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《エミリオ・グレコ》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、イタリアを代表する現代具象彫刻家のエミリオ・グレコを取り上げます。エミリオ・グレコは元々は石工の見習いでしたが彫刻家となり戦後に具象的なモチーフで名を馳せました。すらりとした優美な女性像が多く、日本でも1960年代以降に名が広まり、特に1971年の大規模な個展によってコレクションする美術館が増えました。その為 各地の美術館やパブリックアートとして目にする機会の多い彫刻家となっています。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。


エミリオ・グレコは1913年にイタリアのシチリア島カターニャに生まれました。当初は石工の見習いとして古代彫刻の摸刻・修復や墓碑の制作に従事していたようですが、彫刻家を志すようになり1940年(27歳頃)からパレルモの美術学校で学びました。1943年から作品の発表もしていたものの、本格的な制作は第二次大戦後で、1946年になってローマのガレリア・デラ・コメータで最初の個展を開催し成功をおさめました。1956年にはヴェネツィア・ビエンナーレで彫刻大賞を受賞しヴゥネツッア市賞も受賞するなど当地での評価を高め、1961年にはフランス国立ロダン美術館や日本で個展を開催し、日本でもその名が知られるようになりました。

エミリオ・グレコ 「水浴の女」
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こちらは1964年の作品。エミリオ・グレコは流麗な線を特徴とする女性像をよく手掛けていて、この作品は特にその特徴が伝わってくるかな。伸びやかでちょっと腰をくねる仕草が動きを感じさせます。

この年には代表作のオルヴィエート大聖堂正面扉浮彫を手掛けています。実際に観たことはありませんが、イタリアを代表するゴシック建築の教会に3年かけて制作しただけに非常に重要な作品と思われます。

エミリオ・グレコ 「水浴びする女 No.6」
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こちらは製作年不明の作品。さっきの作品と全く同じに観えますが、ステートの違いでしょうかw エミリオ・グレコの作品は室内よりも屋外に展示するほうが映えるように思えます。まるで水浴びから出てきたような臨場感がありますね。

1965~67年にはサン・ピエトロ寺院のヨハネス23世のための記念碑も手掛けるなど、この頃には既に最高峰の評価となっていたようです。

エミリオ・グレコ 「ゆあみ(大)」
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こちらは1968年の作品。先程の2点と何が違うのか高度な間違い探しみたいになってますが連作のようです。 こちらの像は台座の上にあるので仰ぎ見るような感じの視点となっていて、一層にプロポーションが強調されて観えます。

エミリオ・グレコの作品は日本各地の美術館の庭やパブリックアートのような形で展示されているので、見かけることもあると思います。1971年に日本でも大規模な個展がありそれ以降に各美術館でもコレクションに加わったようです。

エミリオ・グレコ 「パトリシア・パターソン」
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こちらは1966年の作品。名前で検索してもこの作品が出てくるだけなのでモデルがどんな女性か分かりませんが、頬杖ついて目を閉じているように観えます。西洋絵画の伝統のメランコリーを思わせるポーズで、やや物憂げに見えるかな。何か思案しているようにも思えます。

今回、写真がありませんでしたがエミリオ・グレコは版画も多く手掛けています。版画においても伸びやかな線とコントラストが特徴となっていて、彫刻に通じるものがあります。

エミリオ・グレコ 「アンナ・テイト」
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こちらは1967年の作品。この女性も詳細は分かりませんが、先程の女性と似たポーズとなっています。しかし表情は微笑むような顔となっているのでこの女性のほうが親密で優しく感じられるかなw 頭がやや長めで気品がありますね。

エミリオ・グレコはペリクレ・ファッツィーニと並んで、イタリアの現代具象彫刻を代表する作家とされています。ペリクレ・ファッツィーニの作品は日本で観たことないかも。戦後のイタリア具象彫刻家には他にジャコモ・マンズーなどもいます。

エミリオ・グレコ 「エイコ」
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こちらは1968年の作品。モデルは日本人彫刻家の新谷英子 氏で、兄の琇紀 氏がグレコに学んでいたことから、アメリカ留学の帰途、ローマに寄ってグレコと知り合ったようです。この髪のボリューム感がしなやかな感じですね。

エミリオ・グレコには日本人の弟子もいて、先述の新谷琇紀 氏や緒方良信 氏などが師事しました。

エミリオ・グレコ 「腰かける女」
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こちらは1969年の作品。身をくねらせて腰掛ける様子が優美で、ブロンズなのに柔らかい雰囲気となっています。こちらも しなやかさが見事です。

1968年にはローマ美術学校の教授に就任しています。

エミリオ・グレコ 「腰掛ける女 No.2」
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こちらは年代不明の作品で、先程の作品とよく似ている連作です。グレコの作品は見る角度によって印象が変わるのも特徴で、こちらは特に様々な視点から観たい作品だと思います。腰のひねりもエミリオ・グレコによくある表現かも。

1991年にはイタリア中部ウンブリア州のオルヴィエートにエミリオ・グレコ美術館、1994年には出身地のシチリア島のカターニャにエミリオ・グレコ美術館が開館しています。

エミリオ・グレコ 「うずくまる女 No.4」
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こちらは年代不明の作品。やや不自然なくらいに首を横にしていますが、眠るような顔つきで静かな印象です。肉付きが艷やかな雰囲気を出しているようにも思えるかな。


ということで、有名な割に調べてもあまり詳細が出てこないのが不思議なくらいですが、日本各地の美術館で目にすることが出来る彫刻家です。関東だと箱根彫刻の森美術館や白金台の松岡美術館などで常設されています。実際に観るとまた印象が違うと思うので、見かけることがあったら是非じっくりと視点を変えて観てみてください。

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