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河口龍夫展 言葉・時間・生命 【東京国立近代美術館】

三陽商会のファミリーセールに行った後、東京国立近代美術館で、「河口龍夫展 言葉・時間・生命」を観てきました。もうすでに終わってしまった展覧ですが、面白かったのでさらっとご紹介します。梅雨頃に見た野村仁展と同じようなノリなのかなと期待して行ってきました。

P1100366.jpg P1100344.jpg


【展覧名】
 河口龍夫展 言葉・時間・生命

【公式サイト】
 http://www.momat.go.jp/Honkan/kawaguchi_tatsuo/index.html

【会場】東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
【最寄】東京メトロ東西線 竹橋駅
【会期】2009年10月14日(水)~12月13日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
もうすぐ会期が終わるという頃に行きましたが、そんなに混んでいることもなく、じっくりと鑑賞することが出来ました。私は現代アートを苦手としていますが、科学の香りがするものは好きなので、これは結構面白そうだと思いました。そして、ありがたかったのが、作品リストでほとんどの作品について軽く説明が載っていたことです。これのお陰でだいぶ作者の意図することを汲めたように思います。 今回はその説明を交えながら、気に入った作品をご紹介しようと思います。

<第1章 ものと言葉>
「石と光」 ★こちらで観られます
石の中がくりぬかれて、そこに蛍光灯が貫くように嵌め込まれている作品です。石は物質だけれども光は物質ではなく、何物か?というのがテーマになっていました。これは蛍光灯なので物質だろ?と思いましたが、題名が「蛍光灯」ではなく「光」となっていて、この章の「ものと言葉」というタイトルにふさわしく、言葉の曖昧さを表現しているようでした。早速一本取られましたw

「DARK BOX」
「DARK BOX」と刻印された16個の鉄の箱が並んでいて、それぞれ1997~2010年、3000年の年号が入っています。(1997年の箱、1998年の箱・・・という感じで16個) 2010年と3000年以外はボルトで封をされていて、中には「闇」が入っているそうです。それは即ち空っぽで空気が入っていると言えばその通りですが、そこをあえて「闇」とすることに言葉についての認識や考察が生まれるようでした。それにしても、3000年ってどんな闇が入るのか好奇心と想像力が湧きますね。

「関係―闇の中の彩色ドローイング」
これは体験コーナーです。真っ暗な部屋で手探りで色鉛筆を選んで、好きなように絵を描くというもので、私もチャレンジしてみました。せっかくなので恥ずかしながら私の画伯ぶりを披露(><)
P1100420.jpg

…幼稚園生の絵じゃないですよw これでも自分の中では意外とまともに描けたと思います。 何しろ真っ暗で色も分からないし、そもそもちょっと前に描いた線の位置も分からないので難儀しました。福笑いのお絵かきバージョンみたいなものかな。自宅でも簡単に真似できるので、独特の感覚を一度お試しあれ。


「113cm」
線路上で撮った同じような写真が左右に2枚並んでいます。右と左では間違い探しのように似ていますが、ちょっとだけ移動した場所で取られているのが分かり、タイトルから察するに113cmのズレなのかなと思ってみていました。ちょっとズレただけで違和感というか、違いを感じます。写真をよく撮る人ならこの感覚はあるある!って思うかも。

「黒板の地球儀」「黒板の地図」
1章の最後のほうには黒板の緑色の素材で作られた地球儀や地図がいくつかありました。経度緯度の線だけ書かれたのっぺりした地球儀、陸地が凹凸になっている地球儀、凹凸のある日本地図、関東の地図などがあり、会場の緯度経度をチョークで書かかれているのもありました。元々1つの物体である地球に、人が国境線を書いてきたという意味があるようです。

<第2章 時間>
「関係―質」
2章に入ったら抽象画のような緑や茶色の絵?のようなものが部屋の周りを飾っていました。これは金属の鉄や銅の錆を染み出したものらしく、解説によると完成まであと一歩の現在進行形を見続けることを表現しているようです。流石にこの辺は解説が無いと理解は厳しかったかもw

「COSMOS」
星図のような星の写真です。それぞれの星に○年という文字が書かれ、それで何光年前の光であるかがわかるようになっていました。こういうのを見ると改めて宇宙のロマンを感じます。今観てる星の光は何千年前の輝きなんですよね。(そういえば野村仁展でもこういう発想の作品がありました)

「太陽の道」
横に長いブロンズ版です。一日中、虫眼鏡で木を焼き続けてへこみをつけたのをブロンズで型取りしたそうです。そのへこみが太陽光が通った証になっていました。物質でない光が形を残すというのが面白かったです。

「関係―未来」
水辺の木の写真です。その木には錠のついた輪がかけられていて、そこには年数が書かれています。これは、順調に成長していけば、この年くらいにこの輪の太さになるという意味があるようで、その年になったら開錠してあげるそうです。確かに未来との関係を感じる作品でした。

「関係―種子・10万年前の北斗七星」「関係―種子・現在の北斗七星」「関係―種子・10万年後の北斗七星」
地球も含め、星は絶えず移動しているので、10万年前の星の配置と現在では見え方が違うというのを示す作品。どこまで正確な予測かわかりませんが、10万年後は今の面影が全く無い配置でした。星の位置すら変わっていく月日の流れを感じます。

<第3章 生命>
「関係―種子、土、水、空気」 ★こちらで観られます
これは1986年のチェルノブイリ原発事故に触発されて作られた作品らしいです。未来に確実に植物を伝えるために、放射能を遮断する性質を持つ鉛で種子・土・水・空気を包んでいます。実際には水と空気が少なすぎるとは思いますが、こういうタイムカプセルは出番がこないのを祈りたいですね。

「関係―無関係・立ち枯れのひまわり」 ★こちらで観られます
枯れたヒマワリを蜜蝋で固めて、棺のような容器にいれた作品。立ち枯れたその姿は誰もが死や老いをイメージすると思います。その一方で種子も残っていて、次の世代の誕生を暗示しているようです。7つほど棺おけのように並んでいたのですが、特に真ん中のは花が大きく人の頭みたいでインパクトがありました。

「睡眠からの発芽」
これは今回のポスターになっていた作品。ベッドから蓮の種子から伸びた細い茎?が沢山伸びています(無数の針金がベッドに突き刺さってるような感じ) 真ん中には人の形に空白があり、これが睡眠から目覚めたのを暗示しているのかなと思いました。なにか力強さを感じる作品でした。

「関係―蓮の時・3000年の夢」
これは「睡眠からの発芽」と対になると解説されていた作品。縄文時代の遺跡で見つかった蓮の種子が発芽したというニュースに触発されて作成されたものらしいです。鉛のベッドの上に茎のながい蓮が横たわるように置かれ、擬人化されているようでした。先ほどの「睡眠からの発芽」がエネルギーを外に出しているのに対して、こちらは内に保存していると解説されていました。

「関係―生命・鉛の温室」
すべて鉛で出来た温室です。やはりこれも放射能を防ぐためのものかな。この辺には種の他に、人間が生活で使うものなども鉛で覆った作品が多くありました。相当気に入った題材だったんでしょうね。

「へその緒」
へその緒の紙粘土の型やスケッチがいくつかありましたへその緒という関係を断ち切ることで、世界や母親と新たな関係が生まれると解説されていました。生命の源といえる物だけに、生命への根源的な問いかけのように思えます。

「木馬から天馬へ」 ★こちらで観られます
白い漁船に針金状のものが無数に突き刺さっています。針金の先には種子のようなものがあり、先ほどの「睡眠からの発芽」で使われていたものに似ています。また、船の前のほうには黄色い馬のゆりかごが置かれ、やはり針金が突き刺さっています。その背中には鉛の翼を付け、尻尾辺りからは長い鉛の蓮が伸びていました。この漁船は古くなり使われなくなったもので、旧世代を暗示し、ゆりかごという新しい世代を象徴するものが乗って導いているようです。天馬というモチーフが未来への飛躍をイメージさせ、ここまで観てきたとおり、鉛の蓮はエネルギーと生命感を感じさせるように思いました。


ということで、結構一貫した題材が多かったように思います。解説のお陰で少しは理解できたように思えるし、興味深く好奇心の湧く内容でよかったです。現代の作家でもこういう展示だと楽しいですね。

この後、常設にも行きました。今回も写真を撮ってきました。
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