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《柴田是真》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、幕末から明治にかけて蒔絵師として、また絵師としても活躍した柴田是真(しばたぜしん)を取り上げます。柴田是真は文化4年(1807年)に江戸に生まれ、11歳の時から蒔絵の技を習得して 16歳からは円山四条派の絵画を学びました。特に蒔絵では従来は分業されていた下絵から蒔絵までの製作工程を自らの手で一貫して行い、洒脱でウィットに富んだデザインと漆芸技術を融合させることに成功し高い評価を得ました。さらに、蒔絵絵という絵画と蒔絵の技を併せ持った作品を作り絵画・工芸の枠を越えていくことになります。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。

柴田是真は宮彫師の子として江戸で生まれ、11歳の頃に初代 古満寛哉の元で蒔絵を学び始めました。16歳からは四条派の鈴木南嶺に絵を学ぶようになり、2人の師匠の名前から1字づつ取って「令哉」の号を使っています。さらに24歳の時に四条派の本場の京都に行き、岡本豊彦に師事した他、絵だけでなく国学や歌なども各界の著名人に学びました。そして翌年に江戸に帰ると「是真」の号を使うようになりました。

柴田是真の作品は年代不明のものが多いので、順不同でご紹介していこうと思います。

柴田是真 「狗子」
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こちらは年代不明で、題材も画風も円山派の祖である円山応挙を彷彿とさせる作品。柴田是真は時に精密な絵や超絶技巧を見せる画家ですが、こうしたユルい作品も残しているのがちょっと意外w とは言え、円山四条派をルーツに持っているのがよく分かります。コロコロした犬が何とも可愛らしい

柴田是真は若い頃から絵が上手く、歌川国芳が柴田是真の絵に感動して弟子入りしたという逸話もあるそうです。国芳のほうが年上なのが面白い。国芳も絵に対する直向きさは流石ですね。

柴田是真 「瀑布」
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こちらは明治4年(1874年 67歳頃)の作品。水しぶきが烟るような湿気を感じさせる滝の絵で、白く見える部分は絹地の色を生かしています。この技法も円山応挙を思い起こすかな。少ない色数で情感豊かに表現していますね。

柴田是真の江戸時代の作品は残念ながら写真がありませんでした。34歳の頃に描いた王子稲荷神社のための「鬼女図額面」が出世作とされています。また、柴田是真は海外での評価が高く、先程の作品の1年前の1873年にはウィーン万国博覧会で蒔絵作品が受賞しています。

柴田是真 「砂張塗漆鉢」
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こちらは年代不明ですが明治時代の作品。砂張というのは銅と錫と鉛の合金のことで、この鉢も鈍い反射があり金属製のように見えます。しかし、実際は漆器で出来ている騙し漆器となっています。地味に観えて超絶技巧が使われているのが柴田是真らしさかもw 騙し漆器は他にも陶器、紫檀、木肌など様々な素材感を表現している作品なんかもあります。トリックアート的な要素も魅力です。

柴田是真はこうした漆芸の新技法を創始した他、元禄時代に考案されたものの伝承が途絶えていた青海波塗を復活させたことも大きな功績となっています。

柴田是真 「千種之間天井綴織下図」の看板
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こちらは晩年の1886年の作品で、本物は1m四方の絵です。いずれも円の中に草花が描かれていて、流水や枝などを含めてデフォルメされていて優美な印象となっています。デフォルメされているのに写実的なところもあって、色の鮮やかさと共に生き生きとしているのも特徴です。こちらは明治21年に竣工した明治宮殿の「千種の間」の格天井の装飾画の下絵として作られ、全部で112枚あるようです。1つ1つ異なる花を様々なデフォルメしているのが驚きで、どれも格調高いのが素晴らしい作品です。

この4年後の1890年に現在で言う所の人間国宝に当たる帝室技芸員に任命され、日本漆工会の設立にも携わりました。しかしその翌年の1891年に亡くなっています。

柴田是真 「雪中の鷲」
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こちらは年代不明ですが明治時代の作品。狐?を狙っている鷲が、身を捻って下を見つめています。狐は慌てて逃げているのかな。緊張感がありつつちょっとユーモラスな感じもします。

柴田是真は様々な題材をモチーフにしていますが、故事や人物よりも花鳥が多いように思います。高い技術を持ちつつ洒脱な感性があり、風流だったり可笑しみが含まれていたりします。

柴田是真 「四季花鳥」
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こちらも年代不明ですが明治時代の作品。絵師としてもこうした大作を残しています。

こちらは右隻
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華やかながら派手過ぎずに典雅な雰囲気となっています。

こちらは左隻
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舞い飛ぶ鳥や伸びやかな草花が軽やかな印象です。

左隻の一部をアップにするとこんな感じ。
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色合いやモチーフ的に酒井抱一の江戸琳派を思わせる部分もあるように思います。

柴田是真は絵画においてもトリックアート的な作品を多く残していて、描表装という掛け軸の絵の周りの部分まで自分で描く技法をよく用いていました。描表装はまるで掛け軸から絵が抜け出すような感じに見えるので観るものを驚かせてくれます。機知に富んだ人だったんでしょうね。

柴田是真 「漆絵画帖」
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こちらも年代不明ですが、柴田是真の真骨頂とも言える「漆絵」の技法で描かれた画帳です。漆絵はその名の通り色漆を使って描く絵で、普通の絵と異なり色艶が出る反面、5色くらいしか色を出せないかったり一方向にしか筆を運べない等 独特の制限があります。それをこれだけ普通の絵のように緻密に見せるのが柴田是真の超絶技巧の一端です。

こちらは一部のアップ
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カラフルに見えるけど実際の色数は少なめです。よく見ると微妙に濃淡を付けてグラデーションなどでそれをカバーしているようです。あまりに自然過ぎて普通の絵じゃないか?と思ってしまいますw 西洋の油絵のような表現を狙ったのではと考えられています。

ある時、柴田是真は漆絵は巻物には不向きである(巻いたら剥がれるから)と言われましたが、数日で巻いても大丈夫な漆絵を作成したのだとか。天才過ぎですねw


ということで、残念ながら漆器や漆絵の写真があまり見つかりませんでしたが、絵画と漆芸の二刀流でどちらも成功した人物です。数年に1度くらいの割合で個展が開かれたり、幕末~明治頃頃の工芸展に出品される機会もあるのでそうした機会に是非じっくりと見て頂きたい作家です。

 参考記事:
  ZESHIN 柴田是真の漆工・漆絵・絵画 (根津美術館)
  柴田是真の漆×絵 (三井記念美術館)
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