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《アルベルト・ヨナタン》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、インドネシア出身のアーティストで2012年から京都で活動している陶芸中心の作家アルベルト・ヨナタン・セティアワン氏を取り上げます。絵画や映像も手掛けていますが、主に無数の陶器を組み合わた作品を制作し、幾何学性や宗教性を感じさせる作風となっています。2013年の第55回ヴェネツィア・ビエンナーレでインドネシア代表アーティストの1人として最年少で選出されて以降、2017年の「サンシャワー:東南アジアの現代美術展」や2019年のオーストラリアでの国際展への参加など、今まさに注目度が高まっているアーティストです。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。

アルベルト・ヨナタン氏は1983年にインドネシアで生まれ、2007年にインドネシアのバンドン工科大学陶芸学部を卒業し、2012年にバンドン工科大学視覚芸術専攻を修了しました。そして陶芸の研究のために2012年に京都に移り住み、2020年には京都精華大学で博士号も取得されています。日本をはじめインドネシア、シンガポール、タイ、イタリアなどで開催されたグループ展に参加し、第55回ヴェネツィア・ビエンナーレではインドネシア代表アーティストの1人として最年少で選出されています。

今日は作品名と制作年が分からないものが多いので、簡単な感想と共にご紹介していこうと思います。

アルベルト・ヨナタン 「ヘリオス」
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こちらは2017年のサンシャワー展の出品作でタイトルはギリシアの太陽の神の名前です。壁いっぱいに2種類の陶器が2000個ほど並び、幾何学的な模様を作っています。

壁のアップ。花とキリスト教の天使セラフィム(光に結びつく天使)を表しているそうです。
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アルベルト・ヨナタン氏は古来の自然現象や宇宙観を装飾的なパターンで表現する手法にインスピレーションを受けてこうした作品を作ったそうです。確かに一種の曼荼羅的な雰囲気がありますね。

2017年にはもう1つ、ポーラミュージアム アネックスでも個展「アルベルト・ヨナタン TERRENE」が開催されました。

こちらがその個展の会場の光景
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手前の床に何やら沢山の陶器が並んでいて、不思議な円を描いています。

先程の写真のアップ。
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1つ1つは水滴のような形をしています。驚くことにこれらは雛形を使っているのではなく全部自分の手で作っています。その形がどこか仏塔を想起します。

アルベルト・ヨナタン氏は「陶磁器制作では繰り返し行う過程が非常に多く、そのプロセスが物理的現実を思い出させるものとして、世界に存在する具体的かつ身体的経験と物質性へのつながりを考えさせる」と述べています。

こちらは作品を作っている様子の映像
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1つ1つ丹念に並べているのが伺えます。かなり根気のいる作業ですねこれは…。先程の言葉の通り、反復ぶりが身体的にも負担の大きいのが想像に難くないw

こうした現象こそが、アルベルト・ヨナタン氏が陶磁器制作の(原始的ともいえる)手作り過程を大切にしている理由の1つとのことで、完成されたオブジェの美しさではなく、制作過程の瞬間を作品を通して認識し、強調していきたいと考えているようです。現在の急速な社会発展と対照的に、陶磁器制作における繰り返し過程が解毒剤のような役目を果たすのではないかと考え、全てが速いペースで実行・成長していく脱工業化社会に対するアルベルト・ヨナタン氏の抵抗とも言えるのだとか。

陶磁器だけでなく絵画作品も手掛けています。
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シュルレアリスム的な感じですが、目が怖いw フリーメイソンのプロビデンスの目みたいなw

こちらも絵画作品。
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これはユダヤ教のカバラを想起しました。サンシャワー展では宗教関連の章に展示されてたし、アルベルト・ヨナタン氏の作品はどこか宗教的なものを感じます。

こちらは幾何学的な模様の絵画作品。
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これも仏具の法輪などを彷彿とするかな。色もついて美しい模様です。

こちらも絵画作品。
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これは小さなモチーフを並べて幾何学的な模様を描いているので先程の陶磁器の作品に通じるものを感じますね。

こちらは木のように見えますが、無数の陶器を組み合わせて作っています。
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幾何学模様が何とも美しい。微妙な明暗でいくつかのブロックに分かれて観えます。

こちらがアップ。
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これも恐らく手作り。よくぴっちり合うものだと感心します。

この時の展示名の「Terrene」は「土からきたもの又は土のようなもの」を指し、ラテン語の土(terra)を語源としています。アルベルト・ヨナタン氏はこの言葉に「無形」と「物質」という相反する言葉を想起するそうで、光と影のようにお互いがお互いの概念を形作るのに必要な存在と考えているようで、「物質」と「無形」、「世俗的」と「精神的」という正反対の間を探るというのがテーマになっていました。

こちらは鳥の形の陶器が円形に並んでいる様子。
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遠目から見たら仏教の華籠に似ているように思えます。

近くで観るとこんな感じ。
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1羽1羽がかなり精密に作られています。この数でこの精密さというのは驚きますね。相当の精神力が無いと無理じゃないかなw

アルベルト・ヨナタン氏は長い間粘土と親しんで制作していることによって、人間の精神性を映す素材として、粘土の指摘な側面も把握できるようになったと語っています。また、私達の存在について知っていることはすべて粘土の中に反映されていて、重力、老い、そして容器である体がやがて大地へ帰ることもその中にあると述べています。

最後に陶器を使った映像作品。
DSC01092.jpg
これは一見すると静止画に見えますが、ゆ~~っくりと水が流れ出したりして時間が経過している様子が映されていました。「工芸」の定義を探求し、拡大するのがアルベルト・ヨナタン氏の試みの一部で、氏にとっての工芸とは具体的な物質の結果や完成作品だけでなくその制作過程も含まれるとのことなので、これも定義の広がりの一環なのかも知れませんね。


ということで、膨大な手仕事によって幾何学的で宗教性を感じさせる作風となっています。昨年(2010年)にも東京のミヅマアートギャラリーで個展が開催されるなど、割と頻繁に観られる機会があります。今後もますます活躍されると思いますので、今のうちにチェックしておきたいアーティストです。

 参考記事:
  サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで 感想後編(森美術館)
  アルベルト・ヨナタン「TERRENE」 (ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX)
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