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《アイ・ウェイウェイ》  作者別紹介

今日は作者別紹介でアイ・ウェイウェイとして知られる中国のアーティスト艾 未未(がい みみ)について取り上げます。アイ・ウェイウェイは「鳥の巣」とあだ名される北京オリンピック競技場を設計したことで知られますが、中国政府に対して批判的であった為ブログを削除されたり、脱税の罪や出国制限を受けたりしています。2015年にドイツに拠点を移してからは西側諸国の難民問題を作品にしたり、ドイツの不寛容さを訴えかけたりしていて、国際情勢や現代の問題を提起するアーティストです。(2020年現在はイギリスで活動中) その作風はアメリカで学んだレディメイドを使ったインスタレーションやパフォーマンスで、様々なものを集合させる特徴があると思います。今日も過去の展示の写真を使ってご紹介していこうと思います。

アイ・ウェイウェイ 「1立方メートルのテーブル」
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こちらは2009年の作品。1mの立方体のテーブルをいくつも並べていて、後ろには12の五角形と20の六角形で出来た作品もあります。幾何学的なリズムがあって面白いですが、それだけでなくこれらは中国の伝統技法で作られているようで、数学的な基本単位と、中国の「伝統」や「習慣」などが組み合わされているようです。このシンプルに見えて奥深いメッセージ性と、集合体的な要素はアイ・ウェイウェイの特徴じゃないかな。

この作品とかスマートな感じですが、2000年に行われた上海ヴィエンナーレでは人間の遺体を使った作品で物議を醸して名が広まったようです。見た目は穏やかそうな顔をしているけど過激な部分もあったりします。

アイ・ウェイウェイ 「1杯の真珠」
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こちらは 2006年の人工真珠を使った作品。これだけ真珠があると有り難みが無いと言うか… 本人の言葉を要約すると、「クラフトマンシップを極めると手仕事の単なる技術にとどまらず 素材の本質そのものを追い求めることであって、我々の物の見方はそれによって変化する」といった趣旨を述べています。確かにモノの価値というのも絶対ではないですね。

アイ・ウェイウェイ 「茶の家」
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こちらは2009年の作品。プーアル茶を凝縮して作った家で、近づくと匂いもしますw ちょっとシュールですが、中国ではプーアル茶を圧縮して売ってたりするそうなので、中国人としてのアイデンティティを感じさせます。

ちなみにアイ・ウェイウェイは父も母も詩人で、アイ・ウェイウェイが幼かった文化大革命の時期に父親が中国共産党から除名され新疆ウイグルなどに強制送還されています。そこで16年過ごしていて、1976年に解放されて北京に戻っています。北京では北京映像大学に入ってアニメーションを学んでいたというのがちょっと意外。そこで前衛芸術の「星星画会」の創設メンバーとなりましたが 中国当局の圧力を受けて活動停止に追い込まれ、アメリカへと移りました。 …と、権力に従わないアーティストに育った原動力が伺えるプロフィールです。

アイ・ウェイウェイ 「中国の丸太」
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こちらは中国の伝統的な組木の技法を用いた作品です。釘を1つも使わずに8本の柱が組み合っていて、真ん中の空洞は中国の地図になっています。隙間なくくっついていてまるで1本の丸太みたいです。少年時代にはアイ・ウェイウェイは薪木を積み上げて、その美しさが評判だったという話もあるようなので、そこからの発想でしょうか。こちらも素材の本質を生かした匠の技など、中国人として中国文化を愛しているのではないかと思えます。

アイ・ウェイウェイ 「フォーエバー」
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これは2003年の作品で、中国の永久社という会社の自転車42台を解体してくっつけたものです。自転車のレディメイドと言えばマルセル・デュシャンを思い起こすので、オマージュ的な要素もあるのかな? 輪になっているのは自転車の思い出は「永久」に巡るという意味もあるそうです。かつては自転車社会だった中国も今では日本以上に自動車大国になりましたね。中国の人々の自転車の思い出は永久に残るんでしょうか…。

アイ・ウェイウェイのアメリカ時代はデュシャンやアンディ・ウォーホルなどのレディメイドを学んでいたようで、パフォーマンスアートやコンセプチュアル・アートを制作しいくつかの大学にも在籍して12年ほど滞在しています。1993年に父の病気で中国へと帰国し、先述の2000年の上海ヴィエンナーレで「不合作方式 ファック・オフ」という展示で名を広めました。

アイ・ウェイウェイ 「蛇の天井」
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こちらは2009年の作品で、約1000個もの布製の中国版ランドセルを使って蛇を表しています。これは2008年の四川地震で犠牲になった子供への鎮魂の意味を込めたもので、アイ・ウェイウェイは中国当局が震災の被害状況を公表しなかったので自分のブログを通して被害の実態調査まで行っています。その結果、ブログは削除され現地調査中に警官に殴打されて脳内出血を起こしました。それでも当局の責任を問おうとしたりしていましたが、2010年に自宅に軟禁され、2011年にはスタジオに捜索が入り経済犯として逮捕され脱税容疑がかけられました。
これを展示した時は正にそうした時期の始まりだったのかと思うと、一層に重要な作品になったのではないでしょうか。

アイ・ウェイウェイ 「河の蟹(協調)」
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こちらは2011年の作品。このカニは中国語で調和・強調という意味と、ネット上の検閲の隠語との同音異義語とのことです。2011年にアイ・ウェイウェイに脱税容疑がかけられた時には微博で「艾未未」を検索しても「関連法規および政策に基づき、検索結果は表示しません」と出たそうなので、ちょうどその頃ではないかと思います。見た目はちょっと可愛らしいのに凄い反骨精神というか、ここまで命がけのアーティストが現代にもいるのか?と驚きますね。

アイ・ウェイウェイ 「Reframe」
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こちらはドイツ滞在時代の2016年の作品で横浜トリエンナーレのメイン会場を窓のように飾っていました。これはアイ・ウェイウェイがドイツに住むようになってから大きな問題になった難民問題に関するもので、実際に難民たちに使われた品で作られているそうです。この時の横浜トリエンナーレのコンセプトが「[接続]と[孤立]をテーマに、世界のいまを考える」だったので、非常にマッチしていました。

なお、アイ・ウェイウェイはドイツについて「開かれた社会でない」と批判して2019年にイギリスへと去っています。「ドイツは開かれた社会でいようとしているが、自己弁護の傾向がある。ドイツ的文化が強過ぎ、真の意味で他の考えや議論を受け入れない」と指摘し、タクシーの乗車拒否などの抗議を「文化的違い」と否定されたことなどを挙げているようです。
 参考リンク:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019080901198&g=int

アイ・ウェイウェイ 「安全な通行」
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こちらも2016年の作品で、およそ800のライフジャケットで出来ています。中東や北アフリカから地中海を渡ろうとして漂着した難民たちが実際に着用していたもので、生々しい現実を叩きつけてきます。こうして観るとアイ・ウェイウェイは単なる反中国なのではなく、世の中の欺瞞や抑圧に怒っているんでしょうね。


ということで、現代にこれほどハードなアーティストがいるのかという感じの人物です。昨今の香港のニュースを観ていてアイ・ウェイウェイを思い出したのですが、2019年にはデモの様子を記録するため研究者チームを香港に派遣し、それを作品に使う予定とのことです。ちょっと日本の感覚では測れない命がけのアートですね。

 参考記事:
  アイ・ウェイウェイ展 何に因って? (森美術館)
  ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス (横浜美術館)
  ヤン フードン-将軍的微笑 (原美術館)
  MOMコレクション005 リサイクル&ビルド(森美術館)
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