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《ウィリアム・クライン》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、1950年代半ばから現在にかけて活躍している写真家ウィリアム・クラインを取り上げます。ウィリアム・クラインは1956年に出版した写真集『ニューヨーク』で一躍脚光を浴びた写真家で、町中の人々 特に下町の群衆などを撮り ブレや粗い仕上がりの写真を世に出しました。その「反写真」とも言える作品は衝撃を持って迎えられ、今日でも多くの写真家に影響を与えています。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。


ウィリアム・クラインは1928年にニューヨークのユダヤ系の家庭に生まれました。14歳で高校を卒業するとニューヨーク市立大学に入学し、その後アメリカ陸軍に入隊しています。軍で2年ほど過ごした後、ドイツとフランスに滞在し、パリのソルボンヌ大学に入学しました。始めは絵画と彫刻に興味を持っていたようで、自身の壁画を撮影することがカメラを持つきっかけになったようです。そして独学で写真を学び6年のフランスの生活を後にして故郷ニューヨークに戻ると、街の様子を撮影するようになりました。

ウィリアム・クライン 「ガン1、ニューヨーク」
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こちらは1954年の作品。めちゃくちゃ柄の悪い人物がピストルを向けて脅しているのかな。緊迫感があり、特にこの表情の憎たらしさが凄いw 隣の子供が平然としているのもちょっとシュール。 ニューヨークという街の混沌とした空気感がよく表れているように思えますが、撮った本人は大丈夫だったんですかねw

1955年からはファッション写真を撮影するようになり、VOGUEなどでも活躍しました。

ウィリアム・クライン 「ギンベルズ付近 ポートフォリオ『ニューヨーク 1954-55』より」
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こちらのタイトルはもしかしたら間違ってるかもしれませんが、1954~55年のニューヨークのシリーズの1枚。厳しい表情を浮かべる人を中心に沢山の人が行き交い、この街の熱気や忙しそうな感じが出ています。

ウィリアム・クラインのこのシリーズの特徴的は、荒れた粒子やブレ、不安定な画面構成で、その荒々しさがニューヨークという都市の雑然とした相貌を表現していると評価されています。

ウィリアム・クライン 「聖パトリック・デー ポートフォリオ『ニューヨーク 1954-55』より」
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こちらもタイトルが間違ってるかもしれませんが、1954~55年のニューヨークのシリーズの1枚。3~4人のサングラスの婆さんたちがこちらをじっと伺うように観ています。目はサングラスで見えないけど、いぶかしげに観ているような…w それも3~4人もいると中々の圧を感じて面白い。

この翌年の1956年にこれらの作品をまとめた写真集『ニューヨーク』を刊行すると、高く評価されナダール賞を受賞しています。綺麗な写真ではなくブレや粗い粒子がドキュメンタリー的な迫力を生んだのが衝撃的だったようで、写真の表現の世界が広がったとまで評されています。

ウィリアム・クライン 「ブロードウェイと103丁目 『ニューヨーク 1954-55』より」
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こちらもタイトルが間違ってるかもしれませんが、1954~55年のニューヨークのシリーズの1枚。ごちゃごちゃした看板が画面を埋め尽くさんばかりに並んでいますw クラインの特徴の1つにフレーム全体に万遍なく対象が写りこんでいるというのもあるようで、これはそれが感じられます。

ウィリアム・クラインはニューヨークの他にもローマ(1959年)、モスクワ(1961年)、東京(1964年)など様々な街で撮った写真集を出しています。

ウィリアム・クライン 「Le Petit Magot, November 11th, Paris 1968」
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こちらは恐らく1968年の作品かな。背景の建物がパリっぽい。身を寄せ合う2組が写ってるのはカップルでしょうか。ちょっと詳細は分かりませんが、人生模様が伺えそうな場面ですね。

クラインは広角レンズや高感度フィルムを使い、プリント手法などもそれまで無かった手法を用いるなど技術面でも斬新だったようです。

ちょっとここからはタイトルが分からない作品(以前観た展示で撮ったものの、キャプションがなかったものです)
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とにかく沢山の人が写った作品が多いw 特に子供からはエネルギーや感情がほとばしるようですね。

今回は街や人撮った写真ばかりですが、幾何学性を感じる作品や鏡を使った幻想的な作品なども観たことがあります。発想が独創的で美的感覚が画家としての部分が出ているのかも。

こちらもまとめて詳細不明
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演出ではないし報道写真でもない 生活感や文化がにじみ出るような写真ばかりです。喜怒哀楽もストレートですね。

クラインは絵画や写真だけでなく、1966年にはファッション界を題材とした映画『ポリー・マグーお前は誰だ?』を制作し、それ以降も映画を作り続けています。写真界のみならずファッション界、映画界でも大きな話題を呼ぶ存在です。

こちらも詳細不明。
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何処の国かも分からないけど下町なのは分かるw 子供に頭に銃を突きつけてるけど子供は笑っているのがシニカルな面白さ。女の子たちは優しそうな顔をしていますね。

前述の通り日本でも撮影していたウィリアム・クラインですが、2004年に東京都写真美術館で『PARIS+KLEIN』展を開催したり2012年には森山大道との二人展「William Klein + Daido Moriyama」をロンドンのテート・モダンで開催するなど日本でもよく知られた写真家です。

こちらも詳細不明
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デモらしきものや自転車競走など、やはり群像をテーマにしたのが多いかな。こちらもエネルギー溢れる作品ばかりです。

クラインは「私がやったこと、それは自分の目の代わりにカメラのレンズを開き、世界に向けることだった」 「頭を向ければ、どの方向であろうと常にそれが写真になる」 と述べています。まさにその通りの作風ですね。

こちらも詳細不明でカラー写真
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カラーでもやはり写真の綺麗さというよりは雑多な雰囲気が強いように思えます。被写体で埋め尽くされる感じも健在ですね。

詳細不明の写真は2018年に六本木の展示で撮ったものですが、クラインはその展示に際して「来場者に、私が意図したことを読み解いてほしい。現実を視覚化したのが私の写真であり、パズルのような断片こそが、私が都市に対して持つヴィジョンです」と語っていました。また、「写真を撮ることは反写真だった。映画を撮ることは反映画だった」とも言っていて、それが革新的だったのだと思います。

こちらは様々な作品の表紙など。
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カラーだと一層に伝わってくる雰囲気が濃いw タイポグラフィの仕事にも携わっていたようで、文字も魅力的ですね。

ウィリアム・クラインは実験的で革新的だったので、「移動する表現者」「アナーキーな視覚の撹乱者」「マッカーサーと原爆の時代の大詩人」といった呼び名が付けられたようです。まさに時代を変えた写真家で、多くの礼賛者を生みました。

ウィリアム・クライン 「Club Alllegro Fortissimo, Paris 1990. Painted contact 2002」
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こちらは過去の写真にペイントを施したもの。まだまだ革新が続いているのが伺えますね。それにしても女性たちの生命力が漲っていますw

ということで、90歳を超えた現在も存命で生きる伝説となって活躍されています。各地の美術館や写真のギャラリーなどで作品を目にすることがあり、個展や特集が組まれることもよくあります。世界的にも有名なので、知っておきたい写真家だと思います。

 参考記事:写真都市展 -ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち- (21_21 DESIGN SIGHT)
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