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《アレクサンドル・ロトチェンコ》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、ロシア構成主義のアレクサンドル・ロトチェンコ(アレクサンドル・ミハイロヴィチ・ロトチェンコ)を取り上げます。ロシア構成主義はピカソのキュビスムやマレーヴィチのシュプレマティスムに影響を受け、ロシア・アヴァンギャルドの一角として前衛的な作品を残しました。中でもロトチェンコは奥さんとなるワルワーラ・ステパーノワと共に学生時代から活動を共にし、絵画だけでなく写真、舞台美術、装飾デザイン、建築など様々なジャンルを手掛けました。ソ連共産党のプロパガンダポスターにも傑作が多かったものの、やがてソ連はロシア・アヴァンギャルドを認めなくなりロシア構成主義も衰退しました。(それでも一部の作家は海外に逃れ、抽象絵画に影響を与えています。)今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。 ※今日は代表作は少なめで、写真作品が中心です。

アレクサンドル・ロトチェンコは1891年にサンクトペテルブルクに生まれ、1909年に父親が亡くなった為にカザンへと移り住みました。その頃からアートに興味を持ったようで1910年にカザン美術学校に入学し、1914年には後に奥さんとなるワルワーラ・ステパーノワ(この人も絵やデザインを手掛けた芸術家です)と出会っています。卒業後はロシア構成主義の中心人物であるウラジミール・タトリンに師事し、ピカソのキュビスムやマレーヴィチのシュプレマティスムに影響を受けた作品を作りました。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「非具象彫刻」
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こちらは1918年(1994年再制作)のまるで工業製品の部品のような彫刻作品。ややレトロさも感じますが、直線を組み合わせた構成の美しさがあります。この多面的で幾何学的な所がキュビスムっぽさを感じさせ、さらに単純化している点にシュプレマティスムっぽさを感じます。

1919年にはステパーノワと共にカンディンスキーの家で暮らしたり、1920年には美術館部局内で暮らし芸術文化研究所に勤めるなど、学生時代からずっと2人で一緒に活動をしていたようです。1921年からはロシア構成主義のメンバーとなりました。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「レンギス(国立出版社レニングラード支部) あらゆる知についての書籍」 国立出版社レニングラード支部の広告ポスター」のポスター
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こちらは1924年の作品で、口に手を当てて何かを叫んで知る女性の円形の写真と、そこから出てくる台詞のような文字を三角で囲んだデザインになっています。シンプルな形を使いつつも強いメッセージを飛ばしているように見えます。まるで漫画の吹き出しみたいなw 三角の頂点が女性の口になっているのも面白いですね。

この頃からこうしたプロパガンダポスターの制作をしていました。今回は写真が無かったのが残念ですが、ロトチェンコの真骨頂は絵画よりもグラフィックデザインではないかと思います。数多くのポスターを手掛けていて、パンや植物油、おしゃぶり、ロシア航空産業開発会社の株購入にポスターなんてものまであります。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「バルコニー(『ミヤスニツカヤの建物』シリーズより)」
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こちらは1925年の作品。生活の中にある幾何学的なモチーフを見つけて撮るという視点にロシア構成主義らしさがあるかな。実景なんだけど、抽象絵画に通じるものがあると言うか。

ロトチェンコの絵は最初、中世的なものや東洋的なものを主題としていたようですが、未来派などの影響で具象から抽象絵画へ向かっていきました。また、当初は色彩に関心を払っていたようですが、やがて色彩を拒否する作風へと変わっていきます。しかし絵画は1920年代初め頃までで、それ以降はプロパガンダポスターなどを主に手掛けています。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「非常階段」
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こちらは1925年の作品で、避難梯子に捕まっている人を真下から見上げるように撮っています。その視点のせいか、最初に観た時には線路にでもしがみついているのかと思いましたw 建物や、梯子、梯子の支えなど幾何学的要素が多いのも流石です。

ロトチェンコは人間とは違った視線で写すことのできるカメラに可能性を感じていたようで、ちょっと変わった視点から撮っているのが特徴の1つです。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「デモの見物人」
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こちらは1928年の作品。幾何学的に並んだ人を上から見ている人をさらに上から撮る構図となっています。この見下ろす構図というのも1つの特徴かな。単純ながらも日常が非日常に見える光景を切り取るセンスが凄い。

奥さんのワルワーラ・ステパーノワは初期にはイタリアの未来派から影響を受け、やがてプリミティブ(原始・素朴美術)に傾倒していきました。夫婦でだいぶ作風が違うのが面白い。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「グラスとライト」
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こちらは1928年の作品で、具象を組み合わせて抽象的な写真を撮ったもの。ロシア・アヴァンギャルドを写真にしたような簡潔さで、構図の妙を感じます。

1923年~28年まで左翼芸術雑誌『レフ』のデザインと挿絵を制作していたようです。バリバリの共産主義者ですね。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「階段」
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こちらは1929年の作品。階段の明暗が強く、縞模様のようになっていてデ・キリコの形而上絵画のようなシュールさすら感じます。これも簡単なようで非凡な視点ですよね。

1920年代にはバウハウスで教員を務めたこともありました。バウハウスのミニマルな美意識はロシア構成主義と共通する部分も大きいように思います。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「歯車」
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こちらは1929年の作品。何の機械か分かりませんが、無数の歯車が組み合っていて奇妙なリズムを感じます。反復してるのかモンタージュなのか?ってくらい無限に続くように思えるw

ロトチェンコが写真に惹かれたのはダダイストのフォトモンタージュに傾倒したのがきっかけだったようです。ロトチェンコもフォトモンタージュを手掛けたのだとか。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「ダイバー」
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こちらは1934年の作品。飛び込む一瞬の反り返る姿が何とも美しい。やや斜めになった構図も躍動感に溢れていて、まさに傑作です。

ロトチェンコは建築物のデザインも行っています。ただ、見るからに実現不可能そうなデザインだったりします。(ビルの上に展望台のある塔が建ち、それにジグザグの鉄筋らしきものが絡み付いているように見えるデザインとか。)

アレクサンドル・ロトチェンコ 「アスリート」
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こちらは1934年の作品。これも整然と並ぶ様子にロトチェンコらしい美意識が感じられます。影も綺麗に一列になって遠近感が強調されているように見えますね。

この年あたりからソ連共産党は「社会主義リアリズム」のみを認めるようになり、ロシア・アヴァンギャルドは弾圧の対象となってしまいました。スターリンは小難しい前衛美術が嫌いでしたからね…。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「'ディナモ'スポーツ・クラブ」
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こちらは1935年の作品。これも高い位置から観た整列集合で、途中で曲がっているので人の流れも感じられます。特殊な技法を使わずにこれだけ面白い写真を撮っているのが一層に凄さを感じる所です。

これ以降は再び絵画作品を残したようですが、残念ながら写真はありませんでした。戦後の1956年に65歳で亡くなっています。


ということで、ほとんどが写真作品のご紹介になってしまいましたが実際にはかなり幅広く活動した芸術家となっています。日本では絵画やデザインは観る機会が少ないものの、グラフィックと写真に関しては写美、東近美、横浜美術館などで観る機会があります。最近はロシア・アヴァンギャルドに関する展示も少ないけど、そうした展示では必ず名前が挙がる人物です。
 参考記事:ロトチェンコ+ステパーノワーロシア構成主義のまなざし (東京都庭園美術館)
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