今井麗 「木星」
DSC05665.jpg
唐突にウルトラマンのダダが出てきましたw この画家の特徴として、こうした玩具やキャラクターが静物に紛れている点があると思います。恐竜みたいな姿もいくつかあるし、ちょっとシュールな感じがありました。

今井麗 「パイナップル」
DSC05675.jpg
パイナップルの剥かれた皮や芯といった食べない部分を描いた静物。 何故そっち?w モチーフの選び方に独特のセンスがあって面白い。

今井麗 「グラビア」
DSC05693.jpg
バナナの上に熊の顔を載せたらポーズを取ったグラビア写真みたいになってますw 熊が手を合わせているように見えているのが騙し絵的で愉快でした。

今井麗 「リベンジマッチ」
DSC05705.jpg
左にいる清掃員に変装した人物はカルロス・ゴーンですねw 2019年の作品なので世相を取り込んでいるようです。熊と猿がプロレスみたいになっていたり、何かのストーリーがありそうな感じでした。


ということで、今回も両方とも楽しむことができました。ここは他の美術館とは一味違った現代絵画のコレクションを楽しめるので、オペラシティを訪れた際に立ち寄ってみるのも良いかと思います。
次回は同じ東京オペラシティアートギャラリーの企画展についてご紹介の予定です。
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