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《佐藤卓》 作者別紹介

今日は1980年代以降に活躍し、現代日本を代表するデザイナーである 佐藤卓(さとう たく)氏を取り上げます。佐藤卓 氏は商品デザインやポスターといったデザインだけでなく、コーポレート・アイデンティティ、ビジュアル・アイデンティティ、プロダクトデザイン、商品企画など幅広く手掛け、さらに美術館のディレクター/館長として展覧会を企画したり、テレビ番組のアートディレクションを務めるなど多岐に渡る活動をされています。そのため佐藤卓 氏のデザインは世の中に広く浸透していて、「ロッテキシリトールガム」や「明治おいしい牛乳」など は日本人なら目にしたことがあるのではないかと思います。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。


佐藤卓 氏は1955年に東京都の杉並区に生まれました。 東京都立豊多摩高等学校を卒業後、御茶の水美術学院で浪人生活を送ってから東京芸術大学に入学し、1979年に同大のデザイン科を卒業、さらに1981年に同大学院を修了しています。その年に電通に入社し、3年ほど勤めた1984年に退職し、株式会社佐藤卓デザイン事務所を設立しました。それ以降、様々なプロダクトやデザインを手掛け、現在も幅広く活躍されています。

今日は残念ながら古い作品の写真がないので2000年代以降の作品ばかりとなりますので、順不同でご紹介していこうと思います。

佐藤卓 「金沢21世紀美術館のシンボルマーク」
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こちらは2004年に開館した金沢21世紀美術館のシンボルマーク。21の数字は美術館の名前、円形の中に大小の□や○があるのは美術館の建物を上から見た様子となっています。作者本人によると、「建築俯瞰図をそのままマークにしました。外側に開かれた美術館、正面のない美術館、多様な使い方が可能な美術館など、この美術館ならではのコンセプトがそのまま建築俯瞰図に表れているからです。このマークは、美術館や展覧会会場サインとしても使うことが可能です。象徴としてのみ存在するマークではなく、いろいろな使用環境で自然に多くの機能が発見されることを前もって想定しています。」とのことで、シンプルながらも多くの意味や用途が込められているようです。すっきりして現代アートの美術館の雰囲気によく合いますね。

佐藤卓 氏のデザインは商品デザインだけでなくこうしたVI・CIにも及んでいます。

佐藤卓 「国立科学博物館のシンボルマーク」
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こちらは2007年に130周年でリニューアルされた国立科学博物館のシンボルマーク。この時、キャッチコピーを「想像力の入口」と定め、それにふさわしい新しいシンボルマークとしてこちらになりました。公式サイトによると、このシンボルマークは「見方によって恐竜やサメの歯、門のように、また個々の形は、花びらや炎が揺らめきながら広がっていくようにも見え、様々なものを想像していただけるデザインとしました。」とのことで、やはり深い意味があるようです。確かに歯か葉っぱのように見えるかな。

国立科学博物館では展覧会の企画(2019年「風景の科学」など)も手掛けていて、単なるデザインの枠を超えた活躍をされています。

佐藤卓 「ガム」
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こちらは制作年が分かりませんが、代表作の1つの「ロッテ キシリトールガム」の包み紙。こんなにカラフルな種類があるんですね。下の方は結構ポップな印象を受ける色合いが好み。キシリトールの名前が大きくて、爽やかさが伝わってくるようなデザインです。

他に有名な所ではニッカウヰスキーの「ピュアモルト」の商品開発や明治乳業の「明治おいしい牛乳」のパッケージデザイン、「全国高等学校野球選手権大会」のシンボルマークなども手掛けています。美術館に行かなくてもかなり身近なところで佐藤卓 氏のデザインを観ることができます。

佐藤卓 「ヒロシマという重石」
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こちらは毎年開催される「ヒロシマ・アピールズ展」の2015年のポスター。原爆投下から70年だった年で、書類は理屈を象徴し広島という分銅がどんなことがあってもやってはいけないことがあると抑えているようです。分銅が人のようにも見えるのはダブルイメージでしょうか。

佐藤卓 氏は21_21 DESIGN SIGHTでディレクター/館長も務めていて、『water』『縄文人展』『デザインの解剖展』『デザインあ展』など多くの展示を手掛けています。

佐藤卓 「デザインの解剖展:身近なものから世界を見る方法」
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こちらは2016年に21_21 DESIGN SIGHTで行われた展示のポスターやチケット、バッチなどの展示に関する品々。きのこ派の私としてはこのポスターが好きでしたw 愛着のあるデザインを斬新な感じで展示していた展覧会です。

同じく21_21 DESIGN SIGHTでディレクターを務める三宅一生 氏とは繋がりが深く、イッセイミヤケのポスターを手掛けています。

佐藤卓 「デザイナーブランド」
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こちらは恐らく2018年頃のイッセイミヤケのポスター。バナナが服を着ているような雰囲気が秀逸ですね。黄色いシャツみたいに見えました。

佐藤卓 氏は数多くの賞を受賞していて、この2018年度には芸術選奨文部科学大臣賞も受賞されています。まさに現代日本を代表するデザイナーです。

佐藤卓 「デザイナーブランド」
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こちらもイッセイミヤケのポスター。布のようなタコのようなw 水玉模様が吸盤のように見えるのも面白い趣向です。ユーモアに富んでいるのが佐藤卓 氏の特徴ではないでしょうか。

佐藤卓 氏は武蔵野美術大学造形学部で客員教授も務めていて、先程の「デザインの解剖展」では授業での学生の成果も展示されていました。こんなに現役で活躍されている方に教えて貰えるなんて刺激的でしょうね。

佐藤卓 「ポスター PLEATS PLEASE ハッピーアニバーサリー」
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こちらは和菓子のポスターかと思ったらこれもイッセイミヤケのポスターでしたw よく観ると生地でできているのが分かりますが、佐藤卓 氏はこのブランドについて、出会った瞬間に「あ、美味しそう」「あ、着てみたい」と思えるような服だと考えてこうしたデザインにしたようです。

このシリーズは他にもワインやソフトクリームのもあって、どれも滑らかで洒落た雰囲気があり上質な印象を受けます。親しみやすいのも素晴らしい。

佐藤卓 「放送局の企画展」
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こちらは日本科学未来館で行われた「デザインあ展」のポスターと、「解散!」のフィルム。「デザインあ」はNHKの番組で、佐藤卓 氏はこの番組の総合指導を務めています。 右の写真の「解散!」はその番組の名物シリーズで、物を分解して部品を並べるという内容です。私も徹底した分解ぶりが好きなシリーズなのですが、これをアニメーションにして見せるのは途方もなく手間がかかりそう…。狂気に近い執念を感じますw

2013年には21_21 DESIGN SIGHTでもデザインあ展が開かれ、その際にも佐藤卓デザイン事務所として作品が出品されていました。
 参考記事:デザインあ展 (21_21 DESIGN SIGHT)

佐藤卓デザイン事務所+折形デザイン研究所 「おりがみ」
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こちらは2013年の「デザインあ展」での折り紙の体験コーナー。映像を見ながら実際に折り紙を折ることができました。他にも同じように風呂敷の体験コーナーもあり、簡潔かつ丁寧に伝えてくれます。こういうノウハウを上手く伝える技術もデザインですね。

ちなみに同じNHK(Eテレ)の「にほんごであそぼ」のアートディレクターも務めています。本当に多彩な仕事ぶりで目にする機会も多い方です。

佐藤卓デザイン事務所 「ペンギン物語」
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こちらも2013年の「デザインあ展」の出品作品。一見するとよく観るガムが置いてあるだけに見えますが、この側面のペンギンに注目です。実はこれは映像となっていて、ペンギンが動き出します。

少し経つとこんな感じで行進し始めて、周囲をぐるっと歩きます。
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よちよち歩きしたり、お腹で滑ってきたりと可愛らしい姿です。未来の包み紙はこうなると楽しいですね。


ということで、非常にアイディア豊富で楽しいデザインを世に送る方で、活動範囲も広いので今後もますます活躍が期待されます。佐藤卓 氏のデザインと分かると他の各種デザインとの繋がりも見えてきて面白いと思いますので、是非覚えておきたい方です。
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