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《麻生三郎》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、戦前から活動し戦後は美術大学の教授としても活躍した麻生三郎を取り上げます。麻生三郎は池袋モンパルナスの画家の1人としても知られ、戦前は警察や軍などの弾圧の中でも作品を発表し続けました。戦後は抽象化を進め、暗褐色をベースにした焦げ付いたような厚いマチエールに人物や内面世界を描いた作品を多く残しました。また、現在の武蔵野美術大学で30年ほど教授を務め後進の指導を行い影響を与えています。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。


麻生三郎は1913年に現在の東京都中央区に生まれ、周囲のモダンな雰囲気に影響されて洋画を志しました。15歳の1928年から小林万吾が設立した同舟舎洋画研究所で学び、1930年からは太平洋美術学校に入学し、そこで 靉光、長谷川利行、高橋新吉らと知り合います。しかし1933年に美術学校を退学すると個人活動を開始し、翌年から作品を発表し始めました。

麻生三郎 「自画像」
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こちらは1937年の作品。非常にインパクトのある自画像で、目の中に赤が入るとこんなに強い印象を受けるのかと驚きます。麻生三郎は戦中から戦後間もない時期にかけてこうした自画像や妻・娘の肖像画を繰り返していたようで、目まぐるしい社会の変化の中でかけがえのない人の存在を把握するための営為だったのではないかと考えられるようです。この頃から前衛的ではあるけど、後の作風に比べるとかなり具象的に思えます。

この前年の1936年に寺田政明らとエコール・ド・東京を結成し、1937年に第1回エコール・ド・東京展に出品しています。そして、翌年の1938年から数ヵ月間に渡ってフランスに滞在しました。しかし第二次世界大戦に向かっていく世界情勢の悪化で翌年には帰国し、同年の第9回独立展に参加して入選しました。帰国後は現在の豊島区長崎にアトリエを構え、福沢一郎、北脇昇、寺田政明らと美術文化協会を結成しています。池袋モンパルナスの一員と考えられているのはその為ですね。
 参考記事:東京⇆沖縄 池袋モンパルナスとニシムイ美術村 (板橋区立美術館)

麻生三郎 「とり」
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こちらは1940年の作品。くすんだ筆致に見えるけど鳥の肉を吊るした様子がリアルに描かれています。画題としては洋画では伝統的なものに思えるかな。この頃は写実的な作風だったように見えますね。背景が灰色でくすんだ感じという特徴はこの頃には確立されてたのかも。

戦時下の1943年には寺田政明、松本竣介、靉光らと「新人画会」を結成し、戦況が厳しく軍部に抑圧されても作品を発表し続けました。1944年には召集を受けて一時は入営しましたが、身体虚弱で兵役不適とされました。戦時中には空襲でアトリエが焼失し、多くの作品が失われてしまったのだとか。

戦後になると松本竣介・舟越保武と共に日動画廊にて三人展を開催し、1947年には新人画会の同人とともに自由美術家協会に加わりました。さらに1952年には武蔵野美術学校(現在の武蔵野美術大学)の教授となり、その後約30年に渡って後進の指導を行っています。

麻生三郎 「赤い空」
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こちらは1956年の作品です。一気に画風が変わりざらついたマチエールに重苦しいような色彩で、何かを訴えているような人物が意味深に思えます。1950年代半ばにはこうした「赤い空」に集中して取り組み、終戦後も戦争の影響を意識し続け 戦後社会を生きる人間像を批判的に取り上げています。「赤い空というのは都会の重い空で、重い空間のかさなりあいである (中略) そしてその場所から逃れることのできない重圧と圧迫が強くなにものかに対する強い反撥犯行があるのは実感だ」と語っていたようで、色彩から感じられるのはそうした意味が込められているからかもしれませんね。

麻生三郎は1950年頃から世田谷区三軒茶屋に自宅兼アトリエを構え、近所や少年期を過ごした隅田川界隈の素描作品を数多く残したそうです。

麻生三郎 「母子像」
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こちらは1959年の作品。何色とも形容しがたい様々な色の混じった背景に母子らしき姿が浮かび、ちょっと不安な雰囲気に見えるかなw マチエールなどは同時代のアンフォルメルと似たアプローチにも思えるけど具象的で不定形という訳でもないので独自の路線と言えそうです。じっとこちらを見つめる眼が何かを訴えかけているように思えます。

この1959年には第5回日本国際美術展で優秀賞を受賞しています。

麻生三郎 「仰向けの人」
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こちらは1961年の作品。どう観ても抽象画で、どこが人やねん!とツッコみたくなりますが… よーーーく観るといますね。焼けただれたような画面にシミのような人影が。この頃になるとかなり抽象化が進んでいますが、私の中での麻生三郎のイメージはこういう作風です。ちょっと不穏な雰囲気があり、特に赤が印象的。

1963年には芸術選奨文部大臣賞を受賞しています。大学教授も務めていたので、戦後の日本に重要な画家と言えます。

麻生三郎 「寝ている男」
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こちらは1963年の作品。何となく有機的な造形が集まっているように見えますが、タイトルを観ても何処らへんに男が寝ているのかよく分からない…w こうした素描から油彩になる前から抽象化が進んでいるのが伺えます。

この翌年の1964年に自由美術家協会を退会し、以後は無所属となり美術団体連合展、選抜秀作美術展、現代日本美術展などにも出品して活躍しました。

これ以降の作品の写真が見つかりませんでしたが、2000年まで長生きされています。晩年は神奈川県にゆかりがあったので神奈川県立近代美術館などに多くのコレクションがあり、各地で個展や特集が組まれることもあります。特徴的な画風なので、記憶に残りやすい画家ではないかと思います。

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