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斎藤真一展 瞽女と郷愁の旅路 【武蔵野市立吉祥寺美術館】

昨年末に武蔵野市立吉祥寺美術館へ「斎藤真一展 瞽女と郷愁の旅路」を観に行ってきました。100円で観られる展覧会でしたが、非常に濃い内容でかなり好みでした。

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【展覧名】
 斎藤真一展 瞽女と郷愁の旅路

【公式サイト】
 http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/data/kikaku/2009/saito/saito.html
 http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/

【会場】武蔵野市立吉祥寺美術館
【最寄】吉祥寺駅


【会期】
  前期:2009年12月12日(土)~2010年01月17日(日)
  後期:2010年01月20日(水)~02月21日(日)

   ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日16時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
以前、日本の美術館名品展で非常にインパクトのある「星になった瞽女(みさお瞽女の悲しみ)」を観て、強く心に残っていた画家だけに、この展覧の概要を見つけた時にすぐに観に行きたくなりました。そして、この展示でも心に訴えてくる作品が多くありました。 一応コーナーに分かれていたので、それに沿ってご紹介しようと思います。

なお、この展覧には前期・後期があるようで、リストによると半分くらいが入れ替わるようです。…と言っても事前にどの作品が後期とかあまり確認できないのが残念です。(一応、公式サイトでいくつかわかるようです。)


<郷愁/さすらい>
このコーナーは「郷愁」をテーマにシュールな感じの作品が多かったように思います。斎藤真一の様々な時代の作品が並び、ルーツを感じるコーナーでもありました。

「自画像(天城中学3年)」
旧制中学で3年だと15歳くらいかな? 緑と水色の顔の自画像です。簡素化されていてちょっと子供の絵みたいな雰囲気もしましたw

「風車(オランダ)」
乳白色と黒の2色が中心となっていて風車が描かれています。斎藤真一はパリに留学し、その先で藤田嗣治と懇意だったようですが、この作品は藤田の乳白色の時代の画風を思わせる作品でした。藤田や岸田劉生に憧れていたそうです。

「休憩」
6畳くらいの洋風の部屋の奥に棚が置かれ、ランプや皿が飾られています。また、その手前にはバイオリンとケースが無造作に床に置かれています。 そしてその部屋に異様な雰囲気を持たせているのが、右奥にある部屋に向かって探し物でもしているような裸婦の後姿です。裸なのに何故か黒いストッキング?だけは履いてるのが謎ですw 特に非現実的な物理法則はないのですが、不条理でシュールな雰囲気を感じました。

「道」 ★こちらで観られます
草原の中で一本道が奥に向かって伸びています。また、電柱が奥に延びて連なり、奥には鉄橋が見えます。その手前で横笛を吹く帽子を被った男性がいるのがちょっと奇妙です。 荒涼とした雰囲気なのに何故か懐かしい雰囲気がしました。結構心にきます。

「雪の日の来訪者」
ドアのない建物の中に傘を持った紳士がいて、左奥には裸婦が赤いランプの下で正座しています。室内にはバイオリン、蓄音機、トランペット、肖像画など様々なものがありますが、置かれ方や間隔に非現実感を覚えます。また、右奥の玄関?には浮かんで見える電灯と雪が見えて、ますます現実離れした不思議な感覚を覚えました。なお、このコーナーにある作品にはよく楽器や演奏者が出てきましたが、この作品の紳士と同じような人物が描かれた「さすらいの楽師」という作品もありました。そちらはバイオリンを持っていますが、この作品の紳士と同じポーズをしていました。


<越後瞽女日記>
このコーナーでは三味線の音楽が流れていました。恐らくこのコーナーが今回の展覧の肝になるところではないかと思います。この「瞽女」というのは「ごぜ」と読み、津軽三味線を持って遊芸して周る、日本版ジプシーとも言える盲目の女性達です。斎藤真一は藤田嗣治の勧めで北国を旅するようになり、そこで「瞽女」の存在に強く惹かれ、それを主題に多くの印象的な作品を残したようです。
 参考:「瞽女」のwiki

「難波コトミ、五十嵐シズ」
目を閉じた2人の中年女性が赤いランプの下、静かな雰囲気で左右に並んでいます。2人とも少し微笑んでいるようにも見えました。

「お春の祈り」
赤い着物の女性が手で手を握り目を閉じて祈りを捧げているようです。まるで聖女のような面持ちが印象的です。左には木の向こうに落ちる真っ赤な夕陽があり、全体的に赤が多く郷愁を誘います。なお、このお春は勘吉という茶屋の住人で、様々なノンフィクションとフィクションの混じった物語があるようです。一時期男と暮らしていたそうで、美人ともザンギリ頭とも言われている女性です。その物語に沿った作品がいくつかありました。


この辺りのコーナーにくると、赤というよりは朱色の色彩の作品が多いのに気が付きます。斎藤真一は、朱と黒に日本の色彩の原点を感じていたようです。(確かに漆器や鳥居などは朱と黒が多いかも)  静かに内側に向かった、しっとり濡れた日本が潜む気がすると考えていたようで、「赤」というより「赫」という文字に惹かれていたそうです。その言葉通り、火のように鮮やかで目の底に焼きつくような「赫」が多用されています。こうした色彩は、盲目の瞽女から目が見えた頃の夕陽の思い出を聞いて、絵を描く上で一番大切なものを忘れていたと、目が覚めるような恥ずかしいような戸惑いを覚えた経験からきているそうです。「赫い陽の幻影は彼女達そのもの、色とは?フォルムとは?絵画とは?を問いかける」と解説がありました。色に人生までも盛り込むほどですので、心を掴まれるのはそれに起因しているのかも?と思いながら観ていました。


「星になった瞽女(みさお瞽女の悲しみ)」 ★こちらで観られます
多分、日本の美術館名品展で観た作品と同じだと思います(似ている作品もありそうなので憶測ですが…) 雪原で正座して、目に手を当て泣いている瞽女が描かれています。頭が異様に大きく手が白く細いのが悲しみを強調しているような気がします。これだけ強烈に感情を感じるのはムンク以来かも。宙に輝く1つ星と、地平線の赤も印象に残ります。

「陽の雪野」 ★こちらで観られます
今回のポスターの作品。これが瞽女さんの思い出の中の夕陽なのかな? 雪原に落ちる夕陽を描いた作品で、陽は赤黒くなってきています。寂しさとも郷愁とも異なる何か神聖なものを感じる気がしました。

<明治吉原細見記>
斎藤真一は養祖母が遊女だったという話を聞いて、どうしても遊郭を見てみたいと思って、当時の写真や地図を集めていたそうです。それらを観て夢想していたようですが、初めて実際に行ったらイメージとだいぶ違っていたそうです。ここではそうした吉原の悲哀をテーマにした作品が並んでいました。

「軽気球」 ★こちらで観られます
気球をバックに柵に腰掛ける遊女が描かれています、肩の着物が乱れ、生気の抜けたような顔をしていますが妖艶さがありました。

「紅い灯の街」
全体的に赤く染まった遊郭街が描かれています。人力車や女たちも見えます。赤い灯りが沢山並び、妖しくも哀しい雰囲気がありました。

<街角>
後期展示のようです。

<その他>
その他のコーナーはどこらへんかわからなかったw コーナーじゃないのかも。

ということで、これで100円??というくらい素晴らしい内容でした。機会があれば後期も観に行きたいくらいです。かなり心を掴まれる画家を知ることが出来て良かったです。500円のパンフレットも買いました。


斎藤真一展以外にも2つ、企画展をやっています。両方さらっとしかみませんでしたが…。

<萩原英雄記念室>
萩原英雄のイソップ絵噺 (2009年11月12日(木)~2010年2月21日(日))
萩原英雄の作品は山梨県立美術館の常設でも何点か観たかな。単色もしくは2色くらいの版画でシャガールっぽい雰囲気も感じました。イソップ童話と合っているように思いました。

<浜口陽三記念室>
浜口陽三 生誕百年 partⅢ パリからサンフランシスコへ (2009年11月12日(木)~2010年2月21日(日))
こちらは本当にさらっと観た程度なので、感想は割愛。

ということで、かなり満足して出てきました。空いていてじっくり観られるのも好印象でした。
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