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《山口長男》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、日本の抽象絵画の草分け的存在の山口長男(たけお)を取り上げます。山口長男は東京美術学校西洋画科で学んだ後、佐伯祐三やオシップ・ザッキンと交流し、当初はキュビスム風の作品を制作していました。しかし戦後はさらに抽象性を増し、やがて暗色を背景に長方形が重なるような作風へと進化しました。武蔵野美術学園の教授としても20年に渡り教鞭を執り、晩年には学園長になるなど教育面でも活躍した画家です。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。


山口長男は1902年に現在の韓国のソウルで生まれ育ちました(父は鹿児島出身) 中学時代から絵画に親しみ、1921年に19歳で東京に出ると本郷洋画研究所へ通い、その翌年には川端画学校にも通うようになり、東京美術学校西洋画科に入学しました。同期生には牛島憲之、荻須高徳、加山四郎、小磯良平、山口長男、猪熊弦一郎、中西利雄、高野三三男、岡田謙三といった後に有名画家となる錚々たるメンバーがいて、和田英作の教室で学んでいます。1927年に卒業するとフランスから帰国していた佐伯祐三を訪ねて、荻須高徳と共に渡仏しました。パリでは始めは佐伯祐三に刺激を受けていたようで、しばらくするとキュビスムの彫刻家であるオシップ・ザッキンのアトリエへ通うようになり、その影響を受けた作品を制作するようになりました。
 参考記事:
  《岡田謙三》 作者別紹介
  《佐伯祐三》 作者別紹介

山口長男 「二人像」
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こちらは1930年の作品で、翌年の第18回二科展で入選しています。フランスでのザッキンからの影響が表れ、キュビスムっぽさが出てるかな。2人は何処にいるのか中々分かりづらいですが、紙の長い女性でしょうか? 色と形態のリズムがありつつ落ち着いた色調なのが心地よく感じられて好みです。

この頃から独自の抽象表現を確立していき、二科展を中心に活動し1936年には第22回二科展で特待となり1938年には二科会会友に推挙されています。

山口長男 「池」
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こちらは1936年の作品。かなり抽象性が増しているけど、池と言われると確かにそう見えなくもないかなw 線や色の塊が軽やかで、水面のゆらめきや反射のように思えてきます。割とカンディンスキーに似た感性かも。

1938年には峰岸義一、吉原治良、山本敬輔、広幡憲、高橋迪章、桂ユキ子とともに発起人となり、東郷青児、藤田嗣治を顧問として九室会を結成し、その創立総会を新宿中村屋で開きました。その後も二科展にも出品していたのですが、1941年になると戦時情勢が緊迫しソウルから作品を送るのが困難となり二科展出品を中止しています。1942年に結婚し、1945年には招集を受けて釜山あたりの漁村で砲座を築く作業をしていたようで、そうしているうちに終戦とないました。

終戦後は二科会も再結成され山口長男も新会員に挙げられました。1946年に妻子と共に日本に戻り、熊本を経て東京に落ち着きました。その後、再び二科展を中心に活躍していきます。

山口長男 「構成」
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こちらは1955年の作品。20年くらい間が空いたので一気に画風が変わっていますw(この間の作品の写真が無かった…) 戦後は1953年頃から黒の地色に黄土、赤茶色一色のみで象形文字風の形を描き始めたそうで、1955~57年頃には垂直、水平による形の組合せを描くようになったようです。確かに文字というか柱の集合体のような何かが渦巻くような感じに見えます。色合いが西洋絵画にはない土のようなどっしりした雰囲気で、前衛なのに何処か懐かしいところも感じます。

この少し前に、二科展の第1回会員努力賞を岡田謙三とともに受賞していて、山口長男は美術雑誌『みづゑ』に「岡田謙三の作品を観る」という記事を寄稿しています。2人とも戦後の抽象絵画に重要な人物だけに面白いエピソードです。

山口長男 「累形」
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こちらは1958年の作品。暗色の背景は先程と同じですが、色面が太く大きくなりました。何だか迫りくるような重厚感がある一方で、朱色と黒が日本的な印象かな。私の中で山口長男の作風はこういうイメージです。

1954年に山口長男は武蔵野美術学校の教授となりました。この頃には二科展だけでなく第1回現代日本美術展での優秀賞を受賞したり、ニューヨークでの第18回アメリカ抽象美術展に出品、1955年の第3回サンパウロ・ビエンナーレ展や1956年の第28回ヴェネツィア・ビエンナーレ展の日本の代表作家の一人に選ばれるなど国際的に活躍の幅を広げていたようです。

山口長男 「転」
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こちらは1961年の作品。先程の作品と似ていて、色違いと言ったところでしょうか。タイトルの意味や意図は分かりませんが、やや歪んでたり斜めになってるので、幾何学的でも無機質さは感じずむしろ温かみを感じるかな。一目で山口長男の作品と分かる個性があります。

この頃になると国際的な展示の出品作家によく選ばれていて全部挙げるのが大変なくらいです。海外からも高く評価され、この年には昭和36年度芸術選奨文部大臣賞も受けています。しかし意外にも個展は無かったようで、1961年に戦後初めての個展を南画廊で開き、この作品もその内の1枚となっています。

1963年から二科展への出品を中止し、後に二科会から退会してしまいました。その後も画家としてだけでなく武蔵野美術大学の教授(1974年に定年退職)として活躍し、1982年には武蔵野美術学園学園長になったものの その翌年に80歳で亡くなりました。


ということで、日本の抽象画の先駆的な存在となっています。抽象絵画なんだけど、どこか土着の香りがするような独自性があるので覚えやすい画家だと思います。

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