HOME   »  作者別紹介  »  《エルネスト・ネト》 作者別紹介

《エルネスト・ネト》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、全世界で高く評価されているブラジル出身の現代アーティストであるエルネスト・ネト氏を取り上げます。エルネスト・ネト氏は2001年のヴェネチア・ビエンナーレでブラジル代表となった方で、作品に触れて鑑賞するスタイルが特徴的です。柔らかく伸縮性のある素材を使ったインスタレーションを作り、有機的かつ生き物を思わせるフォルムとなっています。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。


エルネスト・ネト氏は1964年のリオデジャネイロ生まれで、パルケ・ラージ視覚芸術学校を卒業した後、リオデジャネイロ近代美術館で美術を学び、1980年代後半から作品の発表を始めました。1988年にスコットランドで展示を始め、1995年以降は海外で個展を開催しています。2001年のヴェネチア・ビエンナーレでは、ヴィック・ムニーズと共にブラジル代表として参加し、ブラジルのナショナル・パビリオンやアルセナーレでの国際グループ展でインスタレーション作品を発表しました。2006年のパリのパンテオンでの「Léviathan Thot」などが代表作とされています。
今回は2012年に行われたエスパス ルイ・ヴィトン東京での個展の様子を振り返る形でご紹介していこうと思います。

エルネスト・ネト 「Pedras(石群)1」
P10601201.jpg
こちらはネットにくるまれたボールが詰まった作品。既製品を使ったインスタレーションで、何かの実か幼虫みたいな造形に思えます。

近くで見るとこんな感じ。中はビニールボールで出来ています。
P10601211.jpg
エルネスト・ネト氏の作品は、「抽象的なミニマリズムを超えたもの」と評されています。単純な素材で不思議なフォルムを生むのが面白い。

エルネスト・ネト氏はこうした大きくて柔らかい素材を用いることが多いようで、伸縮性のある素材、発泡スチロールのペレットや、香りのよいスパイスが詰められることまであるのだとか。

エルネスト・ネト 「Pedras(石群)2」
P10601411.jpg
こちらはバリエーション作品。こうして置かれていると人工物を集めているのに自然物のようにも見えます。

これらの作品はいずれも、人間性を問題として取り上げていて、同じブラジルのエリオ・オイチシカやリジア・クラークといったポスト新具体主義アーティストから継承した、モノの重みを通じての現実認識として想定された人間性を「身体を通じての関係性の構築」と呼ぶそうです。エルネスト・ネト氏にとってパーツを組み合わせることは、頭の体操であるだけでなく身体的操作でもあるのだとか。

エルネスト・ネト 「TorusMacroCopula(トルスマクロボールト)」「Linhas, pontos e patas(線、点と脚)」
P10601181.jpg
手前にあるのが「トルスマクロボールト」、後ろの壁に張り付いているのが「線、点と脚」です。これらも同じくネットでボールをまとめたような感じで、「トルスマクロボールト」は「copula invertida」という1989年の作品の再現となっています。当時の「prumo(下げ振り)」と「peso(おもり)」という2つの作品を組み合わせ、卵や受精、精子などをイメージしているようです。確かにそうしたものをイメージさせる滑らかな形をしていますね。

エルネスト・ネト氏はこの作品についてたくさんの穴と、より大きなボールの「卵」で満たされた皮膚の空間の位相的逆転を伴った巨視的ビジョンであると語っています。ポスト具体主義/建設的提案を離れて静物具体主義的プロジェクトへと移行していたそうで、肉(生身)を感じることのできる作品を実現する方法を模索していたようです。

エルネスト・ネト 「A vida é um corpo do qual fazemos parte(われわれは生という体の一部)」
P10601391.jpg
こちらはかなり巨大なインスタレーションで、連作「Balanço(ブランコ)」に属する体験型の作品となっています。これも材質は他と同じ。

こちらは中に入った様子。
P10601261.jpg P10601311.jpg
中は通路になっていて、アスレチックのようです。結構沈みこんで足を取られるので、確かに自分の重みを感じます^^; たまに人とすれ違うと揺れて酔いそうw 奥にたどり着くと居住スペースのようになっていました。

実際にここで寝っ転がりながら体験している人もいました。
P10601291.jpg
これも宙に浮いているのでやや揺れますが、ハンモック的な感じかな。軽く酔いそうになったのを記憶していますw

エルネスト・ネト氏が来場者に味わって欲しかったのはこの身体的次元であり、空間と生に対する特有の思案と理解方法だったようです。確かにこの作品では自分の重みや浮遊するような感覚があって、空間によって感じ方が変わるように思えました。エルネスト・ネト氏は「生は人間よりも大きく、人間は生の一部に過ぎない」と語っていて、人間を宇宙の中心に捉える人間観に異議を唱えるという趣旨もあったようです。


ということで、コンセプトは深遠ですが馴染みやすい作風のアーティストとなっています。日本でも展示やアートフェスなどで観られる機会があり、新潟の大地の芸術祭(2006年)や東京国立近代美術館でのブラジル展(2004年)などにも出品されていました。今後も観られる機会があると思いますので、その際は是非 実際に体験して欲しいアーティストです。

 参考記事:MADNESS IS PART OF LIFE BY ERNESTO NETO (エスパス ルイ・ヴィトン東京)
 参考文献:エスパス ルイ・ヴィトン東京の当時のカタログ(pdf)
関連記事


記事が参考になったらブログランキングをポチポチっとお願いします(><) これがモチベーションの源です。

 

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter



Comment
Trackback
Trackback URL
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

21世紀のxxx者

Author:21世紀のxxx者
 
多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。

関東の方には休日のガイドやデートスポット探し、関東以外の方には東京観光のサイトとしてご覧頂ければと思います。

画像を大きめにしているので、解像度は1280×1024以上が推奨です。

↓ブログランキングです。ぽちっと押して頂けると嬉しいです。





【トラックバック・リンク】
基本的にどちらも大歓迎です。アダルトサイト・商材紹介のみのサイトの方はご遠慮ください。
※TB・コメントは公序良俗を判断した上で断り無く削除することがあります。
※相互リンクに関しては一定以上のお付き合いの上で判断させて頂いております。

【記事・画像について】
当ブログコンテンツからの転載は一切お断り致します。(RSSは問題ありません)

更新情報や美術関連の小ネタをtwitterで呟いています。
更新通知用twitter

展覧スケジュール
現時点で分かる限り、大きな展示のスケジュールを一覧にしました。

展展会年間スケジュール (1都3県)
検索フォーム
ブログ内検索です。
【○○美術館】 というように館名には【】をつけて検索するとみつかりやすいです。
全記事リスト
カテゴリ
リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
メディア掲載
■2012/1/27
NHK BSプレミアム 熱中スタジアム「博物館ナイト」の収録に参加してきました
  → 詳細

■2011/11/21
海の見える杜美術館の公式紹介サイトに掲載されました
  → 詳細

■2011/9/29
「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
  → 詳細

■2009/10/28
Yahoo!カテゴリーに登録されました
  → 絵画
  → 関東 > 絵画

記事の共有
この記事をツイートする
広告
美術鑑賞のお供
細かい美術品を見るのに非常に重宝しています。
愛機紹介
このブログの写真を撮ってます。上は気合入れてる時のカメラ、下は普段使いのカメラです。
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
63位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
デザイン・アート
8位
アクセスランキングを見る>>
twitter
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

※できるだけコメント欄にお願い致します。(管理人だけに表示機能を活用ください) メールは法人の方で、会社・部署・ドメインなどを確認できる場合のみ返信致します。