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《円山応挙》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、18世紀半ばから後半にかけて京都で活躍した円山応挙について取り上げます。円山応挙は1733年に農家の次男として生まれ、幼くして奉公に出ました。10歳で京都に出て、呉服屋で働いていたこともあるそうで、絵の勉強は狩野探幽の流れを引く画家の石田幽汀に学んでいます。20代の頃は玩具商の尾張屋で「眼鏡絵」を描いていて、これが画業の出発点となりました。この「眼鏡絵」というのは西洋の遠近法を強調した風景画で、レンズを備えた覗き眼鏡を通してみると立体的に見える絵のことです。そして30代から応挙を名乗り、写生を重んじて自然や花鳥・動物を生き生きと写し取った斬新な画風はたちまち京都で評判となりました。応挙は「実物に即して描かないと絵とは呼べない。強さや生命力は形をしっかり描けば備わる」と考えていたようで、西洋絵画に影響を受けた眼鏡絵を描いていたこともあって、西洋的なアプローチをしていたのではないかと思います。そうした姿勢は円山派と呼ばれる門下に受け継がれ、京都画壇で確固たる地位を築いていきました。今日も過去の展示で撮った作品とともにご紹介していこうと思います。


円山応挙 「雪中老松図」
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こちらは1765年の作品。円山応挙の代表作に国宝の「雪松図屏風」がありますが、モチーフ的によく似ています。雪松図屏風では白い地を塗り残して雪を表現する手法が使われているわけですが、この作品も恐らく絹地の白さを活かし 周りの色で白雪を浮かび上がらせていると思われます。墨の濃淡だけで松の質感や風格まで出ていて流石です。

この作品の翌年の1766年から応挙を名乗り始めたそうで、応挙とは宋元時代の文人画家の銭舜(字は舜挙)に応ずるという意味となっています。過去の偉人に並ぶ存在になるという野心的な名前ってことですね。(応挙は名前や号を何度か変えています)

円山応挙 「秋冬山水図屏風」
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こちらは年代不明の作品。金地と墨で秋冬の山水を表しています。これも白が柔らかく感じられ、空気感まで表現されているようにも思えます。

応挙は「三遠」を意識していたことを自ら記しています。三遠は北宋の画家 郭煕が考案した構図で、
 高遠:下方から山の頂上を見上げる構図
 平遠;前山から後方の山を眺望する構図
 深遠:山の前方から背後をのぞきこむ構図
となります。応挙の絵を見たらこの視点で観ると発見があるかもしれませんね。

円山応挙 「青松白鶴図」
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こちらは1782年の作品。対になって並んだ掛け軸ですが、鶴のポーズが松の枝と幹の形に似ているように見えます。ちょうど松の枝に沿って対角線上に流れているような構図が観ていて心地良い。

円山応挙は鳳凰や龍といった架空の動物よりも生きた鳥や動物をよく観察して描こうとしたそうです。それは円山派と呼ばれる弟子たちにも引き継がれていきました。そのため、動物を描いた作品は多く存在します。

円山応挙 「朝顔狗子図杉戸」
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こちらは1784年の作品で、杉戸に描かれています。東博の応挙館の廊下を仕切る杉戸らしく、応挙館は元々は愛知県の明眼院の書院でした。

杉戸の右側のアップ。
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朝顔とコロコロした感じの子犬が何とも可愛らしい。写生といってもゆるキャラのような親しみがありますね。

こちらは左側のアップ
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仕草などに犬っぽさを感じます。こうした犬は円山応挙の作品によく出てきて、弟子の長沢芦雪の作品でも見かけます。芦雪のほうがさらにゆるかったりしますがw

円山応瑞 「狗子図」
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こちらは年代不明の作品。よほど子犬が好きだったんでしょうか。元気で無邪気な感じがよく出ています。

円山応挙 「臥牛図」
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こちらも年代不明の作品。菅原道真公をテーマにしていて、菅原道真は死後に運ばれた際 牛が臥して動かなくなった場所をお墓にしたとされ、牛は天神様(菅原道真が神様として祀られた)の使いとなりました。墨の濃淡でどっしりした牛の肉付きまで分かるのが凄い。尻尾のカスレなど単純なようで特徴がよく表れています。

円山応挙 「虎嘯生風図」
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続いても動物モチーフで、こちらは1786年の見事な虎の絵。背景にオーラのようなものが見えますが、これは虎は風を操るとされ、空に吠えた虎が風を巻き起こしている様子のようです。この時代は虎を日本で観ることが出来なかった為、応挙は輸入された虎の敷皮や猫を参考に虎を描いていました。模様はリアルだけど顔が猫っぽいのはそのせいかな

実際に見たことがないものでも写実的に描いた円山応挙ですが、当時は筆使いの個性がないとの批判もあったそうです。曾我蕭白は「絵を望むのなら私に乞うべきだが、絵図なら円山主水(もんど。応挙のこと)が良かろう」と言っていたようで、それまでの絵画と一線を画するものと考えられていたのかもしれません。

円山応挙 「芦雁図襖」
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これは1786年の作品で、先程のワンちゃんの杉戸と同じ応挙館にある襖絵の一部です。まるで目の前に雁が舞い降りてきたような躍動感と臨場感があります。写実的でもごちゃごちゃせず、余白を使って広がりや余韻を出すのは狩野探幽に通じるものを感じます。

円山応挙 「梅図襖」
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こちらも1786年に描かれた応挙館の襖絵。枝が4面に渡って伸びる構図が圧巻です。立派すぎて本当にこんな木があるの?って思ってしまいますがw 濃淡で立体感もしっかり表現されているのは眼鏡絵で培った技術でしょうね。

円山応挙 「波濤図屏風」
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こちらは1788年に描かれたもので、元は京都府亀岡市の金剛寺の襖絵だった品を改装した屏風です。そのため、右側に丸い把手らしき跡が見えます。 線で表された波が荒々しく動きを感じさせます。元の絵はこれが3面に渡って続くようなので、揃ったら一層に臨場感ある光景となるんじゃないかな。

円山応挙 「郭子儀携小童図」
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こちらは1792年の作品で、武勲で出世した唐の名将を描いています。長寿で息子たちはみんな出世したので、子孫繁栄の理想像としての意味もあるようです。体は輪郭線を使って表現していますが、ヒゲはフワッとした感じの表現になっているのが面白い(非常口の光の反射で台無しですみませんw) 武人だけど好々爺って感じの温厚な雰囲気です。

ちなみに応挙自身も温厚な人物だったそうです。その為か弟子の育成にも優れていて、弟子には息子の円山応瑞、源琦(げんき)、山口素絢(やまぐちそけん)、渡辺南岳、長沢芦雪などがいます。さらに与謝蕪村の高弟だった呉春も晩年の応挙に弟子入りを請いましたが応挙は親友として迎えいれました。(呉春は四条派の祖として後に円山派と並ぶ存在となります。) また、円山派の分派には原派・岸派・森派・鈴木派などもあり後世に絶大な影響力があったことが伺えます。

円山応挙 「龍唫起雲図」
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最後に1794年に描かれた眼光鋭い龍。翌年に亡くなっているので最晩年の作品です。濃淡で立体感や雲の湿気まで感じさせるのが凄い。架空の生物ですが、表情は人間っぽいしリアルな存在に思えます。

ちなみに円山応挙は幽霊を描いたこともあり、足のない幽霊の元祖とされています。あまりにリアルで幽霊が夜に絵を抜け出す…なんて逸話もあるくらいですw


ということで今回は全て東博の所蔵品でご紹介しましたw 円山応挙は江戸時代だけでなく近代の日本画にも大きな影響を与えているだけに詳しく知っておきたい画家の1人だと思います。展覧会もちょくちょく開催されるので、機会があったら是非チェックしてみてください。
 参考記事:円山応挙-空間の創造 (三井記念美術館)

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