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《鈴木春信》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、1760年代に活躍し木版多色摺りの浮世絵(錦絵)の誕生に大きく寄与した鈴木春信について取り上げます。鈴木春信の人生はよく分かっていない部分が多く、浮世絵師としての活動はわずか10年しかないという謎の人物ですが、平賀源内と親交があり共に多色刷り版画の開発をしたと考えられています。初期は役者絵を制作していたものの鈴木春信といえば美人画が有名で、特に市井の暮らしを描いた作品が当時から人気を博していました。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。

鈴木春信は京都で西川祐信または西村重長に学んだと考えられ、その後江戸に出てきたようです。錦絵誕生には裕福な旗本や商人たちが行った1765年の絵暦(和暦の月の大小を表す一種のカレンダー)の交換会がきっかけとなり、鈴木春信の色鮮やかで故事・古典を題材とする作品はそうした趣味人に評価されたようです。そしてパトロンが付いて彫師・摺師と協力して制作していきました。

鈴木春信の作品は製作年が分かりませんので、順不同でご紹介してまいります。

鈴木春信 「見立半托迦(龍を出す美人)」
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こちらは瓶から龍を出す神通力を持つ半托迦(はんたか)という羅漢を美人に変えたもの。結構シュールな感じですが、こうした見立てが人気を博したようです。涼しげな美人だけどちょっと教養を見せる感じが粋なのかな。

鈴木春信の作品の多くは中判と呼ばれる版型に柔らかな色調で表現されています。大体は縦長の作品のようです。

鈴木春信 「見立久米仙人」
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こちらは柱絵判と呼ばれるかなり縦長の作品。久米仙人というのは日本の仙人で、飛行している際に洗濯している若い女性のふくらはぎを見て興奮し、神通力を失い墜落したという何だか憎めないやつですw ここでは鍾馗?が墜落する鬼みたいなのを紐で吊るし、下では美しい脚を見せて洗濯している美女がいます。コミカルな感じとすらっとした女性の組み合わせが面白い。

鈴木春信の美女は色白で華奢な柔らかい雰囲気の女性が多いように思います。この時代の版画はまだ色は薄いですが肌に色気を感じますね。

鈴木春信 「鼠、猫と遊ぶ娘と子供」
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こちらは市井の女性を描いた作品。白鼠は幸運を招くとしてペットにもなっていたようですが、左下にいる猫がじ~~っと鼠を観ていますw 今も昔も鼠の天敵は猫ですね。

鈴木春信の作品の中には実在する茶屋の娘などを描いた作品もあります。市井の女性を描いたことで大衆にも受けて、描かれた美女のお店はお客さんが殺到したという逸話もあります。

鈴木春信 「舫い舟美人(もやいぶねびじん)」
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こちらは初夏の様子を描いた作品。この二人は芸者らしく、これから出かけるようでおはしょりの紐を締め直しています。こうした日常の何気ない瞬間を捉える主題も浮世絵ならではの魅力かな。何とも涼しげな雰囲気です。

鈴木春信 「火鉢を囲む二美人」
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こちらは冬の様子で、火鉢に向かった美女が描かれています。1人は人形遊びをしているのかな。緑と赤が対比的なので全体的に明るい色彩に思えます。

鈴木春信の女性の顔は割とみんな似てますw 美人の容姿は明時代の中国版画の仇英に影響を受けているのだとか。

鈴木春信 「臥龍梅」
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枝が地を這うような梅と3人の人物を描いた作品。真ん中の人物は刀を差しているのかな?? 2人でキセルを吸ってちょっと休憩といった感じでしょうか。立ち姿がすらりと凛々しく見える作品です。

鈴木春信はあまり肉筆は残っていないようですが、版画は900~1000点程度が現存しているようです。10年の活動で1000枚ってかなりのペースですね。

鈴木春信 「犬を戯らす母子」
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こちらは美人と子供が犬と遊んでいる様子。鈴木春信の作品には母子もよく登場し、こうした日常の幸せを感じさせる作品もあります。観ていてほっこりします。

鈴木春信の女性たちは妖艶さより可憐さを感じさせるように思います。主題的にも健康的で温和な印象を受けますね。

鈴木春信 「蚊帳から出る美人」
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こちらは夏の情景。この作品で面白いのが蚊帳の透ける感じで、蚊帳の中は薄っすらと緑がかっています。浮世絵の黎明期でこれだけの表現ができたとは驚きです。

鈴木春信は後世にも絶大な影響を与えていて、鳥居清長など江戸時代の浮世絵師のみならず河鍋暁斎や鏑木清方、小村雪岱といった明治以降に活躍した画家たちも学んでいます。さらに鈴木春信の作品の多くは海外に渡り、ルイ・カルティエ等が着想源にしたほどです。

鈴木春信 「寄山吹」
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こちらは2人の美女が寄り添って庭先を見つめる様子を描いた作品。視線の先は描かれていないので画面外への広がりを感じさせます。山吹を観てるのかな?? 上部の雲のように区切られた部分に歌も描かれていて、何かの物語かもしれませんね。

鈴木春信 「弾琴美人」
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こちらはカラフルな印象を受ける作品。幾何学的な背景も絵として面白い

鈴木春信 「追羽子」
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最後に鈴木春信らしさがよく出ている作品。日常や季節を感じさせる主題、流麗で柔らかい輪郭、涼し気な目元などに特徴が観られると思います。それにしても2人の視線が交差する場所には羽がないのが気になるw 中央上部に木の枝か羽か判別しづらいのがあるけど、これかな?w 


ということで、あまり詳しいことは分からない人物ですが浮世絵の発展に決定的な功績を残したことは明らかとなっています。親しみが持てる主題が多いので現代でもファンは多く、美人画の展示などでよく見かけると思います。たまに個展も開かれるので、そうした機会があったら足を運びたい画家です。

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