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《横尾忠則》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、1960年代半ば頃から現在にかけて活躍を続ける前衛芸術家の横尾忠則 氏を取り上げます。横尾忠則 氏は当初グラフィックデザイナーとして成功し、シュールさナンセンスさ、サイケデリックなど1970年前後の時代の空気を取り入れ、時代の寵児として若者文化を牽引しました。2000年以降にはY字路を描くシリーズを制作し、今なお日本を代表するアーティストとして注目される存在です。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。


横尾忠則 氏は1936年に兵庫県の西脇市に生まれました。元々は成瀬家の次男でしたが2歳頃に叔父の横尾家に養子に入っていて、実弟に画家・イラストレーターの成瀬政博 氏がいます。幼い頃から絵を描くのが好きだったようで、『漫画少年』に漫画を投稿するほどだったようです。高校時代に油彩画を制作すうようになり絵画展などで入賞するほどだったようですが、美術大学には進まずに1956年(20歳の頃)に神戸新聞社にスカウトされて入社しました。デザイン・イラストの仕事を手掛け様々な賞を受賞していき、各界の著名人とも交流して1960年代半ばには個展を開いて1969年には第6回パリ青年ビエンナーレ版画部門グランプリを受賞するなど、着実に高い評価を得ていきました。

横尾忠則 「風景 No.17 入れ墨男」「風景 No.1 女の子」「風景 No.3 お葉さん」
横尾忠則 「風景 No.16 自画像」「風景 No.5 海の男」「風景 No.10 ヴォーグの女」
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こちらはすべて1969年の作品。写真をシルクスクリーンとアクリル板・アクリルフィルムで様々な色に変えたもので、アンディ・ウォーホルを彷彿とするかな。色使いがサイケデリックなのが独特で、この辺に横尾忠則 氏の感性の面白さを感じます。

横尾忠則 氏の作風はかなり幅広いのでこれと定義するのは難しいけど(写真数枚で説明できるもんじゃないw) 、1970年頃には若者文化を牽引していて、オカルトブームやサイケデリックな文化が隆盛していた空気も取り込んだような作品も残されています。

横尾忠則 「葬列II」
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こちらは1969/85年のシルクスクリーン・アクリル板による作品。幾重にも人が重なったような感じで、奥行きが圧縮されているように観えます。色面になっていたりポップな雰囲気に見えるけど、右の人は喪服でしょうか。。。それ以外の人も表情が伺えず沈痛な印象も受けます。

この年に横尾忠則自身が主演した大島渚監督の「新宿泥棒日記」が公開され、そのポスターも手掛けました。中央に主演の男女が姿があり、その下に逆さになって足を大きく上げた人のお尻が写っていて、周りにも何人かの人物が写っているというもので、ちょっと安っぽさや笑える部分もありつつ、猟奇とエロスを感じるポスターとなっています。

横尾忠則 「責め場」
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こちらは1969年の作品。右の写真はアップしたもので、それぞれ上下2段に女性が描かれているのが分かります。SMみたいな題材で驚きですねw ちょっと倒錯した感じで既存の美術にはない要素かも。

横尾忠則 氏は1970年に交通事故に遭って一時期休養宣言をしていました。その間もエッセイや写真などの仕事をしていたようですが、歩行できないほどに深刻な状況だったようです。交友関係のあった三島由紀夫は横尾忠則 氏を激励していたものの、その三島由紀夫も同じ年のうちに自衛隊の駐屯地で割腹自殺をしました。

こちらは1974~75年にかけて東京新聞で連載された『幻花』の挿絵の原画
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この『幻花』は瀬戸内晴美 氏(現在の・瀬戸内寂聴 氏)の小説で、室町幕府の8代将軍 足利義政の時代の正室 日野富子と愛妾の今参局との人間関係や幕府の衰退を書いているそうです。その挿絵なので さぞかし古風な人たちが出てくるのだろうなあと予想してしまいますが、予想外の挿絵を繰り出す奔放ぶりとなっています。

例えばこちら。ピラミッドとUFOが出てきますw 室町幕府の話だったはずでは…
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どうやら瀬戸内 氏の遅筆さに業を煮やして、中身を知らないうちに描き貯めて海外に行った際の挿絵のようです。とは言え、もっと無難な絵が描けたはずだろうにUFOにピラミッドとは驚きです。 しかもこれ以外の挿絵にも何度もUFOは出てきますw 挿絵の概念がぶっ飛びますね。

横尾忠則 氏は三島由紀夫の死に衝撃を受け、以降15年程度オカルトや神秘主義といった世界に傾倒していました。インドに何度も赴いて霊的な存在を信じたり、UFO体験もしたことがあるようで こうして作品の中に出てくることがあります。

こちらも1974~75年の『幻花』の挿絵
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緻密で強い目をしていますが、何処と無く女の執念のようなものを感じる…。画面いっぱいに顔を描く大胆な構図も面白い。

先述の通り横尾忠則 氏は日本の著名な芸術家と多く交流していて、この瀬戸内寂聴 氏だけでなく三宅一生、篠山紀信、岡本太郎、和田誠など名だたる巨匠と共に仕事をしてきました。

こちらも1974~75年の『幻花』の挿絵
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一筋の稲妻が黒く表現されているところがカッコいい。稲光なら白と思ってしまいますが反転している所に常人離れしたセンスが感じられます。

横尾忠則 氏は1970年の大阪万博では前衛的な芸術家によって作られた「せんい館」というパビリオンをデザインしています。このパビリオンには四谷シモン 氏の「ルネ・マグリットの男」という大きな人形などが展示されたようで、コラージュされた日本語、英語、ポルトガル語を発し、頭部からはレーザー光線も出る不気味な雰囲気となっていますw 当時の写真や映像を観ると真っ赤な部屋に何体も並んでいて、シュールな光景で意図はよくわかりませんが、怖さを感じるような映像と音楽なのは確かですw

この後2000年代まで撮影可能な作品がありませんでしたが、国際的な展示にも数多く出品され押しも押されもせぬ日本を代表する前衛芸術家となっています。

横尾忠則 「健全な感情」
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こちらは2002年の作品。2000年9月から始まったY字路を描く連作の1つで、中央にあるのは横浜元町のイチカワ理容室というお店となっています。しかし右側は広島駅近くの新幹線のガード、右奥は世田谷の高層ビル、左奥にはパリのサクレクール寺院といったように様々な風景が組み合わさっているようで、実際には存在しない風景となっています。赤や黄色が多く温かみを感じる画風で、どこかノスタルジックな気分になります。

横尾忠則 氏はニューヨーク近代美術館でピカソ展を観た際に衝撃を受け、グラフィックデザイナーから画家へと自身の認識も変化したようです。1980年代後半からは滝を描いたシリーズを手掛け、2000年以降はこうしたY字路をよく描いています。

横尾忠則 「黒いY字路 11」
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こちらは2011年の作品。これは2011年のヨコハマトリエンナーレにも出品されていた「黒いY字路」の16枚の中の1枚で、シュールでキュビスムが流行った頃の作品のようなちょっとレトロさを感じます。このシリーズでは風景を闇の中に消滅させる逆転的な表現を示し、トリエンナーレの会場であった横浜美術館という場に想を得て描かれたのだとか。

Y字路シリーズでは岐路や境界といったテーマを多義的に示し、非現実の風景を顕在させることを試みてきたようです。この2011年には旭日小綬章を受章しています。

横尾忠則 「真夜中の晩鐘」のポスター
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こちらは2011年の作品。現代の日本のY字路が描かれ、周りは闇に染まり真夜中のようです。その交差点の手前にはミレーの「晩鐘」に出てくる男女が祈りを捧げています。何故 現代の交差点にミレーの晩鐘を組み合わせたのかは謎ですが、その為か普通の道端が静かで神秘的な場所のように観えます。


この翌年の2012年に兵庫県に横尾忠則現代美術館もオープンしました。現在でも活躍されていて、2020年には2014年に亡くなった愛猫に関する『タマ、帰っておいで』という画集を発表しています。


ということで、写真が少なくて紹介しきれていない感が強いですが現代日本を代表するアーティストとなっています。現在は84歳となっていますがまだまだ期待したい存在です。

 参考記事:横尾忠則 幻花幻想幻画譚 1974-1975 (ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
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