HOME   »  作者別紹介  »  《ヘンリー・ムーア》  作者別紹介

《ヘンリー・ムーア》  作者別紹介

今日は作者別紹介で20世紀イギリスの彫刻家ヘンリー・ムーアを取り上げます。ムーアは有機的な形態の抽象彫刻で知られていて、自身によって『私の彫刻はすべて人体を基礎にしている。私の作品の場合、3つの主題がくり返される。「母と子」「横たわる像」「内なるかたちと外なるかたち」である。ある場合にはこのうちの2つの主題が重なっているし、3つ全部の組み合わせということすらある。』と語られています。一目観たら忘れられない特徴をもっていますので、今回はそういた作品の写真を使ってご紹介していこうと思います。
 引用参考:箱根彫刻の森美術館


ヘンリー・ムーア 「王と王妃」
P1090603.jpg
こちらは1952-53年頃の作品。ムーアにしてはほっそりした印象を受けるかな。元々ムーアは「ユニット・ワン」という前衛グループに参加してシュルレアリスムなどに影響を受けていたので、この作品にもそれを感じることができると思います。ちょっとキュビスム的な要素もあって優美な雰囲気です。

ちなみにムーアは第二次世界大戦の後、ロンドン大空襲の際に地下鉄に避難した人たちを描いた素描シリーズが国際的に高い評価を受け、さらにそれに続いて炭鉱労働者の素描シリーズも手掛けています。ストーンヘンジを描いた素描シリーズなどもあり、彫刻以外でも活躍していました。

ヘンリー・ムーア 「腰掛ける女」
32725619_4286830296.jpg
こちらは1957年頃の作品。これも細身な感じを受けるけど、ムーアならではの単純化だと思います。座る姿のモチーフは横たわる姿に比べて意図的でリアルな対象として表現されることが多いようです。

ヘンリー・ムーア 「ふたつに分けられた横たわる像 ポインツ」
32725619_1570215331.jpg
こちらは1959年頃の作品。横たわってるようには観えませんが…w ムーアは「立つ」「座る」「横たわる」の3つのポーズを比較し、「横たわる」は「最も自由かつ安定している」と語ったそうです。人体をモニュメンタルに見せるのが横たわる姿勢なのだとか。

ヘンリー・ムーア 「台に坐る母と子」
P1080869.jpg
こちらは1968-74年頃の作品。ムーアは母と子の主題は時代や地域を越えた永遠性を持ったものと考えていたようです。流れるようなフォルムで子供と一体化しているように見えますが、聖母子のような絆を感じさせます。後に父親も加わり「ファミリーグループ」の連作が展開されていくことになります。

ヘンリー・ムーア 「四つに分かれた横たわる人体」
DSC_3546.jpg
こちらは1972-1973年頃の作品。これももはや人体なのか分からないくらいデフォルメされているかなw こうした形態はシュメール、エジプト、アフリカ、オセアニア、古代メキシコ(マヤ)などの原始彫刻からからインスピレーションを受けているようで、小石や骨の構造研究なども行っていたのも下地にあるようです。キクラデスの彫刻なんかムーアっぽいと思うことが多いので、比べて観ると面白いと思います。

ヘンリー・ムーア 「横たわる像」
32725619_3235178480.jpg
こちらは1969-70年頃の作品。これも人体なのだろうか…w 角度が変わると全く別の観え方になるのも面白い点です。どっしりとしていてボリューム感があります。シュルレアリスムの絵画に出てきそうな感じですね。

ヘンリー・ムーア 「横たわる女、肘」
P1080874.jpg
こちらは1982年頃の作品。これはかなり人体っぽいw 点のような目があったり、滑らかな形態が近未来的な雰囲気すら出しています。頭部に比べて足が太かったり、絶妙なバランスの像ですね。

ヘンリー・ムーア 「ふたつに分けられた横たわる像:カット」
32725619_2502826798.jpg
こちらは1979-81年頃の作品。何となく腕を上げて膝を曲げている人物に観えるような。「横たわる人体像は、最も自由がきき、構成しやすく、また空間性を持っている。」と語っていたそうで、この作品でも遺憾なく自由な構成を発揮してますね。

ヘンリー・ムーア 「ブロンズの形態」
DSC_1160.jpg 31098849_475862643.jpg
こちらは晩年の1985年の作品。もはや何のモニュメントか分かりませんが、金属なのに柔らかく生き物を思わせる形態がムーアらしいと思います。川村記念美術館の菜の花に囲まれて立っている姿がとても素晴らしい。ムーアは「空は彫刻の背景に最も良い」とも語っていたようです。

他に「内なるかたちと外なるかたち」という二重構造になってる作品群もあるのですが、撮影できた作品がありませんでした。小型のものが多いからかな。パブリックアートとしてよく観るのは「母と子」「横たわる像」です。

ということで、改めてムーアの作品を観ると、人体をベースに様々な試みが行われていたことが伺えます。これまた最近大きな展覧会が無いアーティストではありますが、幸いブロンズ像は様々な場所に置かれているので目にする機会も多いと思います。美術館の庭などで見かけたら是非じっくり鑑賞してみてください。
 参考記事:ヘンリー・ムア 生命のかたち (ブリヂストン美術館)

関連記事


記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。

 

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter



Comment
Trackback
Trackback URL
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

21世紀のxxx者

Author:21世紀のxxx者
 
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

関東の方には休日のガイドやデートスポット探し、関東以外の方には東京観光のサイトとしてご覧頂ければと思います。

画像を大きめにしているので、解像度は1280×1024以上が推奨です。

↓ブログランキングです。ぽちっと押して頂けると嬉しいです。





【トラックバック・リンク】
基本的にどちらも大歓迎です。アダルトサイト・商材紹介のみのサイトの方はご遠慮ください。
※TB・コメントは公序良俗を判断した上で断り無く削除することがあります。
※相互リンクに関しては一定以上のお付き合いの上で判断させて頂いております。

【記事・画像について】
当ブログコンテンツからの転載は一切お断り致します。(RSSは問題ありません)

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter

展覧スケジュール
現時点で分かる限り、大きな展示のスケジュールを一覧にしました。

展展会年間スケジュール (1都3県)
検索フォーム
ブログ内検索です。
【○○美術館】 というように館名には【】をつけて検索するとみつかりやすいです。
全記事リスト
カテゴリ
リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
メディア掲載
■2012/1/27
NHK BSプレミアム 熱中スタジアム「博物館ナイト」の収録に参加してきました
  → 詳細

■2011/11/21
海の見える杜美術館の公式紹介サイトに掲載されました
  → 詳細

■2011/9/29
「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
  → 詳細

■2009/10/28
Yahoo!カテゴリーに登録されました
  → 絵画
  → 関東 > 絵画

記事の共有
この記事をツイートする
広告
美術鑑賞のお供
細かい美術品を見るのに非常に重宝しています。
愛機紹介
このブログの写真を撮ってます。上は気合入れてる時のカメラ、下は普段使いのカメラです。
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
57位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
デザイン・アート
8位
アクセスランキングを見る>>
twitter
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

※できるだけコメント欄にお願い致します。(管理人だけに表示機能を活用ください) メールは法人の方で、会社・部署・ドメインなどを確認できる場合のみ返信致します。