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《狩野探幽》  作者別紹介

今日は作者別紹介で、江戸時代初期に活躍した狩野探幽を取り上げます。狩野探幽は狩野永徳の孫(狩野孝信の子)で 弟の狩野尚信と狩野安信と共に江戸幕府における狩野派の地位を不動のものにしました。何と16歳の若さで幕府の御用絵師となっていて、日光など徳川家の霊廟の装飾、大坂城、二条城、名古屋城、京都御所など多くの重要施設の大事業を手掛けています。狩野派というと戦国時代の狩野永徳の豪華で力強い作風をイメージする方も多いかと思いますが、狩野探幽は余白をたっぷり取った情趣溢れる画面を得意とし、瀟洒な雰囲気の画風となっています。その影響力は絶大で江戸時代は狩野派が日本絵画の基準となったのは間違いありません。今日はそんな狩野探幽について過去の展示の写真などを使ってご紹介していこうと思います。


伝 桃田柳栄 「狩野探幽像」
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こちらは狩野探幽門下の四天王の1人とされる桃田柳栄 作と思われる肖像。狩野探幽は狩野宗家を弟の安信に継がせて鍛冶橋狩野家を興していて、江戸で活躍したので江戸狩野派と呼ばれることも多いかな。(一方、京狩野は狩野永徳の流れを強く受け継ぎ、濃厚な画風が特徴です。) 初期は永徳のような画風でしたが、30代半ばで出家して探幽斎を名乗るようになり永徳らとは違う路線に進んでいくことになります。

狩野探幽 「新三十六歌仙図帖」
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こちらは製作年が分かりませんが、歌と歌人がセットになった図帖の一部です。三十六歌仙のうち殷富門院大輔が描かれていて、繊細で上品な雰囲気となっています。戦国時代に求められた勇ましさから江戸時代にはこうした感性に移っていったんでしょうね。

狩野派といえば漢画が出発点ではありましたが、狩野探幽も大和絵を身につけて行きハイブリッドな感じの新しい大和絵も残しています。

狩野探幽 「新三十六歌仙図帖」
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こちらも先程と同じ図帖から皇太后宮大夫俊成女(藤原俊成女)です。色鮮やかで優美な雰囲気ですね。文字も軽やかで王朝文化のような雅さが伝わってきます。

狩野探幽は春深房道朝という高野山西方院の僧侶から大師流の書法も学んでいます。画だけでなく書も学ぶとは研究熱心な人だったのでしょうね。

こちらはタイトル名が分かりませんが(恐らく「帝鑑図」の一部)、名古屋城上洛殿上段之間を再現したもの
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三代将軍家光の上洛に合わせて増築された最も格式のある部屋に描かれています。ここは格天井にもぎっしりと絵が描かれ、この部屋以外にも狩野探幽による作品がありました。金が多く使われているけど淡く気品のある雰囲気です。

先述の通り、江戸初期の重要な建物には狩野探幽が多く関わっています。二条城では狩野探幽をリーダーに3000枚にも及ぶ障壁画・襖絵を描いたらしいので、単に絵が上手いだけでなくプロジェクトリーダーとしての実力もあったのは想像に難くありません。このクオリティを3000枚って…w 

こちらは三渓園にある臨春閣の襖絵(複製画)
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これもタイトルを忘れましたが琴棋書画の間なので「琴棋書画図」かな? 岩や木のゴツゴツした表現は漢画っぽい感じも残っています。

狩野探幽は狩野永徳だけでなく南宋の画家や雪舟などにも影響を受けています。それが詩情豊かで幽玄な雰囲気に繋がっているのかもしれません。

狩野探幽 「琴棋書画図屏風」
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こちらは年代不明ですが、穏やかな濃淡で描かれた作品。琴棋書画は文人が嗜むべき4つの教養を表したもので、中国・日本の絵画では頻出の画題です。この1枚だけでも豪放な桃山文化とは大きく異る印象を受けると思います。

ちなみに狩野派は弟子育成の際に模写を重視していましたが、探幽自身も写生や古画の模写を重視していて「探幽縮図」と呼ばれるものまで作っています。出来が良いので古画研究にも貴重な資料となっているのだとか。

狩野探幽 「孫思邈図」
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こちらは1666年の作品。孫思ぱく は唐時代の中国の名医だそうで、輪郭の太い孫思ぱくと 輪郭のない没骨法で描かれた虎を描き分けています。背景は孫思ぱくの視線に合わせて斜めに線が入っていて、光が差しているようにも観えます。ヒゲがなびいて見えるせいか軽やかな印象を受けるかな。1枚で様々な技法が観られる傑作です。

狩野探幽 「果実図」
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こちらは年代不明ですが探幽の斎書き時代なので壮年期から60歳までの作品らしく、描かれているのは枇杷、李、楊梅で 写生を元に描かれたと考えられています。 余白が大きく取られていて、ポツンとしてちょっとシュールな感じにすら見えるw 銭選(舜挙)などの中国画の影響が観られるとのことですが、余白を大きく取るのは狩野探幽の特徴でもあるように思います。余白の取り方で絵の印象はかなり変わりますね。

狩野探幽 「波濤群燕図」
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こちらは1670年の作品。燕が連なっていて、それが動きの軌跡のようにも見えるのが面白い。飛んでいるフォルムも美しく、軽やかに舞う様子が華麗に表現されています。非常に好きな1枚です。

狩野探幽 「尾長鳥図」
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こちらは海棠の木にとまる尾長鳥を描いた1670年の作品。樹の下には川も流れていて、木・尾・川の曲線の組み合わせが優美に感じられます。天地の境目の無い余白も独特の奥行きがあって静かな雰囲気。淡く気品がある画風と言い、狩野探幽らしい傑作です。

狩野探幽 「漢武帝・西王母・林和靖図」
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こちらは1671年の作品。中央が漢帝国の黄金期を築いた武帝で、右幅は不老長寿の桃を持つ仙女である西王母です。西王母は武帝に仙桃を7つ捧げて酒宴した伝説があります。左幅は鶴を愛した林和靖(北宋の詩人)とされていますが、他の2幅とちょっと時代が違っていますね。箱書きには「長伯房」とあるらしく、必ずしも林和靖とは言い切れないのかもしれません。晩年の完成されたスタイルと言った感じでしょうか。清廉な雰囲気となっています。

狩野探幽 「鸕鷀草葺不合尊降誕図」
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こちらは年代不明で豊玉姫と彦火火出見尊の神話を題材にした作品。物語のワンシーンを劇的に描いていて、絵巻を縦にしたような画面構成になっているようです。視線を追うと豊玉姫が置いていった赤ん坊の姿があり、中央にある小屋は産屋のようです。産屋の中には豊玉姫の本来の姿の八尋和邇がいて、夫がその鮫のような姿を観てしまったので子供を残して海に帰ってしまったようです。一見すると余白の多いシンプルな画面にそれだけの物語が詰まっているとは凄い構成です。


ということで、東京国立博物館の所蔵品を中心に狩野探幽を振り返ってみました。狩野探幽の作品はちょくちょく観ますが、その業績について深く掘り下げる展示はここ数年観ていないので また期待したいところです。日本の絵画史上でも特に重要な人物です。

 参考記事:墨と金 狩野派の絵画 (根津美術館)
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